主な式典におけるおことば(令和5年)

秋篠宮皇嗣殿下のおことば

第63回交通安全国民運動中央大会
令和5年1月18日(水)(新宿文化センター)

 本日、第63回交通安全運動中央大会が3年ぶりに開催され、皆様と共に出席できましたことを誠に喜ばしく思います。
 そして、このたび、日頃の交通安全運動への貢献により表彰を受けられます方々に心からお祝いを申し上げます。

 昨年、交通事故による死亡者は2,610人で、1948年の統計開始以来、最も少ない人数を6年連続で更新しております。このことは、全日本交通安全協会をはじめ、交通安全に関わっている多くの方々の長年にわたるたゆみない努力の賜物と申せましょう。

 しかしながら、いまだに年間2,000人以上もの尊い命が失われ、30万件以上もの交通事故が発生し、そのことによって多くの人々が辛い思いをしています。その中には、高齢者が関係する交通事故も多く発生しており、また、飲酒運転や妨害運転、いわゆる「あおり運転」など、悪質で危険な運転も問題となっております。

 私たちが普段利用する道路上には、日々多くの人や車が往来しており、路上の交通事故は、誰にでも起こり得ることです。一人一人が、交通事故を起こさないよう自覚を持ち、交通道徳を高め、それを実践することが肝要であると考えます。そして、運転者や歩行者がそれぞれ、相手の立場に配慮し、思いやりのある行動をとることが求められております。

 その意味からも、本大会は、関係者が一堂に会して交通安全に関わる諸問題を話し合う大切な機会であり、大変意義深いことと考えます。

 おわりに、本日の受賞者をはじめ、全国の津々浦々で日々交通事故防止に取り組んでおられる皆様のご尽力に深く敬意を表するとともに、交通事故のない安全で安心して暮らせる社会の実現に向け、交通安全運動がさらに進むことを祈念し、大会に寄せる言葉といたします。

「第19回日本学術振興会賞並びに日本学士院学術奨励賞」授賞式
令和5年2月7日(火)(日本学士院会館)

 本日、「第19回日本学術振興会賞並びに日本学士院学術奨励賞」授賞式が3年ぶりに開催され、この場において皆様にお目にかかれましたことを大変嬉しく思います。

 そして本日受賞された皆様に心からお喜びを申し上げます。皆様は、それぞれが専門とされる分野において、研究活動を推進され、大変素晴らしい業績をあげてこられました。このたび、それらの成果に対して賞が贈呈されるに至ったわけですが、この受賞を一つの契機として、今後さらに充実した研究を進められ、世界的に活躍されることを心から願っております。

 学術研究は、研究者の知的関心と探究心、そして柔軟な発想を源とし、真理を追究する知的創造活動と申せましょう。そして、地道に研究を継続することによって新たな知見が獲得され、さらにその先の多様な展開へとつながるものであると考えます。現在、人類社会は、気候変動やそれに伴う自然災害、さまざまな疾病など、多くの困難な課題に直面しております。このような現代社会において、さまざまな課題を解決し、持続的に発展し、人類全体に貢献を行うためには、多様な領域の学術研究を推進していくことが必要不可欠なものとなっております。

 その意味で、これまで我が国の学術研究を支えてこられた日本学術振興会と日本学士院が協力して、人文学、社会科学から自然科学にわたる幅広い分野で若手研究者を顕彰し、その研究意欲をより高め、研究の発展を支援しようとすることには大きな意義を感じます。それとともに、若い世代の研究者が業績をあげていかれることは、学術の発展を期待し、その成果を享受する国民にとっても大変喜ばしいことと言えましょう。
 
 おわりになりますが、関係の皆様のご尽力により、日本の学術研究の進展が一層図られることを心より祈念し、式典に寄せる言葉といたします。

社会福祉法人恩賜財団(※正しくは「恩賜」「財団」を二段組みとして、一文字分の大きさで示したもの。)「令和4年度済生会総会」
令和5年2月12日(日)(パシフィコ横浜ノース)

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一般社団法人JFTD創立70周年記念式典
令和5年4月14日(金)(都市センターホテル)

 一般社団法人JFTDが創立から70周年を迎えるにあたり、全国から集われた皆様と共に本日の記念式典に出席し、お祝いできますことを、誠に喜ばしく思います。

 花キューピットの愛称で知られる一般社団法人JFTDは、1953年、通信による遠隔地への生花配達システムとして、わずか22の加盟店によって創立されました。
 爾来、その基本理念である「親和と誠実」のもと、花による豊かで平和な国づくりと花を贈る文化の普及を目指し、たゆみない努力を続けてこられました。
 そして70年を経た今日、全国約4,100店の会員からなる我が国最大の生花通信配達組織になるとともに、JFTD学園日本フラワーカレッジの運営やフラワーデザインコンテストなどを通じて人材育成を行うなど、花き産業の発展に貢献しておられます。

 近年では、2021年に開催された東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会において、メダリストに授与するビクトリーブーケの制作と提供に、花きの生産、流通、文化の関係者の方々とともに尽力されました。
 また、電気自動車を用いた生花通信配達の実証実験や植物由来の原料約97%を使用した花器の開発など、持続可能な開発目標、いわゆるSDGsについての取り組みを進めておられるとお聞きしています。
 さらに、昨年2022年には、花き業界の横断的組織である全国花みどり協会の設立に大きな役割を果たされ、2027年に横浜市にて開催される国際園芸博覧会に向けて、本格的な取り組みを始められたと伺っております。

 このようにJFTDは、私たちの暮らしに潤いと豊かさをもたらす「花」と「人」とが心を通わせる文化の発信の中心的な役割を担っておられます。それとともに、花を愛でる環境とそれにまつわる文化の普及と定着に積極的に取り組まれていることは、大変意義深いことと申せましょう。

 終わりに、この度の創立70周年を一つの契機として、一般社団法人JFTDが一層発展されることを祈念し、式典に寄せる言葉といたします。

令和5年度日本動物園水族館協会通常総会
令和5年5月23日(火)(ANAクラウンプラザホテル宇部)

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日本植物園協会第58回大会
令和5年5月29日(月)(城西館)

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第34回全国「みどりの愛護」のつどい
令和5年6月3日(土)(北九州ソレイユホール)

 第34回全国「みどりの愛護」のつどいが、玄界灘や有明海、英彦山(ひこさん)三郡山(さんぐんさん)、筑後川や遠賀川(おんががわ)など、豊かな自然環境に恵まれた福岡県において開催され、日頃から緑の保全・育成に携わっておられる皆様とともに出席できましたことを誠に嬉しく思います。そして、花と緑の愛護に顕著な功績のあった団体として、「みどりの愛護」功労者国土交通大臣表彰を受賞された88団体ならびに福岡県都市緑化功労者知事表彰を受賞された28団体の皆様に、心からお祝いを申しあげます。

 この全国「みどりの愛護」のつどいは、広く都市緑化意識の高揚を図り、緑豊かな潤いのある住みよい環境づくりを推進するため、全国の公園緑地の愛護団体や地域の緑化・緑の保全団体などの緑の関係者が一堂に会し、緑を守り育てる国民運動を奨励する行事として実施されてきたものと伺っております。

 さて、我が国は、緑豊かな環境を有し、四季折々に変化していく美しい自然の恵みを享受してきました。そして、その緑は、地球温暖化や災害を防止するとともに、生物の多様性を保全する場になるなど、現在直面している地球規模の様々な環境諸問題へ対処する上で、大切な役割があります。また、美しい景観を形成し、日々の暮らしにゆとりや潤いをもたらしてくれる存在でもあります。

 このように、貴重な緑と、その緑を源とする清らかな水を守るとともに、新たな緑を創り出し、育んでいくためには、多くの人々がその大切さを理解し、幅広く活動に参加していくことが肝要です。その意味で、ただ今表彰を受けられた方々のみどりの愛護活動への取り組みは、大変意義深いものであり、皆様のご尽力に対し深く敬意を表します。
 
 終わりに、この度の「みどりの愛護」のつどいが一つの契機となり、全国から参加された皆様が相互に交流を深め、緑を守り育てる心をさらに高められることを願っております。そして、緑豊かな環境づくりが一層発展していくことを祈念し、本式典に寄せる言葉といたします。

「第25回日本水大賞・2023日本ストックホルム青少年水大賞」表彰式
令和5年6月13日(火)(日本科学未来館)

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「世界水泳選手権2023福岡大会」開会式開会宣言
令和5年7月14日(金)(福岡競艇場)

 このたび、アクアティック・スポーツの祭典、世界水泳選手権が、ここ福岡市において開催され、世界の多くの国と地域から多数の参加者をお迎えできることを誠に喜ばしく思います。
 この機会を通じ、参加される皆さまが、互いに交流を深められ、思い出に残る大会となることを心から願い、ここに「世界水泳選手権2023福岡大会」の開会を宣言いたします。

令和5年度全国高等学校総合体育大会総合開会式
令和5年7月22日(土)(北海きたえーる)

 令和5年度全国高等学校総合体育大会「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」が、全国から多くの参加者を迎え、世界自然遺産の「知床」や、「大雪山」、「釧路湿原」など数々の雄大な自然環境に恵まれたここ北海道をはじめ、山形県、栃木県、和歌山県で開催されることを大変喜ばしく思います。

 インターハイの名で親しまれている全国高等学校総合体育大会は、1963年の第1回大会に始まり、毎年開催されてまいりました。しかるにCOVID-19の感染が拡大したことによって、2020年の大会は中止に、また、一昨年と昨年は、様々な感染防止のための制限を伴う中での開催を余儀なくされました。
 この度は、4年ぶりに、制限のない通常の形態による大会と伺っております。ここに至るまでの間、コロナ禍にあっても感染の防止に様々な工夫を重ねて開催を実現し、インターハイを引き継いでこられた全国の関係者のご尽力に、深く敬意を表します。

 また、本大会に出場する方々は、入学時からコロナ禍の下での高校生活を送ってこられました。この間の部活動や各種大会への出場にあたっては、多くの場面で様々な制約があったことと推察いたします。そのような中、できる限りの努力をされ、今回の出場を果たされたことをお喜び申し上げます。

 さて、インターハイは、高校生のスポーツ技能の向上やスポーツ精神の高揚を図るとともに、生徒相互の親睦を深め、心身ともに健全な青少年の育成を目的としております。そして、各競技に47都道府県の代表が出場する高校生最大のスポーツの祭典であり、その歴史を振り返ってみますと、世界大会やオリンピックなど、国際的な大会に出場した選手の中には、かつてこの大会で活躍した方たちも数多くおられます。

 これから競技に出場される方々には、「轟かせ 魂の鼓動 北の大地へ 大空へ」のスローガンの下、感染症や熱中症の予防に心を配られつつ、日頃の練習の成果を存分に発揮されることを期待しております。

 また、この大会には、各開催道県の多くの高校生が運営に協力をしています。皆様には、各道県で尽力をされている方々とも本大会を通じて交流を深め、高校生活の良き思い出を作られることを願っております。

 終わりに、この度の大会が、選手の活躍と地元高校生を始めとする関係者の協力により、実り多いものとなることを祈念し、開会式に寄せる言葉といたします。

第47回全国高等学校総合文化祭「2023かごしま総文」総合開会式
令和5年7月29日(土)(西原商会アリーナ)

 第47回全国高等学校総合文化祭「2023かごしま総文」が、古来より黒潮に乗って往き来する様々な文化の交流があり、自然、歴史および風土に根ざした多彩な文化・芸術を育んできた、ここ鹿児島の地で開催されます。本日その開会式に、全国各地そして海外から参加された多くの方々と共に出席できましたことを大変嬉しく思います。

 2020年の初頭から現在に至るまでのCOVID-19の感染拡大は、広く文化・芸術活動にも制限がかかるなど、多大な影響を及ぼしました。そのことから、皆様には日々の活動はもちろんのことですが、総文の準備に当たっても多くの不安やご苦労があったことと推察いたします。そのような状況下にあっても、感染防止を図りつつ開催に向けて多くのエネルギーを費やして取り組んでこられたことと思います。生徒実行委員会、全国から集われた高校生、その指導にあたってこられた方々をはじめ、関係者のご尽力に対して心から敬意を表します。そして、今日の日を迎えられましたことをお喜び申し上げます。

 さて、全国高等学校総合文化祭は、文化・芸術活動に取り組む高校生の祭典として、開催地の生徒が主体となって、地域の特性と若い世代ならではの感性を活かした大会づくりがなされてまいりました。1977年の第1回大会から各都道府県持ち回りで開催されてきましたが、本大会をもって47都道府県を一巡したことになります。このような祭典が、次の世代を担う高校生によって長年にわたり毎年開催されていることは、国民の文化・芸術に対する関心や理解をいっそう高めるとともに、多様な才能を開花させ、未来に向けた文化創造の土壌を豊かにする上で、誠に意義深いものと申せましょう。

 今年の大会テーマは、「47の結晶 桜島の気噴(いぶき)にのせ (つむ)げ文化の1ページ」であります。参加される皆様が、日頃の活動の中で培ってこられた創造性を発揮し、それを全国へと発信されることを期待いたします。そして、参加者相互の交流を深めることを通じ、国の内外に友好の輪を広げていかれることを願っております。

 終わりに、「2023かごしま総文」が、皆様の心にいつまでも残る素晴らしい夏のひとときになることを祈念し、開会式に寄せる言葉といたします。

「第35回国際電波科学連合総会」開会式
令和5年8月20日(日)(札幌コンベンションセンター)


It is a great pleasure for me to join so many participants from Japan and abroad attending this opening ceremony of the 35th International Union of Radio Science General Assembly and Scientific Symposium, URSI GASS 2023, being held here in Sapporo, under the main theme of“radio science pioneering a sustainable future”.

URSI is one of the world’s oldest international scientific bodies and the parent organization of this conference. For over 100 years since its foundation in 1919, URSI has been internationally promoting scientific investigations, basic and applied research, and scientific exchange in the various fields of radio science.

My understanding is that radio science extends across basic and applied science and engineering, and is extremely multidisciplinary, involving diverse fields. I believe that international collaboration of the sort promoted and coordinated by URSI is essential in advancing a wide range of research in the multiple disciplines from different perspectives.
I express my deep respect to all those who have engaged in the administration of URSI, and have attained and supported the achievements made so far in radio science.

The evolution of radio science is supporting today’s highly advanced information and communication society, and our daily lives. Wireless communications systems such as mobile phones, television, and satellite navigation enable people around the world to communicate“anytime, anywhere, with anyone”. The use of electromagnetic energy has led to the spread of such applications as microwave ovens, wireless charging, and Magnetic Resonance Imaging, among others. These applications are essential to our present everyday lives.

Furthermore, radio remote sensing used to monitor the environment has enabled prediction and detection of natural hazards, and assessment of the effects of disasters. During disaster relief operations, radio communications are vital for securing emergency communications networks, and for supporting evacuations and confirming the safety of those affected. Radio observations have also enabled space weather prediction, and the investigation of distant astronomical objects.

Therefore, I understand that various initiatives utilizing radio science are also significantly contributing to achieving the Sustainable Development Goals. I hope that at this conference the exchange of diverse knowledge, and presentations to the world of the most advanced research results, will lead to even greater developments.

In closing my address, I hope that radio science will contribute to pioneering our future in the creation of a sustainable society, and that this conference and your stay in Sapporo will be fruitful, meaningful, and enjoyable for you all.

2023年(第33回)福岡アジア文化賞授賞式
令和5年9月12日(火)(福岡国際会議場)

 本日、第33回福岡アジア文化賞授賞式が開催されるにあたり、大賞を受賞されるトンチャイ・ウィニッチャクーン氏、学術研究賞を受賞されるカターリヤ・ウム氏、そして芸術・文化賞を受賞される張 律(Zhāng Lǜ)氏に心からお祝いを申し上げます。

 そして今日、皆様と共に出席し、受賞者それぞれの活動や研究の一端について、この会場でお話を伺うことができますことを誠に嬉しく思います。

 「福岡アジア文化賞」は、古くからアジア各地で受け継がれている多様な文化を尊重し、その保存と継承に貢献するとともに、新たな文化の創造、そしてアジアに関わる学術研究に寄与することを目的として、それらに功績のあった方々を顕彰するものです。そして創設以来、アジアの文化とその価値を世界に示していく上で、本賞が果たしてきた役割には誠に大きなものがあります。

 私自身、東南アジアを中心に、いくつかの国々を訪れ、多様な風土や自然環境によって創り出され、長い期間にわたって育まれてきた各地固有の歴史や言語、民俗、芸術など、文化の豊かさと深さに関心を持ちました。

 そして、それらを記録・保存・継承するとともに、さらに発展させていくことの大切さと、アジアを深く理解するための学術の重要性を強く感じております。このことから、本賞がアジアの文化の価値とそれらについての学術的な側面を伝えていくことは、大変意義の深いことと考えます。

 本日受賞される3名の方々の優れた業績とその意義が、アジアのみならず、広く世界に向けて発信され、また、これらが国際社会全体で共有されることによって、人類の貴重な財産になることと思います。

 おわりに、受賞される皆様に改めてお祝いの意を表しますとともに、この「福岡アジア文化賞」を通じて、アジアの各地に対する理解、そして国際社会の平和と友好が一層促進されていくことを祈念し、授賞式に寄せる言葉といたします。

第19回アジア競技大会(2022/杭州)TEAM JAPAN 結団式
令和5年9月15日(金)(グランドプリンスホテル新高輪/東京都港区)

 来る9月23日から、第19回アジア競技大会が、中華人民共和国の杭州市を中心に開催されます。
 本日、この大会に参加される選手ならびに監督やコーチ、メディカルスタッフなど、TEAM JAPAN の皆様とお会いできましたことを誠に嬉しく思います。

 本大会は、COVID-19の影響により1年延期されました。そのため、皆様には、アスリートとして、最良の状態を維持していくため、大変なご努力をされたことと推察いたします。そのような状況を乗り越え、TEAM JAPAN の一員として、この結団式に臨まれたことを心からお喜び申し上げます。

 中華人民共和国で開催されるアジア競技大会は、1990年の北京大会、2010年の広州大会に続き、今大会が3回目となります。また、前回のジャカルタ/パレンバン大会を上回る40競技481種目が実施されると伺っております。

 皆様には、体調管理に十分留意をされるとともに、競技の場に臨んでは、日頃の練習の成果を存分に発揮されることを期待しております。
 また、杭州の地において、アジア各国・地域の人々との交流を深められ、スポーツを通じての国際親善に努められることを願っております。

 終わりに、皆様のご活躍を祈念し、TEAM JAPAN の結団式に寄せる言葉といたします。

2023年(第32回)ブループラネット賞表彰式典
令和5年10月4日(水)(東京會舘)

 本日、第32回ブループラネット賞表彰式典において、栄えある賞を受賞されました、英国のRichard Thompson教授、Tamara Galloway教授、Penelope Lindeque教授のグループ、ならびにベルギーの Debarati Guha-Sapir 教授に心からお祝いを申し上げます。

 このたび受賞されたRichard Thompson教授、Tamara Galloway教授、Penelope Lindeque教授のグループは、海洋中のマイクロプラスチックを発見し、海洋の食物網(しょくもつもう)の底辺にある動物プランクトンが、それらを摂取していることを初めて実証され、汚染が広範囲にわたっていることを示されました。そして、このように深刻化した海洋のプラスチック汚染の解決策を講じるよう国際社会に呼びかけ、マイクロビーズを含む製品の使用を禁止する世界的な動きにつなげられました。

 またDebarati Guha-Sapir 教授は、気候変動や地球物理学的、生物学的、人道的など、様々な要因によって起こる、世界の大規模災害に関する初のデータインフラであるEmergency Events Database、EM(エム)-DAT(ダット)を創出するとともに、その開発を主導されました。EM-DATは、信頼できる客観的な証拠に基づく政策立案に欠かせない科学的なデータの基礎となるもので、多くの国際機関をはじめ、各国の政府や研究機関などにおいて、気候変動への対応や防災・減災の取り組みに用いられております。

 本年の受賞者が、旺盛な探求心と卓越した行動力、そして強い熱意を持ち続け、長年にわたって現代文明や社会に警鐘を鳴らし、人々のこれからの活動のあり方に道筋を示してこられたことは、誠に意義深いことであります。本日の受賞者をはじめ、環境問題に熱心に取り組む方々のご尽力によって、持続可能な地球環境とよりよい人々の生活が実現されることを願っております。

 おわりに、すばらしい業績をあげられました本年の受賞者に改めて敬意を表しますとともに、ブループラネット賞が世界の人々の環境への意識を高め、それに伴う積極的な行動をうながす契機のひとつになりますことを祈念し、第32回ブループラネット賞表彰式典に寄せる言葉といたします。

第63回海外日系人大会開会式
令和5年10月16日(月)(JICA市ヶ谷ビル)

 第63回海外日系人大会が、2019年以来4年ぶりに対面で開催され、本日、皆様とともに出席できましたことを誠に嬉しく思います。

 COVID-19のパンデミック以降を振り返ってみますと、2020年は取り止めとなり、その後の2回の大会は、オンラインでの開催になりました。そして今回は、待望の対面開催の再開に加え、この開会式の様子はオンラインでも世界に配信されています。改めてコロナ禍で得られた学びを生かし、日系社会の繋がりが新たな時代に入ったことを実感しております。

 世界の日系社会においても、このパンデミックの(かん)、さまざまな活動に制限がありました。そのような困難な状況を打破するため、若い世代の人々が中心となって、オンライン技術を駆使したイベントやセミナーなどが開催され、地域や国境を越えた新たな連携が生まれたと伺っております。そして、近年の新しい動きとして、日本の文化に関心を持ち、積極的に日系社会の活動に参加する日系以外の人々が増えていることは、誠に喜ばしいことと申せましょう。

 本年の大会では、「飛躍するニッケイ社会へ-期待される新世代のイニシアティブ」をテーマとして開催されます。そして、日系以外の人たちにも開かれた日系社会の変化を念頭に置きつつ、コロナ禍でその活躍ぶりが光った新世代に焦点を当て、今後の日系社会や日系団体がますます発展していくための方途について、さまざまな視点からの議論が行われると伺っております。3日間にわたるプログラムの中では、新世代からの発表や報告も数多く予定されていることを大変心強く感じます。

 本日からの3日間、会場で参加されている皆様と、世界の各地からオンラインで参加されている方々が一緒になり、日系社会のさらなる飛躍に向けて地域や世代、更には日系・非日系の違いを超えて広がりのある活発な議論が展開されることを期待いたします。

 おわりに、このたびの大会を通じて、世界各地の日系社会間、ならびに日系社会と日本を結ぶ絆が今まで以上に深まるとともに、皆様が各方面において一層の活躍をされることを心より祈念し、開会式に寄せる言葉といたします。

特別全国障害者スポーツ大会開会式
令和5年10月28日(土)(鹿児島県立鴨池陸上競技場(白波スタジアム))

 本日、特別全国障害者スポーツ大会「燃ゆる感動かごしま大会」の開会式が開催され、全国各地から参加された選手、役員、そして開催地の皆様と共に出席できましたことを大変うれしく思います。

 本大会は、当初、3年前の2020年に開催される予定でした。しかるに、COVID-19のパンデミックのため延期され、この度、後催県や関係団体の理解と協力を得て、「特別全国障害者スポーツ大会」として開催されることになったと伺っております。今日に至るまでの間、多くの制約や様々な困難がある中で、大会開催に向けて力を尽くしてこられた方々に深く敬意を表します。

 さて、2001年に、「全国身体障害者スポーツ大会」と「全国知的障害者スポーツ大会」が統合され、「全国障害者スポーツ大会」として第1回の大会が開催されました。本大会は、障害のある選手がスポーツを通してその楽しさを体験するとともに、国民の障害に対する理解を深め、障害者の社会参加の推進に寄与することを開催目的としています。

 この度の大会に参加される選手の皆様には、日頃の練習の成果を存分に発揮されるとともに、ここ鹿児島の地で、全国各地から集われた選手同士、また、多くのボランティアや地元の方々との交流を深められ、たくさんの良い思い出を作っていただきたいと思います。

 そして、大会スローガンである「熱い鼓動 風は南から」の下、「コロナ禍からの再生と飛躍」を象徴する大会として、障害のある人もない人も、スポーツを通じてふれあいの絆を深め、多くの人々の心に残る、実り多い大会になることを願っております。

 おわりに、この大会が、我が国の障害者スポーツの普及と振興に寄与するとともに、障害のある人々に対する理解がさらに広がることを期待いたします。そして、障害者の社会参加が一層促進される一つの契機になることを祈念し、開会式に寄せる言葉といたします。

大日本山林会「第62回農林水産祭参加全国林業経営推奨行事賞状伝達贈呈式」
令和5年11月2日(木)(イイノホール)

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第46回全国育樹祭式典行事
令和5年11月12日(日)(アダストリアみとアリーナ)

 第46回全国育樹祭が、ここ茨城県において「誰かじゃない 僕が育てる 緑の日本」のテーマのもと、全国各地から多くの参加者を迎えて開催されますことを誠に喜ばしく思います。
 本日表彰を受けられる方々に心からお祝いを申し上げます。

 全国育樹祭は、継続して森を守り育てることの大切さを普及啓発するため、1977年から開催されておりますが、本県は、大日本山林会と各府県山林会の共催による、全国的な植樹行事、「愛林日」の催しが初めて行われた地でもあります。1933年、森林資源の充実を見据え、樹木と森林を大切にし、植林を増進する目的で全国一斉の行事を催すことが提唱され、その翌年に筑波山麓で開催されました。そして時を経て、この行事が全国植樹祭、全国育樹祭へと引き継がれていることに、深い感慨を覚えます。

 昨日、私は、2005年の第56回全国植樹祭が行われた茨城県水郷県民の森において、当時の天皇皇后両陛下が植樹された、タブノキとヤマボウシの手入れを行いました。18年の歳月を経て、健やかに成長している姿を目にすることができましたことを大変嬉しく思いました。

 この森は、コナラやクヌギに代表される落葉樹やシイ、カシなどの照葉樹が見られる貴重な平地林として人々に親しまれるとともに、多くのボランティアの方々によって大切に維持されていると伺いました。

 また本県では、先端技術を活用したスマート林業の推進や建築物の木造化などを通じ、林業の育成にも取り組んでいるとのことです。

 森林は、国土の保全や水源の涵養、木材や特用林産物の供給などを通じ、私たちの暮らしに必要なものや豊かさをもたらしています。また、CO2の吸収源や生物の多様性を維持していく場としてなど、地球環境を守る上でも重要な役割を果たしております。このように、かけがえのない豊かな森林を維持し、その豊富な資源を有効に活用するとともに、健全な姿で後世へと引き継いでいくことは、私たちに課せられた大切な務めでありましょう。

 その意味からも、本日表彰を受けられる方々をはじめ、日頃からそれぞれの地域において国土緑化に力を尽くされている全国の皆様に深く敬意を表しますとともに、このような活動が、今後も多くの人々に支えられ、一層発展していくことを期待いたしております。

 おわりに、本大会が緑と森林の大切さを考えるひとつの契機となり、未来に繋がる新しい林業の姿が、ここ茨城の地から全国へと発信されることを祈念し、本式典に寄せる言葉といたします。

大日本農会「令和5年度農事功績者表彰式」
令和5年11月15日(水)(赤坂インターシティAIR)

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大日本水産会「令和5年度水産功績者表彰式」
令和5年11月22日(水)(赤坂インターシティAIR)

 本日、大日本水産会「令和5年度水産功績者表彰式」が開催され、長年にわたる水産業への功績に対して表彰を受けられる皆様に、心からお喜びを申しあげます。
 また、幼少の頃より魚をはじめとする水族に親しんできた私にとり、全国各地で水産業に深く携わっておられる皆様とお会いできましたことを大変嬉しく思います。

 四方を海に囲まれ、また、湖沼や湧水、清流に恵まれている我が国では、かねてより漁業や養殖業が盛んで、それに伴って、関連する加工業や流通業が発展してまいりました。水産業は、ことのほか鮮度と安定的な供給が求められる産業です。長年にわたり、これら各分野の振興に力を尽くしてこられた皆様には、さまざまなご苦労があったことと推察し、深く敬意を表します。

 我が国では、貝塚などから出土する遺存体からもわかるように、古来より魚介類が身近で貴重なタンパク源として親しまれてまいりました。さらに、昨今の健康志向もあり、カルシウムをはじめとするミネラルのほか、DHAやEPA等が含まれた魚介類に対する関心が高まっております。

 いっぽう、最近の我が国の水産業を取り巻く状況に目を向けますと、海洋環境の変化による水産資源の減少や漁業の後継者不足、燃料・資機材・餌飼料の高騰、また、高船齢漁船の代船建造、さらには省エネ化・省力化・省人化への対応など、さまざまな課題が山積しており、それらの解決のため、政府や水産業界、そしてそれぞれの現場における取り組みが、日々行われていると伺っております。

 このような状況のもと、今回で107回目をむかえ、総受章者数3,336名を数える大日本水産会の重要な事業である本表彰事業が、日本の水産業の維持と発展のために大きく寄与する一つの契機になることを期待いたします。
 そして、本日表彰を受けられる方々がその一翼を担われつつ、これからもお元気で活躍されますことを願っております。

 おわりに、1882年に創立され140年余の歴史を有する大日本水産会が、今後ますます発展し、我が国の水産業の振興に一層の貢献をされることを祈念し、本式典に寄せる言葉といたします。

第39回国際生物学賞授賞式
令和5年12月14日(木)(明治記念館)

 「国際生物学賞」は、昭和天皇の長年にわたる生物学へのご貢献を顕彰するため、1985年のご在位60年の機会に創設されました。そして、本賞の発展に寄与されてきた上皇陛下のご研究を記念した、生物学の奨励を目的とする賞であります。
 39回目を迎えた本年は、ケンブリッジ大学アル・キンディー教授のリチャード・ダービン(Richard Durbin)博士が受賞されました。ここに心からお慶びを申し上げます。

 第39回は「ゲノム生物学」が贈賞の対象分野であります。ダービン教授は、生物学と情報学の融合領域であるバイオインフォマティクス分野の先駆者の一人として、ゲノム配列の背後に隠された様々な生物学的情報を読み解くために不可欠な情報解析手法、データベース、データフォーマット、解析ソフトウェアなどを次々に開発してこられました。これらは、ゲノム科学研究において欠くことができないものとなり、生物学全般の発展にも大きく寄与しました。

 また、ダービン教授が開発された情報解析手法は、人類がアフリカで誕生した後にたどった移動の歴史など、集団遺伝学の理論や手法開発にも活用されるとともに、動植物の考古学などの分野にも大きく貢献しております。

 さらにダービン教授は、ゲノム配列が最初に明らかにされた線虫や、ヒトゲノム配列中の全タンパク質コード遺伝子などの、ゲノム生物学分野のマイルストーンとも呼ぶべき解析プロジェクトの中核も担ってこられました。アフリカのシクリッドの種分化研究を始め、地球上に存在する生物多様性の解明に向けた網羅的ゲノム配列解析を目指す国際プロジェクトにおいても、強力なリーダーシップを発揮しておられます。

 ダービン教授のこれまでのご研究によって、ゲノム生物学は重要な発展を遂げました。このことは、ひとえに教授が研究者として収められた数々の業績によるものであり、ここに深く敬意を表します。

 最後になりますが、ダービン教授のご研究が今後さらに発展するとともに、国際生物学賞がこれからの生物学研究に大きく寄与することを祈念し、お祝いの言葉といたします。