主な式典におけるおことば(令和5年)

秋篠宮皇嗣殿下のおことば

第63回交通安全国民運動中央大会
令和5年1月18日(水)(新宿文化センター)

 本日、第63回交通安全運動中央大会が3年ぶりに開催され、皆様と共に出席できましたことを誠に喜ばしく思います。
 そして、このたび、日頃の交通安全運動への貢献により表彰を受けられます方々に心からお祝いを申し上げます。

 昨年、交通事故による死亡者は2,610人で、1948年の統計開始以来、最も少ない人数を6年連続で更新しております。このことは、全日本交通安全協会をはじめ、交通安全に関わっている多くの方々の長年にわたるたゆみない努力の賜物と申せましょう。

 しかしながら、いまだに年間2,000人以上もの尊い命が失われ、30万件以上もの交通事故が発生し、そのことによって多くの人々が辛い思いをしています。その中には、高齢者が関係する交通事故も多く発生しており、また、飲酒運転や妨害運転、いわゆる「あおり運転」など、悪質で危険な運転も問題となっております。

 私たちが普段利用する道路上には、日々多くの人や車が往来しており、路上の交通事故は、誰にでも起こり得ることです。一人一人が、交通事故を起こさないよう自覚を持ち、交通道徳を高め、それを実践することが肝要であると考えます。そして、運転者や歩行者がそれぞれ、相手の立場に配慮し、思いやりのある行動をとることが求められております。

 その意味からも、本大会は、関係者が一堂に会して交通安全に関わる諸問題を話し合う大切な機会であり、大変意義深いことと考えます。

 おわりに、本日の受賞者をはじめ、全国の津々浦々で日々交通事故防止に取り組んでおられる皆様のご尽力に深く敬意を表するとともに、交通事故のない安全で安心して暮らせる社会の実現に向け、交通安全運動がさらに進むことを祈念し、大会に寄せる言葉といたします。

「第19回日本学術振興会賞並びに日本学士院学術奨励賞」授賞式
令和5年2月7日(火)(日本学士院会館)

 本日、「第19回日本学術振興会賞並びに日本学士院学術奨励賞」授賞式が3年ぶりに開催され、この場において皆様にお目にかかれましたことを大変嬉しく思います。

 そして本日受賞された皆様に心からお喜びを申し上げます。皆様は、それぞれが専門とされる分野において、研究活動を推進され、大変素晴らしい業績をあげてこられました。このたび、それらの成果に対して賞が贈呈されるに至ったわけですが、この受賞を一つの契機として、今後さらに充実した研究を進められ、世界的に活躍されることを心から願っております。

 学術研究は、研究者の知的関心と探究心、そして柔軟な発想を源とし、真理を追究する知的創造活動と申せましょう。そして、地道に研究を継続することによって新たな知見が獲得され、さらにその先の多様な展開へとつながるものであると考えます。現在、人類社会は、気候変動やそれに伴う自然災害、さまざまな疾病など、多くの困難な課題に直面しております。このような現代社会において、さまざまな課題を解決し、持続的に発展し、人類全体に貢献を行うためには、多様な領域の学術研究を推進していくことが必要不可欠なものとなっております。

 その意味で、これまで我が国の学術研究を支えてこられた日本学術振興会と日本学士院が協力して、人文学、社会科学から自然科学にわたる幅広い分野で若手研究者を顕彰し、その研究意欲をより高め、研究の発展を支援しようとすることには大きな意義を感じます。それとともに、若い世代の研究者が業績をあげていかれることは、学術の発展を期待し、その成果を享受する国民にとっても大変喜ばしいことと言えましょう。
 
 おわりになりますが、関係の皆様のご尽力により、日本の学術研究の進展が一層図られることを心より祈念し、式典に寄せる言葉といたします。

社会福祉法人恩賜財団(※正しくは「恩賜」「財団」を二段組みとして、一文字分の大きさで示したもの。)「令和4年度済生会総会」
令和5年2月12日(日)(パシフィコ横浜ノース)

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一般社団法人JFTD創立70周年記念式典
令和5年4月14日(金)(都市センターホテル)

 一般社団法人JFTDが創立から70周年を迎えるにあたり、全国から集われた皆様と共に本日の記念式典に出席し、お祝いできますことを、誠に喜ばしく思います。

 花キューピットの愛称で知られる一般社団法人JFTDは、1953年、通信による遠隔地への生花配達システムとして、わずか22の加盟店によって創立されました。
 爾来、その基本理念である「親和と誠実」のもと、花による豊かで平和な国づくりと花を贈る文化の普及を目指し、たゆみない努力を続けてこられました。
 そして70年を経た今日、全国約4,100店の会員からなる我が国最大の生花通信配達組織になるとともに、JFTD学園日本フラワーカレッジの運営やフラワーデザインコンテストなどを通じて人材育成を行うなど、花き産業の発展に貢献しておられます。

 近年では、2021年に開催された東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会において、メダリストに授与するビクトリーブーケの制作と提供に、花きの生産、流通、文化の関係者の方々とともに尽力されました。
 また、電気自動車を用いた生花通信配達の実証実験や植物由来の原料約97%を使用した花器の開発など、持続可能な開発目標、いわゆるSDGsについての取り組みを進めておられるとお聞きしています。
 さらに、昨年2022年には、花き業界の横断的組織である全国花みどり協会の設立に大きな役割を果たされ、2027年に横浜市にて開催される国際園芸博覧会に向けて、本格的な取り組みを始められたと伺っております。

 このようにJFTDは、私たちの暮らしに潤いと豊かさをもたらす「花」と「人」とが心を通わせる文化の発信の中心的な役割を担っておられます。それとともに、花を愛でる環境とそれにまつわる文化の普及と定着に積極的に取り組まれていることは、大変意義深いことと申せましょう。

 終わりに、この度の創立70周年を一つの契機として、一般社団法人JFTDが一層発展されることを祈念し、式典に寄せる言葉といたします。

令和5年度日本動物園水族館協会通常総会
令和5年5月23日(火)(ANAクラウンプラザホテル宇部)

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日本植物園協会第58回大会
令和5年5月29日(月)(城西館)

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第34回全国「みどりの愛護」のつどい
令和5年6月3日(土)(北九州ソレイユホール)

 第34回全国「みどりの愛護」のつどいが、玄界灘や有明海、英彦山(ひこさん)三郡山(さんぐんさん)、筑後川や遠賀川(おんががわ)など、豊かな自然環境に恵まれた福岡県において開催され、日頃から緑の保全・育成に携わっておられる皆様とともに出席できましたことを誠に嬉しく思います。そして、花と緑の愛護に顕著な功績のあった団体として、「みどりの愛護」功労者国土交通大臣表彰を受賞された88団体ならびに福岡県都市緑化功労者知事表彰を受賞された28団体の皆様に、心からお祝いを申しあげます。

 この全国「みどりの愛護」のつどいは、広く都市緑化意識の高揚を図り、緑豊かな潤いのある住みよい環境づくりを推進するため、全国の公園緑地の愛護団体や地域の緑化・緑の保全団体などの緑の関係者が一堂に会し、緑を守り育てる国民運動を奨励する行事として実施されてきたものと伺っております。

 さて、我が国は、緑豊かな環境を有し、四季折々に変化していく美しい自然の恵みを享受してきました。そして、その緑は、地球温暖化や災害を防止するとともに、生物の多様性を保全する場になるなど、現在直面している地球規模の様々な環境諸問題へ対処する上で、大切な役割があります。また、美しい景観を形成し、日々の暮らしにゆとりや潤いをもたらしてくれる存在でもあります。

 このように、貴重な緑と、その緑を源とする清らかな水を守るとともに、新たな緑を創り出し、育んでいくためには、多くの人々がその大切さを理解し、幅広く活動に参加していくことが肝要です。その意味で、ただ今表彰を受けられた方々のみどりの愛護活動への取り組みは、大変意義深いものであり、皆様のご尽力に対し深く敬意を表します。
 
 終わりに、この度の「みどりの愛護」のつどいが一つの契機となり、全国から参加された皆様が相互に交流を深め、緑を守り育てる心をさらに高められることを願っております。そして、緑豊かな環境づくりが一層発展していくことを祈念し、本式典に寄せる言葉といたします。

「第25回日本水大賞・2023日本ストックホルム青少年水大賞」表彰式
令和5年6月13日(火)(日本科学未来館)

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「世界水泳選手権2023福岡大会」開会式開会宣言
令和5年7月14日(金)(福岡競艇場)

 このたび、アクアティック・スポーツの祭典、世界水泳選手権が、ここ福岡市において開催され、世界の多くの国と地域から多数の参加者をお迎えできることを誠に喜ばしく思います。
 この機会を通じ、参加される皆さまが、互いに交流を深められ、思い出に残る大会となることを心から願い、ここに「世界水泳選手権2023福岡大会」の開会を宣言いたします。

令和5年度全国高等学校総合体育大会総合開会式
令和5年7月22日(土)(北海きたえーる)

 令和5年度全国高等学校総合体育大会「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」が、全国から多くの参加者を迎え、世界自然遺産の「知床」や、「大雪山」、「釧路湿原」など数々の雄大な自然環境に恵まれたここ北海道をはじめ、山形県、栃木県、和歌山県で開催されることを大変喜ばしく思います。

 インターハイの名で親しまれている全国高等学校総合体育大会は、1963年の第1回大会に始まり、毎年開催されてまいりました。しかるにCOVID-19の感染が拡大したことによって、2020年の大会は中止に、また、一昨年と昨年は、様々な感染防止のための制限を伴う中での開催を余儀なくされました。
 この度は、4年ぶりに、制限のない通常の形態による大会と伺っております。ここに至るまでの間、コロナ禍にあっても感染の防止に様々な工夫を重ねて開催を実現し、インターハイを引き継いでこられた全国の関係者のご尽力に、深く敬意を表します。

 また、本大会に出場する方々は、入学時からコロナ禍の下での高校生活を送ってこられました。この間の部活動や各種大会への出場にあたっては、多くの場面で様々な制約があったことと推察いたします。そのような中、できる限りの努力をされ、今回の出場を果たされたことをお喜び申し上げます。

 さて、インターハイは、高校生のスポーツ技能の向上やスポーツ精神の高揚を図るとともに、生徒相互の親睦を深め、心身ともに健全な青少年の育成を目的としております。そして、各競技に47都道府県の代表が出場する高校生最大のスポーツの祭典であり、その歴史を振り返ってみますと、世界大会やオリンピックなど、国際的な大会に出場した選手の中には、かつてこの大会で活躍した方たちも数多くおられます。

 これから競技に出場される方々には、「轟かせ 魂の鼓動 北の大地へ 大空へ」のスローガンの下、感染症や熱中症の予防に心を配られつつ、日頃の練習の成果を存分に発揮されることを期待しております。

 また、この大会には、各開催道県の多くの高校生が運営に協力をしています。皆様には、各道県で尽力をされている方々とも本大会を通じて交流を深め、高校生活の良き思い出を作られることを願っております。

 終わりに、この度の大会が、選手の活躍と地元高校生を始めとする関係者の協力により、実り多いものとなることを祈念し、開会式に寄せる言葉といたします。

第47回全国高等学校総合文化祭「2023かごしま総文」総合開会式
令和5年7月29日(土)(西原商会アリーナ)

 第47回全国高等学校総合文化祭「2023かごしま総文」が、古来より黒潮に乗って往き来する様々な文化の交流があり、自然、歴史および風土に根ざした多彩な文化・芸術を育んできた、ここ鹿児島の地で開催されます。本日その開会式に、全国各地そして海外から参加された多くの方々と共に出席できましたことを大変嬉しく思います。

 2020年の初頭から現在に至るまでのCOVID-19の感染拡大は、広く文化・芸術活動にも制限がかかるなど、多大な影響を及ぼしました。そのことから、皆様には日々の活動はもちろんのことですが、総文の準備に当たっても多くの不安やご苦労があったことと推察いたします。そのような状況下にあっても、感染防止を図りつつ開催に向けて多くのエネルギーを費やして取り組んでこられたことと思います。生徒実行委員会、全国から集われた高校生、その指導にあたってこられた方々をはじめ、関係者のご尽力に対して心から敬意を表します。そして、今日の日を迎えられましたことをお喜び申し上げます。

 さて、全国高等学校総合文化祭は、文化・芸術活動に取り組む高校生の祭典として、開催地の生徒が主体となって、地域の特性と若い世代ならではの感性を活かした大会づくりがなされてまいりました。1977年の第1回大会から各都道府県持ち回りで開催されてきましたが、本大会をもって47都道府県を一巡したことになります。このような祭典が、次の世代を担う高校生によって長年にわたり毎年開催されていることは、国民の文化・芸術に対する関心や理解をいっそう高めるとともに、多様な才能を開花させ、未来に向けた文化創造の土壌を豊かにする上で、誠に意義深いものと申せましょう。

 今年の大会テーマは、「47の結晶 桜島の気噴(いぶき)にのせ (つむ)げ文化の1ページ」であります。参加される皆様が、日頃の活動の中で培ってこられた創造性を発揮し、それを全国へと発信されることを期待いたします。そして、参加者相互の交流を深めることを通じ、国の内外に友好の輪を広げていかれることを願っております。

 終わりに、「2023かごしま総文」が、皆様の心にいつまでも残る素晴らしい夏のひとときになることを祈念し、開会式に寄せる言葉といたします。

「第35回国際電波科学連合総会」開会式
令和5年8月20日(日)(札幌コンベンションセンター)


It is a great pleasure for me to join so many participants from Japan and abroad attending this opening ceremony of the 35th International Union of Radio Science General Assembly and Scientific Symposium, URSI GASS 2023, being held here in Sapporo, under the main theme of“radio science pioneering a sustainable future”.

URSI is one of the world’s oldest international scientific bodies and the parent organization of this conference. For over 100 years since its foundation in 1919, URSI has been internationally promoting scientific investigations, basic and applied research, and scientific exchange in the various fields of radio science.

My understanding is that radio science extends across basic and applied science and engineering, and is extremely multidisciplinary, involving diverse fields. I believe that international collaboration of the sort promoted and coordinated by URSI is essential in advancing a wide range of research in the multiple disciplines from different perspectives.
I express my deep respect to all those who have engaged in the administration of URSI, and have attained and supported the achievements made so far in radio science.

The evolution of radio science is supporting today’s highly advanced information and communication society, and our daily lives. Wireless communications systems such as mobile phones, television, and satellite navigation enable people around the world to communicate“anytime, anywhere, with anyone”. The use of electromagnetic energy has led to the spread of such applications as microwave ovens, wireless charging, and Magnetic Resonance Imaging, among others. These applications are essential to our present everyday lives.

Furthermore, radio remote sensing used to monitor the environment has enabled prediction and detection of natural hazards, and assessment of the effects of disasters. During disaster relief operations, radio communications are vital for securing emergency communications networks, and for supporting evacuations and confirming the safety of those affected. Radio observations have also enabled space weather prediction, and the investigation of distant astronomical objects.

Therefore, I understand that various initiatives utilizing radio science are also significantly contributing to achieving the Sustainable Development Goals. I hope that at this conference the exchange of diverse knowledge, and presentations to the world of the most advanced research results, will lead to even greater developments.

In closing my address, I hope that radio science will contribute to pioneering our future in the creation of a sustainable society, and that this conference and your stay in Sapporo will be fruitful, meaningful, and enjoyable for you all.

2023年(第33回)福岡アジア文化賞授賞式
令和5年9月12日(火)(福岡国際会議場)

 本日、第33回福岡アジア文化賞授賞式が開催されるにあたり、大賞を受賞されるトンチャイ・ウィニッチャクーン氏、学術研究賞を受賞されるカターリヤ・ウム氏、そして芸術・文化賞を受賞される張 律(Zhāng Lǜ)氏に心からお祝いを申し上げます。

 そして今日、皆様と共に出席し、受賞者それぞれの活動や研究の一端について、この会場でお話を伺うことができますことを誠に嬉しく思います。

 「福岡アジア文化賞」は、古くからアジア各地で受け継がれている多様な文化を尊重し、その保存と継承に貢献するとともに、新たな文化の創造、そしてアジアに関わる学術研究に寄与することを目的として、それらに功績のあった方々を顕彰するものです。そして創設以来、アジアの文化とその価値を世界に示していく上で、本賞が果たしてきた役割には誠に大きなものがあります。

 私自身、東南アジアを中心に、いくつかの国々を訪れ、多様な風土や自然環境によって創り出され、長い期間にわたって育まれてきた各地固有の歴史や言語、民俗、芸術など、文化の豊かさと深さに関心を持ちました。

 そして、それらを記録・保存・継承するとともに、さらに発展させていくことの大切さと、アジアを深く理解するための学術の重要性を強く感じております。このことから、本賞がアジアの文化の価値とそれらについての学術的な側面を伝えていくことは、大変意義の深いことと考えます。

 本日受賞される3名の方々の優れた業績とその意義が、アジアのみならず、広く世界に向けて発信され、また、これらが国際社会全体で共有されることによって、人類の貴重な財産になることと思います。

 おわりに、受賞される皆様に改めてお祝いの意を表しますとともに、この「福岡アジア文化賞」を通じて、アジアの各地に対する理解、そして国際社会の平和と友好が一層促進されていくことを祈念し、授賞式に寄せる言葉といたします。