皇太子殿下 ブラジルご旅行時のおことば(一覧)

ブラジル

平成30年3月19日
第8回世界水フォーラム開会式(イタマラチ宮)
【実際のおことばは,英語で述べられています。こちらのページでは,和訳したものを掲載しています】

ブラジル連邦共和国ミシェル・テメル大統領閣下
各国元首首脳閣下
ご列席の皆様

 テメル大統領閣下のご招待を受け,第8回世界水フォーラムの場で挨拶をすることができることを嬉しく思います。私は日本からブラジルへの移民100周年を迎えた2008年にこの国を訪問し,ブラジルの皆さんから温かい歓待を受けたことを深い感銘と感謝とともに記憶しています。また,日本からの移住者を心温かく迎えいれてきたブラジル政府及びブラジル国民の厚意を忘れることはできません。

 日本においても,世界の多くの国々においても,水は国の発展の原動力になった最も重要な資源の一つです。しかし現在,世界は様々な水の問題に直面しています。世界各地で干ばつが発生する一方,他の地域では洪水問題が頻発しています。また,多くの地域で水質汚染が深刻化し,湿地などの生態系に影響を及ぼしています。更に水と衛生サービスが行き渡らない地域を中心に,水問題がジェンダー,教育,雇用,貧困などの世界的な共通課題に影を落としています。

 詳しくは午後の基調講演でお話ししますが,水は水圏だけでなく大気圏,地圏と深くつながり,地球環境の根本をなすものです。また人と水のつながりは有史以来深く,その国・地域・社会の水に関わる歴史や文化を紐解くことなしに,水問題を解決することはできません。「水を分かち合う」ためには,水がすべての人と自然に無くてはならないものだと深く理解し,水に関する歴史上の経験と知恵から学び,水に関する情報を共有し,水を保全し利用するために協力しなくてはなりません。

 まさに,そうした水と地球環境や他の分野との密接な関わりを知り,過去の経験や良い事例を共有し,利害関係者が協働して次の水問題の解決のための行動を起こすために,この第8回世界水フォーラムが素晴らしいきっかけとなるでしょう。

 2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」において,水に関する独立した持続可能な開発目標(SDG)としてSDG6が定められ,水は様々な目標をつなぐ横断的分野として位置付けられました。SDGの横断的分野として水が取り上げられた今,水に関係する人々が他の分野の課題に目を向け,多くの分野の専門家,関係者と手を取り合ってSDGの全ての課題とターゲットの達成に向けて行動を起こす必要があります。

 こうした中,水に関するハイレベルパネルによる最終報告書が先週発表されました。このパネルに参加され世界の水問題の解決のために行動された11人の元首と特別顧問の方々に深い敬意を表します。

 私たちは水問題の解決のためにこの地,ブラジリアに集まりました。しかし水問題の解決は私たちの最終目標に向けた一里塚に過ぎません。その先には,水を通じた人類の繁栄,平和,幸福があります。この最終目標に向けて,関係者の皆さんが力を合わせていくことを期待しています。

 ありがとうございました。