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わが国は東西南北に長く,日本列島を背骨のように走る山脈が太平洋側と日本海側に分け,その四方を豊かな海に囲まれています。山が多く森林に恵まれた土地では,梅雨や雪がもたらす湿潤な気候条件のもと,稲作を中心とする農耕生活が営まれてきました。このような特徴のある国土のなかで,人々は一年の四季を通じて移り変わる自然の風情に親しんできました。 わが国の造形美術は,人々の身近にある自然に育まれつつ生み出されてきたとも言えます。古くより和歌に詠まれ,絵に描かれた風光明媚な土地は「名所」として知られるようになり,長い歴史を通じて歌枕や画題として定着しました。諸外国との交流が盛んになった明治時代を迎えると,美術の世界でもそれまでの伝統的な名所絵とは異なる新たな風景描写がみられるようになります。近代化によって変化していく街並みだけでなく,それまで美術作品の描写の対象とはならなかった土地の風景も,画家自身の感興のおもむくままに描き出されました。平成25年(2013)に世界文化遺産に登録された富士山も,同様に伝統的な名所絵としてではなく,それぞれの作者の個性的な表現によって,様々な姿形で表わされるようになりました。また,新しい風景描写への開眼は,絵画の世界だけにかぎらず,写真や工芸の分野でも意欲的な試みがなされました。 本展では,近代の造形美術における風景描写に注目し,日本各地と富士山とが四季折々にみせる,美しい自然の表情を描いた作品を紹介します。 展覧会図録(PDF形式:57.4MB) |