主な式典におけるおことば(令和元年)

天皇陛下のおことば

国賓 アメリカ合衆国大統領閣下及び同令夫人のための宮中晩餐
令和元年5月27日(月)(宮殿)

この度,アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ閣下が,令夫人と共に,我が国を再び御訪問になりましたことを心から歓迎いたします。

特に,私が皇位を継承してから最初の国賓として,今宵(こよい),大統領御夫妻を晩餐会の席にお迎えすることができ,(うれ)しく思います。

我が国が,鎖国を終えて国際社会に足を踏み出したのは,今から165年前の1854年に,貴国との間で日米和親条約を締結したことに始まります。それ以来,日米両国とその国民は,様々な困難を乗り越え,相互理解と信頼を育み,今や太平洋を隔てて接する極めて親しい隣国として,強い友情の(きずな)で結ばれております。特に近年,両国の関係が,政治や経済にとどまらず,芸術,文化,スポーツ,最先端技術など,幅広い分野で深みを増していることを,喜ばしく思います。また,日米両国が困難な時に互いに助け合える関係にあることは大変心強く,取り分け,8年前の東日本大震災の折に,2万人を超える貴国軍人が参加した「トモダチ作戦」を始め,貴国政府と貴国国民から,格別の温かい支援を頂いたことを,私たちは決して忘れることはないでしょう。

貴国と皇室との交流の歴史にも,また特別なものがあります。私の祖父である昭和天皇は,香淳皇后と御一緒に,1971年,御即位後初めての外国御訪問の途次に立ち寄られたアラスカにおいて,ニクソン大統領御夫妻より,そして,1975年に御訪米をされた折には,フォード大統領御夫妻より,それぞれ歓迎を頂きました。また,私の両親である上皇上皇后両陛下も,皇太子時代の1960年に初めて貴国を公式訪問された折には,アイゼンハワー大統領御夫妻始めの歓待を受けられたほか,御即位後の1994年には,国賓として,クリントン大統領御夫妻をはじめ貴国の国民から手厚くおもてなしいただいたと伺っています。

私自身の貴国との最初の思い出は,1970年の大阪万博であり,当時私は10歳でしたが,月の石を間近に見たことや,チャールズ・リンドバーグ飛行士(※1)に,水上飛行機シリウス号(※2)の操縦席に乗せていただいたことを,今でも鮮明に覚えています。その後,1985年に,英国留学の帰途,貴国を初めて長期に訪れた折には,レーガン大統領から温かくお迎えいただきました。マンハッタンの摩天楼,サンフランシスコやニューオリンズの街並み,グランドキャニオンの威容など,都市や自然のスケールの大きさと多様性に強い印象を受けたことが懐かしく思い起こされます。皇后も,幼少の時期をニューヨークで,また,高校,大学時代をボストン郊外で過ごしており,私どもは貴国に対し,懐かしさと共に,特別の親しみを感じています。

トランプ大統領御夫妻が,前回の御訪問の折にお会いになった上皇陛下は,天皇として御在位中,平和を心から願われ,上皇后陛下と御一緒に,戦争の犠牲者の慰霊を続けられるとともに,国際親善に努められました。今日の日米関係が,多くの人々の犠牲と献身的な努力の上に築かれていることを常に胸に刻みつつ,両国の国民が,これからも協力の幅を一層広げながら,揺るぎない(きずな)を更に深め,希望にあふれる将来に向けて,世界の平和と繁栄に貢献していくことを切に願っております。

日本は,今,緑の美しい季節を迎えています。大統領御夫妻の今回の御滞在が,楽しく,実り多いものとなることを願うとともに,お二方の御健勝,そして,アメリカ合衆国の繁栄と貴国国民の幸せを祈り,杯を挙げたく思います。

(※1)チャールズ・A・リンドバーグ飛行士(米国人)は,1927年に,「スピリット・オブ・セントルイス」号と名付けた単葉単発単席のプロペラ機で,世界で初めて大西洋横断単独無着陸飛行に成功したことで知られている。

(※2)水上飛行機「シリウス」号は,リンドバーグ飛行士が,1931年に北太平洋航路の調査のため,ニューヨークから日本を経て中国まで飛行した際に使用したもの。1970年の大阪万博の折に展示された。

第70回全国植樹祭
令和元年6月2日(日)(愛知県森林公園)

 第70回全国植樹祭に当たり,ここ「愛知県森林公園」において,全国から参加された皆さんとご一緒に植樹を行うことを喜ばしく思います。
 今,こうして,初めて全国植樹祭に臨み,国土緑化の中心的行事として,70年にわたり開催されてきた歴史の重みと,国土緑化に長い年月を掛けてこられた先人の努力に思いを()せ,感慨を覚えます。
 我が国は,国土面積の三分の二を森林が占める世界有数の森林国です。健全な森林は,木材を始めとする林産物の供給のみならず,清らかな水,豊かな実りをもたらす大地や海を育み,さらには地球温暖化防止や生物多様性保全にも大切な役割を果たすなど,私たちに様々な恩恵をもたらしてくれる国民共通の財産といえます。
 こうした,森林のかけがえのなさを思うとき,その保全はもちろんのこと,森林を伐採して利用することに伴い,再び苗木を植えて育てることを通じ,健全な森を次世代のために造っていくことは,私たちに課せられた大切な使命であると考えます。
 ここ愛知県においては,林業の活性化や都市部における木材の利用,さらには,山から街まで緑豊かな愛知の実現に向けた,森と緑づくりを進める取組がなされていると聞き,うれしく思います。
 そして,本日表彰を受けられる方々を始め,日頃から各地域において森林や緑づくりに尽力されている全国の皆さんに敬意を表し,そうした活動が,多くの人々によって支えられ,更に発展していくことを期待します。
 この度の大会テーマである「木に託す もり・まち・人の あす・未来」にふさわしく,木材の利用や健全な森林づくりの輪が,ここ愛知の地から全国へ,そして未来に向けて大きく広がっていくことを願い,私の挨拶といたします。

地球科学・リモートセンシング国際シンポジウム2019開会式
令和元年7月29日(月)(パシフィコ横浜)
【実際のおことばは,英語で述べられています。こちらのページでは,和訳したものを掲載しています】

 地球科学・リモートセンシング国際シンポジウム2019開会式に,多くの国と地域から参加される皆さんと共に出席できることを喜ばしく思います。
 今回のシンポジウムは,「地球環境の把握と減災」をメインテーマに,地球科学及びリモートセンシング技術の発展により,地球規模で問題となっている温暖化,気候変動,水環境等の状況の逐次把握及び評価・分析の精度向上に資することを目的とした国際会議と聞いております。
 気候変動やその他の脅威から地球環境の保全を図ることは,取り組むべき喫緊の課題と言えます。私がこれまで関わってきた「水」の分野においても,近年頻発する,異常な降雨や洪水,干ばつに起因する水災害はその遠因に気候変動があると分析されており,今十分な対策を講じなければ被害が激化していくことが懸念されています。
 地球環境の保全に関する有効な対策を打ち出すためには,できるだけ詳細かつ正確なデータの把握と解析が不可欠になると思われます。今回会議の主な検討テーマとなる宇宙から地球の表面,内部を詳しく観測できるリモートセンシングの技術や,大規模なデータの解析・処理技術などはいずれも大変重要な手段となると思われます。
 こうした期待に応えるため,各関連分野における技術者及び科学者が分野横断的に議論することで,今回のシンポジウムが実りある成果を上げ,かけがえのない地球の持続可能な未来のために貢献することを願い,開会式に寄せる言葉といたします。

第199回国会開会式
令和元年8月1日(木)(国会議事堂)

本日,第199回国会の開会式に臨み,参議院議員通常選挙による新議員を迎え,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の深く喜びとするところであります。

ここに,国会が,国権の最高機関として,当面する内外の諸問題に対処するに当たり,その使命を十分に果たし,国民の信託に応えることを切に希望します。

全国戦没者追悼式
令和元年8月15日(木)(日本武道館)

本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。

終戦以来74年,人々のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき,誠に感慨深いものがあります。

戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ,ここに過去を顧み,深い反省の上に立って,再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,全国民と共に,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。

第39回全国豊かな海づくり大会
令和元年9月8日(日)(秋田県立武道館)

第39回全国豊かな海づくり大会が,日本海に面したここ秋田県で開催されることを喜ばしく思います。

四方を海に囲まれた我が国は,古くから豊かな海の恵みを受けてきました。また,山や森から河川や湖を経て海へ至る自然環境と,そこに育まれる生命や文化は,私たちに様々な恩恵をもたらしてくれます。

私自身,以前に鳥海山に登った折に,鳥海山の雪解け水がブナ林を養い育て,伏流水となって山麓の田畑を潤し,やがて日本海に注いで良質なイワガキを育んでいると聞き,山と海,そして人間との大切なつながりを感じたことを思い出します。

このような豊かな海の環境を保全するとともに,水産資源を保護・管理し,海の恵みと美しさを次世代に引き継いでいくことは,私たちに課せられた大切な使命であると考えます。

この度,初めて全国豊かな海づくり大会に臨み,本大会が,海などの環境保全や漁業の振興,さらには海に関わる文化の継承に果たしてきた役割と意義に思いを致し,大会に携わってこられた多くの関係者の努力に深く敬意を表します。

ここ秋田県においても,特産のハタハタの産卵場所となる藻場を作ったり,マダイやトラフグなどの稚魚を保護し育てるなどの「つくり育てる漁業」を奨励する一方,「しょっつる」など海産物を使った食文化の伝承にも積極的に取り組み,漁村や水産業の振興に努められていると聞き,心強く思います。

本日表彰を受けられる方々を始め,全国各地において日頃から豊かな海づくりに尽力されている皆さんの活動が,今後も多くの人々によって支えられ,更に発展していくことを期待します。

「海づくり つながる未来 豊かな地域」をテーマとして行われるこの大会を契機として,海や漁業への理解と関心が更に深まり,豊かな海づくりの輪が,ここ秋田の地から全国へ,そして未来に向けて大きく広がっていくことを願い,私の挨拶といたします。

第34回国民文化祭・第19回全国障害者芸術・文化祭
令和元年9月16日(月)(朱鷺メッセ)

「第34回国民文化祭・にいがた2019」・「第19回全国障害者芸術・文化祭にいがた大会」の開会式に当たり,皆さんと共に出席できることをうれしく思います。

新潟県は,広く日本海に面し,長く変化に富んだ海岸美と四季折々の豊かな自然に恵まれるとともに,信濃川流域で発見された縄文時代を代表する「火(えん)型土器」や,江戸後期に長岡・小千谷地域にて生まれ,海外でも高い評価を受けている錦鯉など,古くからそれぞれの地域ごとに特色のある伝統文化・郷土の歴史を育んできました。

また,新潟県には,北前船によって海路から上方文化,佐渡島の金銀の運搬により整備された陸路から江戸文化がもたらされ,それらが互いにTの字のごとく交差,融合する文化の丁字路(ていじろ)を形成してきました。

この新潟の地において,全国各都道府県,さらには海外からも,様々な文化活動に取り組まれている方々を迎え,国民文化祭,全国障害者芸術・文化祭が開催されることは,誠に意義深いことです。関係者の皆さんが開催のために払われた努力に対し,心から敬意を表します。

今大会は「文化の丁字路(ていじろ)~西と東が出会う新潟~」というテーマの下,県内を七つのエリアに区分し,各エリアの特色ある文化を発信するとともに,障害のある方もない方も共に楽しみ,感動を分かち合い,交流の輪を広げていく技術や工夫を積極的に取り入れていると聞いています。

このような取組を通じて,地域や分野,世代を超えた幅広い交流の輪が広がり,地域の伝統芸能や文化を見つめ直す契機となり,さらには多くの方が芸術文化に触れやすい環境づくりへつながることを期待しています。

「国民文化祭・にいがた2019」・「全国障害者芸術・文化祭にいがた大会」が大きな成功を収めることを願い,私の挨拶といたします。

第74回国民体育大会
令和元年9月28日(土)(笠松運動公園陸上競技場)

「翔べ 羽ばたけ そして未来へ」をスローガンに開催される第74回国民体育大会「いきいき茨城ゆめ国体」総合開会式に,全国各地から参加された選手,役員,そして開催地である茨城県の皆さんと共に,出席できることをうれしく思います。

先月末の大雨や,今月上旬の台風15号により,ここ茨城県を含む各地で大きな被害が生じたことに心を痛め,被災された方々の御苦労を案じています。復旧が1日も早く進むことを心から願っています。

国民体育大会は,終戦の翌年,戦後の厳しい状況にもかかわらず,スポーツの復興を願う人々の熱意により,第1回大会が開催され,以来,我が国におけるスポーツの普及と発展に大きな役割を果たしてきました。長年にわたって大会を支えてきた関係者のたゆみない努力に対し深く敬意を表します。

茨城県で国民体育大会が開催されるのは,昭和49年以来45年ぶりのこととなりますが,ここに集う選手の皆さんには,日頃の練習の成果を十分に発揮して,大いに活躍していただくとともに,お互いの友情を育み,地元茨城県民の皆さんとの交流を深められるよう願っております。また,この大会に参加する皆さんの中から,来年の東京オリンピックにおいて活躍する選手が数多く誕生することを期待しております。

ここ茨城の地で,多くの県民に支えられて開催される今回の国民体育大会が,皆さんの心に長く残る,実り多い大会になることを期待し,総合開会式に寄せる言葉といたします。

第60回海外日系人大会記念式典
令和元年10月1日(火)(憲政記念館)

 世界の19か国から多くの参加者を迎えて,第60回海外日系人大会が開催されることを喜ばしく思います。
 日本人による集団移住者が初めてハワイ王国に渡ってから既に150年余りの歳月が流れました。その間,多くの日本の人々が海外に移住し,今やその子孫である日系人は八世まで世代を重ねていると聞いています。日本人の移住者は多くの困難を乗り越えつつ,居住国の発展に尽くす一方,子弟の教育にも情熱を傾けました。そして,勤勉,誠実などの日本人らしい特性を大切にされながら,それぞれの国の発展や国際化に貢献されてきていることに心からの敬意を表します。
 私自身,ブラジルやアメリカを訪れた折に,日系人の方々が社会の様々な分野で活躍されている姿を目の当たりにするとともに,その活動が,現地でも高く評価されてきていることに深い感銘を受けたことを覚えています。そして,日系人の人々が,その居住国と我が国の間の大切な架け橋となってこられたことを心強く感じます。
 最初の海外日系人大会が開催されたのは,戦後の荒廃した我が国に温かい救援の手を差し伸べられた海外在住の日本人や日系人の方々に感謝の気持ちを表すためでもあったと聞いています。その後も,阪神・淡路大震災,東日本大震災など,日本が大きな困難に遭うたびに,世界の日系の人々から温かい御支援を受けてきていることに改めて感謝の意を表します。
 海外日系人大会は,世界各地に住む日系人が相互の親睦を深め,日系社会の抱える課題や協力の在り方について考える場と伺っています。昨今は,日本国内にも,就業のために来日された中南米諸国からの二世,三世を中心に30万人以上の日系人が暮らしています。在日日系人のこの30年余りにわたる経験は,今後様々な文化を受け入れながら発展していこうとする日本社会の貴重な参考になるものと考えます。
 終わりに,この度の大会を通じて,世界各地の日系の人々の交流の輪が更に広がり,日系社会と日本を結ぶ(きずな)が一層強まることを祈念して,私の式典に寄せる言葉といたします。

第200回国会開会式
令和元年10月4日(金)(国会議事堂)

 本日,第200回国会の開会式に臨み,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の深く喜びとするところであります。
 ここに,国会が,当面する内外の諸問題に対処するに当たり,国権の最高機関として,その使命を十分に果たし,国民の信託に応えることを切に希望します。

更生保護制度施行70周年記念全国大会
令和元年10月7日(月)東京国際フォーラム

 更生保護制度施行70周年記念全国大会に,日頃より更生保護の活動に尽力されている皆さんと共に出席できることを,うれしく思います。
 我が国の更生保護は,保護観察官のほかに,保護司,更生保護施設,更生保護女性会,BBS会,協力雇用主など,多くの民間篤志家の努力によって支えられてきました。
 社会奉仕の精神と思いやりに基づいたこれらの人々の努力が,過ちを犯してしまった人の社会復帰と再犯防止のための力となり,平和で安全な社会をつくるために果たしてきた役割には,誠に大きなものがあります。
 本日表彰を受けられた方々を始め,長年にわたり,人知れぬ苦労を重ねながら,地道にそれぞれの地域の力となり,献身的に更生保護を支えてきた多くの関係者の努力に深く敬意を表します。
 近年,高齢化の進展や,人間関係の希薄化など,更生保護の仕事にも,新たな難しさが加わってきていると伺っています。この70年にわたる歴史を通して積み重ねてきた良き伝統を引き継ぐとともに,皆さんが力を合わせてこの制度の一層の充実を図り,明るい地域社会の実現を目指して,更に貢献していかれることを願い,大会に寄せる言葉といたします。