秋篠宮皇嗣妃殿下お誕生日に際し(令和4年)

秋篠宮皇嗣妃殿下のお誕生日に際してのご近影

宮内記者会の質問に対する文書ご回答
令和4年9月11日(日)

問1 新型コロナウイルスの影響が続く中、オンラインでの活動と並行し、地方訪問なども再開されました。この1年の活動を振り返っての感想とともに、コロナ禍での国民との関わり方や皇室の活動のあり方についてお考えをお聞かせください。警備のあり方を問われる重大な事件もありましたが、この1年に国内外で印象に残った出来事についてもお教えください。
秋篠宮皇嗣妃殿下

 

<この1年の活動をふり返っての感想>

この一年をふり返ると、オンラインの行事や都内での対面の行事に出席することに加えて、地方に出かける機会も少しずつ増え、様々な形での活動ができるようになってまいりました。
 まず、国際的な学会や会議がオンラインで開催されることで、海外の医療や保健の専門家が主催するシンポジウムを自宅で聴いたり、お話を伺ったりする機会が増えました。昨年の9月には、「第22回世界妊娠高血圧学会」開会式にオンラインで出席しましたが、ビデオメッセージを準備する中で、妊婦や新生児の周産期死亡の主な原因の一つである妊娠高血圧腎症と、その予防や治療の課題を知ることができました。また、10月の「第52回国際結核肺疾患予防連合 肺の健康世界会議」では、基調講演などのプログラムをオンライン聴講し、「秩父宮妃記念結核予防世界賞」の受賞者とはリモートで懇談し、結核対策に関わる研究と活動についてお話を伺いました。こうした通信技術を用いることによって、様々な理由で移動できない人が行事に参加したり、画面上で「出会う」ことができるようになったりして、オンラインの良さに気づく機会になりました。
 対面の行事では、この4月には、昨年度お会いできなかった方も含め母子保健奨励賞を受賞された保健師、助産師、医師や歯科医師にお目にかかることができました。また7月におこなわれた恩賜財団母子愛育会の「第54回愛育班員全国大会」では、地域でボランティア活動をおこなう愛育班員の代表の方々と約3年ぶりにお会いしてお話ができました。コロナ禍が続く中で、今まで以上に困難な状況にある親子に気づき、それを支援する専門家とボランティアから、人に寄り添う取り組みについてお話を伺い、対面することで心のふれあいが深まるコミュニケーションがいかに大切かを、改めて知らされる思いがしました。

夏には、「全国高等学校総合体育大会」や「全国高等学校総合文化祭」、「全日本学生児童発明くふう展」、「日本スカウトジャンボリー」において、宮様とご一緒に若い世代の人たちと直接会って交流する機会に恵まれました。高校総体と高総文祭においては、これまで続けてきた練習や活動の成果を発表する機会が少なかった高校生たちの喜びの気持ちが伝わってくるようでした。それとともに、大会の運営を支える高校生たちと直接お話しすることができたこともうれしい思い出です。また、全日本学生児童発明くふう展では、感染対策に資するものやSDGs達成のためにできること、平素の生活空間で必要と考えられることに対応する道具を作り出す、着眼点と創造力に驚かされました。そしてスカウトジャンボリーでは、COVID-19の状況に鑑み、各地の会場のスカウトたちがオンラインでつながり、元気に活動を紹介し交流する様子を見ることができました。若い人たちが、感染症のために様々な制約・不自由がある中で、今できることを見つけて工夫し、挑んでいく姿が心に残りました。

<コロナ禍での国民との関わり方や皇室の活動のあり方についての考え>

宮様が、昨年のお誕生日の会見でお話をされていましたように、折々の状況に応じた形で、できるだけ人々と交流する機会をもつためにはどうすればよいのかを考えることが大事であると思っております。
 コロナ禍のために、以前のように幅広く大勢の人々と直接にお会いすることが難しかった時期がしばらく続きましたが、多くの関係者の努力により、感染対策をしながら様々な形で人々と関わることができるようになり、交流の幅が広がってきているように思います。そうした中で、人と人とが対面して、あるいはオンラインでつながる場を作るなど、交流の機会やその環境を整えるために、力を尽くしている方々の活動をありがたく思っております。
 これからも、感染症などの専門家とも話し合いながら務めをよりよく果たすためにどのようにすればよいかを考えつつ、活動を進めてまいりたいと思います。

<この1年に国内外で印象に残った出来事>

今年は、不安定な気候と酷暑が続く中、7月に入ってからCOVID−19の流行が急拡大しました。収束時期が見通しにくい状況下、医療を日々続けている関係者、感染防止に留意しながら高齢者の介護や子どもの保育・教育に携わっている関係者などの様々な努力に深く感謝しております。
 また今年も、記録的な大雨や河川の氾濫などによる被害も各地で生じました。COVID-19流行に伴う不便さや不安、そして自然災害などによって、生活の基盤に大きな影響を受けた人々のご苦労はいかばかりかと、案じております。
 世界に目を向けても、異常気象や厳しい世界情勢などによって住む場所を失った人々、命を落とした人々のニュースが続いています。「令和4年(2022年)広島平和記念式典」において、こども代表の小学生が、「今この瞬間も、日常を奪われている人たちが世界にはいます。」と述べた言葉を聞いた折には、一人の母親として、子どもたちが未来への希望を失わないようにと願っています。

この一年に国内外で印象に残った出来事を思い起こすと、うれしいこと、悲しいこと、様々でした。
 科学の分野では、眞鍋淑郎さんが昨年の秋にノーベル物理学賞を受賞され、また文化勲章を受章されたことは、大変喜ばしいことです。また、2020年に帰還した宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウで採取した試料は生命の起源の解明の手がかりになるという報道がありました。この試料のレプリカは各都道府県で展示され、子どもたちが小惑星から宇宙へと興味を広げることにつながるのではと期待しています。
 スポーツの分野では、パラリンピックで金メダルを取った車いすテニス選手の国枝慎吾さんが、昨年の全米オープンから四大大会をすべて制し、「生涯ゴールデンスラム」を達成したことが印象に残りました。
 悲しいお別れもありました。海外の児童書の翻訳も手がけられ、子どもたちが読書によって人類の知恵を吸収することを願い続けてこられた東京子ども図書館名誉理事長の松岡享子さんが1月に亡くなられたことは、とても寂しいことでした。3人の子どもたちが幼かったとき、松岡さんがいらした東京子ども図書館に出かけて本を読んだり、昔話などのお話を聞いたりしたことを懐かしく思い出しております。また先月、文化勲章受章者の森英恵さんが亡くなったことを大変残念に思います。私や娘たちにも、宮中での大切な行事のための装いをお作りくださいました。日本の服飾文化からタイ王室で作られている絹地への思いまで、幅広いお話を伺ったことは、よい思い出になっております。
 また先日、長年携わってきた結核予防活動に関連する大きなニュースとして、日本がWHO(世界保健機関)の基準での「結核低まん延国」になったという(厚生労働省による)発表がありました。戦後、結核が高まん延状態にあった時期から今日まで、結核を減らすための対策に尽力してきた関係者に感謝しております。一方、近年の急激な患者数の減少は、COVID-19による受診率の減少も関係があると考えられるため、今後も経過の観察と結核にかかるリスクが高い人々に対する支援が必要であると聞いています。感染症には国境がないと言われる中で、COVID-19と同様に、結核やその他の感染症への対策は、世界の国々や国際的な協力が重要であると思います。

皇室の関係では、COVID-19のため延期になっていた立皇嗣の礼後の神宮ならびに山陵への参拝を今年の4月におこなうことができました。これをもって、御大礼に関係する行事のすべてが終了したことになり、私どもも安堵あんどするとともに、今の立場に伴う責任への思いを新たにしました。コロナ禍により世界の人々が困難に直面している時期に一連の行事を終えることになりましたが、これからも宮様とともにいかなる時節にあっても人々の暮らしの安寧を祈り、天皇皇后両陛下をお支えしながら、務めを果たしてまいりたいと思っております。
 上皇陛下には、米寿をお迎えになりました。コロナ禍以降は、上皇上皇后両陛下へご挨拶申し上げる機会が限られていましたので、いかがお過ごしでいらっしゃるかと折にふれて思いながら過ごしておりました。そのような中、今年の春に赤坂御用地にお引き移りになり、お二方ご一緒で御用地内をご散策中にお目にかかることもあります。お身体を大切にされ、穏やかな時間をお過ごしになられることを願っております。
 昨年の12月には、敬宮様が成年を迎えられました。娘たちと一緒にすてきな笑顔を見せて遊んでいらっしゃったご幼少の頃から、あっという間に月日が経ったようにも感じます。また、今年の6月には、三笠宮妃殿下が白寿の節目を迎えられました。皇室のご慶事の続いた一年でした。
 天皇皇后両陛下をはじめ、皆さまがこれからもお健やかにお過ごしになられますよう願っております。

<結びに>

この一年の間に様々なことがありましたが、誰もが安全で安心して暮らせる社会であってほしいと強く願わずにはいられません。
 今までに経験したことがない感染症に遭遇した当初は対応に苦慮し、自粛生活が人々の心身の健康にも、そして生き方にも大きな影響を与えてきました。感染症の状況は予断を許しませんが、この一年はもう一歩、それぞれの活動を進める模索や工夫が各地でおこなわれているように感じました。その中で、声を上げることが難しく、辛く悲しい気持ちでいる人たちが取り残されることのないように、広い視野をもつことが大切なのではないかと思います。
 感染症や気候変動について考えるとき、私たち一人ひとりの行動が隣の人に、更に遠くの地に暮らす人たちへも、そして地球全体に影響を与えていることに気づかされます。お互いを大切に思い、支え合いながら、この時節を乗り越えていくことができるよう努めてまいりたいと思います。

問2 ご家族についてお伺いします。佳子さまは、新たな公務や総裁職就任など活動の幅を広げられていますが、今後の活動や仕事に対する期待、結婚についてのお考えをお聞かせください。筑波大附属高校に入学された悠仁さまの学校生活や日常生活の様子をはじめ、大学進学や留学など将来に期待することをお教えください。皇位継承順位2位の悠仁さまに対する教育方針についてどのようにお考えでしょうか。
秋篠宮皇嗣妃殿下

 

次女について
<今後の活動や仕事に対する期待、結婚についての考え>

次女の佳子は、長女が総裁職を務めていた日本テニス協会と日本工芸会の総裁職に就任しました。新たな出会いを大切にしながら、それぞれの仕事に携わっているように思います。たとえば、日本工芸会の総裁就任にあたって、伝統工芸の分野ごとに専門家の貴重なお話を伺い、知識を深めているようでした。
 また、以前は長女が出席していた緑化関係の行事「みどりの『わ』交流のつどい」、「みどりの感謝祭」と「都市緑化祭」でも、関係者の話を聞き、資料を読む中で、森林と都市の緑化の意義について理解を深め、関係する方々とお話しする機会があったことをありがたく思っているようです。
 今年の6月、日本乳癌学会の行事、創立30周年記念式典の準備をする過程でも貴重な学びがあり、文献や関係するサイトを丁寧に読み、専門家から話を聞いて、自分が語るべきことは何か、真剣に考えていました。
 そして、以前から出席している「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」や、参加しているガールスカウト日本連盟のジェンダー平等をテーマとした行事などについても、引き続き大切に取り組んでいます。
 これからも、公的な活動などの経験を重ねながら、皇族としての務めを十分に果たしていってほしいと思います。結婚や将来につきましては、次女の気持ちや考えをよく聞き、またこちらの思いや考えを伝えていくことができればと思っています。

 

長男について
<学校生活の様子>

長男の悠仁は、今春、お茶の水女子大学附属中学校を卒業し、筑波大学附属高等学校に入学して新しい学校生活が始まりました。
 高校では、授業だけでなく、課外活動も楽しみ、充実した日々を送っているようです。バドミントン部に入り、同級生や上級生と一緒にトレーニングに励み、7月下旬の「蓼科生活(クラス合宿)」では、登山やキャンプファイヤーなどを通して、クラスメートとの絆を深めたようです。

<日常生活の様子>  

この春から、トンボ類をはじめとする生き物の調査を、より積極的に進めるようになりました。そして、宮邸周辺の虫や植物などの生息環境と生物多様性の保全に関心を広げている様子です。
 また今年も、長男が米作りをしている田んぼは、家族皆で耕して、畦塗りや代かきをし、田植えをしました。もうすぐ収穫の時期を迎え、稲刈りをする予定です。また、時間を見つけていろいろな野菜を栽培し、成長の具合を確かめ、気を配りながら世話をしている長男のそばで、私たちも草むしりなどの作業をしています。収穫した野菜を食事の折に皆で楽しんでいます。

<大学進学や留学など将来に期待すること>

長男には、国内外において様々な分野で学ぶ人々や社会で働く人々とも交流し、広い視野で世界を見ていけるようになってほしいと思っております。そうした中で、自分のテーマを見つけ、探究しながら、自分の進む道を拓いていってくれればと考えております。

<教育方針について>

高校生になり、学校やそれ以外での活動が増えていく中では、見通しを持って計画をたてながら取り組むことが今までよりも求められるようになると思います。また、様々な場面において自分の言葉や行動について判断することが必要となり、それに適切に対応していくことができるようになることも重要であると考えております。
 また宮様が、以前の記者会見で教育方針について聞かれたとき、国内のいろいろな場所に出かけて、その土地の文化にふれる機会をもってもらえたらうれしいと話されていました。今は学校生活が中心ですが、この夏は高校生が参加する行事に私たちと一緒に出席しました。全国高等学校総合文化祭では、高校生たちが百人一首かるた競技に熱心に取り組む姿を長男も会場で観覧しましたが、想いを詩歌に託すことをはじめ、工芸や絵画、書道など、古くから日本にある文化を大切に思う心も育んでいってほしいと願っています。

問3 眞子さんと小室圭さんの結婚は、儀式や行事が行われないなど異例続きとなり、両殿下はご感想で「皇室への影響も少なからずありました」「類例を見ない結婚となりました」などと綴られました。改めて今回の結婚や経緯についての受け止め、お二人に対する今のお気持ちや今後の期待をお聞かせください。米国で生活する眞子さんの近況や生活についてはどのように把握され、どうお感じになっていますか。連絡を取り合っていることや、親子で話し合われていることがあればあわせてお聞かせください。
秋篠宮皇嗣妃殿下

 

<今回の結婚や経緯についての受け止め>

二人の結婚から一年が経とうとしています。二人は確かな考えを持って、結婚に至るまでの過程を周囲と相談しながら、旅立ちの日を迎えました。それまで支えてくださった多くの方々への感謝の気持ちを今も抱き続けているようです。

<二人に対する今の気持ちや今後の期待>

二人で力を合わせ、健康にも気をつけて、新しい生活を心穏やかに送れるように心から願っております。二人の幸せを祈っております。

<長女の近況や生活について>

近況や生活については、本人の希望もあり、お答えは控えます。

<結びに>

長女の眞子が結婚してからも、親しみを込めて懐かしく長女について話される方々が何人もいらっしゃいました。例えば、離任するパラグアイ大使やブラジル大使にお目にかかった折には、それぞれから、長女が日系人とゆかりのある遠い場所にも足を運び、両国との友情を育んだ姿が今でも心に残り、これからも大切にしていきたいとのお気持ちを伺いました。とてもうれしく思いました。
 今は直接会うことが叶いませんが、庭の花の世話をしながら、木香薔薇のアーチを作り、いつか娘と一緒にゆっくり庭を歩くことができましたら、と思っております。


参考
 この文書は、宮内記者会へ令和4年9月8日午後に回答するため、エリザベス女王陛下の崩御の報道がなされる前の8日午前中にお示しいただいたものです。