この銅鐸は,明治17年に奈良県天理市石上から出土し,その後,皇室に献上されたものである。身は規則的な流水文によって飾られ,片面は上下に区分されて描かれているが,もう1面には区画が認められない。本品の大きな特徴としては,鈕の部分に2人の人物像が鋳出されていることである。棍棒,あるいは武器のようなものを手にしている姿は,祭りの場面もしくは戦いの場面を表現しているともいわれている。この銅鐸は,吊り下げて音を出す機能(聞く銅鐸)から,置いて見る銅鐸(見る銅鐸)へと移りかわっていく頃の特徴をよく示した資料である。