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秋篠宮皇嗣同妃両殿下 トルコご訪問時のおことば(一覧)

トルコ

令和6年12月5日(木)
日本トルコ外交関係樹立100周年記念式典(アタテュルク文化センター)

オスマン・アシュクン・バク青年スポーツ大臣、
ネジメッディン・ビラル・エルドアン世界エスノスポーツ連盟会長、
セルダル・チャム文化観光副大臣、ご列席の皆様

 日本とトルコ共和国が外交関係を樹立してから100年を迎えた本年、トルコ共和国政府からご招待をいただき、妻と共に貴国を訪問できましたことは、私たちにとりまして大きな喜びであります。そして、本日の「日本トルコ外交関係樹立100周年記念式典」を皆様と共に、このように盛大にお祝いできますことを誠に嬉しく思います。

 日本とトルコは、地理的にアジア大陸の両端に位置していますが、11世紀に書かれた『テュルク語集成』内の世界地図には、「JABARGA」という名の島が描かれており、それが日本のことだと考えられています。もし、この島が本当に日本であるならば、トルコにおける日本の最初の記録であろうかと思います。

 さて、近代における日本とトルコとの友好関係は、日本が明治時代を迎え、対外関係が活発になった時期に始まりました。1887年には、小松宮彰仁親王同妃がオスマン帝国の首都であった当地イスタンブールを訪れ、スルタンのアブデュル・ハミト2世に謁見するなどの厚遇を得ました。その報告を受けた明治天皇は、お礼にアブデュル・ハミト2世に親書とともに漆器などの品々を贈ったことが記録に残っています。その後1890年には、小松宮同妃のオスマン帝国訪問と明治天皇からの贈り物に対する答礼として特使が派遣されました。その時に贈られた刺繍は今でも保存されています。そして、特使の一行を乗せ、贈呈品を運んで来たのがエルトゥールル号でした。

 エルトゥールル号は帰路に遭難し、その特使であった艦長のオスマン・パシャはじめ多くのトルコ軍人が犠牲になった悲劇でありました。しかし、その際の日本側の懸命の救出援護活動は、日本とトルコ両国の交流の原点になったと言えます。そして、新生トルコ共和国が成立すると、直ちに両国間の外交関係が開設されました。本年はその時から数えて100年に当たりますが、両国の間には、このように、互いの交流の長い歴史が刻まれていることを忘れてはなりません。

 日本とトルコは、一般的な交流にとどまらず、トルコ語の諺である「雨天の友」のように、困難な時に助け合う歴史を重ねてきました。エルトゥールル号遭難時に、和歌山県の大島村村民が救出にあたったことや、イラン・イラク戦争の際に、トルコ政府がテヘランの在留邦人救出のためにトルコ航空機を派遣してくださった事案は、互いの国に対する深い友情を示す証左と言えましょう。

 さらに、両国は、地震が多発する国同士として助け合ってきました。
 昨年トルコで発生した南東部地震をはじめとした地震に際し、日本から国際緊急援助隊やNGO関係者が現地に駆けつけました。いっぽう、2011年に東日本大震災が発生した際には、トルコからの緊急援助隊が、3週間という諸外国チームの中で最も長期にわたり救助にあたってくださいました。

 このような、両国の「絆」を象徴する出来事が、次の100年に向かっても語り継がれていくことを願っております。

 経済協力の面では、こちらイスタンブールにおいて、ボスポラス海峡第二大橋、アジアと欧州を結ぶボスポラス海峡横断地下鉄道「マルマライ」、バシャクシェヒル松と桜都市病院の建設や運営などが、両国の技術と努力によって実現しました。

 また、教育や研究の面に目を向けますと、トルコが中東諸国の中で最も多くの日本語学習者を数えることからもわかるように、日本に対する関心は極めて高く、日本研究も進んでいると伺っております。

 そして、考古学の分野においては、三笠宮崇仁親王殿下の鍬入れで始まったカマン郡に所在するカマン・カレホユック遺跡の発掘調査が、40年近くにわたって継続しています。

 1998年には、日本の中近東文化センターの附属機関として、アナトリア考古学研究所が設立されました。そして現在、その後に竣工された研究所では、日本とトルコ、そして各国から訪れる研究者が協力して、調査・研究が進んでおります。

 このように、日本とトルコとの友好関係は、多岐にわたる分野での協力と交流を通じて、深く強固なものとなっておりますが、この両国の関係は、厚い信頼によって築かれたものと申せましょう。

 最後になりますが、本日のトルコの民族舞踊と日本の和太鼓の公演、そして両国の共演は、日本・トルコ外交関係樹立100周年記念事業の最後を飾る意義深い催しです。ご列席の皆様と共に、公演を楽しみたく思います。そして、両国の繋がりが、本年を里程標として、未来へ向けて今以上に強くなり、深化することを心より祈念し、私の挨拶といたします。