主な式典におけるおことば(平成28年)

文仁親王殿下のおことば

第56回交通安全国民運動中央大会
平成28年1月15日(金)(日比谷公会堂)

 本日、第56回交通安全国民運動中央大会が開催され、日ごろから全国各地で交通安全運動に力を尽くしておられる皆様とともに出席できましたことを誠に喜ばしく思います。

 私たちは、日々の生活における移動手段として、自動車や自動二輪車、自転車を始めとする車両を頻繁に用います。いっぽう、道には、それら車両とともに徒歩による人々の往来も多数あります。そのような状況にあることを鑑みますと、さまざまな要因による道路上での交通事故は、誰にでも起こり得ます。これらの事故に対処するためには、私たち一人ひとりが、交通事故を防止しようとする自覚をもって交通道徳を高めるとともに、それを実践していく必要がありましょう。

 このような中、「交通安全思想普及の国民運動」を展開することを目的として設立された全日本交通安全協会が、本大会をはじめ研修会の開催や教育資料の配布など、さまざまな事業を展開していることは、大変意義深いことであります。

 交通事故による死者数は、7年連続で5千人を下回り、1970年のピーク時の4分の1以下となっており、このことは、皆様の長年にわたるたゆみない努力の結果であると思います。
 しかしながら、昨年の死亡者数を見ますと、2000年以来、15年ぶりに前年をわずかながら上回りました。また、交通事故の発生件数は、年間50万件を超え、あとを絶ちません。特に、高齢者の事故防止対策は今後の課題の一つになると思われます。このように、かけがえのない多くの命が失われている今日、交通事故のない、安全で快適な交通社会の実現は、私たちの願いでもあります。

 その意味からも、毎年開催されるこの大会は、関係者が一堂に会して諸問題を話し合う大切な機会であります。この大会を一つの契機として、私たち一人ひとりが交通安全を自らの問題として考えるとともに、交通安全運動が一層推進されていくことを祈念いたしております。

 終わりになりますが、このたび、日ごろの交通安全運動に対して表彰を受けられる方々に心からお祝いを申し上げますとともに、長年にわたるご尽力に深く敬意を表しまして、大会に寄せる言葉といたします。

「全国学校・園庭ビオトープコンクール2015」発表と交流大会
平成28年1月31日(日)(伊藤国際学術研修センター伊藤謝恩ホール)

 本日、「全国学校・園庭ビオトープコンクール2015」の「発表と交流大会」に、皆様とともに出席でききましたことを、たいへん嬉しく思います。また、このたび、各賞を受賞される皆様に心よりお祝いを申し上げます。

 自然は、私たち人類を始めとする生き物が暮らしていく基盤になるものと言えます。また、それとともに、地球温暖化の防止や災害による被害の軽減、地域経済の活性化につながるなど、様々な機能を有しております。そして、教育や保育の場においては、児童や生徒たちの周りにある自然が、豊かな感性や、主体的に学ぶ力を育むと言われております。

 学校や園庭につくるビオトープは、児童・生徒たちにとって身近な自然になります。このたびのコンクールにおける受賞事例からも、身近な自然を通じて、自然を大切にする心が育まれたり、思いやる心や表現する力、探究する態度が養われたり、情緒の安定に繋がったりするなど、教育や保育、そして福祉の面から様々な効果が報告されていると伺っております。

 このような意義深い取り組みが、本コンクールを通じて全国に広く紹介されることは、国際社会が求める、自然の恵みを積極的に活かした、持続可能な社会に向けた人づくり、そして地域づくりに、大きく貢献するものと思います。

 終わりに、本活動に携わってこられた多くの方々に深く敬意を表しますとともに、学校ビオトープ、園庭ビオトープの取り組みが、今後も日本各地で普及し、自然を慈しむ心の輪が広がっていくことを祈念し、私の挨拶といたします。

「第12回日本学術振興会賞並びに日本学士院学術奨励賞」授賞式
平成28年2月24日(水)(日本学士院)

 本日「第12回日本学術振興会賞並びに日本学士院学術奨励賞授賞式」が開催され、皆様にお会いできましたことを誠にうれしく思います。また、今回受賞された皆さまに心からお祝いを申し上げます。

 昨年の日本の科学界においては、北里大学の大村智特別栄誉教授がノーベル生理学・医学賞、東京大学の梶田隆章教授がノーベル物理学賞を受賞されるという、大変喜ばしいことがございました。お二方それぞれが、独創的な発想による研究に長年に亘って地道に取り組んでこられた成果が認められ、受賞に至ったことと推察いたします。

 学術研究は、研究者の知的好奇心に端を発し、その成果として、真理の発見、経済の持続的発展、生活の利便、心の豊かさなど、多様な展開を見せるものであります。社会が大きく変化する中で、我が国が様々な課題を解決しつつ、持続的に発展し、国際的な貢献を行っていくためには、幅広い分野の学術研究を推進していくことも大変重要な事柄であると言えましょう。

 我が国の学術研究を支える日本学術振興会と日本学士院が協力して、人文学、社会科学から自然科学にわたる多くの分野の若手研究者を顕彰し、その研究意欲を高め、研究の発展を支援しようとすることは大変意義あることと思います。

 このたび受賞の栄に浴された皆様は、これまで大変優れた業績をあげておられますが、今後もこの受賞をひとつの契機に、さらに充実した研究を進められ、世界的に活躍されることを祈念いたしております。

 最後になりますが、関係の皆様の御尽力により、日本の学術研究の進展が一層図られることを心より願い、式典によせる言葉といたします。

「第25回地球環境大賞」授賞式
平成28年4月18日(月)(明治記念館)

 去る4月16日熊本県において、マグニチュード7.3の地震が発生いたしました。また、それに先立つ前震、そして余震によって、熊本県をはじめ九州各地で大きな被害が生じております。この震災によって亡くなった方々をお悼みいたします。そして、被災し、避難されている多くの方々に対し、心からお見舞いを申し上げます。

 本日、第25回「地球環境大賞」の授賞式にあたり、皆様とともに出席できましたことを、大変うれしく思います。また、このたび各賞を受賞される方々に心からお祝いを申し上げます。

 平成4年、地球環境と共存する産業の発展、持続可能な循環型社会の実現に寄与する製品づくりとそのための技術の開発、地球環境に対する社会の意識向上、そして、自然環境の保全を通じた社会への貢献を図ることを目的として創設された本賞は、産業界にはじまり、自治体、学校、そして市民活動へと表彰対象を広げ、今年で25回を数えるに至りました。

 この間、地球温暖化の防止や生物多様性の保全など環境諸問題に対する人々の関心や意識はますます高まりを見せるようになってまいりました。また、特に近年は、気候変動とも関係すると思しき様々な自然災害が数多く発生し、人々の生活に大きな影響を及ぼしてもおります。このようななか、昨年末には国連の「気候変動枠組条約第21回締約国会議」において、温暖化防止のための新たな法的枠組みである「パリ協定」が採択されたことも記憶に新しいところであります。

 現在、気候変動をはじめ、地球環境に関わる事柄は数多く存在いたします。それらを考えるとき、環境の保全とともに、自然災害についての意識を一層高めつつ、人類が自然と共存していく必要性を強く感じます。緑豊かな水の惑星といわれるこの地球に、多くの貴重な生命を末永く育んでいくことができるよう、環境を取り巻く諸問題に積極的に取り組んでいくことが大切といえましょう。そのことを実行していくため、今後とも、日本の優れた技術や知識が地球環境の保全に貢献し、世界の発展に寄与していくことは、誠に大切なことと考えます。

 終わりに、受賞者をはじめとする皆様が、今後とも、地球環境の保全に積極的に取り組んでいかれることを期待するとともに、その活動がより一層広がりを見せることを祈念し、私の挨拶といたします。

東京農業大学創立125周年記念式典
平成28年5月21日(土)(東京農業大学世田谷キャンパス)

 このたび、東京農業大学が創立125周年を迎えられましたことをお慶び申し上げます。そして本日、その記念式典に皆様とともに出席できましたことを大変嬉しく思います。

 東京農業大学は、明治24年、徳川育英会を母体に、「育英黌農業科」として創立されました。爾来、幾多の変遷を経ながらも、125年の長きにわたって、農業および農学の基礎的研究と農業関連産業の研究、そして、これらの教育を通じて、農業の発展や国民生活の向上に尽くしてこられました。このような歴史を顧みるとき、創立者である榎本武揚育英黌管理長や、教育理念に実学主義を掲げた横井時敬初代学長を初め、先人の識見と努力に対し、深く敬意を表します。

 本学は、昭和24年の学校教育法、私立大学法により東京農業大学となり、農学部に8学科が設置されましたが、現在では、6学部21学科、大学院19専攻を有する日本でも最大の農学系総合大学へと発展いたしました。

 近年の大学には、社会からの要請に対して迅速に応えることを求められることが多々あります。しかし、そのいっぽうで、本学のような総合大学には、長期的かつ広い視野からの教育および研究の場として人を育成する役割があると考えます。その意味からも、広く世界の「農」・「食」・「環境」を始めとする各分野に貢献する数多の人々が、本学から輩出されることを願っております。

 私は、日本国内そして海外において、本学の卒業生とお目にかかる機会がたびたびにありますが、お会いした方々が、自身の出身校に誇りを持ち、それぞれの分野で活躍しておられることを関係している者の一人として誠に喜ばしく思っております。

 おわりに、創立125周年を迎えた東京農業大学が、より良い未来をめざし、過去の実績を基に、さらなる発展をしていかれることを祈念し、式典に寄せる言葉といたします。

第100回記念高等学校相撲金沢大会
平成28年5月22日(日)(石川県立卯辰山相撲場)

 本日、「高等学校相撲金沢大会」が第100回の記念大会を迎えるにあたり、全国から参加された選手をはじめ、高等学校相撲関係の皆様とともに出席できますことを大変嬉しく思います。

 1915年、「青少年の体育奨励」を目的として創設された本大会は、わが国の高等学校スポーツにおいて、最も古い歴史をもつものの1つであります。先の大戦によって2年間の開催中止があったものの、1世紀の長きにわたって大会を継続することができたのは、選手の意志のみならず、運営関係者、そして高校相撲を応援する人々などが一体となって育んできた賜物であり、深く敬意を表します。

 石川県は「相撲王国」と言われるほど相撲の盛んな地域で、本大会の出場者も高校相撲の大会においては最多とのことです。それだけに、「卯辰山の土俵」を目標に稽古を積んでいるジュニア選手も少なくないと伺っております。本日は、北海道から沖縄県まで、全国から74校、300名近い選手が、栄えある優勝旗・黒鷲旗を目指して土俵に上がられます。

 皆様には、これまで行ってきた稽古の成果を存分に発揮していただきたいと思います。そして、それとともに全国から集われた方々との交流を深めつつ、実り多い時間を共有されることを願っております。

 終わりに、100回目を迎える本大会を開催するにあたり、力を尽くしてこられた関係者に改めて敬意を表するとともに、本大会が今後も末永く続いていくことを祈念し、開会式に寄せる言葉といたします。

神社本庁設立70周年記念式典
平成28年5月25日(水)(明治神宮会館)

 本日、ここに「神社本庁設立70周年記念式典」が盛大に挙行されますことをお慶び申し上げます。

 神社本庁は第二次世界大戦後に神社が国家の手をはなれたことにより、当時民間の神社関係団体であった皇典講究所、大日本神祇会、神宮奉斎会が相寄り、全国の約8万もの神社を包括する団体として設立されました。

 爾来、伝統的な祭祀の維持と継承、そして道徳の啓蒙に努めるとともに、全国の神社の護持発展のための活動を続けられ、本年70年の佳節を迎えられたことは、設立当初からの関係者の弛まぬご尽力の賜物だと思います。

 全国に鎮まる神宮ならびに神社の古より変わらぬ姿は、都市化が進展する今日において、人々にとって大きな安らぎを与える場にもなっているといえましょう。今後も、各地の神宮・神社に継承されている行事を通じ、地域に活力をもたらし、社会の平安に寄与されることを心より願っております。

 おわりに、本日表彰を受けられた方々にお祝いを申し上げるとともに、関係の皆さまの一層のご活躍を祈念し、式典に寄せる言葉といたします。

湧水保全フォーラム全国大会inみさと
平成28年7月1日(金)(美郷町公民館)

 本日、「湧水保全フォーラム全国大会inみさと」が、名水百選に選定された「六郷湧水群」を中心に、126カ所もの湧水に恵まれ、水源涵養のための広大な町有林を有する水の郷、秋田県美郷町において開催され、皆様とともに出席できましたことを、大変うれしく思います。

 水は私たちの日々の暮らしはもちろんのこと、この地球に生息する生き物にとって欠かすことのできないものであるとともに、暮らしを支える農業や工業など、さまざまな産業活動を支える重要な資源でもあります。中でも湧水は、災害時の水の確保や地域の景観の形成、環境学習の場になるなど、多面的な役割を担っております。

 しかし、近年では、急速に進展する都市化やそれに伴う土地利用の変化などの影響から、湧水量の減少や枯渇、水質の悪化などが起こっている地域も存在いたします。また水道の普及によって、水はごく普通に存在するものと認識されるようになり、人と湧水との関わりや、その大切さへの認識が薄れつつあります。そのような中、人々の暮らしとの関わりの中で地域の文化を育んできた湧水を保全する重要性を強く感じます。

 本日は、私たちにとって貴重な資源である水、とりわけ自然の恩恵である湧水をテーマに、全国の関係者が一堂に会し、意見を交わし、学び考える大変に意義のある機会であると思います。このフォーラムをひとつの契機として、湧水に対する認識がさらに深められ、それぞれの地において新たな活動が展開されることを期待しております。

 終わりに、本フォーラムを通じ、湧水保全活動に取り組む人と人、地域と地域が結びつき、湧水保全に関するネットワークがより広く形成されることにより、有限の資源である水および水環境が、後世へと引き継がれることを祈念し、私のあいさつといたします。

平成28年 第13回海フェスタ『海フェスタ東三河』記念式典
平成28年7月20日(水)(穂の国とよはし芸術劇場)

 「海フェスタ東三河」が、太平洋や三河湾、奥三河の山々に囲まれ、総合的な広域連合を構成して地域課題に取り組む、東三河地域5市2町1村において開催され、本日の記念式典において皆様とともに出席できましたことを大変嬉しく思います。

 奥三河を水源とし、地域をつなぐ豊川が注ぐ三河湾は、人々の生活に多くの恩恵をもたらすとともに、この地域の発展に大きく寄与してきました。また、三河港は自動車産業を中心とするものづくりを支える物流拠点であり、国内はもとより世界への扉として、地域の経済・産業にとって重要な役割を果たしております。

 そのような三河湾の沿岸および豊川の流域において、観光や文化の振興に取り組む自治体が中心となり、「海フェスタ東三河」が開催されますことは、海の環境問題を始め、港や河川の役割などへの関心をより深めていく上で、誠に意義深いものがあると思われます。

 四方を海に囲まれた我が国は、古来より海と深く関わり、多くの恩恵を受けてまいりました。私達はこのような海に感謝するとともに、川や港も含め、その多面的な役割や重要性を正しく理解し、後世へと伝えていく必要があると言えましょう。「海フェスタ東三河」が、そのような機会となることを願ってやみません。

 終わりに、本日、栄えある表彰を受けられる方々に心からお祝いを申し上げますとともに、ここにお集まりの皆様の一層のご活躍を祈念し、私のあいさつといたします。

第50回全日本高等学校馬術競技大会
平成28年7月21日(木)(御殿場市馬術・スポーツセンター)

 本日、第50回全日本高等学校馬術競技大会が、ここ静岡県御殿場市馬術・スポーツセンターにおいて開催され、全国の地区大会を勝ち抜かれた36校の選手、そして役員の皆様にお会いできましたことを大変うれしく思います。

 本年は、1967年に東京の馬事公苑において初めて本大会が開催されてから50回目という節目の大会となります。この記念すべき年の大会に出場される皆様には、日頃の練習の成果を存分に発揮されるとともに、全国から集われた方々との意見交換など、交流を深められることを期待いたしております。

 また、本大会には、先の熊本地震により大きな被害が発生した熊本県からも、4校が参加していると伺っております。余震が続く中、十分な練習が出来ない状況であったと推察いたしますが、それにもかかわらず、全国大会に出場を果たされたことを誠に喜ばしく思います。

 今年はリオデジャネイロにおいて、第31回オリンピック・パラリンピック競技大会が開催され、馬術競技においては、日本からはオリンピックに10名、パラリンピックに1名が参加されると聞いておりますが、皆様の中からも将来、このような国際的な大会で活躍される方が出てきていただくことを願っております。

 終わりに、50年の長きにわたり本大会を運営するとともに、高校馬術の質の向上に寄与してこられた全日本高等学校馬術連盟ならびに関係の皆様に対し、深く敬意を表します。そして、この大会が皆様にとって思い出に残る素晴らしいものになることを祈念して、私のあいさつといたします。

第40回全国高等学校総合文化祭「2016ひろしま総文」総合開会式
平成28年7月30日(土)(広島県立総合体育館)

 第40回全国高等学校総合文化祭が、穏やかな瀬戸内の島々や広大な中国山地の里山など、多様な自然景観と文化の魅力にあふれる広島県において開催され、全国各地、そして海外から参加された多くの方々と共に出席できましたことを大変嬉しく思います。

 全国高等学校総合文化祭は、芸術文化活動に取り組む高校生の祭典として、これまでも開催地の生徒が主体となって、地域の特性と高校生ならではの感性を活かした大会づくりがなされてまいりました。このような高校生の芸術文化の祭典が毎年開催されていることは、国民の芸術文化に対する関心をさらに高め、参加意欲を喚起する上で、誠に意義深いものと考えます。

 本年の大会テーマは、かつてこの地を治めた毛利元就の教訓に因んだ「創造の風 希望の光 平和を願う心 三本の矢に込めて」であります。大会に参加される皆様の交流を通じて、「創造」、「希望」、「平和」が国の内外に力強く発信されるとともに、友好の輪を大きく広げていかれることを期待しております。

 終わりに、本大会の開催に力を尽くされた多くの関係者に深く敬意を表しますとともに、「2016ひろしま総文」がいつまでも皆様の心に残る素晴らしい大会となることを祈念し、私の挨拶といたします。

第12回日本アグーナリー(国際障がいスカウトキャンプ大会)
平成28年8月12日(金)(富士山麓 山の村)

 本日、豊かな自然に包まれた「富士山麓 山の村」において、第12回日本アグーナリーの開会式が開催され、皆様とともに参加できましたことを大変うれしく思います。

 日本アグーナリーは、1973年に愛知県で第1回が行われて以来、国の内外から参加したスカウトたちが、キャンプ生活によって得られた経験を通して、積極的に社会生活に参加することを目的として開催されてまいりました。一定期間にわたって継続的なテーマが設定されておりますが、このたびは、「We can! 富士からともにはばたこう」のもと、多くの活動が計画されていると伺っております。

 参加されたスカウトの方々には、富士の大自然の中、普段の生活では体験できない共同生活や交流活動を通じて、自然・人・社会が共生することの大切さを体感していただきたいと思います。
 そして皆様が、それぞれの国や地域に帰られた後も、今回得た経験を活かし、お互いを尊重し、支え合う多様な社会の実現を目指して、更に発展していかれることを期待いたしております。

 終わりに、この大会が皆様にとって、実り多いものとなるよう祈念いたしますとともに、これまでボーイスカウト日本連盟が、スカウト活動を通じて、我が国における青少年教育に寄与してこられたことに心から敬意を表し、私の挨拶といたします。

第32回世界医学検査学会
平成28年9月2日(金)(国際会議場ポートピアホール)

It is a great pleasure for me to be with so many participants from more than 30 countries and areas at this Opening Ceremony of the 32nd World Congress of Biomedical Laboratory Science, which is being held for the second time here in Kobe, Japan.

I have learned that the first international gathering of Medical Laboratory Technologists, now also called Biomedical Laboratory Scientists, took place in Switzerland in 1954. Since the first gathering, this Congress has provided a venue for those engaged in laboratory medicine and public health to contribute to the progress of medical science and medical services through the exchange of information on research and assessment results including new cases and medical laboratory testing methods.

Today, medical laboratory technologies such as diagnostic imaging, including ultrasonography, and genetic testing, are indispensable to medical science and medical services. As the theme of this Congress "International Innovation of Laboratory Medicine – Basic and Advanced –" indicates, the mutually inseparable development of basic and advanced medical laboratory technologies will continue to support human healthcare.

At the same time, laboratory medicine plays a critical role in tackling various public health issues faced around the world, including drug sensitivity testing for patients with infectious diseases such as tuberculosis and MRSA, and medical assistance in times of disaster, for instance to detect thrombosis.

Under these circumstances, it is especially significant that biomedical laboratory scientists engaged daily in medical laboratory testing around the world have assembled here to share information and exchange views to further enhance the reliability and accuracy of medical laboratory testing. Also I have heard that many students who aim to become biomedical laboratory scientists are attending this Congress. I strongly believe it is very meaningful that this Congress is providing an occasion to foster future biomedical laboratory scientists.

In closing my address, I hope that the results of this Congress will be used effectively in your various efforts and activities in each country and area, and lead to improved health for people throughout the world.

敬老の日制定50周年記念式典
平成28年9月15日(木)(多可町文化会館)

 本日、ここ兵庫県多可町において、「敬老の日制定50周年記念式典」が開催され、皆様とともに出席できますことを大変嬉しく思います。

 「敬老の日」は1947年9月15日、当時の多可郡野間谷村、現在の多可町において、「長年に亘って社会に貢献してきたお年寄りに敬意を表し、またその知識や経験を次世代に伝授してもらう場を設ける」ため、村が主催して敬老会を開催したことが、その始まりと伺っております。

 その後、兵庫県そして全国へと敬老行事の活動の輪が広がり、1966年、国民の祝日「敬老の日」が誕生し、本年で50周年を迎えました。

 この間、我が国は超高齢社会を迎え、地域社会や家族のあり方なども大きく変化しつつあります。このような中、発祥の地であるこの地から「敬老の精神」を発信し、その心を次の世代に引き継いでいくことは、誠に意義深いことと考えます。

 私も高齢者の施設を訪れる機会がありますが、そのようなおりには、施設の入所者や利用している人たちが、さまざまな活動をしている様子、そして子どもたちと交流する様子を目にいたします。齢を重ねた方たちが、このようにいきいきとしている姿を目にするとき、心温まる思いがいたします。

 おわりに、「敬老の日制定50周年記念式典」が契機となり、幅広い世代が活躍し、共に生きる社会がより一層広がっていくことを祈念し、式典に寄せる言葉といたします。

2016年(第27回)福岡アジア文化賞授賞式
平成28年9月16日(金)(アクロス福岡)

 本日、第27回福岡アジア文化賞の授賞式が開催されるにあたり、受賞される3名の方々に心からお祝いを申し上げます。

 近年、国際社会におけるグローバル化が進展する中、多くの国や地域では、画一化された思考方法や利便性を求めた生活様式が広まってきております。しかし、そのいっぽうでは、固有の文化や伝統などを継承しつつ、新しい文化の創造にも多くの力を注いでおります。

 また、アジアには多様な風土や自然環境が創り出し、長い期間にわたって育まれてきた各地固有の歴史や言語、民俗など、文化の深さや豊かさがあり、それらを保存し継承していくことの大切さを強く感じます。

 このようななか、古くからアジアの各地で受け継がれている多様な文化や芸術を尊重し、その保存と継承に貢献するとともに、新たな文化・芸術の創造、そしてアジアに関わる学術研究に寄与することを目的とした福岡アジア文化賞は、それらに功績のあった方々を顕彰する大変意義深い事業であると言えましょう。

 本日受賞される方々の優れた業績は、アジアにおける未来の発展に貢献するものであることは勿論のこと、それとともに、アジアのみならず、広く世界に向けてその意義を示すものでもあります。そして、社会全体でこれらを共有し、次の世代へと引き継いでいくことは、私たちにとっての貴重な財産になるものと考えます。

 終わりに、受賞される皆様に改めて祝意を表しますとともに、この福岡アジア文化賞を通じて、アジア諸地域に対する理解、そして国際社会の平和と友好が一層促進されていくことを祈念し、私のあいさつといたします。

第2回世界獣医師会-世界医師会"One Health"に関する国際会議
平成28年11月10日(木)(リーガロイヤルホテル小倉)

 このたび、「第2回世界獣医師会・世界医師会「ワンヘルス」に関する国際会議」が、ここ福岡県北九州市において開催され、世界31の国と地域から参加された多数の皆さまとともに、開会式に出席できますことを大変嬉しく思います。

 「ワンヘルス」は、人と動物、そしてそれらを取り巻く環境が直面している共通感染症や薬剤耐性菌などの地球規模的な課題について、獣医療と医療を始めとする学術分野に携わる研究者が分野を超えて協同し、それらの解決に取り組む概念であります。2004年に野生生物保全協会が呼びかけ、米国のロックフェラー大学で開催された会議において提唱された「マンハッタン原則」“One World, One Health”に端を発します。

 現在、人に感染する病原体は1400種以上あり、その中には、近年流行が見られたSARSや牛海綿状脳症、高病原性鳥インフルエンザ、エボラ出血熱をはじめ、人と動物の共通感染症が多数あると聞き及んでおります。これらは、世界規模の森林開発、野生動物生息地への人の侵入、人の移動と物資の輸送の加速およびグローバル化などが増加の一因と考えられております。

 また、増加の一途を辿っている薬剤耐性性については、結核やマラリアが代表的なものとしてあげることができると思いますが、この問題は、私たち人類による過去の行動が今日の問題となったものです。そして、薬剤耐性菌や薬剤耐性マラリアなどの治療は大変困難であるとともに、国境を越えて増加しております。この現状を鑑みますと、すぐにでも行動が必要な世界規模的な課題と言えましょう。また、その原因のひとつとなっている抗菌薬は、人間以上に畜産や養殖の現場において多く使用されていることから、人間の保健とともに畜産や養殖における行動と両者の連携が極めて大切になってくるものと思います。

 このように世界規模での感染症の蔓延が懸念されるなか、「ワンヘルス 概念から実践へ」をテーマとして、複数の分野に跨がる研究者が一堂に会し、人と動物の健康と環境の保全に関する連携および情報共有を図りつつ、感染症対策について議論が交わされることは、誠に意義深いことと考えます。それとともに、本日から二日間にわたるこの会議に併せて開催される公開講座などを通じ、多くの人々が人と動物の健康に対して関心を寄せ、理解を深める機会になりますことを期待いたしております。

 おわりに、このたびの会議が皆さまにとって実り多きものとなることを祈念し、開会式に寄せる言葉といたします。

「第22回国際動物学会議および第87回日本動物学会年会合同大会」開会式
平成28年11月14日(月)(沖縄科学技術大学院大学)

It is a great pleasure for me to be with so many participants from more than 30 countries and area today at the opening ceremony of this Joint meeting of the 22nd International Congress of Zoology and the 87th meeting of the Zoological Society of Japan, which is being held here in Onna Village, Okinawa Prefecture.

This is the first time that the International Congress of Zoology, which is the longest-standing international congress of zoology and now meets at 4-year intervals, is taking place in Japan. I have learned that the main theme of this Congress "New Waves of Zoological Science in the 21st century" sets a new paradigm in zoology with the advent of the era of genome science, which will be reflected in various presentations and discussions at this Congress.

I understand that zoology is a longstanding discipline that originally derived from Natural History. It covers a broad range of biological disciplines including taxonomy, systematics, comparative anatomy, functional morphology, developmental biology, physiology, molecular genetics, ecology, ethology, and so on. Also, zoology has now gained renewed recognition for its importance in the conservation of biodiversity, along with environmental science.

Especially with the advancements in genome science in recent years, we have now gained knowledge of the diverse information that living organisms have acquired over the long history of their evolution. Notably in molecular phylogenetics, we can now not only construct phylogenetic trees of extant species, but also determine the systematic position of fossils. This enables us to delve into the phenotypes of the ancestral progenitors that have led to extant species, and, by considering their genetic structures and functions, to research how they have adapted through their evolutionary histories.

Though I am not a zoologist myself, I am among those who take an interest in animals and its related academic subjects. I am particularly fascinated by the domestication and breeding of varieties of livestock. My interests are in the creation of variations through human motivation and selection by humans, from the perspectives of folkbiology and ethnobiology. I realize how relevant zoology is to my interests when considering that the process of domestication often involves such areas as morphology, molecular genetics, ethology, and physiology.

I have heard that apart from academic presentations and discussions, the program of this Joint meeting also offers events, including a public lecture and an exhibition of live and preserved specimens at a “Zoology Plaza”, that are open to the public and to students from primary to high school. I expect these public events to contribute to a broader recognition of the importance of zoology as well as to communicate its interesting aspects to the next generation.

In closing my address, I hope that this Joint meeting will be fruitful for you all, and contribute to the further development of the International Society of Zoological Sciences and the Zoological Society of Japan.

「平成28年度(第25回)ブループラネット賞」表彰式典
平成28年11月16日(水)(パレスホテル東京)

 本日、第25回ブループラネット賞表彰式において、栄えある賞を受けられましたインドのパバン・シュクデフ氏ならびにスイスのマルクス・ボルナー教授に心からお祝いを申し上げます。

 近年、私たち人類は、暮らしの豊かさと利便性を求めて、経済の発展と科学技術の進歩を目指してまいりました。しかし、そのいっぽうで、人類の経済活動は、地球温暖化による気候変動や環境破壊、生物多様性の減少など、様々な環境諸問題を引き起こす可能性があるとの懸念も指摘されております。豊かで多様な自然環境を有する地球を後世へと引き継いでいくことは、私たちが等しく願っていることでありましょう。そして、そのための具体的な行動を起こしていくことが現在求められていることと思います。

 このような状況のもと、本日の受賞者がご自身の経験に基づく先見性のある理論と、その卓越した行動力によって、政府や国連などの国際機関や地域住民、企業と協力し環境問題に真剣に取り組まれ、成果をあげてこられたことは大変心強いことであります。

 このたびの受賞者ならびに歴代受賞者をはじめ、環境問題を深く多面的に考察している方々が主導的な役割を担い、人々の英知を結集して持続可能な地球環境が実現されることを願っております。

 最後になりますが、すばらしい業績を上げられました本年度の受賞者に心から敬意を表しますとともに、この意義深いブループラネット賞が、世界の人々の環境に対する意識を高め、行動を起こす契機となることを祈念して、私の挨拶といたします。

東京医科大学創立100周年記念式典
平成28年11月19日(土)(ホテルニューオータニ東京)

 このたび、東京医科大学が創立100周年を迎えられましたことをお慶び申し上げます。そして本日、その記念式典に皆様と共に出席できましたことを大変嬉しく思います。

 東京医科大学は、大正5年、理想とする学問の場を学生自身の力で実現しようという志の下で、東京医学講習所が設立されたことに端を発し、爾来、東京医学専門学校、そして今日の東京医科大学へと発展を遂げたと伺っております。その間、100年の長きにわたり、優れた医療人の養成と医学研究の推進、診療の充実を通じて、国民医療の向上に貢献してこられました。学祖と称えられる高橋琢也初代理事長を初め、この歩みを支えてこられた多くの関係者のご努力に対し、深く敬意を表します。

 今日、医学・医療は、関連諸科学の発展とあいまって、その進歩は著しく、私たちが現代の医療から受ける恩恵には、かつてないほど大きいものがあります。しかし、その一方では、医学や医療に携わる人々の人間性や日々の仕事に対する取り組みの姿勢が、より深く問われるようにもなってきております。そして、社会が大きく変化していく中、医学教育機関は、地域と連携した健康長寿社会の実現や、広く世界を視野においた保健・医療の発展に向けて、一層重要な役割を果たすことが期待されていることと思います。

 おわりに、100年の里程標を迎えられた東京医科大学が、建学の精神である「自主自学」と「正義・友愛・奉仕」の校是を基盤とし、最新の医学研究の場として、また患者と歩む医療人を世に送り出す教育機関として、さらに発展して行かれることを祈念し、式典に寄せる言葉といたします。

大日本水産会「平成28年度水産功績者表彰式」
平成28年12月1日(木)(石垣記念ホール)

 本日、大日本水産会「平成28年度水産功績者表彰式」が、全国各地から多くの受章者を迎えて開催されますことを誠に喜ばしく思います。受賞される皆さまに心からお喜びを申し上げます。また、かねてより魚に親しんできた私にとりまして、水産業に深く携わっておられる皆様とお会いできましたことを大変うれしく思います。

 大日本水産会は、水産業の振興を図り、その経済的・文化的発展を推進することを目的として、明治15年に創立され、爾来、水産業振興のため様々な事業を展開してこられました。中でも明治23年から行われ、本年で100回目となる「水産功績者表彰」は特に重要な事業として位置付けられ、その総受章者数は3079名を数えます。そして、かつての受章者の中には陸奥宗光や渋澤栄一の両氏を始め、日本史の一幕にその名を刻んだ人名にも触れることができ、改めて本会の歴史を感じます。

 周囲を海に囲まれ、また湖沼や清流にも恵まれた我が国では、かねてより漁業や養殖業、そしてそれに関連する加工業や流通業が発展してまいりました。皆様が、永きにわたって多くのご労苦を重ねながら、それら各分野の振興に力を尽くしてこられたことに対し、ここに深く敬意を表したく思います。

 我が国では、古来より身近で貴重なタンパク源としての魚介類に親しんでまいりました。また、海外においては和食が以前にも増して好まれるようになり、我が国の食文化、とりわけその中心的な存在である魚介類が注目されております。このように、水産業は大変重要な産業でありますが、昨今の水産業を取り巻く状況を見ますと、私たちにとっての身近な食材である水産資源の減少や漁業の担い手不足など様々な課題があります。

 このような状況のもと、皆様には、本日の受賞を一つの契機とされまして、今後とも健康に留意されつつ、後進の育成などを通じ、日本の水産業の維持と発展のために活躍されますことを期待いたしております。

 終わりに、大日本水産会が今後ますます発展し、水産業の振興に一層貢献されることを祈念し、私の挨拶といたします。

「第60回日本学生科学賞」中央表彰式
平成28年12月24日(土)(日本科学未来館)

 このたび、「日本学生科学賞」が60回を迎えられたことをお祝いするとともに、本日賞を受けられる皆様に心からお慶びを申し上げます。

 日本学生科学賞は、戦後の日本の復興期に、科学教育の振興を願うとともに、将来的に優秀な科学者を生み出すために創設されたと伺っております。これまで受賞された多くの方々が、その後様々な科学の分野で活躍されていることは、大変喜ばしいことであります。

 このたびの受賞者をはじめ、この賞に応募された方々は、日ごろから疑問に思っていることを明らかにするため、自分なりに仮説をたて、必要な観察や実験を継続的に行い、考察を重ねてひとつの結論を見出されたことと思います。このことは、皆様が抱いている疑問に対する探究心と好奇心によるものと推察いたします。そして皆様がそのことに注がれた熱意と努力によって結実した素晴らしい研究作品と言えましょう。

 皆様は、これからの我が国の科学・技術の発展に貢献されるであろう方々であります。このたびの受賞をひとつの契機として、研究が一層発展していかれることを期待いたしております。

 いっぽう、科学は、単一の分野のみではなく、さまざまな関連する分野の統合知によって高いレベルへと昇華することが多々あります。そのことも考慮しながら、さらにご自身の関心事を深めていただければ嬉しく思います。そして今後世界的に活躍していただくことを願っております。

 このたびの本賞には、全国から6万点にもおよぶ作品が寄せられたと聞き及んでおりますが、学校や家庭、そしてフィールドなどにおいて、指導に当たられた多くの方々のご尽力に、心から敬意を表します。

 終わりに、日本学生科学賞が今後ますます発展し、我が国の優秀な科学者の育成に一層貢献されることを心から祈念して、私の挨拶といたします。