主な式典におけるおことば(令和6年)

秋篠宮皇嗣殿下のおことば

第64回交通安全国民運動中央大会
令和6年1月17日(水)(文京シビックホール)

 はじめに、元日に石川県能登地方を震央とする最大震度7の地震が発生し、それに伴う建物の倒壊や火災、津波などによる浸水により、石川県を中心に大きな被害が生じております。亡くなられた方々に深く哀悼の意を表します。

 今日ここには、被災地からご出席の方がおられると伺いました。また、震災による影響を受けたり、身近な人が被災されたりした方もおられるのではないかと思います。ここに心よりお見舞いを申し上げますとともに、被災地の復旧・復興を、この大会の場から願っております。

 本日、第64回交通安全国民運動中央大会が開催されましたことは誠に意義深いことであります。そして、このたび、日頃の交通安全活動への貢献により表彰を受けられる方々に心からお祝いを申し上げます。

 さて、昨年の交通事故による死亡者数は2,678人で、一昨年と比べ増加いたしました。しかるに、1970年のピーク時の6分の1以下となっております。このことは、全日本交通安全協会をはじめ、交通安全に関わっている多くの方々の長年にわたるたゆみない努力の賜物と申せましょう。

 しかしながら、いまだに年間2,000人以上の尊い命が失われ、30万件以上の交通事故が発生しております。その中で、高齢者が関係する事故や、飲酒運転など悪質で危険な運転も問題になっております。そして、それらのことによって、数多くの人々が辛い思いをしていると聞いています。

 私たちが普段利用する道路上には、日々多くの人や車が往来しており、路上の交通事故は、誰にでも起こり得ることです。
 一人ひとりが、交通事故を起こさないようにすることの自覚を持ち、また、交通事故に遭わないように気をつけるとともに、交通道徳を高め、これらを実践することが肝要であると考えます。そして、運転者や歩行者それぞれが、相手の立場に配慮し、思いやりのある行動をとることが求められております。

 本年の大会は、4年ぶりにコロナ禍前と同じ規模での開催と伺っております。このように、関係者が一堂に会し、交通安全に関わる多様な問題を話し合い、対策を考えることは、大変意義深いことと申せましょう。
 
 おわりに、本日の受賞者をはじめ、全国津々浦々で日々交通事故防止に取り組んでおられる皆様のご尽力に深く敬意を表するとともに、交通事故のない安全で安心して暮らせる社会の実現に向け、交通安全運動がさらに進むことを祈念し、大会に寄せる言葉といたします。

「全国学校・園庭ビオトープコンクール2023」発表大会
令和6年2月4日(日)(東京国立博物館 平成館)

 はじめに、今年の元日、石川県の能登地方を震源とするマグニチュード7.6の地震が発生いたしました。この地震によって、石川県を中心に甚大な被害が生じました。本日ここに集われている皆様も心を痛めておられることと思います。
 この地震で亡くなられた方々に哀悼の意を表します。そして、被災されている数多くの方々に心よりお見舞いを申し上げるとともに、被災した地域の復旧・復興を願っております。

 本日、隔年で開催されている「全国学校・園庭ビオトープコンクール2023」の発表大会に、皆様とともに出席できましたことを大変嬉しく思います。そして、このたび各賞を受賞される方々に心よりお祝いを申し上げます。

 さて、2022年の「国際連合生物多様性条約第15回締約国会議」において、2050年に自然と共存する世界を実現するため、2030年までに生物多様性の損失を(とど)め、回復に転じさせる、“Nature Positive”の方向性が示されました。これに向けた取り組みとして、2030年までに陸域と海域それぞれの30%を保護・保全する“30 by 30”を主要な目標の一つとして掲げました。
 2019年の国連報告書によれば、今後数十年で、およそ100万種の生物が絶滅するおそれがあると言われています。持続可能な開発目標、いわゆるSDGsには、目指すべき世界像として、「人類が自然と調和し、野生動植物その他の種が保護される世界」が記されています。そのことを達成するためには、私たち一人ひとりが自然からの恩恵を理解するとともに、自分たちの身近にある自然をよく観察し、関心を深めていくことが大切です。

 その意味において、学校や園庭に作るビオトープは、そこに通う人たちにとって、自然と触れ合う場にとどまらず、自然との共存について考える大切な機会を提供してくれる場になると思います。このたびのコンクールにおける受賞事例では、普段生活する空間で様々な人々が協力し合い、自然との共存を試行する興味深い取り組みが行われていると伺っております。そして、このような意義深い取り組みが広く紹介されることは、持続可能な社会の実現に向けた人づくり・地域づくりにも大きく貢献するものと考えます。

 本コンクールも今回で13回目を迎え、学校や園にビオトープがあることの大切さが広く認識されるようになってきたことと思います。このことは、本活動に携わってこられた多くの方々のご尽力によるものであり、ここに深く敬意を表します。

 おわりに、学校・園庭ビオトープの取り組みが、今後も日本の各地で普及し、自然を慈しむ心の輪が広がっていくことを祈念し、私の挨拶といたします。

「第20回日本学術振興会賞並びに日本学士院学術奨励賞」授賞式
令和6年3月7日(木)(明治記念館)

 「第20回日本学術振興会賞並びに日本学士院学術奨励賞」授賞式が開催され、只今賞を受けられた皆様に心からお祝いを申し上げます。

 また今日の式典には、COVID-19の影響から、授賞式が開催されなかった第17回と第18回の受賞者で出席をされている方がおられると伺っております。ここに、改めてお慶びを申し上げます。

 このたび受賞をされた皆様には、それぞれが専門とされる分野において研究活動を推進され、これまでに大変素晴らしい業績をあげてこられました。そのことからも、本日の受賞を里程標として、今後さらに充実した研究を進められ、より一層世界的に活躍されることを願っております。

 さて、学術研究は、研究者が持つ好奇心とそれに伴う自由で柔軟な発想に端を発し、それを醸成し、その成果として、真理の探究、経済の持続的発展、生活の利便、疾病の治療、心の豊かさなど、様々な展開を見せるものであると考えます。

 現在、人類社会は、地震や気候変動とそれに伴う異常気象・気象災害などの自然災害、悪性新生物や感染症を始めとするさまざまな疾病、そして食料・資源・エネルギーなど、多くの困難な課題を抱えております。このような現代社会において、さまざまな課題を解決していくためには、多様な学術領域からの知的貢献が必要不可欠なものとなっております。

 そのような中、これまで我が国の学術研究を支えてこられた日本学術振興会と日本学士院が協力して、人文学、社会科学から自然科学にわたる幅広い分野において、現在、そして次世代を担う研究者を顕彰し、その研究意欲をより高め、研究の発展を支援していることに大きな意義を感じます。それとともに、多くの若い世代の研究者が業績をあげていかれることは、その成果を享受する国民にとっても大変喜ばしいことと申せましょう。今後、日本における学術の発展が今以上に進んでいくことを願っております。

 おわりになりますが、関係の皆様のご尽力により、日本の学術研究の進展が一層図られることを心より祈念し、本式典に寄せる言葉といたします。

「第32回地球環境大賞」授賞式
令和6年4月4日(木)(明治記念館)

 本日、第32回「地球環境大賞」の授賞式が開催され、皆様とともに、出席できましたことを大変嬉しく思います。そして、この度賞を受賞される方々に心からお祝いを申し上げます。

 皆様が、今までに行ってこられた種々の取り組みは、環境に配慮したまちづくりや製品の販売、水処理技術の開発やプラスチック使用量の削減、CO₂削減やリサイクル技術の確立など、地球環境の保全や自然との共存に大きく寄与するものであります。ここに皆様の今までのご努力に対し、深く敬意を表します。

 近年、気候変動への対応や生物多様性の保全、廃棄プラスチックによる海洋汚染など、環境諸問題への人々の関心と意識は非常に高くなるとともに、グローバルな展開を見せていると感じることが多々あります。
 また環境に関することとしては、気候変動が大きな要因とみられる自然災害が世界各地で発生しています。我が国でも、毎年のように豪雨による大きな被害が生じていますし、渇水と高温による農作物への影響もあります。

 さらに、これら地球環境に関わる諸問題を考えるとき、自然環境の保全とあわせて、自然災害についての意識を高めていく必要性も強く感じています。
 今年の元日に発生した能登半島地震では、大変残念なことに多くの人々が亡くなり、そして今も困難な暮らしを送っている方々が多数おられます。また、昨日は、台湾で地震が発生し、多くの方々が被災されました。この現状に心を痛め、そして、あらためて防災や減災の必要性に思いをいたしております。

 さて、本年で32回目を迎えた地球環境大賞は、環境を守りながら発展する産業や、持続可能な循環型社会の実現に寄与する製品や技術の開発など、環境保全への取り組みを顕彰するとともに、社会への貢献を目的として創設されました。
 爾来、産業界はもとより、自治体、学校、市民グループへと表彰の対象を広げ、環境保全と災害への対応に熱心に取り組む人々を広く顕彰し、地球環境の保全や環境意識を高める役割を担ってきました。
 現在、国連の持続可能な開発目標、いわゆるSDGsに多くの人たちが関心を向けるようになりました。そのようななか、2023年の「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議」で採択された文書には、パリ協定の目標達成のための緊急的な行動の必要性や、2025年までの世界全体の温室効果ガス排出量ピークアウトなどが明記されました。

 環境に関する諸問題の重要性は不変であり、今後とも、日本の優れた環境関連技術や知識をもって世界に貢献していくことが求められましょう。その意味でも、国際社会のモデルとなるような優れた実績を積み重ねていくことは、誠に意義深く大切なことと考えます。

 おわりに、本年の受賞者をはじめとする皆様が、これまでにも増して温暖化の防止など、地球環境の保全や自然との共存に積極的に取り組んでいかれることを期待いたします。そして、それらの活動がより一層広がりを見せることを祈念し、本式典に寄せる言葉といたします。