ポーランド及びフィンランドご訪問に際し(令和元年)

秋篠宮皇嗣同妃両殿下の記者会見

ご訪問国:ポーランド及びフィンランド

ご訪問期間:令和元年6月27日~7月6日

会見年月日:令和元年6月21日

会見場所:赤坂東邸

記者会見をなさる秋篠宮皇嗣同妃両殿下
記者会見をなさる秋篠宮皇嗣同妃両殿下

<宮内記者会代表質問>

問1 天皇陛下が即位され,殿下が皇位継承順位1位の皇嗣,妃殿下が皇嗣妃となられてから初めての外国公式訪問となります。訪問されるポーランドとフィンランドの印象と,新しいお立場で臨まれる抱負をお聞かせください。また,令和の時代を迎え,皇室が担われる国際親善の意義や役割についてのお考えもあわせてお聞かせください。
秋篠宮皇嗣殿下

この月末からポーランドとフィンランドに参ります。この両国は,実は私にとって初めて訪問する国です。ですので,まだ行ったことがない国なので,なかなか印象というのをお話しするのは難しいのですが,まずポーランドについて言いますと,子供の頃の印象ですが,私は小さい頃伝記を読むのが好きでした。ショパンであったりとか,キュリー夫人の伝記を,何冊か読んだ記憶があります。それで,恐らくポーランドという国について,もちろん伝記なのでその時のお国の事情も書かれていたりしますので,最初かどうか分かりませんけれども,印象に残ったことです。その後,だんだん大きくなるにつれて,例えばポーランドが第二次大戦の時に大変大きな被害を受けて,それこそ街が甚大な被害を受けたわけですけれども,その後,その街をポーランド社会が一体となって復元し,それが世界遺産として登録された。これは恐らく1980年だったかと思いますけれども,そのようなことを知るようになりました。次に,フィンランドについてです。これも子供の頃のことから申しますと,ちょうど私くらいの年代はトーベ・ヤンソンさんのムーミンがアニメーションで流れた頃に当たるわけですね。ですから,そこで,まずフィンランドのムーミンというのは,もちろんあります。それから,もう一つ子供の頃に印象に残っているのは,我が家に「カンテレ」という楽器がありました。これは,フィンランドで有名な楽器ですが,「カレワラの叙事詩」の中にも出てくると思いますが,この「カンテレ」の音色というのが,とても素晴らしいというのが強く印象に残っております。うんと前のことなので定かではありませんけれども,「カレワラの叙事詩」の朗読と「カンテレ」の演奏をフィンランドの人がしてくれたことなどもあったと思います。そしてまた,これも年を経るにつれて知るようになったのは,フィンランドという国が福祉であったり,それから教育の非常に先進国であるということ。それからもう一つ,子供の頃の印象としては,やはり多くの人が抱いてるように,森と湖が多い国です。そしてまた今,福祉,それから教育ということを話しましたが,それとともに,近年では情報通信関係で非常に大きな成果を挙げている,そういう印象があります。次に何でしたでしょうか。

記者

新しいお立場で臨まれる抱負をお聞かせください。

秋篠宮皇嗣殿下

この5月に令和という時代が始まりました。それに伴って,私の立場,それから妻の立場もそれぞれ変わったわけであります。ただ,私個人,これは一人の人間でずっと続いているわけですね。そのようなことから,私としては今までもしてきたように,一つ一つの訪問を大切に考え,そして訪れる国の人たちとの交流を深めることができればと思っております。ただ,やはり人間も進歩をしないといけないと思います。その意味からどのようにしたらいい訪問ができるか,国際親善ができるのかということを,常に考えながらおこなっていきたいと思っております。その次は何でしたか。

記者

令和の時代を迎えて皇室が担われる国際親善の意義や役割についてもお聞かせください。

秋篠宮皇嗣殿下

皇室が担う国際親善というのは,漠然としたところがあって,一言で答えを出すのが難しいような感じがいたします。私たちの場合,外交は基本的にできないわけですね。そうすると,やはり親善となります。その親善をするという時に,もちろん私たちが訪れて,その国の文化とか社会,そして歴史を知るということもありましょう。また,行った国の人たちに日本の文化であったり,歴史であったり,そういうことを知ってもらう機会にもなるかと思います。また,私たちが行くことによって,その国のことが,もし日本で報道されたりした場合に,日本の人たちもそこの地,国,地域のことを知る機会ができるかもしれません。そういうところがあると思います。そして,もう一つは,これは,僅かかもしれませんけれども,訪れる国と日本との友好親善関係の促進に役立つことができれば幸いに思います。

秋篠宮皇嗣妃殿下

私はポーランドとフィンランドを以前に訪れたことがあり,子どもの頃からの思い出があります。

ポーランドについては,中学生の時にショパンのワルツを友人とよく練習しておりました。そして大学生の時,夏休みを利用してポーランドを旅行しましたが,その時にショパンの生家を訪れ,また,ワルシャワの歴史地区や古都クラクフの街を歩きました。そこでお聞きしたお話などから,様々な厳しい歴史の中で,人々がポーランドへの熱い思いと誇りを持ち,自国の文化を大切にしてきた気持ちが深く印象に残りました。この他に,ポーランドの南部にあるタトラ山地の峰を登りまして,そこでの爽やかな風や見晴らしを忘れることはできません。

フィンランドについては,私は,小学校6年生の夏休み,当時私はオーストリアに住んでおりましたが,そこから家族旅行で行きました。滞在先は針葉樹林の中で,父の友人が自ら建てたログハウスで電気も水道も通じていませんでしたが,まきをくべて焚くサウナがありました。湖で泳いだこと,森の中で野生のブルーベリーを摘んでいただいたことや,斜めに沈んでいく太陽を眺めたことなどが思い出されます。このようなフィンランドでの自然の中での生活は,今も心がひかれます。また,シベリウスの家を訪ね,その後には,先ほどもお話がございましたが,私も民族楽器「カンテレ」の美しい音色に出会いました。

このような国々を再び訪れることができますことは,とてもうれしいことでありますとともに,新しい立場での責任の重さを感じております。

現在,日本とこの2か国の間では文化を学び合い,様々な交流をおこなっている関係が築かれています。

ポーランドでは,人々が熱心に日本語を学び,日本研究が盛んで,それから茶道や武道の稽古に励んでいる人も多いと伺っております。日本では,ポーランドの文学が翻訳されて,読まれています。また,ポーランドの織物やレース,木工や陶器など,伝統的な手工芸に興味を持つ方も増えているようで,私もその一人です。

フィンランドについてですが,少し重なりますけれども,トーベ・ヤンソンのムーミンシリーズやトペリウスの『星のひとみ』などの作品が日本語に翻訳され,私も含めて子どもの頃に読んでいる人も多いと思います。このようなフィンランドの文学を始め,子育て支援や教育システムなどについても関係者が集い,両国の交流がおこなわれていると伺っております。

日本と訪れる国の人々が,お互いの理解や交流を深め,友好関係を進めるために役立つことは,皇室が担う国際親善の一つの役割であると考えております。この度,訪問先での行事などを心をこめて務めてまいりたいと思います。

問2 長女の眞子さまと次女の佳子さまもそれぞれ外国公式訪問を控えられていますが,眞子さまは結婚されれば皇室を離れ,国際親善の担い手が減ることになります。眞子さまの結婚の見通しとともに,皇族が減少する中での活動の在り方についてお考えをお聞かせください。
秋篠宮皇嗣殿下

皇族が減少する,これはもちろん高齢になる場合もあれば,結婚して皇族でなくなる場合,両方があります。一方で,その国際親善の担い手が少なくなる。しかし,これはある意味,仕方のないところがあります。私は可能な人数でできる範囲のことをすればよいのではないかと考えております。あと,娘の結婚の見通しについてですけれども,それについては,私は娘から話を聞いておりませんので,どのように今なっているのか,考えているのかということは,私は分かりません。

秋篠宮皇嗣妃殿下

国際親善は大事な仕事の一つであると思いますし,現状において自分たちが可能な範囲でおこなっていくことになると思います。今までと同様に,訪問するそれぞれの国への理解を深められるよう務めながら,一つ一つの活動を大切に務めてまいりたいと思います。

秋篠宮皇嗣殿下

(記者に質問を確認されて)申し訳ないですけれども,もう一度質問をお願いできますか。

記者

長女の眞子さまと次女の佳子さまもそれぞれ外国公式訪問を控えられていますが,眞子さまは結婚されれば皇室を離れ,国際親善の担い手が減ることになります。眞子さまの結婚の見通しとともに,皇族が減少する中での活動の在り方についてお考えをお聞かせください。

秋篠宮皇嗣殿下

ありがとうございました。(妃殿下をご覧になって)付け足すことはありますか。

秋篠宮皇嗣妃殿下

私も殿下と同じような考えを。

秋篠宮皇嗣殿下

よろしいですか。(記者を向かれて)ありがとうございました。

記者

妃殿下は,眞子さまの結婚の見通しについては聞かれていますでしょうか。

秋篠宮皇嗣妃殿下

同じでございます。

<在日外国報道協会代表質問>

問3 秋篠宮皇嗣殿下にお伺い致します。皇嗣様が今回訪問されますフィンランドは,男女平等ランキングで昨年は4位,ポーランドはもう少し下のほうでしたが,女性の社会進出と活躍が大変に進んでおります。一方,日本では更なる努力が求められるなか,多くの国民に尊敬され支持されている皇室において,女性皇族がたにはどのような役割が期待されるでしょうか。ご公務のありかた,また安定的な皇位継承のあり方も含めどのようにお考えになりますでしょうか。
秋篠宮皇嗣殿下

今,お話のあったように,特にフィンランドになりますか,女性の社会進出というのは非常に高くなっているということは私も聞いております。

日本の女性の皇族に求められる役割についてですが,私は,女性の皇族,男性の皇族,求められる役割というのは基本的に同じだと考えています。というか,特に女性に求められることというところが,今,思い付かないといったところであります。それから,公務の在り方でしたでしょうか。これは,つまり国事行為ということになりましょう。そういたしますと,いわゆる,「国事行為の臨時代行に関する法律」というのができて,それができた後に,天皇が外遊,外国訪問をすることができるようになったわけですね。そういうときには,その間,臨時代行としてその仕事を皇太子が代行する,そしてさらに,皇太子もそのときに,例えば外国に行っているであるとか,何かのときに不在にしている,そういうときにはその次,そしてまた順番も皇室典範で決まっているのですね。そうすると,もちろん,女性の皇族が代行するということもあり得ます。ただ,これは国事行為ですので,行うことは決まっています。ですので,在り方というのは,なかなか,私が何かを言うということではないと思っております。もう一つが,皇位の継承についてですけれども,こちらも制度に関係することでありますので,私からの答えは控えさせていただきたいと思います。

関連質問1 本日は両殿下ありがとうございます。皇嗣殿下にお尋ねいたします。近代皇室において,天皇の弟宮が次期皇位継承者となるのが,昭和初期のごく一短期間を除くと事実上初めてのこととなります。殿下は天皇陛下の5歳年下なわけですが,お二方が今後御年齢を重ねられるにつれて,御活動の範囲あるいは量というものがだんだん狭まったり減っていったりすることも考えられます。皇嗣殿下は将来の皇室のありようについて,そういったことを踏まえてどのようにお考えか,お聞かせください。
秋篠宮皇嗣殿下

これはもう,実質的によわいを重ねるというのは必然であって,年を重ねれば,当然のことながら活動の範囲は狭まってきます。ということは,やはり将来を考えるときに,まずどこまでの範囲,これは先ほどの国事行為ではありませんけれども,公務は別として,皇室の担っていく,若しくはおこなっていく範囲をどういうふうにするかということにもなってくると思います。当然,その次の世代の人がいれば,活動もまた広がることもあり得ますけれども,実際上,今の現状を見ますと今後どういうふうになっていくのかというのは,これはやはり私たちだけでなくて,様々なところで考えていく必要があるのではないかと思います。もう一方おられましたら,どうぞ。

関連質問2 殿下にお聞きします。今回の訪問では,移動に政府専用機ではなくて民間機をお使いになられます。皇嗣になられてから,御一家に対する護衛や警備の体制というのが変わったと思いますが,その中でも,悠仁さまの通う学校で事件もありました。今後の警備の在り方についてどのようなお考えをお持ちか,お聞かせください。
秋篠宮皇嗣殿下

なかなか「警備はこうあるべきだ」ということはお話ししにくいところがあります。というのは,やはりそのときの社会の状況によっても変わっていくんだと思います。ただ,私の気持ちとしては,警備は確かに大事かも知れませんけれども,それによって市民生活に何か不都合なことが起こる,それは避けたいなと思っています。それぐらいでよろしいですか。

関連質問3 今日はありがとうございます。先ほど,2問目の御回答の中で,眞子さまの方からは特に考えを聞いていないと,私の方では分かりませんと殿下はお答えになったのですが,昨年11月の記者会見で,「それ相応の対応があるべき」というふうに殿下がおっしゃっておられました。その点については,この半年近い期間の間に,小室さんあるいは,眞子さまの方から何かお話ですとか御連絡というのはあったのでしょうか。
秋篠宮皇嗣殿下

それ相応の対応をしたかどうかということについては,恐らく何かをしているのではないかとは思いますけれども,そのことについて,じゃあどのようなこと,具体的なこと等については,私は存じません。