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今春,これまでに経験のない外出制限の中,何時もよりも身近な自然の中に春らしさを感じて過された方も多かったことでしょう。桜が日々咲き進むなか,春の花々が次々と周囲を彩り,鳥や虫が飛び交い初め,さらに若葉萌ゆる季節へと移ろいました。そして,ようやく私たちも外歩きを楽しめるようになりました。季節は夏へと向かいます。 わが国では,四季それぞれの様々な事象や花鳥風月に対する細やかな感覚を和歌に詠み込み,また美術的に表現して,季節感豊かな文化を発展させてきました。旧暦の和名で五月を皐月と呼ぶのは,早苗を植える時期であることからとされ,雨が多い時期であることから五月雨月とも言います。また六月を水無月と呼ぶのは,暑さがピークとなって水が涸れる時期にあたることからで,山野が青々と茂ることから青水無月とも,また暑さをしのぐ風を待つ時期であることから風待月とも言います。七月の文月は,稲穂の花や葉が蕾のまま(含む)の様子から,また七夕に詩歌の文を供えることからとも言われます。現在の暦の季節とは少しズレがありますが,こうした季節感を私たちも感じ取りながら,本格的な夏へと移りゆく季節を健やかに過していきたいものです。 本展では,初夏から盛夏の風情を,愛らしさや美しさ,そして豊かな情感によって表現した絵画作品,また卓抜した技法による工芸作品等と共に,今話題の明智光秀壮年期の七夕の和歌を紹介します。 |