皇太子妃殿下お誕生日に際し(平成26年)

皇太子妃殿下お誕生日に際してのご感想

平成26年12月9日(火)

この一年を振り返りますと様々なことがありましたが,大変残念なことに,今年も自然災害が多くの被害をもたらしました。広島県を中心とする8月の豪雨により多くの方が亡くなられ,9月の御嶽山の噴火でも多くの方が犠牲になられたことはとても心の痛むことでした。亡くなられた方々に深く哀悼の意を表しますとともに,ご遺族と被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。また,11月下旬には長野県神城断層地震が発生しました。幸い亡くなられた方はなかったものの,大きな被害に遭われ,厳しい寒さの中で避難生活を続けられている方々もおられ,地震発生以来懸命に復旧に努力されている多くの方々のお疲れもいかばかりかと案じております。被災地での災害からの復旧が一日も早く進むことを願っております。

昨年,天皇陛下が傘寿をお迎えになられたことに続き,今年は,皇后様が傘寿をお迎えになりました。両陛下がおそろいでお健やかに傘寿をお迎えになりましたことを心よりお喜び申し上げております。また,今年は,両陛下の傘寿のお祝いの機会も多くございましたが,ご一緒にお祝い申し上げることが出来ましたことをとても嬉しく存じます。こうした機会に,両陛下のこれまでの歩みを改めて振り返らせていただき,両陛下が,日々,国民の幸せを願われながら,長きにわたりお仕事の一つ一つを大切にお務めになってこられていることに深い感慨と感謝の念を抱きました。両陛下には,これからもお体を大切になさり,末永くお健やかにお過ごしになられますよう,心よりお祈り申し上げます。

10月には,昨年即位されたオランダ国王王妃両陛下が国賓としてご訪日になりました。天皇皇后両陛下には,これまで長年にわたりお心を砕きになられてオランダ王室と親密な関係を築いてこられました。こうした中で,昨年は,両陛下ならびにオランダ王室のご配慮によりオランダ国王陛下即位式に出席させていただきましたが,今回,ご訪日の折りの国賓行事などで国王王妃両陛下をお迎えする機会に恵まれましたことを嬉しく,またありがたく思っております。

今年の7月には,殿下とご一緒に,愛子を同伴して神宮を参拝致しました。長い間神宮に参拝できればと思っておりましたので,御遷宮の翌年に参拝させていただくことができ,とても嬉しく思っております。神宮の長い歴史と,その中で育まれた厳かさや静けさを感じながらの参拝は,愛子にとりましても貴重な経験になりましたことと思います。

愛子は,3月に学習院初等科を卒業し,4月より女子中等科生として新たな一歩を歩み始めました。これまでとは異なる新しい環境になりましたが,多くの方と交流を持ちながら,楽しく実り多い学校生活を送ってほしいと願っています。また,7月に,武蔵野陵,武蔵野東陵参拝と神宮参拝に愛子を同伴し,8月に東京で行われた全国高等学校総合体育大会の競技を愛子も一緒に観戦しました。愛子には,学校生活の内外で,これから様々な経験を積んでいってほしいと思っております。

来年は,戦後70年を迎えます。先の戦争当時のことや戦後の歩みに思いを寄せる大切な年になると思いますが,我が国が享受している平和の尊さを改めて心に刻み,平和への思いを新たにする機会になることと思います。

また,人々がお互いを思いやる気持ちを大事にし,特に弱い立場にある人々をいたわり,痛みを分かちあいながら皆で手を携えて歩んでいくことが,これから先,ますます大切になるのではないかと感じております。

同時に,これからの地球や人類の将来について考えていくことも大切なのではないかと感じます。今後,異常気象などによる自然災害の増加も心配されますが,自然への畏敬の念を忘れずに,かけがえのない地球を大切にしながら,どのような社会を作ることを目指していくのか私たち一人一人が考えていく必要があるのではないでしょうか。先月,殿下とご一緒に,愛知県で開催された「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議」に出席しましたが,その折りには,持続可能な社会を作り,未来の地球を支えていくためにどうしたら良いのか,その担い手となる若い世代の子ども達が自ら考え取り組もうとしている姿を心強く思いました。

今年も残りわずかとなりましたが,東日本大震災の被災地では,再び厳しい冬を迎えられます。昨年,宮城・福島・岩手の3県を訪問した折りには,徐々に復興が進んできていることを感じることができた一方で,不自由な生活が続いている方や生活の再建の見通しが立たない方も多くおられ,今なお大変なことが多いことと案じております。これからも,被災地に必要な支援が十分に届き,被災者の方々が安心して暮らすことができるよう,被災された方一人一人の幸せとご健康を祈りながら,皇太子殿下とご一緒に,被災地の復興に永く心を寄せていきたいと思います。

私自身につきましては,今年も,体調に気をつけながら,公私にわたってできる限りの務めを果たそうと努力をしてまいりました。その中で,7月に三重県,そして11月に愛知県を訪れました折りに,多くの方に温かく迎えて頂いたことも,私にとりまして大きな励みになりました。今後とも,まわりの方々からのお力添えを頂きながら,快復に向けての努力を続けていきたいと思います。

天皇皇后両陛下に変わらず温かくお見守り頂いてきておりますこと,そして,皇太子殿下に傍らでお支え頂いておりますことに心より感謝申し上げます。あわせまして,日頃より,国民の皆様から私たちに温かいお気持ちを寄せて頂いておりますことにも,改めてこの機会に心からお礼を申し上げます。

皇太子妃殿下のお誕生日に際しての東宮職医師団見解
皇太子妃殿下のお誕生日に際してのご近影