所蔵資料詳細

馬形埴輪 頭部,鞍部(うまがたはにわ とうぶ,くらぶ)

馬形埴輪 頭部
馬形埴輪 鞍部

大阪府堺市に所在する仁徳(にんとく)天皇陵から出土した馬形(うまがた)埴輪である。写実的に表現された馬の埴輪で,頭部と鞍部(くらぶ)が残されている。頭部には眼,口,耳,たてがみの表現がみられる。たてがみはT字形に切りそろえられた状態で,当時の馬の姿を示すものと思われる。

また,馬装(ばそう)も忠実に形作られ,頭部では面繋(おもがい)が表現されており,円環状の辻金具(つじかなぐ)が見られる。轡(くつわ)がないことから,乗馬用とは異なる馬装であったようである。一方鞍部では,鞍(くら)と尻繋(しりがい)の表現が見られる。鞍の下面には馬体を保護するための下鞍(したぐら),鞍の上面には人が座りやすくするための鞍敷(くらしき),そして鞍の横面には鐙(あぶみ)を吊す革紐(かわひも)と障泥(あおり)が表されている。尻繋には辻金具を介して杏葉(ぎょうよう)が吊り下げられている。

華麗な馬具によって全身が飾られた馬の姿がうかがえる。これらは初期の馬装を知りうる数少ない事例であるとともに,馬形埴輪としても初期段階のものであり新しい埴輪祭祀を知る上で重要な資料である。頭部は現状長31.0㎝。鞍部は現状長75.0㎝。