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悠仁親王殿下のご近影(ご成年をお迎えになっての記者会見に当たり)(ビデオ・お写真)

悠仁親王殿下のご近影のビデオを視聴することができます。(15分54秒)

この動画には、会話などの音声情報は含まれていません。
動画で流れている音楽「時の回廊」は、編集の際に追加したものです。

お写真とお写真の説明

(図書寮文庫所蔵資料をご覧になる)
(宮内庁書陵部)
(修補作業(虫損直し)をご覧になる)
(宮内庁書陵部)
(修補作業に用いられる印刀の違いをご確認になる)
(資料損傷の原因となる文化財害虫について説明を受けられる)
(修補前の冊子本の本紙をご覧になる)
(解体された資料の本紙の色や紙質をご確認になる)
(光学顕微鏡で和紙の繊維を目視される)
(本紙に合わせた補修紙を作るため本紙の色を確認される)
(紙漉き道具(簀桁)をお持ちになる)
(補修紙の原料である楮の標本をご覧になる)
(書陵部で自作した補修紙を枯らしているところをご覧になる)

令和7年3月3日
宮内庁皇嗣職

悠仁親王殿下は、本年2月18日(火)に書陵部をお訪ねになりました。

お小さい頃から、宮内庁の様々な仕事を具体的に知ることは大事であると御両親殿下がお勧めになっており、御成年を機に、今後成年式を終えられた後にはお歌の御詠進の機会がおありになること、秋篠宮皇嗣殿下が継承されている有栖川御流の書道に関連する資料も所蔵されていることから、書陵部所蔵の和歌に関する資料を御覧になることとなったものです。また、図書寮文庫が所蔵する貴重な古典籍等を大切に守り伝える上で重要な役割を果たしている修補の作業についても、この機会に御覧になりました。

なお、この度の御訪問に当たっては、紙の解(ほつ)れなど資料への影響を避けるため手袋を使用しないことが資料取扱いの原則であること、マスクは多くの飛沫が飛ばない状況であれば資料保護のためには着用不要であることを書陵部に確認しており、貴重な資料の保護に留意しております。

1.御覧になった資料

悠仁親王殿下は、書陵部図書課図書調査官の説明を関心を持ってお聴きになりました。掛け幅についてはお立ちになり、時に身を乗り出されるようにして御覧になっていました。また、例えば①については、現在の歌会始の形式と同様か、他の日付にはどのような事柄が書かれているのか、②~⑥については、短冊や色紙の選び方、どのような筆を使っているか、掛け幅の材質、文字には書き手の特徴があるのかなど、様々な御質問をなさっていました。

①言国卿記(ときくにきょうき)

室町時代の公卿山科言国(やましなときくに)の自筆の日記です。文亀2(1502)年正月25日条に、禁裏和歌御会(きんりわかごかい)における披講(ひこう)に関することや、読師(どくじ)、講師(こうじ)、講頌(こうしょう)、発声などの諸役も記されており、現在の歌会始の起源をこの頃に求める根拠とされています。

②霊元天皇宸翰古歌短冊(れいげんてんのうしんかんこかたんざく)

霊元天皇が古歌をお書きになった桜と紅葉の短冊です。短冊本体に絵が描かれていて、輪郭に沿って切り取られています。

桜の短冊には、藤原定家の和歌

「かざしおる 道(みち)行(ゆく)人(ひと)の 袂まで さくらに匂ふ 二月(きさらぎ)の空」が、

紅葉の短冊には、慈円の和歌

「詠(ながめ)つる 心の色を まづ染て 木(こ)のはにうつる むら時雨哉」

が書かれています。

霊元天皇は和歌に力を注がれ、能書でも知られており、書道の有栖川御流は、霊元天皇皇子で有栖川宮第5代の職仁(よりひと)親王が創始とされています。

③貞明皇后和歌御色紙(ていめいこうごうわかおんしきし)

貞明皇后が東伏見宮依仁(よりひと)親王妃周子(かねこ)に下賜された色紙です。詞書(ことばがき)に「沼津で得た竹の子を贈ったところ、その様が面白いので写生してこちらに贈ってくれた嬉しさに」との意が記され、依仁親王妃が、竹の子の御礼に写生した絵を献上したことに対する、貞明皇后からの返礼の御歌と考えられます。御歌は、

「きみが手に 千世のかげさへ うつされて 此たけの子の はえまさりつつ」

「百年の よはひはよしや へずとても 老(おい)せぬたけを われ見はやさむ」

と詠まれており、いずれも竹の子になぞらえて東伏見宮を寿ぐ内容となっています。また、料紙の継色紙(つぎしきし)には銀泥(ぎんでい)で鳥や草花が繊細に描かれています。

④和歌短冊帖(わかたんざくちょう)

桂宮第7代家仁(やかひと)親王や王子の公仁(きんひと)親王などの5方が2枚ずつ認めた和歌短冊に、それぞれの歌意を絵師の吉田元陳(げんちん)が描いた短冊を付した短冊帖です。

家仁親王は公仁親王とともにしばしばお出かけになり、和歌を詠まれることが多かったとされます。また元陳は、寛政2(1790)年の禁裏御殿造営の際に襖絵などを描いています。

⑤霊元天皇和歌御懐紙幅(れいげんてんのうわかおんかいしふく)

松間花(まつのあいだのはな)のお題で詠まれた霊元天皇宸筆の御詠草(ごえいそう)(詠んだ歌を紙に書いたものを「詠草」と言います)を掛け幅に仕立てたものです。

「立ちまじる 松のときはに とりそへて 千世もちらすな 花の春風」

と書かれています。寛文13(1673)年3月21日の水無瀬殿法楽(みなせどのほうらく)(後鳥羽天皇を祀る水無瀬神宮に献ずる法楽和歌)のうちの一首です。

⑥韶仁親王御讃芳野川画幅(つなひとしんのうごさんよしのがわがふく)

土佐派の絵師土佐光孚(みつざね)の絵に、有栖川宮第7代韶仁親王が和歌を画讃として書き込まれた掛け幅です。

「よしの山 花のさかりも しるきまで ふもとの川に 色ぞうつろふ」

と詠まれています。

有栖川宮家の歴代親王は和歌と入木道(じゅぼくどう)(書道)に堪能で、有栖川御流をお家流として受け継がれています。

2.御覧になった修補の作業

悠仁親王殿下は正座をされながら、修補師長らの説明を熱心にお聴きになり、各工程において気をつけている点やコツなどについてお尋ねになっていました。

それぞれの工程における御様子などは以下の通りです。

①虫損(ちゅうそん)直し

虫損直しとは、本紙と同質の和紙を、糊を塗った虫穴に貼り、印刀(いんとう)(印を彫るための小刀)を使って穴よりやや大きくちぎる(毛羽を出す)作業のことで、修補係における基本の技術です。ちぎることにより、本紙と補修紙(和紙)の段差が緩和され、また、先端を糊付けないことによって乾いた時の引きつれを防止しています。材料は、和紙と小麦粉デンプンから作った正麩糊(しょうふのり)のみで、道具は印刀と小刷毛のみです。虫損直しに印刀を使うのは、修補係が発祥と言われています。

悠仁親王殿下は、作業工程の説明をお聴きになり、補修紙を刃物で直線に切った段差とちぎった段差の違いを、指でなぞって確認されました。また、セラミック製の印刀とステンレス製の印刀の持ち具合や重さの違いを確認されました。

②虫損裏打ち

虫損裏打ちとは、損傷が激しい本紙に対し、その裏面に薄い糊をつけて伸ばし、薄い和紙を貼る作業のことです。両面に不織布の養生紙を当ててボール紙に挟み、水分を吸収させることで乾燥させます。このボール紙に挟んで乾燥させる工程も修補係発祥と言われています。

悠仁親王殿下は、修補前の本を御覧になり、作業工程の説明をお聴きになるとともに、損傷の原因となる文化財害虫のシミとフルホンシバンムシを専門の事典で御覧になりました。

③解体・修理前記録

解体・修理前記録とは、修補本に対する最初の作業です。形態や寸法を記録、撮影してから解体してナンバリングを施します。本紙の紙質観察や繊維の顕微鏡観察から修補係にある補修紙で直せるのか、新たな補修紙を作る必要があるのかを判断することになります。

悠仁親王殿下は、作業工程の説明をお聴きになったほか、必要な補修紙を判断する際にどのような難しい点があるのか、以下のように確認され、実際に顕微鏡をのぞくなどなさいました。

・柔らかい本紙と現在市販されている和紙とでは、手の感触では同じ厚さに感じられるものの、デジタルシックネスゲージ(紙厚計)で計った値を比べると、本紙の方が倍近く厚いことを確認されました。

・昔の紙には墨の乗りを良くし、かつ白く美しく見せるために米粉等の填料(てんりょう)を漉き込んでいるものが多いことについて、デジタルマイクロスコープ(デジタル顕微鏡)システムでパソコン上に映し出されたものを確認されました。

・繊維の判別にはマイクロスコープ(光学顕微鏡)を覗くことがクリアに見えて適しており、実際にマイクロスコープを覗いて楮紙(ちょし)と雁皮紙(がんぴし)を観察され、雁皮(がんぴ)繊維が楮(こうぞ)に比べかなり細いことを確認されました。

・本紙繊維に色が着いているものと着いていないものがあることをマイクロスコープ(光学顕微鏡)で確認され、浅葱色(あさぎいろ)の本紙に対し、当初は一般的な発酵建ての藍染めを行ったものの色味が合わず、生葉染(なまはぞ)め(藍(あい)蓼藍(たであい)を、皇居内で栽培しないと行えない)にしてようやく色味が合ったといった説明をお聴きになりました。

④染色、紙漉き

修補本の本紙に合わせた補修紙を作る作業です。

悠仁親王殿下は、平成30年から修補係で紙漉きを始めた経緯や、本紙に合わせた補修紙を作る工程についての説明をお聴きになり、作った補修紙を枯らしている様子を御覧になりました。また、楮の枝から繊維になるまでの標本を御覧になり、最終段階の工程では、2~3時間木槌で叩いて繊維化するとの説明をお聴きになった上で、実際に木槌を持って繊維の塊を叩かれて、木槌の重さなどを実感されました。その他、紙漉き道具も手にされ、持ち具合を確認されました。