主な式典におけるおことば(令和元年)

秋篠宮皇嗣妃殿下のおことば

第55回献血運動推進全国大会
令和元年7月11日(木)(石川県立音楽堂)

はじめに,このたびの九州南部を中心とした大雨により被災された方々へ心よりお見舞いを申し上げますとともに,亡くなられた方々に哀悼の意を表します。

本日,「第55回献血運動推進全国大会」が石川県で開催され,全国各地から参加された皆さまにお会いできましたことを,大変うれしく思います。

医療活動に欠くことのできない献血は,昨年,延べ471万人にご協力をいただき,血液製剤を必要とする人々のもとに大切に届けられ,役立てられました。献血運動に力を尽くしてこられた関係者に敬意を表しますとともに,献血にご理解とご協力をいただいた全国の皆さまに,深く感謝いたします。

近年,少子高齢化が進み,献血可能な年代の人口が減少している中,若い世代の献血への理解と積極的な参加が求められております。このため,たとえば,小・中学生や高校生に献血の大切さを知ってもらう「献血セミナー」や,新たに成人を迎える若者を中心に呼びかける「はたちの献血」キャンペーンなど,特に十代,二十代の献血者を増やすための活動に力を入れています。

先程は,石川県赤十字血液センターを訪れ,石川県学生献血推進委員会の活動を見せていただきました。「若い人の献血協力を増やすためには」というテーマでグループ討論をし,輸血を受けた人やその家族からの「感謝メッセージ」を活用したポスターを制作するなど,熱心に取り組む姿に接し,心強く思いました。こうした活動が実り多いものとなり,献血に対する社会全体の理解がさらに深まることを期待しております。

本大会を契機として,献血への協力がより一層進み,献血運動の輪がさらに広がっていくことを願い,大会に寄せる言葉といたします。

第60回日本母性衛生学会学術集会 創立60周年記念式典
令和元年10月11日(金)(ヒルトン東京ベイ)

本日,日本母性衛生学会創立60周年記念式典に出席し,全国からお集まりの皆さまにお会いできましたことを,大変うれしく思います。

本学会は,今から60年前,日本の母と子が置かれていた大変厳しい状況を憂う医師,助産師,看護師など,多くの職種の協力によって,設立されました。昭和30年代の前半は,毎年2千人以上の妊産婦と,3万人以上の新生児の命が失われていましたが,医療の進歩,妊産婦への支援など,各方面の取り組みにより,妊産婦と新生児の死亡数は大幅に減少しました。この学会が,長きにわたり,母子保健の向上に貢献してこられたことに,深く敬意を表します。

一方で,近年は,晩婚化・晩産化に伴い,出生率の低下やリスクの高い妊娠の増加がみられます。そして,多様な家庭において,子どもを産み育てることに戸惑いや困難を感じる母親も多く,妊娠・出産・育児をめぐる,心理的,社会的な課題が増加しています。こうした中,父親をはじめとする家族ばかりでなく,地域や社会全体としても,母親の不安や孤独を理解し,支援していくことが,以前にも増して重要であると思います。

私は,母子愛育会の総裁として,妊娠期から子育て期の家族を支援する,愛育班のボランティア,保健師や医療関係者などの方々と,折にふれて,お会いしてまいりました。災害時を含め,地域の中で,あたたかいお気持ちを抱きながら,家族を見守り,支え続けている活動を,心強く思っております。

海外においても,母子保健関係の取り組みに接することがございます。昨年,タイで開催された母子手帳国際会議に出席した折には,日本で始まった母子手帳が,多くの専門家と家族をつなぐ大切なツールとして,世界の幾つもの国や地域でも,それぞれに作られるようになっていることを嬉しく思いました。日本においても,新たな取り組みがなされ,たとえば,小さく生まれた赤ちゃんや医療のケアが必要な子どもと親のための手帳や冊子が使われるようになっています。

また,今年の夏には,訪問先のフィンランドで,出産育児支援の拠点ネウヴォラを訪ねました。そこでは,出産前から子どもの就学まで,家族が安心して相談できるよう,基本的に一人の専門職が続けて担当し,必要なときは他の機関と連携するとのお話を伺いました。担当者と家族が対話を通して信頼関係を築き,支援を続けることの重要性を学ぶ,貴重な機会になりました。

この度の学術集会では,母親と子どもの心身の健康,そして父親の視点も含め,興味深いプログラムが,予定されております。スマートフォンのアプリを使った壇上と客席とのコミュニケーションや,デジタル化されたポスターによる発表という,新しい試みもあります。この学会が,実り多い意見交換と,なごやかな交流の場となることを,期待しております。

創立60周年を迎えた本学会のさらなる発展を祈念するとともに,ご参加の皆さまがそれぞれの分野で力を尽くされ,未来を担う子どもたちの心と体が健やかに成長するよう,家族をあたたかく支える社会となりますことを心から願い,式典に寄せる言葉といたします。

「第46回『日本賞』教育コンテンツ国際コンクール」授賞式
令和元年11月8日(金)(NHK放送センター)

本日,第46回「日本賞」授賞式に出席し,世界各地からお集まりの皆さまにお会いできましたことを,大変うれしく思います。

このたび本審査に進んだ作品や企画の制作者に,お慶び申し上げます。

一つ一つの優れた作品によって,子どもも大人も,多様な生き方に気づき,想像を広げ,考えを深めることができるでしょう。また,喜びや悲しみに共感することもあれば,励まされ,行動する勇気を得ることもあるでしょう。こうした経験は,私たちが課題に直面しながら暮らしていく上で,大きな支えになるのではないでしょうか。

「日本賞」は,制作者をはじめ,教育に関心を寄せる人々が出会い,交流し,発信する場として,誠に意義深いものと思います。今週は,作品の上映会や公開審査を含む興味深い催しがおこなわれ,活発な議論が交わされたと伺いました。

制作者や「日本賞」関係者の熱意は,多くの人々の心に残ることでしょう。映像と音を用いて教育に貢献してこられた皆さまのご努力に,深く敬意を表します。

皆さまが,これからも優れた作品を生み出されますように,そして,それらの作品に接する世界の私たちが,多様性を認識し,互いに理解を深め,皆にとってよりよい未来を築いていくことができますように心から願い,私の挨拶といたします。