新年春飾り作成(皇居内大道庭園)

令和6年1月17日
宮内庁総務課広報室

毎年12月初旬から、皇居大道おおみち庭園では、管理部庭園課の職員が「春飾り」という寄植え盆栽を作成しています。

春飾りは、紅白の梅に松、竹、千両せんりょう万両まんりょうなど縁起ものの草木をあしらった伝統の正月用寄植盆栽で、大型のものは2メートルにもなります。第121代孝明こうめい天皇(在位年:1846ー1866)の頃には、年末行事として春飾りの準備があったと言われています。

この春飾りは、12月30日から1月3日まで御所や宮殿、各宮家で飾られました。

春飾りに使用する梅や松などの植物は、大道庭園で大切に育ててきたものを使用しています。梅の古木は樹齢150年を超えるものもあります。1月3日まで飾られた春飾りは、職員が大道庭園で植え替え、次の春飾り制作まで大切に育成します。

完成した春飾り(小型:50~60センチ)

完成した春飾り(大型:2メートル前後、中型:1メートル程度)の一部
宮殿 南車寄みなみくるまよせ 宮殿 北車寄きたくるまよせ

宮殿 北溜きただまり
宮内庁庁舎西玄関
宮内庁庁舎中央玄関

【春飾りに使われる植物(一例)】


春飾り作成、設置、取り卸し、植替えまでの工程をご紹介します。

【第1週 春飾りの作成は、鉢選びとみき洗いから始まります】
大道庭園倉庫には、常滑焼や瀬戸焼などの鉢が保管されています。設置場所の広さを考慮し、大小24鉢を選びます。 梅の幹についた汚れや苔を丁寧に洗います。茶色、白など本来の幹の色が現れます。 先端まできれいに洗った梅。

【第2週 皇居、赤坂御苑ぎょえんこけを採取します】
坂下門の石垣 蛤濠はまぐりぼりふち
皇居のお庭など

採取した苔(一部)
約40ケース以上の苔を採取します。採取した苔は水分管理し保管します。
苔はその土地の日当り、水分量、土の状態によって生育が異なります。濃緑、薄緑、黒緑、白など様々な色、種類、大きさの苔を採取し、寄せ植えに陰影やアクセントをつけます。

【第3週 主木しゅぼくの紅梅、白梅の植込みと草物の植込みを行います】
大型の鉢は、紅梅(左)と白梅(右)をついにして寄せ植えします。梅の枝ぶりやバランスをみて最適な2本を選びます。 それぞれの根をほぐし、針金で2本の梅を固定します。 梅の木を鉢に入れます(鉢の底に発泡スチロールを入れています。仕上がりの重量を軽くするためです)。
何度もバランスを確認しながら土を入れます。 根と土を針金でしっかり固定します。 更に土を入れます。
次に、松、万両まんりょう千両せんりょう、やぶこうじ、春蘭しゅんらんなどを入れていきます。 鉢ごと植物を配置して、全体のバランスを見ます。 土の中に入れて確認します。
りゅうのひげ、福寿草ふくじゅそうなどの小さな植物を足していきます。 中央に、川に見立てた白い砂を入れるため、くぼみをつくります。 このまま1日置いて、土を馴染なじませます。

【第4週 苔張りを行い、完成させます】
種類、色、大きさの異なる苔を準備します。 苔は水に入れ、スポンジのように絞って適度に水分を含ませ使用します。 後方から張っていきます。大きめの苔を選び、土の部分全てに苔を張ります。
平坦な印象にならないように工夫します。ピンセットを使用し、苔と苔をつなぎ合わせていきます。 川の流れに見立て白砂を入れます。 完成です。

【12月30日(土) 宮殿、御所ごしょ等へ設置します】
2メートルを越える大型の春飾りは、斜めにしてビニールハウスから搬出します。 大道庭園から宮殿までトラックで搬送します。 鉢の台座だいざと中型の春飾りをトラックに載せます。
4名で注意深く宮殿へ運びます。 宮殿の車寄などへ設置します。 苔が乾かないように灌水かんすいします。

【1月4日(木) 宮殿、御所等から春飾りを降ろし、植替え、次の春飾り制作まで大切に育てます】
注意深く宮殿から搬出します。 重量があるためネットや棒を使用します。 ビニールハウスに集めます。梅の香りが充満しています。
最初に苔をはがしていきます。 はがした苔は盆栽用に再利用します。 古木こぼくへの負担を軽くするため、梅は花びらを取り除き、花が実にならないようにします。
梅の古木以外の植物を鉢からはずします。 梅の古木を鉢からはずします。 梅の古木は春まで畑で養生ようじょうし、それ以降は鉢に入れて育てます。
各植物は根をほぐし、長く伸びた根を整えます。 鉢に入れます。 来年まで大切に育てます。

【明治時代の春飾りを再現してみました】

資料を参考に明治時代の春飾りを再現しました。赤かぶを使用しているのが特徴です。

日本盆栽協会「皇居の盆栽」より
「紅白梅」といって紅白の対の盆栽に、日の出かぶ(赤かぶのこと)、ふきのとう、福寿草、南天なんてん、春蘭を、伊万里いまり錦手にしきでの鉢に下植えし、那智黒なちぐろの玉石を敷き詰めて「春飾り」は出来上がる。

【皇居 大道庭園について】

大道庭園は、明治時代に設置された園芸の仕立て場で、敷地の面積は、8,000㎡ほどあります。

ここでは、皇居の園芸の代表ともいえる盆栽を始め、宮殿や御所、宮家などに装飾するための蘭や観葉植物などの栽培管理を行っています。皇居の盆栽は、明治宮殿の室内装飾品として用いられることになったのが始まりで、その当時は、明治宮殿の入り組んだ廊下の要所要所に盆栽が置かれ、一種の道標の役目を果たしていたと言われています。

現在は、およそ90樹種、500鉢ほどの盆栽を管理しています。そのうち年間延べ300鉢程度が使われています。樹齢は、ほとんどのものが50年から200年くらいですが、中には、樹齢600年以上と言われる※真柏しんぱく(ヒノキ科ビャクシン)、樹齢550年と言われ徳川将軍遺愛と伝えられるゴヨウマツなども含まれています。

皇居の盆栽の特徴の一つは、宮殿のような大きな空間に調和する大型の盆栽があることで、これら大型の盆栽は、国賓こくひんを迎えるときや天皇誕生日など重要な行事の際に、宮殿の南溜みなみだまり北車寄きたくるまよせなどに飾られます。一般的な大きさの盆栽は、宮殿の室内や廊下、御所、宮家などに飾られます。

※真柏:真柏の盆栽は、幹が白く白骨化したり、ねじれたりするのが魅力で、枝は「ジン」、幹は「シャリ」と呼ばれています。松と並び人気があります。

クロマツ 銘:鹿島 樹齢390年

真柏しんぱく

このページのトップへ