主な式典におけるおことば(平成31年)

皇太子殿下のおことば

第64回青少年読書感想文全国コンクール表彰式
平成31年2月8日(金)(経団連会館)

 第64回青少年読書感想文全国コンクールで,表彰された皆さん,おめでとうございます。
 私がこの表彰式に出席するのは今回が15回目になります。授賞式の後には,受賞者の皆さんとお話をする機会がありますが,皆さんが,読んだ本について笑顔で生き生きと話してくれることが強く印象に残っています。
 自分が感じ,考えたことを文章にすることは簡単なことではなかったと思います。受賞された方々以外にも感想文に取り組まれた多くの皆さんが,自分の得た感動や思いを人に伝えようと苦心して言葉を紡いだ努力は,きっと感想文を読んだ一人一人の心に届いたことでしょう。そして,その経験は皆さんの中にも貴重な財産として残り,皆さんの豊かな人生につながっていくことでしょう。
 同じ本であっても何年か後に読み直すと,作品の持つ深みや面白みが,より分かったように感じることがあります。優れた作品は,読む人の成長に合わせて,人生の折々に読み返すことで,より深く内容が理解でき,新たに学ぶことができるのではないかと思います。皆さんも是非,大人になったときに,子供時代に読んだ本の何冊かをもう一度読んでみてください。きっと新たな発見の喜びを見いだすことができるでしょう。
 天皇陛下は,皇太子時代にこの式典に出席され,本を読み,よく考え自分のものとすることの大切さ,すなわち「考える読書」の習慣を身に付け,視野の広い心の豊かな人になってほしいと話されました。私は,皆さんの書かれた感想文の幾つかに,毎回目を通しますが,そこにはこの思いが脈々と受け継がれていることが分かり,とてもうれしく思っています。
 今回のコンクールは410万編を超える作品が寄せられたと聞きました。学校や家庭などで,子供たちの読書活動を支えてくださっている多くの方々に心から敬意を表するとともに,読書によって若い人々が,多くの感動を経験し,心豊かに成長されることを期待いたします。あわせて,このコンクールの一層の発展を願い,お祝いの言葉といたします。

第15回ヘルシー・ソサエティ賞授賞式
平成31年3月13日(水)(パレスホテル東京)

 第15回ヘルシー・ソサエティ賞授賞式に,受賞者を始め多くの関係者の皆さんと共に出席できることをうれしく思います。
 ヘルシー・ソサエティ賞が,人々の健康や地域社会の福祉の増進など,国民生活の質の向上に指導的な役割を果たし,より良い明日を築くために献身的な努力をされている人々の功績を認め,(たた)えることを目的として,平成16年に創設され,本日15回目の節目を迎えたことをお祝いいたします。主催者を始め,多くの関係者のこれまでの継続的な取組に敬意を表します。
 社会的に弱い立場に置かれている人々に心を寄せ,人々のために奉仕するということは,とても大切で意義あるものと思います。本日表彰を受けられる皆さんは,住民中心の地域保健サービスを目指す看護師の育成や,貧しい家庭の母子保健の向上,難病に苦しむ人々への遺伝子治療の開発,重度認知症の患者さんやその家族への支援,そして,脳科学研究による子供の虐待を防止する取組の促進など,それぞれの分野で献身的な活動を果たしてこられたと伺っています。ここに,皆さんのたゆみない努力と貢献に対し,心から敬意を表しますとともに,皆さんが受賞される場に立ち会えることをうれしく思います。
 皆さんの活動が,この賞の受賞を通じて広く人々に理解されるとともに,今後,他者を思いやり社会に貢献する活動が更に広がっていくことを希望いたします。
 終わりに,本年で15周年となるヘルシー・ソサエティ賞が,これからもますます発展することを願い,私の挨拶といたします。