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主な式典におけるおことば(令和7年)

秋篠宮皇嗣妃殿下のおことば

「第76回結核予防全国大会」大会式典
令和7年2月5日(水)(盛岡グランドホテル)

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「第29回結核予防関係婦人団体中央講習会」開講式
令和7年2月26日(水)(KKRホテル東京)

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第57回愛育班員全国大会
令和7年4月22日(火)(明治記念館)

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筑波大学附属聴覚特別支援学校創立150周年記念式典
令和7年5月22日(木)(筑波大学附属聴覚特別支援学校)
【おことばは、手話でも述べられています。】

 本日、筑波大学附属聴覚特別支援学校の創立150周年記念式典にあたり、お集りの皆さま方にお会いできましたことを大変うれしく思います。

 筑波大学附属聴覚特別支援学校の歴史は、明治8年に楽善会が結成されたときに遡ります。楽善会のもとに、東京の築地で訓盲院として始まり、名前や場所がたびたび変わる中、開校以来、日本の聴覚障害教育の研究と実践に力を注いでこられました。そして多くの子どもたちがこの学び舎で過ごし、その後、様々な分野で活躍されてきました。これまで学校が歩まれてきた長い道のりと、耳が聞こえない・聞こえにくい子どもたちの教育に力を尽くされてきた方々に思いをはせ、感謝と敬意を抱きながら、皆さまと共に今日のよき日をお祝いしたいと思います。

 私はこの学校をたびたび訪れる機会に恵まれました。ある日は、幼稚部で子どもたちと家族が遊ぶ輪の中に入って、一緒に楽しみました。あるときは、小学生が算数や音楽の授業を熱心に受ける姿や、中学生が弁論大会で堂々と自分の意見を述べる姿を見て、子どもたちの成長を頼もしく感じました。また、高校生たちが、フランスの国立パリ聾学校の生徒たちと、日本の手話、フランスの手話、ジェスチャーや筆談と工夫しながらコミュニケーションをとる場面に見入ったこともありました。校舎に隣接する寄宿舎では、故郷や家族から離れて暮らす高校生の生活を支える方々の大切なお話を伺うこともありました。そして本日は、この式典の前に専攻科の生徒たちの美術作品を鑑賞し、心動かされました。

 こうして私は、この学校で、子どもたちが学びを深め、考える力、感じる力を伸ばし、一緒に課題に取り組み、気づきや発見、「わかる」という経験を重ね、自分の世界を広げている姿にふれることができました。豊かな学びをしながら成長していく子どもたちを見守り支えてこられた教職員とご家族、多くの方々に深く敬意を表します。

 この学校の校庭には、樹齢350年ほどの大きな欅の木があります。私は、この学校で学んだ方々から、この欅のもとですごした時間が思い出深く、懐かしいという話をお聞きしました。ここにおられる幼稚部、小学部、中学部、高等部の皆さんも、欅の木々に抱かれて、学んだり、遊んだり、行事や活動に参加したりと、さまざまな経験をされていることでしょう。これからも、興味を持っていること、好きなことを深め、広げ、自分らしい道を歩んで行かれますよう希望しています。

 筑波大学附属聴覚特別支援学校の教育の積み重ねが、これからの聴覚障害教育の一層の発展につながっていきますよう心から願い、式典に寄せる言葉といたします。

第100回日本結核・非結核性抗酸菌症学会学術講演会 ―学術講演会100回を祝う記念式典―
令和7年6月6日(金)(パシフィコ横浜)

 本日、第100回日本結核・非結核性抗酸菌症学会学術講演会が開催され、お集まりの皆さまにお会いできましたことを大変うれしく思います。

 学術講演会は、1923年に北里柴三郎博士らにより「日本結核病学会」が設立された年に初めて開催され、今回で第100回を迎えました。本学術講演会で発表された最初のテーマは、「初感染発病論」でした。基礎研究だけでなく、臨床に関連した研究も進展し、胸部レントゲン検診車による集団検診方法の確立や、長期保存可能なBCGワクチンの開発などに活かされてきました。また、近年では最新の研究成果に基づいて、結核の検査・診断・治療における各種の提言やガイドラインの作成がおこなわれていると聞いています。

 我が国では、こうした研究を背景に、長年にわたり結核対策が着実に実施され、2021年には、罹患率が十を下回り、低蔓延国となりました。しかし、多剤耐性結核、リスクの高い高齢患者の増加や、免疫が低下する疾病の患者が結核に罹患することへの対処など、新たな課題が生じています。

 国連の持続可能な開発目標・SDGsの3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」ためのターゲットの一つとして、「2030年までに結核を終息させる」という課題が掲げられています。世界に目を向けると、1年間に約1,080万人が結核に罹患し、125万人が亡くなっているとWHOが推定しています。コロナ禍が落ち着き、人の往来も再び盛んになる中、海外から来日して発症する患者への対応も増加してきました。国内の感染対策の点においても、国際協力の観点からも、結核の終息を目指すために、患者の発見、診断、治療、さらには患者の心のケアや社会的支援など数々の分野で、日本の結核研究の進展が期待されています。

 一方、結核に代わるように感染者が増加している非結核性抗酸菌症は、病態や診断・治療の方法など解明されていない部分が多く、予防・診断・治療ともに多くの課題が残されていることから、今後の研究の発展が求められています。本学術講演会における非結核性抗酸菌症に関する研究発表数も、1970年代から増えてきました。そうしたなか、「日本結核病学会」は2020年に、「日本結核・非結核性抗酸菌症学会」と学会名を改めました。

 先月、結核研究所を訪ね、非結核性抗酸菌症の治療や研究の現状と課題についての説明を受けました。非結核性抗酸菌症は、菌に感染していても症状が顕在化しない人から、酸素投与を必要とする重症の人まで病態が幅広く見られ、薬剤の投与には、常に最新の研究動向を参考にしながら、患者の状態を見極めて対応する必要があると聞きました。感染源となる菌が土や水など身近な生活環境に広く存在することをはじめ、この感染症の特徴を患者やその家族に理解してもらうことにも難しい面があるとの話でした。

 また、結核研究所と隣接する複十字病院で働く、重症者の肺切除をおこなう外科医、菌に対応した適切な投薬にあたる薬剤師、長引く通院に不安を抱える患者に寄り添う臨床心理士、免疫力をつけるための生活指導をおこなう栄養士など、多様な職種の人たちが協力して、チーム医療の向上に日々努めているということも聞きました。日本の各地で、こうした多職種による連携がおこなわれていることを知り、皆さまの取り組みをありがたく心強く思っております。

 今回の学術講演会にも、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、保健行政の関係者など、多職種の皆さまが参加されています。これまで先人たちが積み重ねてきた歩みをさらに進めるために、研究・医療・ケアなどの情報を幅広く交換し、所属機関や職種を超えて連携し、これからの学会を担っていく若い参加者も共に、結核および非結核性抗酸菌症対策に資する研究に取り組んでいかれるよう、期待しております。

 大きな節目を迎えられた本学術講演会において、参加されている皆さまが、実り多い時間をすごされ、結核と非結核性抗酸菌症の研究がより一層発展していきますよう心より願い、式典に寄せる言葉といたします。