三の丸尚蔵館収蔵品目録第4号の刊行について

1. 発刊書籍名

三の丸尚蔵館収蔵品目録 絵画「田中有美筆 岩倉公画伝草稿絵巻/三條実美公事蹟絵巻/三條実万公事蹟絵巻」

2. 発行年月日

平成31年3月29日(金)

3. 規格

(1)判   型  A4タテ変形
(2)総頁数  168頁

4. 頒布

三の丸尚蔵館収蔵品目録を入手されたい方は下記までお問い合わせください。
    [連絡先](公財)菊葉文化協会(別ウインドウで開きます)
    ・TEL:03-5222-0012 FAX:03-5222-3530

5. 概要

三の丸尚蔵館は,平成5年秋の開館以来,20年の歴史を刻んで参りました。その中で,多くの名品を中心に,皇室と文化の関わりを様々な視点からとらえて展示公開を行い,国内外からも高い評価を得ております。

これまで,当館の収蔵品を中心に構成してきた展覧会は82回に及びますが,この中では,既に周知の作品以外にも,当館での調査によってその歴史的,美術的重要性を見出し,展覧会の際に制作する図録によって紹介してきました。しかし,対象となる一件の作品に含まれる情報量が膨大なものも多く,図録では図版数の制限もあり,その全容紹介が難しい作品もありました。また,周知の作品であっても,新たな調査による知見を詳細な画像と共に紹介する必要がある作品もありました。こうした作品に対しては,研究者,一般の方々から全容やその詳細の要望も多く寄せられており,その公開をどの様に行っていくかが一つの課題でした。

こうした中,平成27年3月に創刊号として,三の丸尚蔵館収蔵品目録 写真「明治十二年 明治天皇御下命『人物写真帖』」〈上・下〉の刊行を開始しました。この度,その第4号として,田中有美筆《岩倉公画伝草稿絵巻》,《三條実美公事蹟絵巻》,《三條実万公事蹟絵巻》を公開します。

絵巻を制作した田中有美(1839~1933)は,京都で冷泉為恭に大和絵を学んだ画家です。明治維新後,京都から東京に移住した有美は,宮内省の依頼を受けて数多くの皇室関連の作画御用を手がけましたが,中でも費やした年月の長さや作品のボリュームという点で大きな比重を占めているのが,本書で紹介する《岩倉公画伝草稿絵巻》全21巻,《三條実美公事蹟絵巻》全24巻,《三條実万公事蹟絵巻》全15巻です。

明治維新の立役者であり,新政府樹立後も明治天皇の補佐にあたった岩倉具視と三條実美,そして実美の父三條実万。それぞれの生涯の事蹟を物語形式で表わしたこれらの絵巻は,絵画作品として非常に高い完成度を誇るとともに,宮内省が取り組んだ明治の元勲の顕彰事業の成果としても史料的価値が高いと言えます。絵巻は岩倉や三條父子の生涯を追う形をとりながらも,幕末維新の歴史的事件も数多く織り込まれています。まさにその激動の時代を生き抜き,一時は尊王攘夷運動にも身を投じた画家自身によって描かれたという意味でもこれらの絵巻は唯一無二のものです。

田中有美は,二十年に渡って皇室関連の作画御用を専属的に行い,それ以外の仕事を控えていたため,当館の収蔵品をのぞけば現存する作品は多くありません。そうした理由で,有美は知られざる画家となっており,その評価はいまだ不十分であると言わざるを得ません。本書では絵巻の絵の部分だけでなく詞書も含めて,全巻全場面を紹介し,巻末には詞書の翻刻を掲載しました。これにより,これから田中有美の再評価が進むことが期待されます。

今後も,三の丸尚蔵館では収蔵品目録という形で,絵画・書・工芸等様々な分野の作品を取り上げて内容や画像を詳細に紹介していくことにしたいと考えています,その内容は,一つの作品のみを取り上げる場合,複数作品をまとめて1冊で紹介する場合など,様々になると考えられますが,これらが我が国の歴史,美術史の重要な基礎資料として,多くの方々に活用されることを願っています。

第4号

<田中有美筆 岩倉公画伝草稿絵巻/三條実美公事蹟絵巻/三條実万公事蹟絵巻> 1冊

収蔵品目録 写真「各地勝景一 旧江戸城・東京ほか/各地勝景二 北海道開拓・台湾出兵ほか」
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