皇太子殿下 デンマークご訪問時のおことば(一覧)

デンマーク

平成29年6月19日(月)
オーデンセ市長主催昼食会(オーデンセ市庁舎)
【実際のおことばは,英語で述べられています。こちらのページでは,和訳したものを掲載しています】

ユエル・オーデンセ市長,
ご列席の皆様

初めに,6月17日にグリーンランドを襲った地震と津波により被災された方々に対し,心からお見舞い申し上げます。また,ユエル市長に対し,このような昼食会を開催いただいたことに感謝いたします。また,温かい歓迎のご挨拶にお礼申し上げます。

私のデンマーク訪問は,2004年以来,今回が2回目となりますが,オーデンセ市を訪問したのは初めてとなります。1998年には天皇皇后両陛下が訪問されたこの地を,日本とデンマークが外交関係を樹立して150周年という記念すべき年に訪問できたことは,私にとって大きな喜びです。先日,デンマーク訪問について両陛下にご報告に上がった折,両陛下よりオーデンセでの懐かしい思い出話を伺いました。

先ほど,当時両陛下がご訪問になられたアンデルセン博物館を,私も訪問して参りました。アンデルセンの童話,小説,切り絵細工など,私自身の幼少期を思い出しながら多くの作品に触れることが出来ました。日本語を含め,世界中の言語に翻訳されたアンデルセンの絵本を見て,アンデルセンの作品が,これまでどれだけ多くの子供達に愛されてきたかを実感しました。

我が国とオーデンセ市との関係は,今から33年前,1984年に遡ります。当時のダルスコー市長が千葉県船橋市を訪れたことがきっかけとなり,1989年,オーデンセ市と船橋市は姉妹都市提携に調印しました。その後も要人往来を始めとした両市の活発な交流は続き,1996年にはオーデンセ市の協力も得て,船橋市に「ふなばしアンデルセン公園」がオープンし,大変な人気を博していると聞いています。2000年に船橋市が「アンデルセン賞」を頂いた際に,併せてオーデンセ市より寄贈頂いた銅像は,現在も公園で楽しく遊ぶ子供達を見守っているそうです。今後も,ふなばしアンデルセン公園がオーデンセ市と船橋市の友好の象徴として,多くの子供達の明るい未来を育んでくれることを願っています。私は音楽が好きで,ビオラもたしなむのですが,昨年2月,日本の有名な交響楽団の定期演奏会の機会に,カール・ニールセンの交響曲第5番を聴きました。今回,オーデンセ市訪問が決まり,ホームページで調べたところ,オーデンセ市にカール・ニールセンの博物館があると知りました。残念なことに,博物館は現在休館中とのことで今回の視察はかないませんでしたが,この楽しみは次の機会にとっておきたいと思います。

最後に,我が国とデンマーク及びオーデンセ市の友好親善関係の一層の進展と,ユエル市長を始めご列席の皆様のご多幸とご繁栄を心よりお祈りしたいと思います。

Mange Tak.(ありがとうございました)

皇太子殿下のご感想

平成29年6月21日(水)
デンマークご訪問を終えて

この度,日本とデンマークが外交関係を樹立して150周年という記念すべき年に,「日デンマーク外交関係樹立150周年」名誉総裁としてデンマークを訪問できたことを嬉しく思います。

まず,デンマーク国政府がこの重要な年に私を招待してくださったことに感謝申し上げます。また,今回の訪問中,とてもお心のこもった昼食会にお招き頂いたマルグレーテ2世女王陛下,夕食会のみならず,様々な行事においてご一緒して下さったフレデリック皇太子殿下及びメアリー皇太子妃殿下,並びにデンマークの王室の皆様,そしてラスムセン首相などデンマーク政府の関係者,さらには昼食会を催して頂いたユエル市長などオーデンセ市の関係者を含むデンマークの国民の皆様から,心のこもった,温かいおもてなしを頂いたことに対し,深く感謝いたします。

今回は,フレデリック皇太子殿下とメアリー妃殿下のご結婚式にご招待頂いた2004年以来,2回目のデンマーク訪問となりました。13年前に目にしたコペンハーゲンの美しい街並みや,アマリエンボー宮殿の荘厳な雰囲気は,ずっと私の記憶に残っておりましたが,今回の訪問では,天気も私を温かく迎えてくれたようで,コペンハーゲンだけでなく,海上交通の要衝で世界遺産でもあるクロンボー城やアンデルセンの生誕地オーデンセが所在するフュン島なども訪れ,デンマークという国の奥深さを実感することができました。

今回の訪問中,コペンハーゲンの市内や近郊において多くの150周年記念行事に参加しましたが,両国間の長きにわたる友好親善関係が深く根付き,さらには,発展していることを目の当たりにし,うれしく思いました。「王室における日本」展では,日本に由来する様々な展示物を通じて,特に日デンマーク修好通商航海条約が締結された1867年以降,デンマークの王室と我が国の皇室がお互いの交流を深め,現在の親密な関係をどのように培ってきたのかということについて,思いを馳せることができました。また,海運博物館では,修好通商航海条約が両国政府間で締結される以前から,デンマークが海運を通じて日本を含むアジアとの貿易や交流を進めてきた歴史を垣間見ることができました。

また,今回の訪問を通じて,そうした両国間の友好親善と交流が,150周年を契機として,さらに発展を遂げつつあることが分かり,とても心強く思います。デザイン博物館での「日本から学ぶ」展では,文化や芸術,工芸の分野でも日本とデンマークがお互いに影響を与えながら,その質を高めてきたということを実感しましたが,現在でも,アンデルセン博物館の改修計画には日本人が携わっていますし,洋上風力発電の分野では日本の企業とデンマークの企業が共同で開発を続けています。王立演劇場での「邦楽コンサート」では,フレデリック皇太子同妃両殿下,エリザベス王女殿下のご臨席も得て,デンマークの皆さんに素晴らしい日本の伝統芸能を堪能頂けたものと期待していますが,「王室における日本」展の折に,尺八を演奏するデンマークの方や和太鼓に取り組む子供たちに会うこともできました。こうした分野において,草の根レベルでも両国間の交流が進んでいることを知り,将来の交流の一層の進展を確信し,心強く思いました。また,特にフレデリック皇太子殿下の訪問をはじめデンマーク王室,さらにはデンマークの皆様による支援を機に,東松島市民とデンマークの国民との間で温かい交流が続いていることをうれしく思います。震災で再確認された我が国とデンマークの友好の(きずな)は,両国国民の間で着実に根を広げており,今後も両国関係の明るい未来の基盤となるものと思います。

デンマーク滞在中,国際貢献顕彰碑を訪れ,デンマークのこれまでの国際社会に対する貢献に敬意を表しましたが,派遣先国の幅広さもあって,残念ながら犠牲になられた方々も多いということを知り,心が痛みました。一方で,東日本大震災の支援活動に携わった国防省関係者にお会いし当時のお話しなどを伺いましたが,両国の国民の間の友好の(きずな)が震災を機に一層強くなったと伺い,とてもうれしく思いました。同時に,彼らを始め,デンマーク国民に改めて謝意を伝えることができましたこともよかったと思います。そして,ご自身の作品の売り上げをご寄附くださったマルグレーテ2世女王陛下,発災後3か月で被災地を訪問され,被災者たちを勇気づけてくださったフレデリック皇太子殿下に,改めて感謝申し上げます。

今回の訪問は,自然の営みと人の生活のかかわりについて改めて考える良い機会にもなりました。最終日には,フレデリック皇太子殿下が名誉総裁を務められるステート・オブ・グリーンでの説明を聞き,実際に洋上ツアーで具体的な取り組み状況を見させて頂きましたし,それまでも,在留邦人やデンマークの方々からいろいろなお話を伺いましたが,デンマークが地球温暖化といった環境問題や,高齢化をはじめとする社会福祉問題について,国民のコンセンサスを得ながら,どのようにして自然を守りつつ人々のニーズを満たす取り組みを進めてきたか,という点をとても興味深く思いました。一方で,今回の訪問中に訪れた「建築展」では,日本の伝統建築においても,風,水,太陽という自然の要素をうまく活用しながら人の生活を向上させてきたことに気づかされました。このような自然と人間の関係のあり方について,我が国をはじめ国際社会がお互いの経験を共有し,学び合うことが求められている時代になっているということを改めて胸に刻むことができました。そして,そういった取り組みが全世界的に進むよう,私の今回の訪問が一つのきっかけとなればと希望します。

私自身の関心事項である「水」について言えば,私は瀬戸内の水運に関する研究から「水」問題全般に関心を広げていったのですが,今回の滞在中,クロンボー城や海運博物館を視察し,改めて海運・水上交通というものが国の発展に大きな役割を果たしたこと,また同時に,国と国,社会・文化を結びつける(きずな)の役割も果たしてきたということについて再認識するとともに,国際社会が「水」問題への取り組みを通じて様々な課題に対処していくに当たり,私自身が今後の行動を通じてどのように貢献できるかということについて考えさせられる良い機会にもなりました。今回の訪問によって,一旦自分の原点に立ち戻ることができましたし,これからの活動を考える上でも良いヒントを与えてくれたのではないかと思います。

最後になりますが,今回デンマークを訪問し,改めてデンマークとの間で文化や経済,学術,科学技術,観光など,多くの分野で交流や協力を進めていく余地が大きいことを確信しました。特に,環境分野や社会福祉,女性の社会進出といった国際社会が直面する課題について,お互いに学びあい,双方の特長を活かしながら解決の道を探っていくことが重要であるし,また,可能であるという点について,認識を新たにしました。今回の外交関係樹立150周年を契機に,今後の我が国とデンマークの間の幅広い分野での友好親善関係が一層発展していくことを期待しています。また,そのために私自身も引き続き名誉総裁としてお役に立てればと思っています。

なお,雅子は,学生時代にデンマークを訪れたことがあり,また,フレデリック皇太子殿下,メアリー皇太子妃殿下とも親しくさせて頂いておりますので,今回の訪問に同行することができなかったことは残念でしたが,本人もデンマーク政府よりのご招待を大変ありがたく思っております。マルグレーテ2世女王陛下,フレデリック皇太子同妃両殿下はもとより,現地でお目にかかった多くの方々から,雅子に対し温かいお言葉を頂いたことに厚くお礼申し上げます。