皇太子殿下 フランスご訪問時のおことば(一覧)

フランス

平成30年9月11日(火)
国民議会副議長主催昼食会(国民議会議長公邸)
【実際のおことばは,フランス語で述べられています。こちらのページでは,和訳したものを掲載しています】

ビュロー=ボナール国民議会副議長,
御列席の皆様

初めに,私と日本国民に対して示していただいた,親愛と連帯の情に心から感謝します。

ビュロー=ボナール副議長に対し,このような昼食会を開催いただいたことに感謝いたします。また,この初秋のフランスを照らす,優しく,柔らかな日差しのような,議長からの温かい歓迎の御挨拶に御礼申し上げます。

私が初めてフランスを訪れたのは1984年の3月から4月,英国オックスフォードにて学んでいた時のことで,その時のことは今でもよく思い出します。その際は,パリを始め,ボルドー,サンマロ,今回も訪れたリヨン,さらには,多くの古城で知られるロワールや,陽光あふれるプロヴァンスなどのフランス各地を訪れ,春先の美しい自然や,芸術,人々の生活に触れることができました。今回,日仏外交関係樹立160周年という記念すべき機会にこうして再びフランスを訪問できたことは,私にとって大きな喜びです。

昨日まで,「美食の都」としても知られるリヨンに滞在し,絹が結んだリヨンと日本の縁を遡りました。また,リヨンから少し足をのばしてブルゴーニュも訪れ,金色に葡萄が実るワイナリーを見学するなど,とても充実した日程を過ごしました。パリでの滞在が本格的に始まる本日,セーヌ川を臨み,今から200年以上も昔から民主制度の礎として機能してきている国民議会のすぐ隣に位置する,歴史ある議長公邸にお招きいただいたことを光栄に感じます。

本年は1858年に日仏修好通商条約が締結されてから,160周年に当たります。日仏は,160年の長きにわたり,文化・芸術,経済,政治,科学技術,地球環境,教育など実に様々な分野において,交流と協力を重ねてきました。私自身も,今回のフランス滞在の中で,フランスに長く在住している日本人の方々や,日本と手を携えて活躍するフランス人の方々のお話を直に伺い,長い歴史の中で両国民が紡いできた強固な友好関係を実感しております。また,グルノーブルでは,日本とフランスの研究者が手を携えて最先端技術の研究開発と実用化に取り組んでいる様子を見て,両国間の協力が裾野を広げ,将来に向けてさらに発展しつつあることをうれしく思いました。現在パリを中心に開催中の日本文化紹介イベント「ジャポニスム2018」が様々な角度から照らし出している両国の国民の間にある「響き合う魂」が,この先も両国をつなぐ心の架け橋として一層強くなることを願っております。

最後に,我が国とフランス共和国の友好親善関係の一層の進展と,ビュロー=ボナール副議長を始め御列席の皆様の御多幸と御繁栄を心よりお祈りしたいと思います。

Merci beaucoup (メルシ・ボクー)(ありがとうございました)

平成30年9月12日(水)
フランス国大統領夫妻主催晩餐会(ヴェルサイユ宮殿)

マクロン大統領閣下,
令夫人,
御列席の皆様

 初めに,私と日本国民に対して示していただいた,親愛と連帯の情に,大変心を打たれました。心から感謝します。

 この度,日仏友好160周年という節目の年に初めてフランスを公式訪問できましたことをうれしく思うとともに,御招待いただいたフランス政府に対し感謝申し上げます。また,マクロン大統領閣下に対し,本日ここヴェルサイユ宮殿において晩餐会を開催いただいたことに感謝いたします。また,温かい歓迎の御挨拶に御礼申し上げます。

 私が初めてフランスを訪れたのは,イギリス留学中の1984年でしたが,パリのみならず北部から南部までフランス各地を訪問し,春先の美しい各地の自然や,芸術,人々の生活に触れることができたことは,素晴らしい思い出として今でもよく思い出します。今回,日仏外交関係樹立160周年という節目の機会に,こうして再び美しい初秋のリヨンやパリを訪問することができたことに加え,初めてブルゴーニュ地方やグルノーブルを訪れることができたことは,私にとって大変大きな喜びです。

 フランスは,「美食の国」や「芸術の都」として有名です。今回,リヨン,ブルゴーニュ,グルノーブルと,美しい自然,伝統と豊かな個性を有する各地方の訪問を通じ,フランスが多様性に富む国であるとの印象を,改めて強く抱きました。本日の午後には,ヴェルサイユ宮殿に来る前に,リュクサンブール公園を訪れ,秋の昼下がりを家族連れで楽しむフランス国民の皆さんと触れ合うことができました。また,ここヴェルサイユ宮殿では,マクロン大統領閣下,令夫人,御臨席の皆様とともに,宮本亜門さんによる3D技術を用いた演出で日本の伝統芸能である能を鑑賞し,まさに伝統と革新が融合した方法で能の幽玄の精神に触れる機会を共有できましたことをうれしく思います。文化・芸術を愛する日仏両国の国民が,その魂を響き合わせることのできた素晴らしい時間であったと信じます。

 本年は1858年に日仏修好通商条約が締結されてから,160年に当たります。19世紀後半,日本が明治以降の近代化を進めるに当たって,フランス人が大きな役割を果たしたことは広く知られており,特に2014年に世界遺産に登録された富岡製糸場はフランス人技師や職人の指導により建設されたものです。今回の訪問ではリヨンの織物博物館を視察しましたが,富岡製糸場で紡がれた絹がフランスに輸出されるなど,日仏の絹を通じた交流の深さを改めて実感しました。皇后陛下が引き継がれている皇室の御養蚕とその絹糸で織った古代裂を紹介する「蚕-皇室のご養蚕と古代裂,日仏絹の交流」展が2014年2月にパリで開催されましたが,御覧になった方もおいでになると思います。このほかにも,日仏は,160年の歴史の中で,文化・芸術,経済,政治,科学技術,地球環境,教育など実に様々な分野において,交流と協力を重ねてきました。私自身,今回のフランス滞在の中で,様々な分野で日本と手を携えて御活躍されているフランス人の方々や,このフランスの土地に根を張り,目覚ましい活動を行っている日本人の方々から直接お話を伺い,長い歴史の中で両国民が,まさに絹を紡ぐようにして織りなしてきた強固な友好関係を実感しています。

 リヨンとパリでは,日本語を学習する若いフランス人学生や,フランスで学ぶ 日本人の小中学生とお話しする機会を得ました。これからの日仏の友好関係の将来を担う若い世代のそれぞれの国に対する高い関心に触れ,非常に心強く感じました。

 現在パリを中心に開催中の「ジャポニスム2018」等の機会を通して,日仏間の交流が更に飛躍し,両国民の(きずな)がますます深まることを期待しております。この場をお借りして,日仏の交流を支えてこられた御臨席の皆様のたゆみない努力に敬意を表したいと思います。

 Pour conclure mon propos, j’exprime de nouveau mes vifs remerciements à Monsieur le Président de la République et à Mme Brigitte Macron pour leur hospitalité et leur délicate attention. Je forme également des vœux pour un développement encore plus poussé des relations amicales entre mon pays et la République française ainsi que pour la bonne santé et le succès de vous-même Monsieur le Président de la République et de toutes les personnes ici présentes.

 À votre santé!

 (最後に改めて,マクロン大統領閣下及び令夫人の格別のおもてなしに対し,心から感謝申し上げるとともに,我が国とフランス共和国の友好親善関係の一層の進展と,マクロン大統領閣下を始め御列席の皆様の御多幸と御繁栄をお祈りし,杯を上げたいと思います。

 Santé(サンテ)(乾杯))

皇太子殿下のご感想

平成30年9月15日(土)
フランスご訪問を終えて

はじめに,この度の平成30年北海道胆振東部地震により亡くなられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに,御遺族と被災された方々にお見舞いを申し上げます。今回の訪問中,フランスの多くの方から,北海道での地震をはじめ,日本で発生している災害による被害に対してお見舞いの言葉を頂きました。フランスが示して下さった,親愛と連帯に感謝いたします。

この度,日仏友好160周年という節目の年に,フランスを訪問できたことを嬉しく思います。この重要な年に,フランス政府が私を招待して下さったことに感謝申し上げます。特に,マクロン大統領及びブリジット夫人には,とてもお心のこもった晩餐会を催して頂き,また,大統領とは能公演も御一緒させて頂くなど,大変良くして頂き,お礼を申し上げますとともに,御夫妻の気さくでお優しいお人柄に触れることができたことをうれしく思います。また,今回の訪問中,リヨンの空港までお出迎え頂き,また,夕食会を主催するのみならず,様々な行事にも御一緒して下さったコロン内務大臣,その他フランス政府の関係者,歴史ある国民議会議長公邸で昼食会を催して下さったビュロー=ボナール国民議会副議長その他議会関係者,さらには,ケペネキアン市長などリヨン市の関係者やグルノーブル市関係者を含むフランスの国民の皆様から,とても温かいおもてなしを頂いたことに対し,深く感謝いたします。

今回は,平成3年にモロッコ及びイギリスを訪問した途次に立ち寄って以来,27年ぶりのフランス訪問となりましたが,英国留学中の昭和59年春に初めて訪問した時から数えると,今回で7回目のフランス滞在となります。その間,フランスの美しい自然や伝統,豊かな個性を有する地方などにも触れてまいりましたが,今回の訪問を通じて,改めてフランスという国が多様性に富む国であるということ,また,フランスの人々が日本という国に対してとても高い関心と強い親近感を持ってくれていることを,強く感じました。

今回の訪問の中で最も印象に残ったのは,リヨンの織物博物館やグルノーブルの最先端技術の研究拠点,パリのネッカーこども病院など様々な施設を視察し,また,多くの方々とお話をする中で,19世紀半ばに蚕と生糸から始まった日仏交流の絆が,時を経て,文化や芸術,そして最近では最先端技術の研究開発や教育といった様々な分野に広がり,幅の広い重層的な協力関係に発展してきているのを実感することができたことです。白い絹の糸を紡ぐことで始まった日仏両国間の友好親善と協力が,時を経て,交流分野が広がるにつれて,様々な色に染まった糸も生まれ,今や,多彩な色の糸が織りなす美しい織物に発展しつつあることを,とてもうれしく思います。

また,今回の訪問中に参加させて頂いたジャポニスム2018の行事でも,多くのフランス人が楽しみながら鑑賞している様子を窺い知ることができ,日本の文化・芸術がフランスの方々にとても好意的に受け入れられていることを体感するとともに,ジャポニスム2018が謳う「響き合う魂」というテーマが,単なる言葉ではなく,日仏両国の文化や人々の心に根差す価値観,考え方に裏打ちされたものなのだと感じました。

さらに,グルノーブル・アルプ大学では日本語を学ぶ学生さんと,ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ校では日本語を学習するフランスの中高生の皆さんと,そして,パリとリヨンではフランスで学ぶ日本人の小中学生と,それぞれお話をする機会を得ましたが,これからの日仏間の友好親善と協力を担う若い世代の人たちが,それぞれの国に対してとても強い関心を持ち,協力しながら各々の夢を育てようとしていることを垣間見ることができ,とても心強く思いました。また,ブルゴーニュでは,東日本大震災の折,子供たちが日本のために何かできないかということで募金活動をして下さった,との話を伺い,感銘を受けるとともに,日仏の絆が若い世代でもしっかりと培われていることを,とてもうれしく思いました。

最後になりますが,今回の,日仏友好160周年という節目の年に行われました私の訪問が,今後の我が国とフランスの間の一層幅広い分野での交流のさらなる発展に貢献し,両国の友好親善と協力が,美しい「絹の着物」へとさらに進化していくことを期待しています。

なお,雅子は,学生時代に二度フランスで語学研修を行っておりますので,今回の訪問に同行することができなかったことは残念でしたが,本人もフランス政府よりの御招待を大変ありがたく思っております。マクロン大統領,ブリジット夫人はもとより,現地でお目にかかった多くの方々から,雅子に対し温かいお言葉を頂いたことに,厚くお礼申し上げます。