主な式典におけるおことば(令和元年)

秋篠宮皇嗣殿下のおことば

第30回全国「みどりの愛護」のつどい
令和元年5月18日(土)(鳥取県立布勢総合運動公園)

 第30回全国「みどりの愛護」のつどいが,「浦富海岸」「鳥取砂丘」「弓ヶ浜」などの県内各地で異なった特徴を有する海岸線や,「大山」を始めとする中国山地の山々など,美しく多様な自然環境に恵まれた鳥取県において開催され,日頃から緑の保全育成に携わっておられる皆様とともに出席できましたことを誠に嬉しく思います。 
 全国「みどりの愛護」のつどいは,広く都市緑化意識の高揚を図り,緑豊かな潤いのある住みよい環境づくりを推進するため,1990年に第1回の「つどい」が大阪の国際花と緑の博覧会会場で開催されました。その後は,国営公園や都道府県管理の公園において,全国の公園緑地の愛護団体や地域の緑化・緑の保全団体など緑の関係者が一堂に会し,緑を守り育てる国民運動を奨励する行事として実施されてきたと伺っております。
 緑は,私たちの暮らしに豊かさや安らぎをもたらしてくれます。また,美しい景観の形成や生物多様性の保全,そして防災性の向上など,多くの機能を有します。さらに,温暖化に代表される地球環境問題への対応を考えるとき,二酸化炭素の吸収源として,あるいはヒートアイランド対策としての大切な役割も果たしております。
 このように,貴重な緑と,その緑を源とする清らかな水を守り,新たな緑を創り出し,育てていくためには,多くの人々がその大切さを理解し,幅広く運動に参加していくことが重要でありましょう。その意味で,本日表彰を受けられた方々の緑の愛護活動への取組は,大変意義深いものであり,皆様の努力に対し深く敬意を表します。
 終わりに,この度の「みどりの愛護」のつどいをひとつの契機として,全国から参加された皆様が相互に交流を深め,緑を守り育てる心を新たにされるとともに,ここ鳥取から緑豊かな環境づくりの活動が一層発展していくことを願い,本式典に寄せる言葉といたします。

日本動物園水族館協会2019年度通常総会
令和元年5月28日(火)(名古屋観光ホテル)

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第21回日本水大賞・2019日本ストックホルム青少年水大賞
令和元年6月25日(火)(日本科学未来館)

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第29回国際地図学会議 開会式
令和元年7月15日(月)(東京国際交流館プラザ平成)

 It is a great pleasure for me to be with you all at this opening ceremony of the 29th International Cartographic Conference, being held on the theme of “Mapping Everything for Everyone”, with more than 900 participants from over 70 countries and areas.

 I understand that maps are the means for representing knowledge accumulated since ancient times in order to visualize spaces of diverse scales at a glance, from outer space, to land and sea on the earth, down to everyday living spaces. I have heard that cartography covers not only mapping techniques, but also embraces the theories and technologies for utilizing maps, and even extends to the use of maps in societies and cultures as well.

 In our complex and fast-changing contemporary society, knowledge tends to be fragmented, but maps represent this knowledge at a single glance and hence they enable us to grasp information comprehensively and holistically.

 I believe that this inherent characteristic of maps has a very important significance.

 This International Cartographic Conference was last hosted in Tokyo 39 years ago in 1980. During the intervening period, cartography has undergone a transformational evolution with the advent of digitization. Digitization and the penetration of the Internet are creating the environment where anyone can access maps anytime and anywhere, and freely visualize whatever anyone wishes to tell with a map.

 Surveying technologies that have underpinned this progress, also enable anyone to locate accurately where they are, owing to advances in satellite positioning systems.

 Furthermore, a part of the key mission of maps is to contribute to solving contemporary global issues, set out by the United Nations as the Sustainable Development Goals, by visually mapping regional comparisons of the achievement levels for each indicator for each of the SDGs.

 I would now also like to talk about my own involvement with maps, which have been an essential source of information for obtaining a proper understanding of geography.

 One of the themes of my research interests is “the process of domestication”. In particular, through understanding the multiple relationships between domesticated animals and humans, my major research theme is to explore and elucidate the factors in the whole process of domestication, which covers native wild progenitors, domestication itself, and the breeding of varieties that has occurred following domestication.

 As the main subject of my research is the domestication of junglefowls, the ancestors of chickens, and the breeding of varieties of their descendants, it is crucial to grasp the topographic features of a locality in order to conduct research.

 The way a hypothesis is formulated would be different if one were to use maps with contours compared with maps without contours. This is because by understanding what kind of geographical barriers isolate one culture from those of surrounding areas, one can infer the divergence between local varieties, including genetic and morphological variations.

 Moreover, when a bilateral joint research on this topic was conducted between Japan and Thailand, I was involved in tracing the behavior of chickens by applying a Wi-Fi positioning system. Present day advances in these kinds of surveying technologies are remarkable, and I share a keen interest in the presentations and exhibits at this Conference, which I have heard will also offer some insights into the new developments and usage of maps that deploy state-of-the-art technologies, including satellites and sensors.

 I have learned that this Conference will hold the “International Cartographic Exhibition”. This Exhibition showcases approximately 500 excellent maps selected from around the world for viewing in a single venue.

 At the same time, the “Barbara Petchenik Children’s Map Exhibition” will also be held, displaying map drawings selected from entries submitted by children.

 These exhibits, which will be open to the public, are expected to attract broad social recognition of the significance of cartographic representation. Also they will offer a splendid opportunity to convey to children, who represent our future, the importance and attraction of maps.

 To conclude my address, I wish to express my sincere hope that cartography will make further advances in the future, enabling it to contribute to the peace and safety of the world, and that this Conference will be fruitful and meaningful for all of you.

第16回海フェスタ「海フェスタしずおか」
令和元年7月18日(木)(静岡県コンベンションアーツセンター「グランシップ」)

 「海フェスタしずおか」が,駿河湾と富士山をのぞむ静岡市,清水港において開催され,本日の記念式典において皆様とともに出席できましたことを大変嬉しく思います。
 清水港は古くから東西を結ぶ交通の要衝であり,江戸時代には,多くの廻船でにぎわう清水湊として繁栄いたしました。富士を仰ぎ,名勝三保松原に近く,日本有数の美しい港として知られる清水港は,お茶の輸出に始まる国際貿易港として発展し,臨海部の工業化や地域の産業の振興に大きな役割を果たしてまいりました。
 1899年に開港して以来,今年で120周年を迎える清水港において「海フェスタしずおか」が,キャッチフレーズである「清水から,つながる未来,広がる世界。」のもとに開催されますことは,海や港などへの理解を深めていく上で,誠に意義深いものがあると思います。
 四方を海に囲まれた我が国は,古来より海との関わりが深く,多くの恩恵を享受してきました。海は人々の心を引き付けるとともに,国内外との様々な交流を通じて人々の豊かな暮らしに寄与してきました。私達はこのような海に感謝するとともに,関連する港や河川を含め,それらの多面的な役割や重要性を認識し,後世に伝えていく必要がありましょう。「海フェスタしずおか」が,そのひとつの契機になるとともに,「国際海洋文化都市・清水」を目指す静岡市の更なる発展に繋がっていくことを願っております。
 終わりに,本日,栄えある表彰を受けられる方々に心からお祝い申し上げますとともに,ここにお集まりの皆様の一層のご活躍を祈念し,私のあいさつといたします。

令和元年度全国高等学校総合体育大会
令和元年7月27日(土)(鹿児島アリーナ)

 令和元年度全国高等学校総合体育大会が,全国各地から多くの参加者を迎え,桜島や屋久島など美しい自然に恵まれた,ここ鹿児島県をはじめ,熊本県,宮崎県,沖縄県の南部九州4県と和歌山県で開催されることを誠に喜ばしく思います。
 6月下旬からの大雨や台風5号による大雨により,本日開会式が行われている鹿児島県をはじめ,九州地方を中心に被害が生じ,多くの人々が避難を余儀なくされました。この大会にも,被災した地域から多くの方々が参加され,その中には影響を受けられた方もおられるのではないかと推察いたします。ここに心からお見舞いを申し上げます。
 さて,全国高等学校総合体育大会は,高校生のスポーツ技能の向上やスポーツ精神の高揚を図るとともに,生徒相互の親睦を深め,心身ともに健全な青少年を育成することを目的とし,1963年から開催されていると伺っております。
 出場される方々には,「響かせろ 我らの魂 南の空へ」のスローガンの下,日頃の練習成果を存分に発揮し,競技に臨まれることを期待しております。
 また,この大会には,各開催県の多くの高校生が運営に尽力されていると聞いております。これら地元の高校生と競技に参加する選手を始め,各地から集われている方々が,本大会を通じて交流を深められ,高校生活の良き思い出を作られることを願っております。
 終わりに,「感動は無限大 南部九州総体 2019」が,選手の活躍と地元高校生そして関係者の協力により,実り多いものとなることを祈念し,開会式に寄せる言葉といたします。

第43回全国高等学校総合文化祭「2019さが総文」
令和元年7月27日(土)(佐賀市文化会館)

 第43回全国高等学校総合文化祭が,有明海と玄海灘の二つの豊潤な海に面し,また実り豊かな佐賀平野や虹の松原が広がるとともに,有田焼や唐津くんちをはじめとした伝統文化が今も人々の暮らしに息づくここ佐賀の地で開催され,全国各地,そして海外から参加された多くの方々と共に出席できましたことを大変嬉しく思います。
 皆様ご存知のように,6月下旬からの大雨や台風5号による大雨により,九州地方を中心に被害が生じました。そして,多くの人々が避難を余儀なくされる事態になりました。皆様の中には,被災した地域から来られている方もおられます。また,直接的もしくは間接的に影響を受けられた方もこの場におられるのではないかと推察いたします。ここに心からお見舞いを申し上げます。
 さて,全国高等学校総合文化祭は,芸術・文化活動に取り組む高校生の祭典として,開催地の生徒が実行委員会を組織し,2年強の時間を費やして,地域の特性と高校生ならではの感性を活かした,生徒主体の大会づくりがなされております。このような文化と芸術の祭典が,次世代を担う高校生によって毎年開催されていることは,国民の芸術・文化に対する関心や理解をいっそう高めるとともに,文化活動そして芸術活動に参加する意欲を喚起する上で,誠に意義深いものと考えます。
 今年の大会テーマは,「創造の羽を広げ,蒼天へ舞え バルーンの如く」であります。参加される皆様が,日頃の活動の中で培われた創造性を発揮し,それを全国へと発信されるとともに,参加者相互の交流を深めることを通じ,国の内外に友好の輪を広げていかれることを期待いたしております。
 終わりに,本大会の開催へ力を尽くされた多くの関係者の熱意と努力に深く敬意を表しますとともに,「2019さが総文」が,皆様の心にいつまでも残る素晴らしい大会となることを祈念し,私の挨拶といたします。

2019年(第30回)福岡アジア文化賞授賞式
令和元年9月10日(火)(福岡国際会議場)

 本日,第30回福岡アジア文化賞の授賞式が開催されるにあたり,大賞を受賞されるランドルフ・ダビッド氏,学術研究賞を受賞されるレオナルド・ブリュッセイ氏,そして芸術・文化賞を受賞される佐藤信氏に心からお祝いを申し上げます。
 また,本賞がこのたび30回の節目を迎えられたことは誠に喜ばしく,これまで市民とともに本賞の発展に力を尽くしてこられた福岡市をはじめ,多くの関係者に深く敬意を表します。
 市と学界,民間が一体となって創設したこの「福岡アジア文化賞」は,古くからアジア各地で受け継がれている多様な文化を尊重し,その保存と継承に貢献するとともに,新たな文化の創造,そしてアジアに関わる学術研究に寄与することを目的として,それらに功績のあった方々を顕彰するものであり,創設以来,アジアの文化とその価値を世界に示していく上で, 顕著な役割を果たしてこられました。これまでの輝かしい受賞者の方々には,アジア地域のみならず,世界各地で活躍しておられる方が多数おられます。
 私自身,アジアの国々をたびたび訪れ,多様な風土が作り出し,長い期間にわたって育まれてきた各地固有の歴史や言語,民俗,芸術など,文化の深さや豊かさに思いを馳せ,それらの保存・継承,更なる発展の大切さと,アジアを深く理解するための学術の重要性を強く感じてまいりました。その意味で,本賞は大変意義の深いものと認識しております。 
 私は先月,家族でブータンを訪問いたしました。その間のごく限られた範囲での見聞ではありますが,訪れた場所によっては約2000メートルの標高差があり,そのような自然環境を背景にした文化の違いに関心を抱き,このような視点も含め,アジアの文化の多様性を考えていくことが重要であるとも思いました。
 本日受賞される3名の方々の優れた業績は,アジアのみならず広く世界に向けてその意義を示し,また社会全体でこれらを共有することによって,次の世代へと引き継ぐ人類の貴重な財産になると考えます。
 終わりに,受賞される皆様に改めて祝意を表しますとともに,この福岡アジア文化賞を通じて,アジア諸地域に対する理解,そして国際社会の平和と友好がいっそう促進されていくことを祈念し,授賞式に寄せる言葉といたします。

国立中央青少年交流の家開所60周年記念式典
令和元年9月18日(水)(国立中央青少年交流の家)

 国立中央青少年交流の家が開所から60周年を迎えるにあたり,本日,皆様とともに記念式典に出席できますことを誠にうれしく思います。

 国立中央青少年交流の家は,地元御殿場の市民の中から,美しい富士山の麓に,世界平和を青年に訴える場として,国際的文化センターをつくることを望む声が上がり,1959年,我が国で最初の国立青少年教育施設として設立されました。この時以来,60年の長きにわたり,地域の豊かな文化と自然を通して,青少年の健全な育成を図るべく,指導と運営に携わってこられた関係者の皆様のたゆみない努力に対し,心から敬意を表します。

 国立中央青少年交流の家は,これまでに,学校や青少年団体,企業,家族など様々な団体やグループの研修の場として約900万人に上る人々に利用されてきました。そして,集団宿泊体験や他団体との交流,トレッキング,キャンプファイヤー,創作活動など多様な体験活動を通じて,他者を思いやる心,公共心や社会性を育む機会を提供してこられました。

 特に,恵まれた立地条件を活かし,自然の偉大さに気付き,協力することの大切さを学ぶことを目的として,富士登山を含む体験活動を行う6泊7日の長期キャンプや,生きた英語力を育て,国際的な感覚を身に付けることを目的としたイングリッシュキャンプなどの事業を実施するとともに,高校生から社会人までを対象として,青少年の体験活動を支援するボランティアの養成事業も,積極的に行っていると伺っております。

 様々な表情を見せる日本最高峰の富士山を望む雄大な自然環境と地元の方々の温かい協力の下,国立中央青少年交流の家には,今後も国の内外を問わず多くの人々が貴重な体験を通じて互いを尊重し合い,共に歩み続ける態度を身に付け,成長していく機会を提供する施設であり続けることを願っております。

 終わりに,急速に変化し多様化する現代社会において,未来を築く青少年を育成する青少年交流の家には,一層大きな期待が寄せられているものと思います。開所60周年を一つの契機として,今以上に親しまれる施設として発展していかれることを祈念し,本式典に寄せる言葉といたします。

ラグビーワールドカップ2019日本大会 ウェルカムパーティー
令和元年9月19日(木)(The Okura Tokyo)

 「ラグビーワールドカップ2019日本大会」の開幕を明日に控え,国の内外から,この度の大会に携わってこられた皆様をお迎えし,今夕,歓迎の宴において,懇談の機会を得ることができましたことを誠にうれしく思います。

 1987年にオーストラリア,ニュージーランドの共催で始まった「ラグビーワールドカップ」は,今回で9回目となりますが,このような大きな大会が日本で開催されるのは,幕末に日本でラグビーの試合が初めて行われて以来,初めてのことであるとともに,アジアで開催されるのも,今回が初めてのことでございます。このことは,ラグビーの歴史に新たな1ページを加えるものであり,ラグビーをよりグローバルなスポーツへと発展させていく契機の一つになるものとも申せましょう。

 明日から44日間にわたって繰り広げられる,世界のトップ20チームによるラグビー競技の最高峰であるこの祭典は,ラグビーの魅力を広く伝えるとともに,現在123の国と地域において960万人と言われるラグビー人口をさらに拡大する里程標になるものと期待しております。

 また,この大会の開催に当たり,12の試合会場と55か所の公認チームキャンプ地を中心に,約1万3千人の大会ボランティアの参加を得て,選手や世界のラグビーファンを歓迎する準備が行われました。

 ここにお集まりの皆様をはじめ,本大会で我が国を訪れる方々には,美しい自然と多様な歴史と文化を有する日本において,それぞれに特色のある場所をお楽しみいただき,良き思い出を作られることを願っております。

 終わりに,本大会の開催に向けてそれぞれの立場で尽力された多くの皆様に敬意を表しますとともに,参加される選手各位のご健闘,ならびにこの大会が世界中の方々の心にいつまでも残る素晴らしい大会となることを祈念し,私の挨拶といたします。

ラグビーワールドカップ2019日本大会 開会式開会宣言
令和元年9月20日(金)(東京スタジアム)

 1987年にはじまり,今回で9回目を迎えるラグビーワールドカップが,アジアで初めて,ここ日本において開催されます。この機会に,世界の各国・地域から多くの方々をお迎えできますことは,誠に喜ばしいことでございます。
 ラグビーフットボールの最高峰の大会であるワールドカップに出場される代表の皆様には,その卓越した技術をいかんなく発揮していただき,世界中のラグビー・ファンを大いに魅了していただくことを期待いたしております。
 この大会を一つの契機として,ラグビーフットボールが更に発展していくとともに,スポーツを通じた交流が,世界の人々の友情と親交を深めていくことを心から願い,ここに「ラグビーワールドカップ2019日本大会」の開会を宣言いたします。

第58回農林水産祭参加全国林業経営推奨行事賞状伝達贈呈式
令和元年11月8日(金)(三会堂ビル石垣記念ホール)

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大日本農会「令和元年度農事功績者表彰式」
令和元年11月21日(木)(三会堂ビル石垣記念ホール)

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大日本水産会「令和元年度水産功績者表彰式」
令和元年11月26日(火)(三会堂ビル石垣記念ホール)

 はじめに,このたびの一連の台風や豪雨により,河川の氾濫があった内陸部を含む広範な地域で,水産関係において甚大な被害が生じました。ここに,心からのお見舞いを申し上げます。

 本日,大日本水産会「令和元年度水産功績者表彰式」が,全国各地から多くの受章者を迎えて開催されますことを誠に喜ばしく思います。受章される皆様に心からお祝いを申しあげます。また,かねてより魚をはじめとする水族に親しんできた私にとり,水産業に深く携わっておられる皆様とお会いできましたことを大変嬉しく思います。

 大日本水産会は,水産業の振興を図り,その経済的・文化的発展を推進することを目的として,明治15年に創立され,爾来,水産業振興のため様々な事業を展開してこられました。中でも明治23年に始まった「水産功績者表彰」は,本年で103回目,総受章者数は3189名を数え,大変重要な事業として位置付けられております。そして,これまでの受章者を見ますと,日本史の一幕にその名を刻んだ人々の名前もあり,改めて本会の歴史の重みを感じます。

 周囲を海に囲まれ,湖沼や湧水,清流に恵まれている我が国では,かねてより漁業や養殖業が盛んで,それに伴って,関連する加工業や流通業が発展してまいりました。水産業は,特に鮮度と安定的な供給が求められる産業であり,長年にわたってこれら各分野の振興に力を尽くしてこられた皆様においては,さまざまなご苦労があったことと推察し,深く敬意を表したく思います。

 我が国では,古来より魚介類が身近で貴重なタンパク源として親しまれてまいりました。さらに昨今の健康志向もあり,魚介類に対する関心が高まるとともに,海外においても,食文化としての和食が普及し,その中心的な存在である魚介類が注目されております。
 
 このように,水産業はこれからも様々な可能性が期待される重要な産業でありますが,近年の日本の水産業を取り巻く状況に目を向けますと,水産資源の減少や漁業の後継者不足など課題が山積しており,それらの解決のため,政府や水産業界,そしてそれぞれの現場の取り組みが,日々行われております。

 このような状況のもと,本日受章される皆様には,これを一つの契機とし,健康に留意されつつ,今後とも日本の水産業の維持と発展のために活躍されますことを期待いたしております。

 終わりに,大日本水産会が今後ますます発展し,我が国の水産業の振興に一層貢献されることを祈念し,本式典に寄せる言葉といたします。

第35回国際生物学賞授賞式
令和元年11月29日(金)(日本学士院会館)

 昭和天皇の永年にわたる生物学への貢献を顕彰し,1985年のご在位60年の機会に創設され,上皇陛下のご研究を併せて記念する「国際生物学賞」が本年で35回目を迎えます。その35回目の本賞を受賞された,ハーバード大学のナオミ・エレン・ピアス教授に,心からお慶びを申し上げます。
 本年は「昆虫の生物学」が贈賞の対象分野となりましたが,ピアス教授は,本賞においてこの分野が対象となった初の受賞者であると伺っております。昆虫類は,節足動物門に属する一つの綱でありますが,その種数はわかっているだけでも約92万5000種で,動物界の約75パーセントを占めるとも言われており,この分野が対象となったことは本賞にとって意義深いことと考えます。
 その昆虫類についての教授のご研究の範囲は多岐にわたっております。その中でも特に顕著なものとして,「アリ類とシジミチョウ類の共生の進化における寄生者の関与」,「アリ類における草食性の進化と腸内細菌との関連」,「ゲノムデータを駆使したチョウ類の系統の推測」,「コハナバチの社会行動に関連する遺伝子の特定」,さらには「浸透性殺虫剤が昆虫の多様性と保全に与える影響への洞察」などが挙げられます。
 教授は,このように多様な研究を博物学の視点をもって進められる中で多くの発見をされ,それらを通じ,生物の共生系が自然選択により進化したことを明らかにされました。
 また,教授が確立されたアリ類とチョウ類の高次の系統樹は,現在の比較生態学的研究において欠かせないものになっていると聞いております。
 教授のこれまでのご研究によって,昆虫の生物学は大きく進展いたしました。このことは,ひとえに教授が研究者として,また教育者としておさめられた数々の業績によるものであり,ここに深く敬意を表させていただきます。
 最後になりますが,ピアス教授のご研究が今後さらに発展するとともに,生物学分野が一層深まっていくことを祈念し,お祝いの言葉といたします。

2019年(第28回)ブループラネット賞表彰式典
令和元年12月11日(水)(パレスホテル東京)

 本日,第28回ブループラネット賞表彰式において,栄えある賞を受けられた,ベルギーのエリック・ランバン教授,ならびに米国のジャレド・ダイアモンド教授に心からお祝いを申し上げます。
 ランバン教授はリモートセンシングデータと社会経済学的データを結びつけた地球規模の持続的な土地利用と森林資源保護のあり方について,またダイアモンド教授は,人類文明史における環境問題の意義をご自身のフィールドワークの経験をふまえて解明されました。お二方の業績に深く敬意を表させていただきます。
 近年,私たちは,暮らしの豊かさと利便性を求め,科学・技術の進歩とそれに伴う経済の発展を目標にし,そのことに向けた取り組みをしてまいりました。しかし,そのいっぽうでは,現代の私たちの経済活動や生活様式をこのまま続けることにより,後世へと繋がる持続可能な社会を実現することの可否について議論がなされるようになってきております。
 このような状況のもと,本日の受賞者が,長年にわたる卓越した行動力と並外れた探求心を持ち続けて,ご自身の理論を築きあげ,現代文明や社会に警鐘をならし,今後の人々の活動のあり方に道筋を示してこられたことは,誠に意義深いことであります。
 このたびの受賞者,ならびに歴代受賞者をはじめ環境問題を深く多角的視野から考察している方々が主導的な役割を担い,人類の英知を結集し,持続可能な地球環境と人々のよりよい生活が実現されることを願っております。
 おわりに,すばらしい業績を上げられました本年度の受賞者に改めて敬意を表しますとともに,このブループラネット賞が,世界の人々の環境に対する意識を高め,それに伴う行動をうながす契機となることを祈念し,表彰式に寄せる言葉といたします。

第43回全国育樹祭
令和元年12月15日(日)(沖縄コンベンションセンター)

第43回全国育樹祭が,全国各地から多くの参加者を迎え,紺碧やエメラルドグリーンの美しい海に囲まれ,緑豊かで鮮やかな花々が咲き誇る生物の宝庫である,ここ沖縄県において開催されることを大変喜ばしく思います。

皆様ご存知のように,度重なる台風や豪雨により,広い範囲にわたり被害が生じ,多くの人々が避難を余儀なくされました。この大会にも,被災した地域から参加され,その中には影響を受けられた方もおられるのではないかと推察いたします。ここに,心からお見舞いを申し上げます。

そして,沖縄の人々の心のよりどころともいうべき首里城が焼失し,それに伴って琉球王国時代の絵画や文書をはじめとする貴重な文化財が失われたことを誠に残念に思います。

さて,全国育樹祭は,継続して森を守り育てることの大切さを普及啓発するため,1977年から,全国植樹祭を開催したことのある都道府県において,毎年開催されております。

私たちは昨日,沖縄県平和創造の森公園において,1993年の第44回全国植樹祭で当時の天皇皇后両陛下が植樹をされた県木のリュウキュウマツと,防風林に用いられ,集落景観を形成する樹木として親しまれているフクギの手入れを行いました。沖縄を代表するこの2つの樹木が26年の歳月を経て,健やかに育っている姿を目にし,嬉しく思いました。

豊かな森林は,水源の涵養や木材を始めとする林産物の供給などを通じ,私たちの日々の暮らしに不可欠なものであるとともに,豊かさをもたらしてくれています。また,二酸化炭素の吸収源として,そして生物多様性の保全の場としてなど,地球環境を守る上でも重要な役割を担っております。

このようにかけがえのない豊かな森林を後世へと引き継いでいくことは,人類はもとより,地球上に暮らす数多の生き物たちにとって大変重要なことと考えます。

その意味から,本日表彰を受けられる方々をはじめ,日頃からそれぞれの地域において,国土緑化に力を尽されている全国の皆様に敬意を表しますとともに,このような活動が今後も多くの人々に支えられ,一層発展していくことを期待いたしております。

おわりに,「うけつごう 豊かな緑と みんなの笑顔」をテーマとする本大会を一つの契機として,豊かな緑が,ここ沖縄の地から全国各地へと広がり,そして未来へと受け継がれていくことを祈念し,私の挨拶といたします。