天皇皇后両陛下 英国ご訪問時のおことば(一覧)

英国

令和6年6月24日(月)
日英友好団体主催レセプションにおける天皇陛下のおことば(ロンドン・ヒルトン・オン・パークレーン)
【実際のおことばは、英語で述べられています。こちらのページでは、和訳したものを掲載しています】

グロスター公殿下、
エモット日本協会会長及び共催団体代表の皆様、
当地日本人コミュニティの皆様及び日本の親愛なる友人の皆様、

 本日は、ビジネス、文化、学術、芸術などの幅広い分野において日英の協力関係を支えてこられた皆様にお会いする機会を得ましたことを大変(うれ)しく思っております。本日のこの集いが、長年にわたり日英関係の増進に力を注がれてきた各団体の御尽力により催されることは意義深いことです。

 私たちの社会を発展させ、国と国との交流の礎となるものは、人と人とのつながりです。本日のこの交流の場に若い方々も参加されていることを大変喜ばしく思います。日英関係が、こうした人と人とのつながりという堅固な土台の上に、将来にわたって一層力強く発展していくことを期待しています。

 本日の集まりを通じて、日本と英国との友好親善と協力関係の更なる発展につながることを願いつつ、皆様の御健勝と御多幸を祈ります。

令和6年6月25日(火)
英国国王王妃両陛下主催晩餐会における天皇陛下のご答辞(バッキンガム宮殿)
【実際のおことばは、英語で述べられています。こちらのページでは、和訳したものを掲載しています】

国王王妃両陛下

 温かい歓迎のお言葉を頂き、ありがとうございます。この度は、私と皇后を国賓としてお招きくださり、訪問の実現に向けて国王王妃両陛下を始め貴国の皆様から多大なる御配慮と御尽力を頂いたことに、心から御礼申し上げます。敬愛する故エリザベス2世女王陛下に御招待を頂いてから、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、こうして約5年の月日を経て国賓として英国の地を訪れることができましたことは、誠に喜びに堪えません。

 先ほど、国王陛下は、長きにわたる二国間の絆に触れられました。本日の午後には王室コレクションの我が国ゆかりの品を拝見し、改めて日本と英国の間で長きにわたり織りなされた交流の歴史を振り返ることができました。私自身、英国で学び、多くの人々と関わり合い、中でも王室の皆様には大変温かく接していただくなど、両国の交流の一端を担ってきたことを(うれ)しく、また、有り難く思っています。日英両国には、友好関係が損なわれた悲しむべき時期がありましたが、苦難のときを経た後に、私の祖父や父が女王陛下にお招きいただき天皇としてこの地を訪れた際の想いがいかばかりであったかと感慨深く思います。そして、計り知れぬ努力をもって、両国の未来の友好のために力を尽くしてこられた人々に、皇后と共に深い敬意と感謝の念を表します。

 私の祖父は、1971年の晩(さん)会で、日英両国の各界の人々がますます頻繁に親しく接触し、心を開いて話し合うことを切に希望し、また、私の父は、1998年に同じ晩(さん)会で、日英両国民が、真にお互いを理解し合う努力を続け、今後の世界の平和と繁栄のために、手を携えて貢献していくことを切に念願しておりました。

 現在、我々の社会は、ますます多様化・複雑化し、地球規模の各種課題に直面しており、世界全体で一層英知を結集しこれらの重要課題の解決に努める必要があります。そのような中、日英両国民の長年にわたる心を開いた話合いと真の相互理解への努力が実を結び、両国が連携・協力して世界を牽引(けんいん)している分野が、これまでも、またこれからも数多(あまた)あるということを大変(うれ)しく思います。

 例えば、日英の科学者の最先端の医学研究による世界への貢献です。ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授の研究で知られるiPS細胞は、同賞を共同受賞した英国のガードン博士の先行研究の成果を踏まえたものであり、再生医療に革新をもたらしました。明日訪れる予定のフランシス・クリック研究所でも、がん研究やインフルエンザへの対応において日英の若手研究者を含む多くの関係者が協力し、新たな挑戦に取り組んでいます。

 また、昨日は私的にテムズバリアを視察いたしました。テムズバリアは、1953年に起きた英国史上最悪の北海高潮被害(the 1953 North Sea Flood)を踏まえて建設されました。英国における高潮予測の発展には、日本人研究者の石黒鎮雄(しずお)博士、日系英国人でノーベル文学賞受賞者の作家カズオ・イシグロ氏のお父上が重要な役割を果たされました。石黒博士は、英国の研究所に迎えられ、北海の高潮の正確で迅速な定量的予測を実用化しました。石黒博士がその研究から発展させたアナログ計算機は、カズオ氏によるとBBCドラマ「ドクター・フー」(Doctor Who)のタイムマシーン「ターディス」(TARDIS:Time And Relative Dimension in Space)の内側のようだったとも聞いています。石黒博士による電子工学と海洋科学の学際的イノベーションは独創的であり、今を生きる日英両国の研究者にも、時空を超えて大きなインスピレーションを与えているものと思います。

 今回、国王陛下がパトロンを務めておられる王立キュー植物園を23年ぶりに再訪し、「ミレニアム・シード・バンク」による絶滅回避のための種子保存の取組などについて視察することを楽しみにしています。国王陛下が気候変動や生物多様性等の問題に情熱と危機感を持って取り組まれてきたことに敬意を表するとともに、日英の多くの人々がこうした環境問題に関心を持ち、諸課題の解決に力を尽くしてきていることに勇気付けられます。「ミレニアム・シード・バンク」には、東日本大震災の津波被害により高田松原で数万本の松が倒れる中で唯一残った「奇跡の一本松」と同じアイアカマツなどの種子が岩手県から寄贈されたと伺っており、強(じん)性や震災からの復興、そして日英友好の象徴として永く保存されることでしょう。

 最新鋭の技術を駆使したパフォーマンス・ラボラトリーの視察など、王立音楽大学を再び訪問することも楽しみにしています。また、皇后と共にV&A(ヴィクトリア&アルバート)子ども博物館を訪問し、日英の子供たちと交流して、両国の文化や芸術が、国や時代の枠を超えて子供たちにどのようなインスピレーションを与えているのか、(じか)に感じられればと思います。さらには、皇后と私が留学し、一学生として英国の生活・文化を経験したオックスフォードの地を訪れ、国王陛下の母校のケンブリッジ大学ではありませんが、日英間の学術・研究・教育分野での協力や若い世代の交流の促進に少しでも貢献できればと考えています。日英関係は、長い年月をかけ世代を超えた人々の交流を通じて育まれてきました。今回の英国訪問を通じて、両国の友好親善関係が、次代を担う若者や子供たちに着実に引き継がれ、一層進化していく一助となれば幸いです。

 我々の時代においては、国王陛下からも言及があったとおり、政治・外交、経済、文化・芸術、科学技術、教育など、実に様々な分野で日英間の重層的な連携・交流が加速しており、日英関係はかつてなく強固に発展しています。裾野が広がる雄大な山を、先人が踏み固めた道を頼りに、感謝と尊敬の念と誇りを胸に、更に高みに登る機会を得ている我々は幸運と言えるでしょう。今後とも日英両国がかけがえのない友人として、人々の交流を通じて真にお互いを理解し合う努力を(たゆ)みなく続け、永続的な友好親善と協力関係を築いていくことを心から願っています。

 ここに杯を挙げ、国王王妃両陛下の御健勝と、日英関係の更なる発展と世界への貢献、そして両国国民の末永い幸せを祈ります。

令和6年6月26日(水)
シティ・オブ・ロンドン主催晩餐会における天皇陛下のご答辞(ギルドホール)
【実際のおことばは、英語で述べられています。こちらのページでは、和訳したものを掲載しています】

市長閣下
エディンバラ公殿下
御列席の閣下、卿、オルダーマン、シェリフ及びチーフコモナー並びに御来賓の皆様

 本日は、私のためにこのような宴を催していただき、また、ロード・メイヤーから温かい歓迎のお言葉を頂いたことに、心より御礼申し上げます。

 このギルドホールを、私は、オックスフォード大学留学中の1983年に一度訪れたことがあります。また、ギルドホールの図書館には、私が留学当時研究していた18世紀のテムズ川の水上交通史に関する史料集めのために何度か通ったことがあり、研究に有益な史料を見付けることができました。その際お昼時に近くのパブを訪れたことも良い思い出です。オックスフォード大学での何ものにも代え難い貴重な2年間を振り返る中で、英国の皆様に温かくお迎えいただいたことを改めて思い起こしております。

 留学当初は、どうしても英国のお金の扱いに慣れず、ついついコインより紙幣を多く使ってしまい、結果として手元には重いコインをためることとなり、ある時それらが財布から一遍にこぼれ落ちてしまったことがありました。私は大いに慌てましたが、周りにいた人達が手分けして拾ってくださり、英国の人たちの優しさに触れ、すがすがしい気分になりコレッジに帰りました。それが今や、英国では電子決済が一般化し、コインどころか財布すら持ち歩かず、クレジットカードやスマートフォンだけで済ます人も多いと聞き、40年という時の経過を感じます。

 他方、今回の訪問で変わらないと実感したのは、英国の皆様の温かいお気持ちと、シティ・オブ・ロンドンの活気やエネルギーです。シティと日本との関係を振り返れば、明治時代の幕開け、当時の日本が、世界に先駆けて産業革命を果たした英国から学び、近代化に向けて(まい)進していた時代にまで遡ります。東京と横浜を結ぶ、我が国初めての鉄道の建設費の多くは、このシティで発行した外債により調達され、我が国の経済繁栄のきっかけとなりました。そして今日(こんにち)では、2017年の「東京都とシティ・オブ・ロンドン・コーポレーションの交流・協力に関わる合意書」に代表されるように、日英の市場間の相互接続や自治体間の連携が強化されており、また、歴代ロード・メイヤーには毎年日本を訪問いただくなど、シティとの協力関係が更なる発展を遂げていることを、大変喜ばしく思います。

 日本と英国の経済関係に目を向ければ、現在、900以上の日系企業の拠点が英国に所在し、自動車、高速鉄道、精密機器、通信、洋上風力、金融、不動産、製薬など、実に様々な事業を通じて英国経済で重要な役割を果たしています。また、約22兆円、およそ1,150億ポンドに及ぶ日英間の直接投資が積み重ねられるなど、経済・投資分野における日英協力は深化を続けています。

 こうした両国の密接な結び付きは、人類が直面する課題に対する解を生み出す取組にまで進展しています。本日、私は、医療・生命科学の最先端の研究所であるフランシス・クリック研究所を訪問いたしました。ここでは、世界の人々の健康・保健を増進するため、日英両国の研究者が緊密に連携していると伺い、心強く思いました。また、こうした最先端の取組が、クリック博士によるDNAの二重()旋構造の発見など、先人たちの努力と偉業の上に積み上げられてきていることに、改めて思いを致しました。

 明日は、皇后と共に、V&A(ヴィクトリア&アルバート)子ども博物館を訪れ、日本の自然や民間伝承と、大衆文化・技術・デザインとの関係を取り上げた特別展を視察する予定です。日本の文化や芸術が、場所と時代を超えて、英国の子どもたちや英国で暮らす日本の子どもたちにどのようなインスピレーションを与えているのか、日英の子どもたちと触れ合いながら、実際に見て感じることを楽しみにしています。

 私たちの社会を発展させ、国と国との交流の礎となるものは、人であり、人と人とのつながりです。日英両国の人々は、人とのつながりを大切にし、先人が築いてきたものを踏まえ、自然や科学、文化・芸術など幅広い事象から発想を得ながら、新たな技術も柔軟に取り入れて、様々な課題の解決に果敢に取り組んできました。今回の私たちの英国訪問を通じて、両国の人々が、長年にわたる人と人とのつながりに裏打ちされた友好親善の(きずな)を再確認するとともに、人類共通の課題の解決のためのリーダーシップを次世代へとつないでいく機会となれば幸いです。

 ここに杯を挙げ、ロード・メイヤー御夫妻の御健勝と、シティ・オブ・ロンドンのますますの御発展、更に、日英両国民の末永い友好親善と更なる協力の進展を祈ります。

 ロード・メイヤーとシティ・オブ・ロンドン・コーポレーションに乾杯。

令和6年6月28日(金)
パッテン・オックスフォード大学総長主催昼食会における天皇陛下のおことば
【実際のおことばは、英語で述べられています。こちらのページでは、和訳したものを掲載しています】

パッテン総長
トレイシー副総長
御来賓の皆様

 パッテン総長から温かい歓迎のお言葉を頂くとともに、私と雅子のためにこのようなすばらしい機会を設けていただいたことに、心から御礼申し上げます。

 モードレン・ブリッジを通り過ぎ、荘厳な街並み、空に広がる「夢見る尖塔」を眺めるにつれ、私がオックスフォードで過ごした日々が、鮮やかに(よみがえ)ってきました。入学時の新しい生活への期待と不安の入り交じった複雑な気持ち、帰らざる人となられたハイフィールド先生とマサイアス先生とのやりがいを感じるとともに愛に(あふ)れたチュートリアル、マートン・コレッジでの昼食後や夕食後のMCR(Middle Common Room:大学院生・博士課程履修者等用のコレッジ内談話室)で仲間と飲んだコーヒーの香り。オックスフォードのありとあらゆるものに、瞬く間に過ぎ去っていった二年間の思い出がぎっしりと詰まっています。

 この昼食会の後には、私より5年遅れてベイリオルで2年間学ぶ恩恵にあずかった妻の雅子が、名誉法学博士号を授与していただく栄誉に浴します。雅子と私は、オックスフォードで経験した何ものにも代え難い日々について、しばしば楽しかった思い出を語り合います。唯一避ける話題は、マートンとベイリオルのどちらがオックスフォードで最古のコレッジかという問題です。このように、オックスフォード大学が私と雅子に与えてくれている比類ない豊かな機会とすばらしい思い出を、これからも大事にしていきたいと思います。また、日本の若者達が、オックスフォード大学のみならず海外へ留学して広く世界に学び、私たちと同様のすばらしい経験を得られることを希望します。そして、このオックスフォードで日常的に見られるような、国を越えた人と人とのつながりが、やがて世界中の国々や人々との前向きな関係を紡ぎ出すものに発展していけば、私にとって大きな喜びです。

 私がオックスフォードを離れた後も、日本とオックスフォード大学の関係に様々な進展があったことを、大変(うれ)しく思います。私が1991年に新館建設予定地の(くわ)入れ式に参加した日産日本問題研究所は今や全英随一の日本研究機関へと成長を遂げ、また、オックスフォード大学と日本企業との間では、糖尿病や代謝疾患、金融工学に関する産学連携も進んでいると聞きます。

 オックスフォード大学は、数百年の長きにわたって継承されてきた伝統の重みと、知的好奇心と深い教養により生み出された「新しいもの」を見事に融合させることにより、世界をリードし続けてきました。これからも、全てのコレッジやそこに活動する英国や日本を含む世界中から来ている学生や学者・研究者などがお互いに切磋琢磨(せっさたくま)し合いながら、日英両国のみならず、世界の未来を導き続けていくことを願います。