主な式典におけるおことば(平成29年)

皇太子殿下のおことば

第62回青少年読書感想文全国コンクール表彰式
平成29年2月3日(金)(経団連会館)

 第62回青少年読書感想文全国コンクールで表彰を受けられた皆さん,おめでとうございます。
 私がこの表彰式に出席するようになったのは,平成2年からで,今回が2年ぶり14回目です。授賞式の後には,受賞者の皆さんとお話をする機会があり,私も楽しみにしていますが,毎回,出席した皆さんが,読んだ本について笑顔で生き生きと話してくれることが強く印象に残っています。
 今回も,皆さんが書かれた感想文の幾つかに目を通しました。皆さんがすばらしい本に出会い,本に導かれて物事を調べたり,深く考えたりしている姿や,本の世界を通じた体験により,自分以外の人々の心に思いを巡らせたり,あるいは,自分自身に深く問いかけたりしている光景が目に浮かびました。
 自分が感じ,考えたことを言葉にまとめ,文章にすることは簡単なことではなかったと思います。受賞された方々以外にも,感想文に取り組まれた多くの皆さんが,自分の得た感動や思いを人に伝えようと,苦心して言葉を紡いだ努力は,きっと,感想文を読んだ一人一人の心に届いたことでしょう。そして,その経験は,皆さんの中にも,貴重な財産としていつまでも残り,皆さんの豊かな人生につながっていくことでしょう。
 ところで,皆さんの中には,夏目漱石の「吾輩は猫である」や「坊っちゃん」などの作品を読まれた方もおられると思います。私は,最近,中学生・高校生の時以来,本当に久しぶりにこれらの作品を読む機会がありました。そうすると,中学生・高校生時代には分からなかったことや作品の持つ深みや面白みが,より分かってきたように感じました。優れた作品というものは,読む人の成長に合わせて,人生の折々に読んでみることによって,より深く内容が理解でき,新たに学ぶことができるのではないかと思います。皆さんも,是非,大人になったときに,子供時代に読んだ本の何冊かをもう一度手に取って読んでみてください。きっと新たな発見の喜びを見いだすことができるでしょう。
 今回のコンクールでは,430万編以上の作品が寄せられ,これは,全国の児童・生徒の3人に1人が応募したことになると伺いました。学校や家庭などで,読み聞かせを始め,子供たちの読書のための環境を整えたり,読書指導に当たったりされた多くの方々のご努力にも,心から敬意を表したいと思います。
 これからも,読書によって,若い人々が様々な知識を吸収しつつ,多くの感動を経験し,大きく成長されることを期待いたします。あわせて,このコンクールが一層発展していくことを願い,お祝いの言葉といたします。

第5回「日本医師会 赤ひげ大賞」表彰式
平成29年2月10日(金)(帝国ホテル)

 第5回「日本医師会 赤ひげ大賞」の表彰式に皆さんと共に出席できることをうれしく思います。
 この赤ひげ大賞は,地域住民に寄り添いながら,病気を治すだけではなく,健康の保持・増進といった日々の暮らしを守る活動を行う,かかりつけ医に光を当て,地域医療の発展を願って設立されたと聞いております。
 急速に高齢化が進む中,各地の医療現場では,離島や自然条件の厳しい土地で医師がいなかったり,都市部であっても病院が撤退したり,診療科が偏っているケースもあります。また,国際化が進む中で,経済的事情や言葉の壁により,十分な診察を受けることが困難な外国人も珍しくないと聞いています。
 今回の受賞者の方々は,使命感を持ってこのような困難な条件を乗り越え,それぞれの地域にとって無くてはならない存在として活躍されていると伺っており,そのたゆみない努力と取組に心から敬意を表します。
 また,本日の表彰式には,日本の医療の未来を背負う医学生の方々も出席されていると伺いました。受賞者の皆さんには,これまでの経験を次に続く若い方たちに是非伝えていただきたいと思います。
 「日本医師会 赤ひげ大賞」が,地域住民の診療や健康管理に携わる医師の方々の大きな励みになり,地域医療の更なる発展につながることを期待するとともに,この賞が末永く発展していくことを心から願い,私の挨拶といたします。

第8回アジア冬季競技大会(2017/札幌)閉会式
平成29年2月26日(日)(北海道立真駒内公園屋内競技場)

 第8回アジア冬季競技大会(2017/札幌)は,アジア・オセアニアの国と地域から,アジア冬季競技大会史上最大規模の選手や役員の方々の参加を得て,連日,熱い戦いが繰り広げられてきましたが,その余韻を残しつつ,本日,閉会することとなりました。
 大会開催地である札幌市,帯広市では,競技を通じて友好と交流の輪が大きく広がるとともに,ボランティアを含め,関係者の方々の努力と熱意がこの大会を支え,多くの感動と笑顔を生み出してきたことを大変うれしく思います。私自身も,開会式の翌日,白旗山でのクロスカントリースキー競技を観戦し,選手の皆さんが,最後まで精一杯健闘する姿に心を打たれました。
 アジア冬季競技大会が,今後とも子供たちに夢と希望を与え,冬季スポーツの発展や,国際的な友好と平和の促進に寄与する大会となることを願い,私の挨拶といたします。

ニホニウム命名記念式典
平成29年3月14日(火)(日本学士院会館)

 ニホニウム命名記念式典に,多くの関係者の皆さんと共に出席できることをうれしく思います。
 113番目となる新たな元素については,国立研究開発法人理化学研究所の森田浩介博士を中心とする研究グループが発見者として国際学会によって認定され,昨年11月には研究グループからの提案どおり,元素名が「ニホニウム」,元素記号は「Nh(エヌエイチ)」に正式に決定されました。
 私が高校2年生の時の化学の夏休みの宿題は,元素の周期表を30枚以上手書きで書くというものでした。大変な思いをして書いたその周期表に「ニホニウム」という日本の研究グループを発見者とする元素が一つ加わったということに感慨を覚えます。
 この輝かしい成果は,構想・準備から長い期間の試行錯誤を経て,10年近い年月をかけた実験によって得られたと聞いています。その間,加速器や検出器の開発に携わってきた技術者や,日夜を問わず実験を継続してきた科学者のたゆみない努力に対し,また,それらを支えてこられた関係者の理解と支援に対し,心から敬意を表します。
 人類は古代より,宇宙における物質,万物の根源たる究極的要素がどのように作られ,存在してきたのか,その謎の解明に大きな関心を寄せ,探求してきました。1930年代に加速器が登場してからは,新しい元素を人工的に作り出すことができるようになりました。
 そうした中で,今回の113番元素「ニホニウム」は,理化学研究所の重イオン加速器施設において,亜鉛のビームをビスマスに衝突させて合成されたと伺っています。日本の研究グループにより合成・発見された元素が周期表の一席を占めることは,科学史上初めてのことです。これは,日本の科学技術が,世界の第一線にあるということの(あかし)であり,同時に,これからの未来を担う若い人たちにとっても大きな励みになると思います。
 研究グループの皆さんは,119番以降の更なる新元素探索に向けて,次の挑戦を始められていると聞いています。元素は,物質からなるこの世界の構成要素であり,これを探求することは,人類の科学の基礎をより豊かにするものです。このような基礎研究の更なる深化が,科学技術と社会の発展に大きく貢献することを期待しています。
 終わりに,本日の式典を一つの契機として,科学技術が今後とも国境を越え,人々の協力によって発展し,世界人類の将来にとって有益なものとなることを願い,式典に寄せる言葉といたします。

第50回アジア開発銀行年次総会開会式
平成29年5月6日(土)(パシフィコ横浜)
【実際のおことばは,英語で述べられています。こちらのページでは,和訳したものを掲載しています】

議長,
総裁,
各国総務各位,
御列席の皆様,

 第50回アジア開発銀行年次総会が,約160年前の開港以来,世界への窓口として発展してきた,ここ横浜において開催されることを大変喜ばしく思います。
 私は,20年前の福岡総会,10年前の京都総会にも参加の機会を得ました。そして本日,これまでのアジア開発銀行の功績を振り返り,アジア・太平洋地域の未来を議論するこの記念すべき年次総会に,再びこうして皆様と共に出席できることを,心よりうれしく思います。
 アジア開発銀行の創立総会が東京で開催された50年前,アジア・太平洋地域は世界の中で最も貧しい地域の一つでした。その後の半世紀の間,この地域の国々は,経済発展や貧困削減において大きな進展を成し遂げましたが,その際,アジア開発銀行は,加盟国に寄り添い,様々な分野において積極的な支援を行ってきました。ここに,加盟諸国の努力並びにアジア開発銀行がこれまで果たしてきた大きな貢献に対し敬意を表します。
 しかしながら,この地域には,今もなお3億人を上回る人々が貧しい生活を余儀なくされており,持続的で包摂的な成長を通じた貧困削減は引き続き重要な課題です。このほかにも,この地域は,電力供給網や交通施設を始めとするインフラの整備,自然災害や気候変動への対応といった様々な課題に直面しています。こうした課題に対処するために,アジア開発銀行が一層重要な役割を果たすことを期待しています。
 この度の年次総会のテーマは,「ともにひらく,アジアの未来」であると聞いています。この言葉のとおり,世界から横浜にお集まりになられた参加者が英知を結集して諸課題の克服に取り組み,アジアの未来を共に切り開くことを願い,私の挨拶といたします。

第28回全国「みどりの愛護」のつどい
平成29年6月10日(土)(北陸電力会館本多の森ホール)

 第28回全国「みどりの愛護」のつどいが,ここ兼六園周辺文化の森において開催されるに当たり,日頃から緑の愛護活動に携わっておられる皆さんと共に出席できることをうれしく思います。
 我が国は,緑豊かな環境の中で,四季折々に姿を変える美しい自然の恵みを受け,数多くの文化を生み,育んできました。石川県も,日本海に突き出た能登半島から長大な砂浜海岸が続く加越沿岸に至る海岸線や,霊峰白山から日本海に流れる手取川の扇状地を中心に広がる加賀平野など,多様な自然環境に恵まれています。また,そのような豊かな自然環境や長い歴史の中で,輪島塗や山中漆器,加賀友禅,九谷焼など多岐にわたる伝統工芸や能楽,邦楽,日本舞踊を始めとする伝統芸能などの文化が育まれ,現在もなお脈々と受け継がれています。
 豊かな緑は,私たちの暮らしにゆとりと潤いをもたらします。また,地球温暖化の防止や生物多様性の保全などの様々な環境問題を改善するとともに,災害の防止にも大きな役割を果たしています。
 貴重な緑と,その緑を源とする清らかな水を守り,更に新たな緑を創り出し,育てていくためには,多くの人々がその大切さを理解し,幅広く運動に参加することが重要です。ただ今表彰を受けられた方々の緑の愛護活動への取組は,大変意義深いものであり,皆さんの努力に対し深く敬意を表します。
 終わりに,今回のつどいにおいて,全国から参加された皆さんが相互に交流を深め,緑を守り創り育てる心を新たにされるとともに,緑豊かな環境づくりが一層発展することを願い,私の挨拶といたします。

第53回献血運動推進全国大会
平成29年7月12日(水)(秋田県立武道館)

 挨拶に先立ち,この度の福岡県・大分県等の大雨による災害で亡くなられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに,ご遺族と被災された方々にお見舞いを申し上げます。被災地での救援と復旧の作業が速やかに進むことを願っております。
 全国各地から参加された皆さんと共に,第53回献血運動推進全国大会に出席できることをうれしく思います。
 医療活動に欠くことのできない献血は,400ミリリットル献血や成分献血を中心に,昨年は延べ484万人の方々の協力により,血液製剤を必要とする全国の患者さんに滞りなく届けられたと聞いています。
 これも,本日ここに表彰を受けられた方々を始め,献血運動の推進に尽くしてこられた関係者の皆さんの努力と,国民一人一人の献血への理解と協力があって成し得たことであると思います。
 近年,少子高齢化が進み,献血可能な年代の人口が減少している中で,血液製剤を将来にわたり安定的に供給するため,未来を担う若い方々の献血への理解と積極的な協力が求められています。
 このため,日本赤十字社では,小・中学生や高校生に献血の大切さを知ってもらうため学校に出向いて行う「献血セミナー」の回数を増やしてきているほか,新たに成人を迎える若者を中心に呼び掛ける「はたちの献血」キャンペーンを実施するなど,特に10代,20代の献血者を増やすための活動に力を入れていると聞いています。
 今日午前中に立ち寄った献血推進活動の現場では,秋田県学生献血推進協議会の皆さんが,「サマー献血キャンペーン」の一環として,竿燈(かんとう)まつりで使用する提灯(ちょうちん)などを,熱心に工夫を凝らして製作している姿を見て,大変心強く思いました。
 こうした取組が,実り多いものとなることを期待するとともに,献血に対する社会全体の理解が更に深まることを希望します。
 ここ秋田での大会を契機に,国民の生命と健康を守る献血運動の輪が大きく広がることを願い,大会に寄せる言葉といたします。

平成29年度全国高等学校総合体育大会総合開会式
平成29年7月28日(金)(山形県総合運動公園総合体育館)

 挨拶に先立ち,この度の平成29年7月九州北部豪雨により亡くなられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに,ご遺族と被災された方々にお見舞いを申し上げます。また,東北地方などでも大雨による被害が出ていますが,被災地の復旧が一日も早く進むことを願っています。
 平成29年度全国高等学校総合体育大会「はばたけ世界へ 南東北総体 2017」が,全国各地から多数の参加者を迎えて,出羽三山,山寺や最上川など,美しい自然に恵まれ,豊かな歴史や文化を育んできた,ここ山形県を始め,宮城県,福島県の南東北三県と和歌山県で開催されることを喜ばしく思います。
 選手の皆さんには,厳しい暑さの中,体調管理に十分気を付けられ,日頃鍛えた力と技を発揮し,お互いに友情を育むとともに,地域の方々とも交流を深め,高校生活の良い思い出をつくってください。
 そして,選手の皆さんの活躍と地元高校生の協力により,この大会が実り多いものとなることを期待します。
 皆さんのご健闘を心からお祈りします。