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主な式典におけるおことば(令和7年)

秋篠宮皇嗣殿下のおことば

第65回交通安全国民運動中央大会
令和7年1月15日(水)(文京シビックホール)

 第65回交通安全国民運動中央大会が開催されますことを誠に喜ばしく思います。
 そして、日頃からの交通安全活動への貢献により、本日表彰を受けられる方々に心からお慶びを申し上げます。

 近年の交通事故による死亡者数を見ますと、ピーク時の1970年と比べ、6分の1以下になっております。このことは、交通安全に関わっている多くの方々の長年にわたるたゆみないご努力の賜物と申せましょう。

 しかしながら、昨年、交通事故で亡くなった人の数は、2,663人で、その前年より15人減少したものの、いまだに年間2,000人以上の尊い命が失われています。また、交通事故により、約34万人が負傷しており、多くの人々が生活をする上で困難があったり、悲しい思いをしたりしています。そして、高齢者が関係する事故や、飲酒運転など悪質で危険な運転も問題になっております。

 私たちが利用している道路では、日々多くの人や車が往来しており、路上の交通事故は、何時でも、何処ででも、誰にでも起こり得ます。
 一人ひとりが、生命の尊さと交通事故の重大性を深く心にとどめ、運転者が自覚を持つのはもちろんのこと、歩行者も事故に遭わないように気をつけることが大切です。そして交通道徳を高め、これらを確実に実践することが肝要でありましょう。
 その上で、何よりも、運転者や歩行者それぞれが、相手の立場に配慮し、思いやりのある行動をとることが求められていると考えます。

 その意味からも、各地で活動され、豊かな知識と経験をお持ちの皆様が、このように一堂に会し、交通安全についての諸施策を協議されることは、誠に意義深いことであります。

 おわりに、本日の受賞者をはじめ、全国津々浦々で交通事故防止に取り組んでおられる皆様のご尽力に深く敬意を表します。そして、交通事故のない安全で安心して暮らせる社会の実現に向け、交通安全運動がさらに進むことを祈念し、大会に寄せる言葉といたします。

「第21回日本学術振興会賞並びに日本学士院学術奨励賞」授賞式
令和7年2月4日(火)(日本学士院会館)

 本日、「第21回日本学術振興会賞並びに日本学士院学術奨励賞」授賞式が開催され、皆様にお目にかかれましたことを大変(うれ)しく思います。

 本日受賞をされた皆様に心からお祝いを申し上げます。
 受賞された皆様は、それぞれの専門分野において研究を進め、今までに秀逸な業績をあげてこられました。このたびの受賞を一つの契機として、今後もさらに成果を積み重ね、幾久しく活躍されることを心から願っております。

 学術研究は、研究者の知的好奇心や自由な発想、そして研究への意欲に端を発し、地道な研究の継続を経て、真理の探求、経済の持続的発展、生活の利便性向上、心の豊かさの増進など、様々な成果を生むにいたるものと理解しております。

 現在、人類社会は、気候変動やそれに伴う自然災害、さまざまな疾病や食料・エネルギー問題をはじめ、多くの困難な課題を抱えております。これらを解決していくためには、多様な学術領域からの知的貢献が必要不可欠なものとなっております。

 その意味で、我が国の学術研究を支える日本学術振興会と日本学士院が協力して、人文学、社会科学から自然科学にわたる幅広い分野の若手研究者を顕彰し、研究意欲をより高め、研究の発展を支援しようとすることに大きな意義を感じます。それとともに、若い世代の研究者が業績をあげていかれることは、学術の発展を期待し、その成果を享受、あるいは共有する国民にとっても大変喜ばしいことと申せましょう。

 おわりに、日本の学術研究が、関係の皆様のご尽力によって一層進展することを心より祈念し、式典に寄せる言葉といたします。

第70回青少年読書感想文全国コンクール表彰式
令和7年2月6日(木)(経団連会館)

 本日、第70回青少年読書感想文全国コンクールにおいて、多数の応募作品の中から選ばれ、表彰される方々に、心からお祝いを申し上げます。

 青少年読書感想文全国コンクールは、幼少期から本に親しみ、心豊かに生きる糧にしてほしいという願いから、1955年に始まりました。その時以来、関係者の長年にわたるご尽力により、今では、全国の児童・生徒のほぼ5人に1人が応募するまでのコンクールに発展したと承知しております。そして本年、70回という記念すべき表彰式で、皆様とお目にかかれましたことを大変嬉しく思います。

 受賞作品のいくつかを拝読いたしましたが、自分の知らない世界に出会った感動を言葉で表現する力に驚くとともに、登場人物の気持ちに寄り添ったり、自分と重ねてみたりして、そこからさらに深く考えて得たことを、執筆者自身で昇華させている様子が窺えました。そして、皆さんの本に対する思いや共感する心に触れることができ、感銘を受けました。

 本を読んで感想文を書くとき、皆さんは、自分の考えをまとめながら自身の経験を振り返ったり、自分と向き合う作業をされたりしたことと思います。そのような自分を振り返ってみることは、面白い反面、楽しいだけではないかもしれません。しかし、本をつうじて自分とじっくり向き合う時間は、皆さんの心を豊かにしてくれたのではないでしょうか。

 日本の全世帯のスマートフォン普及率が約90パーセントと言われる今日、私たちを取り巻く情報通信環境は大きく変化しました。それにより、本があまり読まれなくなったと言われますが、年間で児童・生徒に読まれる本の数は決して減っているわけではないとも聞きます。実際、今回のコンクールに向けて、2万4千校近い学校から、230万編を超える作品が寄せられたとのことです。

 これだけ多くの応募があった背景には、日々読書指導に取り組まれている教員の方々のご努力があったことと推察いたします。また、青少年の心の糧になるような優れた著作を生み出された作家の方々、そのような作品を美しい装丁と共に世に送り出された出版関係の方々、そして、全国各地で青少年の読書活動を支援してこられた方々のご尽力に心からの敬意を表します。

 おわりに、本コンクールの発展に力を尽くしてこられた全ての方々に深く敬意を表します。そして、この意義あるコンクールが将来に向けてさらに発展し、これからも多くの児童・生徒たちが一層本に親しみ、心豊かに成長していくことを祈念し、表彰式に寄せる言葉といたします。

社会福祉法人恩賜財団(※正しくは「恩賜」「財団」を二段組みとして、一文字分の大きさで示したもの。)「令和6年度済生会総会」
令和7年2月16日(日)(愛媛県県民文化会館)

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2025年日本国際博覧会レセプション
令和7年4月12日(土)(ホテルニューオータニ大阪)

 184日間にわたって開催される2025年日本国際博覧会「大阪・関西万博」の開会式が、天皇皇后両陛下ご臨席のもと行われ、先ほど滞りなく終了いたしました。
 明日の開幕に先だって、これまでこの博覧会の開催に向けて尽力してこられた多くの皆様に、この会場でお会いできましたことを、大変嬉しく思います。

 本日の開会式では、式典とともに、このたびの博覧会のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を体現するさまざまなパフォーマンスが行われました。
 これらを通じて、世界が「国際博覧会」で一つとなり、人類が直面している共通の課題への解決策を考えていく意義が改めて共有されたのではないかと思います。

 前回、大阪で日本万国博覧会が開催されたのは1970年のことでした。私もその時のことは、強く印象に残っております。今回、当時の万博を経験された方々はもちろん、幅広い世代の方々にこの博覧会を楽しんでいただきたいと思います。
 そして、世界との出会いというすばらしい体験が世代を超えて共有され、次世代へと引き継がれていくことを期待いたしております。

 このたびの国際博覧会の準備に携わってこられた地元大阪府、大阪市を始めとする、国内外の関係者の熱意と努力に対して、心からの敬意を表します。そして、会場を訪れる皆様が、世界各地から来訪される方々との交流を通じ、「いのち輝く未来社会」をともに創り上げていくことを祈念し、私のあいさつといたします。

 ありがとうございました。

令和7年度公益社団法人日本動物園水族館協会通常総会
令和7年5月21日(水)(ホテルアソシア豊橋)

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公益財団法人日本国際医学協会創立100周年記念レセプション
令和7年5月29日(木)(在京ドイツ大使公邸)

 このたび「公益財団法人 日本国際医学協会」が、前身の「医学談話会」から数えて、創立100周年を迎えられましたことを心からお喜び申し上げます。

 1925年、医師の継続的な医学教育を目的として石橋長英博士によって設立された「医学談話会」は、1939年に日独医学協会の名で財団法人として認可され、1952年に現在の日本国際医学協会に改称されました。その間、貴協会は一貫して医師の生涯教育と医学を通じた国際親善を進めてこられました。

 我が国との医学交流は、エルヴィン・フォン・ベルツ博士や森鷗外博士に代表されるように、明治以来ドイツを中心として行われてきました。石橋長英初代理事長は、1939年に締結された「日独医学協定」の成立に尽力され、多数の日本人医師や研究者のドイツへの留学や使節団の派遣、ドイツ人医師・研究者の日本への招聘を支援され、日本の医学・医療の発展に大きく貢献されました。

 貴協会の熱意もあって、両国の交流は市民にも拡がり、たとえばベルツ博士ゆかりの群馬県草津町とビーティヒハイム・ビッシンゲン市や、栃木県旧石橋町、現在の下野市と旧シュタインブリュッケン、現在のディーツへルツタール市では姉妹都市協定が締結され、定期的な人的交流が行われていると伺っております。

 また、医師の生涯教育については「国際治療談話会」を定期的に開催され、専門分野別に細分化されつつある医学の再統合をはかり、領域にとらわれない医学を提唱されています。そして、国際治療談話会の「感想」は、医学、歯学、薬学以外の分野の有識者を迎えて行われている講演ですが、広範な知識と倫理を求められる医師の生涯教育として大変意義深く、かつ独自性が高い取り組みであると申せましょう。

 おわりに、日本国際医学協会が、今後も日本とドイツを始めとする国際医学交流ならびに医師の生涯教育に貢献し、ますます発展していかれることを祈念し、創立100周年にあたってのお祝いの言葉といたします。
 

第36回全国「みどりの愛護」のつどい
令和7年6月7日(土)(森のホール21(松戸市文化会館))

 本日、第36回全国「みどりの愛護」のつどいが、ここ千葉県松戸市において開催され、日頃から緑の愛護活動に携わっておられる皆様とともに出席できましたことを大変嬉しく思います。
 そして、このたび、花と緑の愛護に顕著な功績を残され、「みどりの愛護」功労者国土交通大臣表彰を受賞された94団体ならびに千葉県都市緑化功労者知事表彰を受賞された32団体の皆様に心からお祝いを申し上げます。

 千葉県は、気候が温暖で三方を海に囲まれ、雄大な景色を作る海岸線や数多くの里地里山など美しい自然に恵まれています。
 また都市部においても、緑化活動などによって緑豊かな景観が保たれ、そこに暮らす人々に快適さや潤いをもたらすとともに、訪れる人たちにも魅力的な場所になっていると伺っております。

 この全国「みどりの愛護」のつどいは、緑に関わる全国の関係者が一堂に会し、広く都市緑化意識の高揚を図り、緑豊かな潤いのある住みよい環境づくりを進めるとともに、緑を守り育てる国民運動を積極的に推進していくことを目的として開催されてまいりました。
 緑は美しい景観を生み出し、人々にゆとりや安らぎを与えるだけでなく、気候変動や生物多様性の保全など、地球規模の環境問題に対処する上で、非常に大切な役割を担っています。

 それ故、この貴重な緑を守り、新たな緑を創り出し、育むとともに、次世代につないでいくことが必要であると感じております。その意味で、本日表彰を受けられた皆様の地道な努力と継続的な活動は、大変意義深いものであり、そのご尽力に深く敬意を表します。

 おわりに、この「みどりの愛護」のつどいに参加された皆様がお互いに交流を深め、緑を守り育てる心をさらに高められることによって、緑豊かな環境づくりが一層発展していくことを祈念し、私の挨拶といたします。