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物語を絵画化し,巻物の形態に仕立て,愉しむ―わが国では,平安時代半ば頃,10世紀後半頃から美術作品として絵巻が制作され,享受されてきました。当初は,王朝文学の成立,発展とともに貴族的な題材のものが制作されましたが,次第に武士の社会を反映した戦記絵巻や,仏教布教のためのもの等が制作され,幅広い層の人々を愉しませるものとなりました。物語の内容をどのように絵画化して展開するのか,それは絵師のイメージの表現です。鑑賞者はそのイメージ化された画面を見ながら,さらにイメージを膨らませて絵巻を愉しむ。絵巻が長く,多くの人々に親しまれたのは,そうした豊かなイメージを愉しむことができるものであったからでしょう。 今回の展覧会では,ある絵師の実生活を描く《絵師草紙》(鎌倉時代),継母にいじめられながらも幸福をつかむという日本版シンデレラ物語ともいえる《住吉物語絵巻》(室町時代),数奇な運命の男女が苦難を乗り越えるという人気の説教節を絵画化した《をくり(小栗判官絵巻)》(江戸時代),大江山の鬼退治の話で知られる《酒伝童子絵巻》(江戸時代),そして海幸彦と山幸彦の記紀神話を描く《彦火々出見尊絵巻》(江戸時代),さらに中国4世紀中頃の蘇蕙(若蘭)が夫に贈った840字からなる回文詩の故事を絵巻化した《若蘭絵巻》(明時代)を紹介します。 それぞれの絵巻がもたらす豊かなイメージの世界を愉しんでいただければ幸いです。 展覧会図録(PDF形式:63.2MB) |