公表事項

今後の御公務及び宮中祭祀の進め方について

  • 1  昨年12月に75歳の御誕生日を迎えられた天皇陛下には,平成15年になさった前立腺の御手術後も,御治療と併せて,これに伴う骨粗鬆症発症の可能性を減じるべく運動療法をお続けいただいておりましたが,昨年末には不整脈やストレスに起因する出血を伴う胃腸炎などによって体調を崩されました。また,昨年10月に74歳の御誕生日を迎えられた皇后陛下には,ここ数年,腸壁からの出血やめまい,あるいは胃食道逆流症などお体からの一種の警告と受けとめるべき御症状が,折に触れて見られました。

    これまで,両陛下は,このように,御健康面での不安をお抱えになりながらも,年間を通じて,宮中での儀式や行事・行幸啓をはじめとして,数多くの御公務や宮中祭祀をお務めになっていらっしゃいました。しかしながら,現在,こうした御公務は,昭和の時代,例えば,昭和天皇が74歳になられた昭和50年当時と比べると,外国賓客や駐日大使との御会見・御引見等については,約1.6倍,赴任大使や帰朝大使の拝謁等については,約4.6倍,都内や地方へのお出ましについては,約2.3倍と,大きく増加しており,これらに伴い,両陛下の御負担も増大しました。これら御公務の在り方をみると,帰朝大使のためのお茶のように,平成に入ってから恒例とされたものもあり,また,認証官や学士院及び芸術院の会員等からお話をお聞きになるなど,内容においても変化してきております。

    昭和時代にも,昭和天皇が70歳になられた頃から,御公務や宮中祭祀の調整・見直しが始まりましたが,現在,天皇陛下が75歳になられたこと,また,この1月に平成の御代が20年を超えたことを契機に,これらのお務めに伴う両陛下の御負担を少しでも軽減するという観点から,御公務及び宮中祭祀の進め方について所要の調整・見直しを行うべく検討を進めてきたところ,今般,御公務及び宮中祭祀に係る調整・見直し事項を取りまとめるに至りました。

  • 2  これらのうち,御公務の調整・見直しに当たっては,御公務の重要性と一心にお務めになってこられた両陛下の御公務に対する御姿勢に鑑み,御公務そのものを削減するのではなく,それぞれの御公務の内容・方法等について,両陛下の御負担を少しでも軽減するという観点から,きめ細く調整・見直しを図ることと致しました。

  • 3  まず,宮中での儀式や行事では,両陛下には,各分野で功績があった人を中心に,拝謁・お茶等の形で,年間を通じて国内外の数多くの方々とお会いになっておられますが,その回数は,年間約100回に及んでおります。中でも,春・秋の叙勲に伴っては,合わせて50回以上の勲章等受章者の拝謁が,春・秋,それぞれ7日間あるいは8日間にわたって連日行われます。拝謁等については,年間の拝謁の3分の2を占める春・秋の叙勲に伴う拝謁を中心に,拝謁手順の見直し等を通じて拝謁の回数・日程を縮減するなどして,陛下の御負担の軽減を図ってまいりたいと考えております。

    さらに,拝謁以外の茶会等につきましても,一部行事の行事日程の短縮等,行事内容のこまめな見直しを進めてまいりたいと考えております。

  • 4  また,両陛下には,御引見等の形で,外国からの賓客や各国の駐日大使など数多くの外国関係者と宮殿でお会いになられますが,これら外国賓客等の御引見等の回数は,年間100件以上に上っております。ついては,この内,年間10件前後,お会いになっておられる首相級の外国賓客に関しては,原則として,公賓又は公式実務訪問賓客として訪日する場合に限りお会いになるなどの調整を行い,また,昨年の場合9件に上った外国国会議長の御引見に関しても,今後しかるべき調整を図るなどして,両陛下の御負担の軽減に努めてまいりたいと考えております。

    さらに,これら以外の宮中の儀式・行事についても,新年や天皇誕生日における祝賀行事を中心に,両陛下の御負担を軽減するべく,行事内容の見直しを行ってまいりたいと考えております。

  • 5  また,両陛下は,これまで,都内及び近郊の式典への御臨席のほか,中小企業等への御視察や福祉施設等への御訪問にお出ましになっておられます。さらに,全国植樹祭を始めとする各種式典に御臨席のため地方に行幸啓になり,その折に,地元の福祉関係を始め諸施設をお訪ねになっておられます。昨年1年間では,都内及び近郊へのお出ましは49回,府県への公的なお出ましは8回に及んでおりますが,両陛下は,こうした折,できる限り,県庁所在地や大都市部のみでなく,県下諸地域を遍く訪問されるよう心がけておられ,しばしば僻地や離島などにもお出ましになっておられます。

    こうした行幸啓に際して,全国植樹祭など,これまで天皇陛下から「おことば」を賜ってきた諸々の式典については,今後は,基本的に,「おことば」はなしとし,御臨席のみとすることを検討するとともに,式典に御臨席になる時間の短縮を進めるなど,行幸啓日程全般の見直しを進めてまいりたいと考えております。

  • 6  宮中祭祀につきましては,天皇陛下あるいは両陛下が,祭典を行われ,あるいは御拝礼になる宮中祭祀としては,大祭・小祭のほか陛下が毎月1日にお参りされる旬祭など,年間30数回の祭儀が行われております。両陛下には,これまで,これら数多くの宮中祭祀を,しばしば早朝・深夜の時間帯にもお務めになってこられました。

    これら宮中祭祀については,昭和の時代にも,昭和天皇が69歳になられた頃から,御代拝により祭祀を執り行われる等の調整がなされたところですが,宮中祭祀は,御公務と並ぶ,大変に重要なお務めであるという両陛下のお気持ちを十分に踏まえつつ,昭和の時代の先例などを参考にしながら検討を行い,例えば,新嘗祭については,当面,天皇陛下は,「夕の儀」には,従来どおり出御になることとし,「暁の儀」は,時間を限ってお出ましいただくこと,毎月1日に行われる旬祭については,5月1日及び10月1日以外の旬祭は,御代拝により行うことなど,所要の調整・見直しを行うことと致します。

  • 7  以上,御公務及び宮中祭祀に関し調整・見直しを図ることとした事項については,関係者や関係機関等とも相談しつつ,逐次実施に移すとともに,今後,必要に応じて更なる見直しを加えてまいりたいと考えております。

平成21年1月29日:宮内庁

宮中三殿祭祀と両陛下のご健康問題

天皇皇后両陛下のご健康問題については,さる2月25日,皇室医務主管より説明がありましたが,3月25日からは,宮中祭祀が,修理が完了した宮中三殿で執り行われることもあり,宮内庁次長が同日付の補足説明でも触れたように,明年一月平成の御代が二十年を超えることを一つの節目として,両陛下の御負担を軽減する観点から,祭祀の態様について所用の調整を行うべく目下検討を進めております。昭和の時代には,昭和45年,昭和天皇が69歳になられた頃から,御代拝によりいくつかの祭祀を執り行われることとなる等の調整がなされました。また,香淳皇后は,御健康の問題があり,74歳になられて,昭和52年夏以降,宮中祭祀には,お出にならなくなりました。

天皇皇后両陛下は,これまですべての祭祀を執り行ってきておられますが,本年12月には天皇陛下は75歳になられ,また,10月には皇后陛下は74歳になられますので,いろいろと調整の態様を検討することになると思います。

なお,皇后陛下のご健康について,前回の皇室医務主管の説明の中に,「胃の所見は,一昨年と変わらず,注意を要する状況が続いております。」という一文がございましたが,皇后陛下には,ここ二・三年程,胸部やお背中の鈍痛,慢性のお咳などの症状が,とりわけ夜分に多くおありになることから,これらの症状と,内視鏡的所見を合わせて胃食道逆流症との診断がなされていることを,前回の説明の追加として申し上げます。

平成20年3月24日:宮内庁次長・皇室医務主管

天皇皇后両陛下のご健康問題について

天皇陛下には,前立腺がんの再発に対するご治療として,平成16年7月よりホルモン療法をお続けいただいておりますが,現在のところマーカーは完全に抑制されています。しかし,定期的な皮下注射というご負担をおかけしており,このたびの定期検査の結果,ホルモン療法の副作用としての骨密度の低下傾向が明らかになりました。このまま放置すれば骨粗鬆症に至ることは明白です。両陛下は,これまでも,早朝のお散歩や,テニス等の御運動をなさっておられますが,このような骨密度の低下に歯止めをかけるために,これらの御運動に加えて,これからは一定の時間を優先的に運動療法のために確保していただく必要があります。

運動療法の具体的メニューについては現在専門家の意見に基づいて作成中です。

また,皇后陛下については,先月後半にめまいなどのご症状があり,これらをお身体からの「警告」と考えるべきであるとし,定期検査にて精査を行うと発表したところです。その数日後に発熱されたために検査スケジュールの変更があり,ごく最近一応の精査を終了したところです。その結果,めまいについては特異的な疾患は否定できました。けれども,原因不明のめまい感は現在でも断続的に続いています。平成17年の愛知万博の頃に生じた頸部のお痛みは克服されましたが,頸椎及び脊椎の変形に伴う胸背部鈍痛が今も不定期におありになり,大腸の疾患は完治しましたが,胃の所見は,一昨年と変わらず,注意を要する状況が続いております。

従って,先に述べました「警告」はいまだに継続している状態であり,今後とも,こうした「警告」を勘案しつつ,御日程を作成することが肝要と考えます。

平成20年2月25日:皇室医務主管

ただ今,皇室医務主管から説明のあった両陛下の御健康問題に関して,取りあえず,以下のことを考えています。

  • 1  天皇陛下の御健康については, 金沢医務主管が述べた通り,現在,運動療法の具体的なメニューを作成中ですが,今後規則的に運動療法を実施するべく一定の時間を確保するよう,従来の御日程のパターンを一部見直す必要があると考えています。

    また,皇后陛下の御健康については,金沢医務主管が述べた「お身体からの警告」を受けとめつつ,今後の御日程を作成していきたいと考えています。

  • 2  宮中三殿の工事の完了に伴い,3月末からは,宮中祭祀が宮中三殿で執り行われることになります。昭和の時代にも,次第にお年を召されつつあった昭和天皇の御負担軽減という観点から,累次,所要の調整が行われた経緯がありますので,今般,宮中三殿での祭祀が再開されるのを機会に,御日程の見直しの一環として,いろいろと調整を行なうことを検討しておりますが,やはり平成の御代が20年を超える来年からという陛下のお気持ちに沿って,その時期を待って調整を実施に移すことと致しました。

    宮内庁次長補足説明