主な式典におけるおことば(令和6年)

天皇陛下のおことば

警視庁創立150年記念式典
令和6年1月15日(警視庁本部庁舎)

 挨拶に先立ち、この度、令和6年能登半島地震により亡くなられた方々に哀悼の意を表し、御遺族と被災された方々に心からお見舞いをお伝えいたします。今なお安否が不明の方や避難を余儀なくされている方も多く、救援と復旧の作業が速やかに進むことを心から願っています。また、厳しい天候と寒さの中、災害対応に力を尽くしている関係者の皆さんの努力を深く多といたします。
 本日、警視庁が創立150年を迎えたことを喜ばしく思います。
 警視庁は、明治7年、我が国が近代国家への道を歩む中、複雑化する治安情勢に対応するために東京に創立されました。以来150年にわたり、治安の維持に大きく貢献してきています。
 この間、危険が伴う任務を遂行する中で失われた多くの職員の尊い命に思いを致すとともに、都民・国民の生命、身体、財産を守るため、長年にわたって職務を遂行してきた皆さんのたゆみない努力に敬意を表します。
 近年、人口減少や少子高齢化、情報通信技術の発達などにより、社会情勢が変化する中で、社会経済活動の基礎となる治安の維持が引き続き確実に図られていくことが求められています。
 警視庁は、首都警察としての機能だけでなく、都道府県警察の中で最大規模の組織としての重要な役割も担っていると聞いており、皆さんが今後も社会情勢の変化に対応しつつ、責務を果たしていくことが望まれます。
 終わりに、150年にわたる歴史を通じて積み重ねられてきた経験を生かしながら、皆さんが今後も、都民・国民から寄せられる期待と信頼に応え、社会の安全・安心を確保していくことを願い、式典に寄せる言葉といたします。

第213回国会開会式
令和6年1月26日(金)(国会議事堂)

 本日、第213回国会の開会式に臨み、全国民を代表する皆さんと一堂に会することは、私の深く喜びとするところであります。
 国会が、国民生活の安定と向上、世界の平和と繁栄のため、永年にわたり、たゆみない努力を続けていることを、うれしく思います。
 ここに、国会が、国権の最高機関として、当面する内外の諸問題に対処するに当たり、その使命を十分に果たし、国民の信託に応えることを切に希望します。

2024年 日本国際賞(Japan Prize)授賞式
令和6年4月16日(火)(帝国ホテル)

 2024年日本国際賞の授賞式に、皆さんと共に出席できることをうれしく思います。この度の授賞式に当たり、ブライアン・ホスキンス博士及びジョン・ウォーレス博士並びにロナルド・エバンス博士が、それぞれ受賞されたことを心からお祝いいたします。
 日本国際賞は、世界の科学技術の発展に資するという我が国政府の構想により、民間からの寄付を基に1982年に創設されました。この賞は、世界中の科学技術者を対象とし、科学技術の進歩に大きく寄与する成果を挙げ、そのことがひいては人類の平和と繁栄に著しい貢献をしたと認められる人に贈られます。
 今年の授賞対象分野は、「資源、エネルギー、環境、社会基盤」分野及び「医学、薬学」分野でした。受賞された皆さんが、その研究を通じて、地球温暖化に起因する異常気象の予測や人類の健康増進に大きく貢献されてきたことに深く敬意を表します。
 今回の授賞対象分野を始め、近年、世界が地球規模で直面する課題は、ますます多様化し、複雑化してきています。私たちはより広い見識の下、様々な分野の英知を結集し、ともに手を携えて、これらの課題の克服に努めなければなりません。
 日本国際賞が、人々に幸福をもたらす科学技術の発展に一層寄与するとともに、人類の平和と繁栄に貢献することを願い、式典に寄せる言葉といたします。

第74回全国植樹祭
令和6年5月26日(日)(岡山県総合グラウンド体育館(ジップアリーナ岡山))

 初めに、本年1月に発生した能登半島地震により亡くなられた方々に改めて深い哀悼の意を表しますとともに、御遺族と被災された方々にお見舞いをお伝えいたします。今後、被災地の復旧と復興が順調に進んでいくことを心から願っております。
 第74回全国植樹祭がここ岡山県で開催されるに当たり、全国から参加された皆さんとともに出席できることをうれしく思います。
 岡山県においては、昭和42年に「拡大造林と環境緑化」をテーマに、岡山市にある金山(かなやま)山頂で第18回全国植樹祭が開催されました。当時の会場は、現在、昭和天皇と香淳皇后がお手植えになったアカマツを始め、多くの参加者によって植えられた木々が立派に育ち、山々を緑に染める風景を岡山市街地から望むことができると聞いております。
 岡山県では、緑豊かな中国山地に源を発する吉井川(よしいがわ)旭川(あさひがわ)高梁川(たかはしがわ)の3つの河川が、良質で豊かな水をたたえながら、吉備高原や岡山平野を経て瀬戸内海に注いでおり、こうした環境の中で多様な自然が育まれています。現在では「木を()って・使って・植えて・育てる」という林業のサイクルを循環させる取組が推進されるとともに、花粉の少ない少花粉スギやヒノキへの植替えが進められるなど、森林が守り育てられていることを喜ばしく思います。
 また、森林から生産される木材は、昔から住宅などの建築物を始め、家具や食器など様々なものに使われており、私たちの暮らしに欠かせないものとなっています。こうした恵みをもたらす森林を、健全な姿で未来の世代に引き継いでいくことは、私たちに課せられた大切な使命であると考えます。
 本日表彰を受けられる方々を始め、それぞれの地域において日頃から森林や緑を育てる活動に尽力されている全国の皆さんに敬意を表し、そうした活動が、今後とも多くの人々によって支えられながら、更に発展していくことを期待いたします。
 終わりに、循環型の木材の利用や健全な森林づくりの輪が、ここ岡山の地から全国へ広がり、そして将来の世代へとつながっていくことを願い、私の挨拶といたします。

第80回日本芸術院授賞式
令和6年6月10日(月)(日本芸術院会館)

 本日、日本芸術院が、第80回の授賞式を迎えたことを喜ばしく思います。
 日本芸術院賞は、美術、文芸、芸能各界にわたる賞であり、卓越した芸術作品と認められるものを制作された方や、芸術の進歩に貢献する顕著な業績があると認められる方に対して授与されてきました。この度の授賞式に当たり、受賞された9名の方々の業績に対し、深く敬意を表し、心からお祝いいたします。
 芸術文化は、長い歴史の中で、自然や風土、社会や人々の生活を反映しながら育まれ、人々に親しまれてきました。その継承発展は、長きにわたる国民の(たゆ)みない努力の成果であり、携わる方々の日々の研(さん)と修練に支えられるものであると思います。近年の新型コロナウイルス感染症の感染拡大では、芸術文化に携わってこられた方々の御苦労もいかばかりであったかと思います。今後とも人々が心豊かな生活を送り、活力ある社会を築く上で、芸術文化が重要な役割を果たしていくことを心から願っています。
 日本芸術院授賞式が第80回の節目を迎えるに当たり、日本芸術院が我が国の芸術文化の発展に一層力を尽くされるとともに、世界の文化の発展に寄与することを希望し、授賞式に寄せる言葉といたします。