主な式典におけるおことば(平成28年)

天皇陛下のおことば

新年一般参賀
平成28年1月2日(土)(宮殿)

穏やかな新春を迎えました。

皆さんと共に新しい年を祝うことを誠に喜ばしく思います。

本年が国民一人ひとりにとり,安らかで良い年となるよう願っています。

年頭に当たり,我が国と世界の人々の平安を祈ります。

第190回国会開会式
平成28年1月4日(月)(国会議事堂)

本日,第190回国会の開会式に臨み,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の深く喜びとするところであります。

国会が,国民生活の安定と向上,世界の平和と繁栄のため,永年にわたり,たゆみない努力を続けていることを,うれしく思います。

ここに,国会が,国権の最高機関として,当面する内外の諸問題に対処するに当たり,その使命を十分に果たし,国民の信託に応えることを切に希望します。

東日本大震災5周年追悼式
平成28年3月11日(金)(国立劇場)

東日本大震災から5年が()ちました。ここに一同と共に,震災によって亡くなった人々とその遺族に対し,深く哀悼の意を表します。

5年前の今日,東日本を襲った巨大地震とそれに伴う津波により,2万人を超す死者,行方不明者が生じました。仙台平野を黒い壁のような波が非常な速さで押し寄せてくるテレビの映像は,決して忘れることができないものでした。このような津波に対してどのような避難の道が確保できるのか暗澹(あんたん)たる気持ちになったことが思い起こされます。また,何人もの漁業者が,船を守るために沖に向け出航していく雄々しい姿も深く心に残っています。

このような中で,自衛隊,警察,消防,海上保安庁を始めとする国や地方自治体関係者,さらには,一般市民が,厳しい状況の中で自らの危険や労をいとわず救助や捜索活動に携わったことに深い感謝の念を抱いています。

地震,津波に続き,原子力発電所の事故が発生し,放射能汚染のため,多くの人々が避難生活を余儀なくされました。事態の改善のために努力が続けられていますが,今なお,自らの家に帰還できないでいる人々を思うと心が痛みます。

こうした苦難の中で,政府や全国の地方自治体と一緒になって,多数のボランティアが被災者のために支援活動を行いました。また,160を超える国・地域や多数の国際機関,また在日米軍が多大な支援に当たってくれたことも忘れることはできません。

あれから5年,皆が協力して幾多の困難を乗り越え,復興に向けて努力を続けてきました。この結果,防災施設の整備,安全な居住地域の造成,産業の再建など進展が見られました。しかし,被災地で,また避難先で,今日もなお多くの人が苦難の生活を続けています。特に,年々高齢化していく被災者を始めとし,私どもの関心の届かぬ所で,いまだ人知れず苦しんでいる人も多くいるのではないかと心に掛かります。

困難の中にいる人々一人ひとりが取り残されることなく,1日も早く普通の生活を取り戻すことができるよう,これからも国民が心を一つにして寄り添っていくことが大切と思います。

日本は美しい自然に恵まれていますが,その自然は時に非常に危険な一面を見せることもあります。この度の大震災の大きな犠牲の下で学んだ教訓をいかし,国民皆が防災の心を培うとともに,それを次の世代に引き継ぎ,より安全な国土が築かれていくことを衷心より希望しています。

今なお不自由な生活の中で,たゆみない努力を続けている人々に思いを寄せ,被災地に1日も早く安らかな日々の戻ることを一同と共に願い,御霊(みたま)への追悼の言葉といたします

第191回国会開会式
平成28年8月1日(月)(国会議事堂)

本日,第191回国会の開会式に臨み,参議院議員通常選挙による新議員を迎え,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の深く喜びとするところであります。

ここに,国会が,当面する内外の諸問題に対処するに当たり,国権の最高機関として,その使命を十分に果たし,国民の信託に応えることを切に希望します。

全国戦没者追悼式
平成28年8月15日(月)(日本武道館)

本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。

終戦以来既に71年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。

ここに過去を顧み,深い反省とともに,今後,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。

第192回国会開会式
平成28年9月26日(月)(国会議事堂)

本日,第192回国会の開会式に臨み,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の深く喜びとするところであります。

ここに,国会が,国権の最高機関として,当面する内外の諸問題に対処するに当たり,その使命を十分に果たし,国民の信託に応えることを切に希望します。

国賓 ベルギー国王陛下及び王妃陛下のための宮中晩餐
平成28年10月11日(火)(宮殿)

この度,ベルギー王国フィリップ国王陛下が,マチルド王妃陛下と共に,日白両国の友好150周年という記念すべき年に,国賓として我が国を御訪問になりましたことに対し,心から歓迎の意を表します。ここに今夕を共に過ごしますことを,誠に喜ばしく思います。

今から63年前,当時19才であった私は,1953年6月に行われた英国のエリザベス二世女王陛下の戴冠式に参列いたしました。その時に貴国からは国王陛下の父君であるアルベール二世前国王陛下が参列され,共に十代の賓客として初めてお目にかかったことが強く心に残っております。戴冠式の後,欧州各国を訪れましたが,貴国では,ラーケン宮にお泊めいただき,父君の兄に当たられる陛下の伯父君,ボードワン国王に家族の一員のようにおもてなしを頂いたことは,私の人生の中で忘れ得ぬ懐かしい思い出となりました。その後,ボードワン国王も私も結婚し,ファビオラ王妃と皇后の親しい交流も加わり,我が国の皇室はベルギー王室と長年にわたり親交を重ねてまいりました。私の即位の礼にもボードワン国王,ファビオラ王妃が御参列くださいました。貴国の王室の方々が常に私どもを支えてきてくださっていますことを深く感謝しております。

1993年,ボードワン国王崩御の際に,私は皇后と共に,その悲しみのお別れに参列させていただき,また,2年ほど前,ファビオラ王妃崩御の際には皇后が貴国を訪問し,お別れをいたしました。貴王室にはその都度,お忙しい中,心のこもった接遇を頂き,このことにも改めて御礼を申し上げます。

フィリップ国王陛下には,1985年に我が国をボードワン国王と共に御訪問になって以来,今回が11回目の日本への御訪問となります。御両親であるアルベール二世前国王陛下とパオラ前王妃陛下が1996年に国賓として我が国を御訪問になった際にも御同行になり,御一緒に栃木県を訪れ,郷土芸能を観賞し,中世からある日本で最も古い学校として有名な足利学校を視察したことを覚えております。

日白両国は1866年,今から150年前に国交を開きました。我が国はその2年後に明治時代を迎え,国の近代化に全力で取り組むこととなりました。その過程において,明治政府は使節団を米国と欧州に派遣し,各国の状況をつぶさに検分し,研究しましたが,貴国を訪問した折にレオポルド二世国王への拝謁の栄を賜っております。明治維新以来の我が国の近代化にとり,そのお手本の一つである貴国との交流は非常に重要なものでありました。例えば1882年に設立された日本銀行は,貴国の中央銀行の制度を大いに参考として創立されました。貴国は今日も,生命科学,医療,製薬等,様々な先端分野において,世界をリードしており,両国の緊密な関係は我が国にとって,極めて重要なものであります。

また貴国は,第二次大戦後に始まった欧州統合の流れの中で,当初から積極的な役割を果たし,現在,首都ブリュッセルは欧州連合及び北大西洋条約機構の本部所在地として,世界の平和と発展のために重要な役割を果たしています。今後とも我が国が欧州との関係を進めて行く中で,貴国は我が国にとって欧州への玄関口としての役割を引き続き果たしていくことと確信しております。

政治・経済関係とともに,両国間には様々な交流があります。学術,音楽や美術などの分野でも多くの日本人が貴国で学んできております。そして,従来から日本研究が盛んであったルーヴェン・カトリック大学,ゲント大学に加え,本年,ブリュッセル自由大学にも日本語学科が開設されたと聞いております。両国の間の幅広い分野での交流がますます広がり,相互理解が深まってきていることをうれしく思います。

日本は今,長かった暑い夏も終わり,涼風の吹く秋を迎えました。この御訪問が両陛下にとり,また,御一行の方々にとって,思い出深いものとなり,両国の友好・協力関係を更に進展させるものとなることを願っております。

ここに杯を挙げ,国王陛下及び王妃陛下の御健勝とベルギー国民の幸せを祈ります。

ベルギー国王陛下のご答辞

国賓 シンガポール大統領閣下及び同令夫人のための宮中晩餐
平成28年11月30日(水)(宮殿)

この度,シンガポール共和国タン大統領閣下が,令夫人と共に,両国の外交関係樹立50周年の機会に,国賓として我が国を御訪問になりましたことに対し,心から歓迎の意を表します。ここに,今夕を共に過ごしますことを,誠に喜ばしく思います。

私どもが初めてシンガポールを訪問いたしましたのは,今から46年前,1970年のことでした。当時のヨセフ・イスラク大統領御夫妻にお目にかかり,リー・クァンユー首相御夫妻主催の晩餐会にお招きいただきました。その後1981年に貴国を訪れ,さらに,2006年,両国の外交関係樹立40周年の年に,国賓として貴国を訪問し,ナザン大統領御夫妻,リー・シェンロン首相御夫妻を始め貴国の多くの人々の手厚いおもてなしを頂きました。

私どもが初めて訪問いたしました時,貴国は独立から5年といまだ日が浅く,新しい国としての歩みを始めた時でありました。その後,訪問を重ねるたびに,貴国は目覚ましい発展の足跡を示し,独立から半世紀余りを経た今日までに,美しく豊かな国を造り上げてきています。そして,このような貴国の発展とともに,我が国との二国間関係も飛躍的な進展を遂げてきたことを大変喜ばしく思います。

それは,あたかも初めて貴国を訪問した時にジュロンにある日本庭園に皇后と共に植えたソテツの苗が今や大きく成長しているかのごとくに思われます。

近年,昨年3月にリー・クァンユー元首相,本年8月にナザン前大統領が逝去されました。建国後のシンガポールを導き,日本との友好協力関係の強化に寄与されてきたお二方に対し,改めて深い哀悼の意を表します。

大統領閣下並びに令夫人は,今回の訪日の折に,東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県七ヶ浜町を御訪問になると聞いています。5年前に発生した東日本大震災に際して,緊急物資や救助チームの派遣などの多大な支援を頂き,貴国から贈られた義援金により,七ヶ浜町を含む被災地にて様々な復興支援活動が行われてきました。ここに,シンガポール政府及び国民から示された御厚情に,改めて深い感謝の意を表します。

貴国の独立の翌年,1966年に貴国と我が国は外交関係を樹立しました。以来,両国は緊密な友好協力関係を50年間にわたり発展させてきました。同時に私どもは,今も,先の大戦に際し,貴国の地において多くの人々が尊い命を失い,あるいは,様々な苦難を受けたことを忘れてはならないと思っております。

昨年シンガポール日本人会は100周年の記念すべき年を迎え,今や4万人近くの日本人が貴国に暮らしています。この日本人たちは,シンガポールのみならず,シンガポールを拠点としながら周辺諸国でも活躍しています。

両国の関係は,政治,経済にとどまらず,文化,知的交流など幅広い分野にも及んでいます。日本の文化を伝えるセンターも貴国の協力の下,シンガポールに開設されて,両国の文化面での交流も進んでいます。

さらに両国は,この地域や世界の平和と繁栄のために手を携えて協力してきております。例えば,1994年以来,両国は協力の下に第三国から研修員を迎え入れ,様々な技術協力を行ってきています。今までに約90箇国から6,000名を超える研修員がこの支援を享受してきました。

日本は今,秋が終わり初冬を迎えつつあります。大統領閣下並びに令夫人は,この後京都,さらには東北を訪問されると伺っております。この度の御訪問が,思い出深いものとなり,日本とシンガポールの次なる50年に向けて,両国間の相互理解と友好協力関係の更なる増進に資する,実り多いものになることを心から願っております。

ここに杯を挙げて,大統領閣下並びに令夫人の御健勝とシンガポール国民の幸せを祈ります。

シンガポール大統領閣下のご答辞