天皇皇后両陛下のご活動

国事行為などのご公務

天皇陛下
ご執務になる天皇陛下(宮殿)

天皇陛下は、内閣の助言と承認により、国民のために、憲法の定める国事に関する行為を行われます。その中には、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命すること、内閣の指名に基づいて最高裁判所長官を任命すること、国務大臣その他の官吏の任免を認証すること、国会を召集すること、法律や条約を公布すること、栄典を授与すること、大使の信任状を認証すること、外国の大公使を接受することなどが含まれています。これらの事項についての閣議決定の書類は、毎回、閣議の後に陛下のお手元に届けられ、陛下は、これを丁寧にご覧になった上で、ご署名やご押印をなさいます。その数は、令和5年は895件になりました。さらに、陛下は、これらの国事行為に関連して、国会開会式に毎回ご出席になるほか、宮殿で行われる儀式に臨まれます。これらの儀式には、内閣総理大臣及び最高裁判所長官の親任式、認証官任命式、外国特命全権大使の信任状捧呈式、勲章親授式などがあります。

宮殿及び御所においては、これらの儀式をはじめ、拝謁、ご会見、茶会、午餐、晩餐など、両陛下ご主催のさまざまな行事が令和5年中に240件行われました。これらの行事は、社会のさまざまな分野で地道な努力を続けている人々を励まし、顕著な功績を挙げた人々をおねぎらいになることを目的としたものが多く、その機会に、国会議員・閣僚・各省幹部・裁判官をはじめ法秩序維持に携わる人々、医師・看護師ほか医療・社会福祉関係者、勲章・文化勲章受章者、学士院賞・芸術院賞受賞者など各界各層の多数の人々とお会いになられます。また、国際親善を目的として、国賓のための晩餐や、その他外国要人などのためのご会見、ご引見、午餐も行われます。外国からの大使には離任の際にもお会いになり、令和5年では11か国にのぼります。

また、我が国から外国に派遣される大使についても、赴任前に一人一人にお会いになります。その他外国元首とのご親書・ご親電の交換があり、ご親電の数は令和5年は429件ありました。

なお、両陛下からは、地震・台風等国内での災害に際してのお見舞い金、社会事業団体に対する賜金、国家・社会に功労があった人が死去した際の祭粢料などのご下賜があります。

皇后陛下は令和元年5月に日本赤十字社の名誉総裁にご就任になりました。

行幸啓

両陛下の東京都内でのお出ましは、毎年恒例のものとして、全国戦没者追悼式、日本学士院授賞式、日本芸術院授賞式、日本国際賞授賞式などがあります。皇后陛下は、日本赤十字社名誉総裁として、全国赤十字大会とフローレンス・ナイチンゲール記章授与式(隔年)にご出席になっています。

地方へのお出ましは、毎年、全国植樹祭、国民体育大会、全国豊かな海づくり大会、国民文化祭及び全国障害者芸術・文化祭にご出席のための地方行幸啓が4回あり、行幸啓の際には、あわせて地方事情をご視察になられているほか、国際学会ご出席のための行幸啓もあります。

さらに、こどもの日、敬老の日、障害者週間にちなんで関連施設をご訪問になっておられます。

近年では、新型コロナウイルス感染症の影響から実際に現地をご訪問になることが難しい場合に、オンラインを有効活用して、これらの式典や大会にご出席になっているほか、離島や中山間地域などの遠隔地の施設についても、オンラインで結ぶことにより、現地の方々のお話をお聴きになり、ご交流をなさっています。

両陛下は、皇太子同妃両殿下時代から、全国各地で発生した台風・豪雨等による自然災害、阪神淡路大震災や東日本大震災の被災地に赴かれています。ご即位後の令和元年12月には、同年に発生した台風第19号等による被災地(宮城県及び福島県)に赴かれ、被災者をお見舞いになるとともに、救援活動に携わる人々を励まされました。令和3年には、オンラインを活用し、令和2年7月豪雨の被災地をお見舞いになるために熊本県を、また、東日本大震災からの復興状況をご視察になるために、岩手県、宮城県及び福島県をそれぞれご訪問になりました。その後も、両陛下には、赴かれた被災地を始めとする各被災地域の方々の身を案じられ、復興状況にも深いご関心をお寄せになっておられます。

天皇皇后両陛下
障害者週間にちなみ株式会社サンキュウ・ウィズをご訪問になる天皇皇后両陛下
(株式会社サンキュウ・ウィズ)
第49回フローレンス・ナイチンゲール記章授与式で章記と記章をご授与になる皇后陛下
(東京プリンスホテル)
第42回全国豊かな海づくり大会海上歓迎行事にご臨席になる天皇皇后両陛下
(厚岸漁港(厚岸町))
高田松原津波復興祈念公園内 奇跡の一本松をご視察になる天皇皇后両陛下
(陸前高田市)

外国ご訪問

天皇皇后両陛下は、外国政府の招待を受けて国際親善のため外国をご訪問になるほか、外国王族のご葬儀にご参列などの機会に外国に赴かれます。

ご訪問の際は、その国の元首をはじめとする各界各層の人々と広くお会いになり、各地で、歴史・文化・産業・社会福祉・教育などに関係する施設をご訪問になり、関係者とご交流になっておられます。

伝統文化の継承

和歌は長く皇室の伝統として重んぜられ、両陛下は折に触れ、歌をお詠みになります。毎年1月、宮中では、鎌倉時代中期に始められたと言われる歌会始の儀が行われ、ここでは、全国から詠進された和歌の中から選ばれた十首が、両陛下の御製(ぎょせい)・御歌(みうた)などとともに、伝統に則り披講されます。

毎年1月、両陛下は明治2年に遡る講書始の儀に臨まれ、人文科学、社会科学、自然科学の各分野における学問の権威者からご進講をお受けになります。

その他、正倉院や京都東山御文庫などに収蔵されている宝物や御物は勅封によって保存されています。

お田植えをなさる天皇陛下(皇居内生物学研究所)
ご給桑をなさる皇后陛下(紅葉山御養蚕所)

天皇陛下は、我が国の農耕文化の中心である稲作について、昭和天皇のお始めになった行事を上皇陛下からお引継ぎになりました。春には種籾をお手まきになり、初夏にお田植えをなさり、秋にはお稲刈りをなさいます。

皇后陛下は、昭憲皇太后が明治4年にお始めになったご養蚕を上皇后陛下からお引継ぎになりました。皇居内の紅葉山御養蚕所で、春から初夏にかけて、掃立て・給桑(きゅうそう)・上蔟(じょうぞく)、繭かきなど養蚕の各段階の作業を行われ、日本在来品種「小石丸」を始めとした家蚕を育てられています。また、屋外で天蚕も飼育されています。長年飼育されて来た「小石丸」の繭糸は、正倉院宝物の絹織物の復元に最もふさわしい糸であることが確認され、上皇后陛下は平成6年(1994年)から平成21年(2009年)まで、正倉院にお贈りになり、貴重な古代裂の あしぎぬあやにしき等の復元がなされてきました。また、平成17年(2005年)には、鎌倉時代の絵巻「春日権現験記絵」(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)の表紙裂と巻緒の修復のためにもお贈りになりました。

宮中祭祀

天皇皇后両陛下は、宮中三殿(賢所、皇霊殿、神殿)における祭祀を大切にしてこられました。古くから伝えられる祭儀を忠実に受け継がれ、常に、国民の幸せを祈っておられます。

御所でのご生活

両陛下は、令和3年9月、長年にわたりお過ごしになった赤坂御用地から皇居吹上御苑内にある御所にご移居されました。宮殿での公式行事のほかに、御所においても、公式行事に臨まれるほか、内外の諸情勢、学術や芸術文化の現状、災害復旧の状況、各種行事や式典の概要などについて、しばしば関係者のご進講・ご説明をお受けになり、ご懇談の機会を持っておられます。

ご研究など

天皇陛下は、皇太子殿下でいらっしゃった時期の平成4年4月から、平成31年3月まで、学習院大学史料館客員研究員の委嘱をお受けになり、日本中世史のご研究をお続けになっています。また、平成15年に学習院女子大学で「北米文化の源流・イギリスの社会と文化について」と題するご講義をなさって以来、平成31年まで、同大学において、ほぼ毎年、さまざまなテーマでご講義をなさいました。

水問題については、平成15年3月に名誉総裁としてご臨席になった第3回世界水フォーラムの開会式において「京都と地方を結ぶ水の道-古代・中世の琵琶湖・淀川水運を中心として-」と題した記念講演をなさって以来、平成18年3月にメキシコをご訪問になった際には第4回世界水フォーラム全体会合において「江戸と水運」と題した基調講演を、平成19年12月には第1回アジア・太平洋水サミット開会式において「人と水-日本からアジア太平洋地域へ-」と題した記念講演を、 平成20年7月にスペインをご訪問になった際には2008年サラゴサ国際博覧会「水の論壇」シンポジウムにおいて「水との共存-人々の知恵と工夫-」と題した特別講演を、平成21年3月にトルコで開催された第5回世界水フォーラムにおいて「水とかかわる-人と水との密接なつながり-」と題した基調講演をなさり、平成24年3月にはフランスで開催された第6回世界水フォーラムにおいて「水と災害-津波の歴史から学ぶ-」と題したビデオメッセージが上映されました。平成25年3月にはアメリカ合衆国で開催された国連「水と災害に関する特別会合」において「人と水災害の歴史を辿る-災害に強い社会の構築のための手掛かりを求めて-」と題した基調講演をなさり、平成27年4月には韓国で開催された第7回世界水フォーラムにおいて「人々の水への想いをかなえる-科学技術を通じた水と人との関わり-」と題したビデオメッセージが上映されました。平成27年11月にはアメリカ合衆国で開催された国連「水と災害に関する特別会合」において「人と水とのより良い関わりを求めて」と題した基調講演をなさり、平成29年7月にはアメリカ合衆国で開催された国連「水と災害に関する特別会合」において「水に働きかける」と題したビデオメッセージが上映されました。平成30年3月にはブラジルで開催された第8回世界水フォーラム「水と災害」ハイレベルパネルにおいて「繁栄・平和・幸福のための水」と題した基調講演をなさり、平成31年4月には水問題についての講演の記録を収載した「水運史から世界の水へ」を刊行されました。御即位後においても、令和3年6月にオンライン形式で行われた第5回国連水と災害に関する特別会合において「災害の記憶を伝える-より強靭で持続可能な社会の構築に向けて-」と題した基調講演をなさり、令和4年4月には熊本県で開催された第4回アジア・太平洋水サミットの開会式において、オンラインにて「人の心と水-信仰の中の水に触れる-」と題した記念講演をなさいました。

また、英国ご修学中のご研究の成果を英文で「The Thames as Highway(交通路としてのテムズ川)」としておまとめになり、平成元年4月に刊行されました。さらに、平成3年9月、オックスフォード大学で同大学名誉法学博士号を授与されました。

天皇陛下は、特にスポーツと音楽にご関心が深く、スポーツでは、登山・テニス・スキー・ジョギングをよくなさり、音楽ではヴィオラをご演奏になります。

皇后陛下も、スポーツと音楽にご関心が深く、スポーツではテニス・スキーをなさいます。

愛子内親王殿下は、令和2年4月から学習院大学文学部日本語日本文学科に在学されています。


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