文仁親王同妃両殿下 ハワイご訪問を終えられてのご印象

文仁親王同妃両殿下 ハワイご訪問を終えられてのご印象

ハワイの訪問を終えて(平成30年6月11日(月))

日本人が1868年に初めて集団で海外移住をしてから150年目に当たる本年,ハワイ州政府のお招きによる同州訪問は,私たちにとって大変意義深いことでした。ハワイ島においては,キラウエア火山の噴火という大変な時期ではありましたが,そのような中でイゲ州知事始め関係者が手厚く迎えて下さったことに深く感謝いたします。

この150周年を記念する「ホノルルにおける元年者記念式典およびシンポジウム」,そして毎年日本で開催されている「海外日系人大会」がこの節目の年に当たってハワイで開催され,この2つの行事に出席することが今回の訪問の主な目的でした。いずれの催しも多くの出席者の参加のもとに行われ150周年を祝すとともに,日本とハワイ,そして各国における日系社会との関係を振り返り,今後さらに発展していくことへの一つの大きな契機になったことと思います。

これら2つの主たる行事に先立って,ハワイへの最初の移住者である元年者以降の日本人移住者や日系人についての展示をビショップ博物館とハワイ日本文化センターにて見学しました,サトウキビのプランテーションにおける過酷な労働の様子についての資料や元年者からその子孫にいたる家系図,戦時中の様子など多くの貴重な展示,また,日系人が大切にしてきた日本語の言葉の紹介の展示を見学することによって理解を深めることができました。そして帰国の前には,県人会としては唯一独立した施設であるハワイ沖縄センターにおいて,ハワイと沖縄の繋がりについて説明を受けるとともに琉球舞踊を鑑賞し,この地において,沖縄の文化も世代を超えて継承されていることを喜ばしく思いました。

さらに今次訪問に当たって,ハワイ州のイゲ知事夫妻,ホノルル市のコードウェル市長夫妻,そして私的にアリヨシ元知事夫妻それぞれから晩餐ないし午餐へのお招きを受け,心和む一時を過ごせたこともよい想い出となりました。

この5日間の滞在中,日系,そして日本と関わりの深い人たちに会い,お話をすることが,度々にありました。100年以上前に日系移民のための慈善病院として開設されたクアキニ・ヘルス・システムでは,100歳を筆頭に日系の高齢者と話をし,その中の幾人かからは優しい歓迎の言葉をいただき,握手をとおして手の温もりを感じつつ,心穏やかな時間を過ごしました。

天皇皇后両陛下のご結婚を祝して創設された皇太子明仁親王奨学金で日本へ留学した人や日本からハワイへ来て学んだ人たちとも懇談をしました。奨学生が一様にこの制度に感謝しており,本奨学金を受けたことを契機として,その後の研究の道が拓けたと話していた人もいました。このような話を聞けたことは,私たちにとって誠に嬉しいことでした。

また,ハワイ大学において日本語を学ぶ大学生と話をする時間も持ちました。学生のほとんどが第2専攻として日本語を履修していましたが,流暢に日本語を話し,日本の学校で教えたいという学生も幾人かおり,感銘を受けました。

私たちにとってハワイはほとんど初めて訪れる地域でした。そのようなことから,ハワイの多様な文化や土地固有の智について知ることができる場所を訪れられたことは幸いでした。

ビショップ博物館ではハワイを始め,オーストロネシア諸語の地域を包括した展示を見学し,視覚的に共通点や相違点の一端に触れることができましたし,ホノルル美術館では20世紀初頭に作られたハワイアン・キルトを見ることができました。また,ハワイ大学に附属するカネワイ文化庭園とライオン樹木園においては,ネイティブ・ハワイアンの植物利用と民族知についての説明を受け,古人が暮らしの中から得た知識とそれに基づく深い智恵に改めて思いを馳せる機会になりました。

また,それぞれの場所においてレイをいただき,お祈りやフラがあり,迎えてくださる人たちの自らの文化に対する誇りと私たちに対する心遣いが伝わるものでした。

ハワイには,広島,山口,熊本,沖縄,福岡など各県からの移住者が多くおり,この度の滞在中には,盛んに行われている県人会の活動についても,お話を聞くことができました。また,ハワイ州においては,州レベル,市・郡レベルで日本の様々な地方自治体と姉妹関係を結んでおり,それぞれが活発に交流を行っていることは,日本とハワイの間における相互理解に大いに寄与することと思います。

今回の訪問で,多くの人々が私たちを温かく迎えてくださったことは誠に有り難いことでした。そして,私たちの訪問に際し,心を寄せ,力を尽くしてくださった方々に感謝の意を表します。この150周年を一つの礎として,日本とハワイ,日本と米国との友好関係がさらに促進されることを心から願っております。