文仁親王同妃両殿下 チリご訪問を終えられてのご印象

文仁親王同妃両殿下 チリご訪問を終えられてのご印象

チリ訪問を終えて(平成29年10月6日(金))

日本とチリとの外交関係樹立120周年の機会に,チリ共和国政府のお招きで同国を訪問できましたことを大変嬉しく思います。

このたびの訪問においては,バチェレ大統領閣下への表敬,それに続く両国の外交関係樹立120周年を記念する式典と午餐会への出席,120周年を記念する日系人写真展,日系社会の人たちやJICA関係者,チリ在住の邦人との交流の他,この節目の年にあたって両国の協働を基礎とする場所,具体的には防災,医療,サケ・マスの養殖の施設を廻りました。

なかでも防災分野においては,古来より両国には地震と津波という共通した課題を有し,太平洋を挟んで地球の反対側に位置する日本とチリでありながら,一国で発生した津波がもう一国に到達し,両国に被害をもたらした津波もありました。その二つの国が防災分野で協力をし,この分野が進展していくことは,日本とチリのみならず,地震や津波などの自然災害が発生する様々な地域における防災や減災に貢献するのではないかと思います。

このことに関連しますが,両国は昨年11月,「世界津波の日」に合わせて津波に対する共同避難訓練を行い,私たちが訪れたバルパライソ州では約10万人の市民が参加したと聞き及んでいます。これから先も,この協働が進展するこ とを願っております。

日系社会の方たち,そして日系ではないものの,様々な形で日本と縁が深い方たちともお話をする機会がありました。そのなかには,私たちが以前にお目にかかっている方もおられましたが,今回お話をしているなかで,改めて日本とチリとの良好な関係にそれらの方々が寄与していることを感じました。

また,日本人学校の児童・生徒,そしてサンティアゴ大学で日本語および日本の文化を学んでいる学生と交流する機会もありました。チリと日本の双方の文化に触れながら育っている児童・生徒や,日本と日本の文化に関心を寄せてくれている若い世代の人たちが,将来,両国の架け橋となってくれるであろうことを感じたひとときでした。

チリは南北に約4300キロあり,北部の砂漠地帯から氷河が存在する南部のパタゴニアまで,美しく多種多様な気候と自然景観を有する国です。今回はそれらのうちのごく一部をロス・ラゴス州滞在中にビセンテ・ペレス・ロサレス国立公園で経験することができました。中南米で最古の国立公園である同公園内には,在留邦人の間で「チリ富士」と呼ばれるオソルノ火山やペトロウエの滝などがあります。生憎の天候で,オソルノ火山は麓の部分のみしか見ることができませんでしたが,豊富な水が勢いよく流れるペトロウエの滝の景観や,その付近に自生する常緑樹やシダを始めとする植物,地衣類を堪能することができました。

また,ノーベル文学賞を受賞した詩人のパブロ・ネルーダ氏の邸宅であったラ・セバスティアーナ博物館や19世紀にチリに移住したドイツやオーストリアからの人々が持参した生活用具や農機具等が展示されているアントニオ・フェルメル博物館,そしてチリ固有の鶏であるアラウカーナの系統を維持しているピルケ農業学校や19世紀に設立されたコンチャ・イ・トロ・ワイナリーなど,いずれも興味深く見学をすることができ,よき想い出となりました。

今回訪問をした各地において,多くの人たちに温かく迎えていただいたことは,大変有り難いことでした。そして,私たちの訪問に際し,心を寄せてくださった多くの方々に感謝の意を表します。この120周年を一つの契機として,日本とチリとの友好関係がさらに促進されることを心から願っております。