秋篠宮皇嗣殿下のおことば
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第65回交通安全国民運動中央大会が開催されますことを誠に喜ばしく思います。
そして、日頃からの交通安全活動への貢献により、本日表彰を受けられる方々に心からお慶びを申し上げます。近年の交通事故による死亡者数を見ますと、ピーク時の1970年と比べ、6分の1以下になっております。このことは、交通安全に関わっている多くの方々の長年にわたるたゆみないご努力の賜物と申せましょう。
しかしながら、昨年、交通事故で亡くなった人の数は、2,663人で、その前年より15人減少したものの、いまだに年間2,000人以上の尊い命が失われています。また、交通事故により、約34万人が負傷しており、多くの人々が生活をする上で困難があったり、悲しい思いをしたりしています。そして、高齢者が関係する事故や、飲酒運転など悪質で危険な運転も問題になっております。
私たちが利用している道路では、日々多くの人や車が往来しており、路上の交通事故は、何時でも、何処ででも、誰にでも起こり得ます。
一人ひとりが、生命の尊さと交通事故の重大性を深く心にとどめ、運転者が自覚を持つのはもちろんのこと、歩行者も事故に遭わないように気をつけることが大切です。そして交通道徳を高め、これらを確実に実践することが肝要でありましょう。
その上で、何よりも、運転者や歩行者それぞれが、相手の立場に配慮し、思いやりのある行動をとることが求められていると考えます。その意味からも、各地で活動され、豊かな知識と経験をお持ちの皆様が、このように一堂に会し、交通安全についての諸施策を協議されることは、誠に意義深いことであります。
おわりに、本日の受賞者をはじめ、全国津々浦々で交通事故防止に取り組んでおられる皆様のご尽力に深く敬意を表します。そして、交通事故のない安全で安心して暮らせる社会の実現に向け、交通安全運動がさらに進むことを祈念し、大会に寄せる言葉といたします。
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本日、「第21回日本学術振興会賞並びに日本学士院学術奨励賞」授賞式が開催され、皆様にお目にかかれましたことを大変嬉しく思います。
本日受賞をされた皆様に心からお祝いを申し上げます。
受賞された皆様は、それぞれの専門分野において研究を進め、今までに秀逸な業績をあげてこられました。このたびの受賞を一つの契機として、今後もさらに成果を積み重ね、幾久しく活躍されることを心から願っております。学術研究は、研究者の知的好奇心や自由な発想、そして研究への意欲に端を発し、地道な研究の継続を経て、真理の探求、経済の持続的発展、生活の利便性向上、心の豊かさの増進など、様々な成果を生むにいたるものと理解しております。
現在、人類社会は、気候変動やそれに伴う自然災害、さまざまな疾病や食料・エネルギー問題をはじめ、多くの困難な課題を抱えております。これらを解決していくためには、多様な学術領域からの知的貢献が必要不可欠なものとなっております。
その意味で、我が国の学術研究を支える日本学術振興会と日本学士院が協力して、人文学、社会科学から自然科学にわたる幅広い分野の若手研究者を顕彰し、研究意欲をより高め、研究の発展を支援しようとすることに大きな意義を感じます。それとともに、若い世代の研究者が業績をあげていかれることは、学術の発展を期待し、その成果を享受、あるいは共有する国民にとっても大変喜ばしいことと申せましょう。
おわりに、日本の学術研究が、関係の皆様のご尽力によって一層進展することを心より祈念し、式典に寄せる言葉といたします。
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本日、第70回青少年読書感想文全国コンクールにおいて、多数の応募作品の中から選ばれ、表彰される方々に、心からお祝いを申し上げます。
青少年読書感想文全国コンクールは、幼少期から本に親しみ、心豊かに生きる糧にしてほしいという願いから、1955年に始まりました。その時以来、関係者の長年にわたるご尽力により、今では、全国の児童・生徒のほぼ5人に1人が応募するまでのコンクールに発展したと承知しております。そして本年、70回という記念すべき表彰式で、皆様とお目にかかれましたことを大変嬉しく思います。
受賞作品のいくつかを拝読いたしましたが、自分の知らない世界に出会った感動を言葉で表現する力に驚くとともに、登場人物の気持ちに寄り添ったり、自分と重ねてみたりして、そこからさらに深く考えて得たことを、執筆者自身で昇華させている様子が窺えました。そして、皆さんの本に対する思いや共感する心に触れることができ、感銘を受けました。
本を読んで感想文を書くとき、皆さんは、自分の考えをまとめながら自身の経験を振り返ったり、自分と向き合う作業をされたりしたことと思います。そのような自分を振り返ってみることは、面白い反面、楽しいだけではないかもしれません。しかし、本をつうじて自分とじっくり向き合う時間は、皆さんの心を豊かにしてくれたのではないでしょうか。
日本の全世帯のスマートフォン普及率が約90パーセントと言われる今日、私たちを取り巻く情報通信環境は大きく変化しました。それにより、本があまり読まれなくなったと言われますが、年間で児童・生徒に読まれる本の数は決して減っているわけではないとも聞きます。実際、今回のコンクールに向けて、2万4千校近い学校から、230万編を超える作品が寄せられたとのことです。
これだけ多くの応募があった背景には、日々読書指導に取り組まれている教員の方々のご努力があったことと推察いたします。また、青少年の心の糧になるような優れた著作を生み出された作家の方々、そのような作品を美しい装丁と共に世に送り出された出版関係の方々、そして、全国各地で青少年の読書活動を支援してこられた方々のご尽力に心からの敬意を表します。
おわりに、本コンクールの発展に力を尽くしてこられた全ての方々に深く敬意を表します。そして、この意義あるコンクールが将来に向けてさらに発展し、これからも多くの児童・生徒たちが一層本に親しみ、心豊かに成長していくことを祈念し、表彰式に寄せる言葉といたします。
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184日間にわたって開催される2025年日本国際博覧会「大阪・関西万博」の開会式が、天皇皇后両陛下ご臨席のもと行われ、先ほど滞りなく終了いたしました。
明日の開幕に先だって、これまでこの博覧会の開催に向けて尽力してこられた多くの皆様に、この会場でお会いできましたことを、大変嬉しく思います。本日の開会式では、式典とともに、このたびの博覧会のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を体現するさまざまなパフォーマンスが行われました。
これらを通じて、世界が「国際博覧会」で一つとなり、人類が直面している共通の課題への解決策を考えていく意義が改めて共有されたのではないかと思います。前回、大阪で日本万国博覧会が開催されたのは1970年のことでした。私もその時のことは、強く印象に残っております。今回、当時の万博を経験された方々はもちろん、幅広い世代の方々にこの博覧会を楽しんでいただきたいと思います。
そして、世界との出会いというすばらしい体験が世代を超えて共有され、次世代へと引き継がれていくことを期待いたしております。このたびの国際博覧会の準備に携わってこられた地元大阪府、大阪市を始めとする、国内外の関係者の熱意と努力に対して、心からの敬意を表します。そして、会場を訪れる皆様が、世界各地から来訪される方々との交流を通じ、「いのち輝く未来社会」をともに創り上げていくことを祈念し、私のあいさつといたします。
ありがとうございました。
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このたび「公益財団法人 日本国際医学協会」が、前身の「医学談話会」から数えて、創立100周年を迎えられましたことを心からお喜び申し上げます。
1925年、医師の継続的な医学教育を目的として石橋長英博士によって設立された「医学談話会」は、1939年に日独医学協会の名で財団法人として認可され、1952年に現在の日本国際医学協会に改称されました。その間、貴協会は一貫して医師の生涯教育と医学を通じた国際親善を進めてこられました。
我が国との医学交流は、エルヴィン・フォン・ベルツ博士や森鷗外博士に代表されるように、明治以来ドイツを中心として行われてきました。石橋長英初代理事長は、1939年に締結された「日独医学協定」の成立に尽力され、多数の日本人医師や研究者のドイツへの留学や使節団の派遣、ドイツ人医師・研究者の日本への招聘を支援され、日本の医学・医療の発展に大きく貢献されました。
貴協会の熱意もあって、両国の交流は市民にも拡がり、たとえばベルツ博士ゆかりの群馬県草津町とビーティヒハイム・ビッシンゲン市や、栃木県旧石橋町、現在の下野市と旧シュタインブリュッケン、現在のディーツへルツタール市では姉妹都市協定が締結され、定期的な人的交流が行われていると伺っております。
また、医師の生涯教育については「国際治療談話会」を定期的に開催され、専門分野別に細分化されつつある医学の再統合をはかり、領域にとらわれない医学を提唱されています。そして、国際治療談話会の「感想」は、医学、歯学、薬学以外の分野の有識者を迎えて行われている講演ですが、広範な知識と倫理を求められる医師の生涯教育として大変意義深く、かつ独自性が高い取り組みであると申せましょう。
おわりに、日本国際医学協会が、今後も日本とドイツを始めとする国際医学交流ならびに医師の生涯教育に貢献し、ますます発展していかれることを祈念し、創立100周年にあたってのお祝いの言葉といたします。
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本日、第36回全国「みどりの愛護」のつどいが、ここ千葉県松戸市において開催され、日頃から緑の愛護活動に携わっておられる皆様とともに出席できましたことを大変嬉しく思います。
そして、このたび、花と緑の愛護に顕著な功績を残され、「みどりの愛護」功労者国土交通大臣表彰を受賞された94団体ならびに千葉県都市緑化功労者知事表彰を受賞された32団体の皆様に心からお祝いを申し上げます。千葉県は、気候が温暖で三方を海に囲まれ、雄大な景色を作る海岸線や数多くの里地里山など美しい自然に恵まれています。
また都市部においても、緑化活動などによって緑豊かな景観が保たれ、そこに暮らす人々に快適さや潤いをもたらすとともに、訪れる人たちにも魅力的な場所になっていると伺っております。この全国「みどりの愛護」のつどいは、緑に関わる全国の関係者が一堂に会し、広く都市緑化意識の高揚を図り、緑豊かな潤いのある住みよい環境づくりを進めるとともに、緑を守り育てる国民運動を積極的に推進していくことを目的として開催されてまいりました。
緑は美しい景観を生み出し、人々にゆとりや安らぎを与えるだけでなく、気候変動や生物多様性の保全など、地球規模の環境問題に対処する上で、非常に大切な役割を担っています。それ故、この貴重な緑を守り、新たな緑を創り出し、育むとともに、次世代につないでいくことが必要であると感じております。その意味で、本日表彰を受けられた皆様の地道な努力と継続的な活動は、大変意義深いものであり、そのご尽力に深く敬意を表します。
おわりに、この「みどりの愛護」のつどいに参加された皆様がお互いに交流を深め、緑を守り育てる心をさらに高められることによって、緑豊かな環境づくりが一層発展していくことを祈念し、私の挨拶といたします。
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2025年日本国際博覧会「大阪・関西万博」の開会式が、天皇皇后両陛下ご臨席のもと、この会場で執り行われてから、はや3ヶ月近くが経とうとしています。開幕以来、ここ夢洲には、毎日、国の内外から多くの人々が訪れ、「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマを体現するさまざまな展示やイベントを楽しんでいただいていると伺っており、大変喜ばしいことと思います。
「大阪・関西万博」では、連日のように、参加各国・地域のナショナルデーや国際機関のスペシャルデーが開催され、それぞれの国などの紹介がなされております。
そして本日は、日本のナショナルデーである、「ジャパンデー」です。この日にあたり、主催国として、多くの皆様をお迎えできましたことを、誠に喜ばしく思います。ジャパンデーは、日本の歴史や文化、伝統について、理解を深めていただくよい機会です。本日、会場内で行われる多くの催しを通じて、日本の持つ魅力を、世界の人々とともに、再発見することができる日になることを期待します。
ジャパンデーのテーマは、「LIFE WILL BLOOM.~いのちは、何度でも輝く。~」です。我が国の歴史を振り返ってみますと、先人たちは、四季が移ろう中で、自然の中にも「いのち」を見出し、生きとし生けるもの、すべての「いのち」を尊びながら、その感性を培ってきたと言えましょう。また、世界との交流を通じて、他国のよいところを柔軟に取り入れつつ、我が国特有の文化を育んでもきました。最近では、アニメやマンガなど日本が生み出したコンテンツが世界に広まり、国境を越えて、多くの人々をつなげています。
このような日本は、これからも、世界各国・各地域をつなぎ、また未来に貢献することができるのではないかと思います。その契機の一つになっているのが、このたびの万博と言えましょう。そして、次世代を担う人たちには、世界の人々や文化との出会いを経験し、世界について、そして未来について、考えを深めてほしいと思います。
おわりに、本日のジャパンデーをきっかけとして、世界と出会い、日本を伝えるというすばらしい体験が世代を超えて共有され、次の世代へと引き継がれていくことを祈念し、ジャパンデーに寄せる言葉といたします。
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本日、海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う日である「海の日」の意義を伝えることを目的とする「海の日記念行事2025」が、ここ東京国際クルーズターミナルにおいて開催され、その開会式に皆様とともに出席できましたことを誠に喜ばしく思います。
そして、海洋に関する学術・研究、幅広い分野における普及啓発や海運業、船舶産業などの海事クラスターの発展に顕著な功績が認められ、海洋立国推進功労者として内閣総理大臣賞が贈られる5名、1団体の皆様に、心からお祝いを申しあげます。
本年は、1941年に制定された「海の記念日」が、「海の日」として国民の祝日となって30回目の節目の年となります。この記念すべき年に、日頃から海洋・海事の振興に力を尽くしておられる皆様とともにこの日を祝うことは、大変意義深いことと考えます。
四方を海に囲まれた我が国は、古より豊かな恵みを海から受け、生活、産業、文化など、多岐にわたって海と深く関わってまいりました。また、海は人々の心を引き付けるとともに、国内外との様々な交流を通じ、人々の豊かな暮らしに寄与してきました。
しかしながら、海水温の上昇や海洋汚染、海洋資源の枯渇など、海を取り巻く様々な問題が生じております。私たちはこのような諸問題への解決に真剣に取り組み、豊かな海の環境を保全していかなくてはなりません。そのためには、国民一人ひとりが海への関心と理解を持ち続け、次の世代を担う人たちに豊かな海を引き継いでいく取り組みを進めていくことが大切なことと申せましょう。
日本の各地では、「海の日」である今日だけではなく、海の月間である7月を中心として、多くの「海の日」を記念する行事が開催されると伺っております。多くの人たちが、海のことに思いを馳せながらこれらの行事に参加され、海の恩恵に感謝する気持ちが、未来へと受け継がれることを願っております。
おわりに、本日の海の日記念行事を通じて、国民の間に広く海洋についての理解と関心が深まることを祈念し、「海の日記念行事2025」に寄せる言葉といたします。
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令和7年度全国高等学校総合体育大会「開け未来の扉 中国総体 2025」が、全国から多くの参加者を迎え、穏やかな瀬戸内の島々や緑豊かな中国山地、数多くの名所など、多様な自然景観と文化の魅力にあふれる広島県、鳥取県、島根県、岡山県、山口県の中国5県と北海道、福島県、和歌山県で開催されることを大変喜ばしく思います。
戦後80年の節目となる本年、被爆地広島を幹事県として、このたびの大会が行われ、ここに集う人々が、共に過去を振り返り、未来に向けて平和への思いを新たにする機会を得ることは、非常に意義深いことと思います。
また、このあと行われる公開演技では、多くの人々の「応援」を受けて復興し、「平和」を願う広島で育った高校生が、「たくさんの人々へ応援の声を届けたい」との想いを表現されると伺っています。さて、インターハイの名で親しまれている全国高等学校総合体育大会は、高校生に広くスポーツ実践の機会を提供し、技能の向上やスポーツ精神の高揚を図るとともに、生徒相互の親睦を深め、心身ともに健やかな青少年を育成することを目的とし、1963年から教育活動の一環として開催されております。
そして、この大会の歴史を振り返ってみますと、世界大会やオリンピックなど、国際的な大会に出場した選手の中には、かつてインターハイで活躍した方たちも数多くおられます。このたびの大会に出場される方々には、「輝け君の青春 刻め努力の軌跡」のスローガンの下、暑熱対策などに心を配られつつ、日頃の成果を大いに発揮されることを期待しております。
さらに、この大会では、各開催道県の多くの高校生が準備と運営に関わっています。選手と地元の高校生や各地から参加される方々が親睦を深められ、皆様にとって末永く心に残る大会になることを願っております。
おわりに、本大会が、選手の活躍と地元高校生を始めとする関係者の協力により、実り多いものとなることを祈念し、開会式に寄せる言葉といたします。
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第49回全国高等学校総合文化祭「かがわ総文祭2025」が、美しい瀬戸内の自然に囲まれ、アートや魅力的な名所に満ちあふれた、ここ香川県で開催されます。本日その開会式に、全国各地そして海外から参加された多くの方々とともに出席できましたことを大変嬉しく思います。
また、生徒実行委員をはじめとする香川県の高校生、全国から集われた高校生、その指導にあたってこられた方々など、本大会を創り上げてこられたすべての関係者のご尽力に対して心から敬意を表します。
さて、全国高等学校総合文化祭は、文化・芸術活動に取り組む高校生の祭典として、開催地の生徒が主体となり、地域の特性と高校生ならではの感性を活かした大会づくりがなされてまいりました。1977年の第1回大会から各都道府県持ち回りで行われ、昨年の岐阜大会から2巡目に入りました。このような祭典が、次世代を担う高校生によって長年にわたり毎年開催されていることは、国民の文化・芸術に対する関心や理解をいっそう深めるとともに、未来に向けた文化創造の土壌を豊かにする上で、誠に意義深いものと申せましょう。
今年の大会テーマは「讃岐に咲くは 才の花たち」であります。参加される高校生の皆様が、日頃の活動の中で培ってこられた創造性を発揮し、ここ香川の地で色とりどりの花のごとく、多様な才能を開花させることを期待いたします。そして、参加者相互の交流を深めることを通じて、国の内外に文化・芸術の輪、そして大会基本方針にもあるように、笑顔の輪を大きく広げていかれることを願っております。
おわりに、「かがわ総文祭2025」が、皆様にとりまして、素晴らしい一夏の思い出になることを祈念し、開会式に寄せる言葉といたします。
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世界の多くの国と地域からお越しいただいたアスリートの皆様、そしてご来場の皆様を心より歓迎し、ここに、東京2025世界陸上競技選手権大会の開会を宣言いたします。
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本日、「第35回福岡アジア文化賞」授賞式が開催されるにあたり、大賞を受賞される高良倉吉(たから くらよし)氏、学術研究賞を受賞される白永瑞(ペク・ヨンソ)氏、そして芸術・文化賞を受賞されるヴォ・チョン・ギア氏に心からお祝いを申し上げます。
そして本日ご出席の皆様と共に、受賞者それぞれの活動や研究の一端について、この会場でお話を伺うことができますことを誠に嬉しく思います。「福岡アジア文化賞」は、アジア各地で受け継がれている多様な文化を尊重し、その保存と継承に貢献するとともに、新たな文化・芸術の創造、そしてアジアに関わる学術研究に寄与することを目的として、それらに功績のあった方々を顕彰するために1990年に創設されました。爾来、アジアの文化とその価値を世界に示すにあたり、本賞の果たしてきた役割には誠に大きなものがあります。
私自身、日本国内を旅するとともに、東南アジアを中心に、いくつかのアジアの国々を訪れました。そして、多様な風土や自然環境によって創り出され、長い期間にわたって育まれてきた各地固有の歴史や言語、民俗、芸術など、文化の豊かさと深さに関心を抱いてきました。
それとともに、貴重な有形・無形の文化を記録・保存・継承し、さらに発展させていくことの大切さや、新たに創造していくことによる広がり、そして、アジアを深く理解するための学術の重要性を強く感じてまいりました。このことからも、本賞がアジアの文化・芸術の価値、ならびに学術面における成果を伝えていくことは、大変意義深いことと考えます。
その意味において、本日受賞される3名の方々の優れた業績とその意義が、アジアのみならず広く世界に向けて発信されることを願います。そして、国際社会全体でそれらを共有することは、人類の貴重な財産の蓄積につながることと思います。
おわりに、受賞される皆様に改めてお祝いの意を表しますとともに、この「福岡アジア文化賞」を通じて、アジアに対する理解、そして国際社会の平和と友好が促進されることを祈念し、授賞式に寄せる言葉といたします。
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「第48回全国育樹祭」が、ここ宮城県において、「次世代へ みどりのかけ橋 森づくり」の大会テーマのもと、全国各地から多くの参加者を迎えて開催されますことを誠に喜ばしく思います。
そして、本日表彰を受けられる方々に心からお祝いを申し上げます。全国育樹祭は、継続して森を守り育てることの大切さを普及啓発するため、1977年から、全国植樹祭を開催したことのある都道府県において、毎年開催されております。ここ宮城県においては、全国植樹祭が二度開催されておりますが、このたび、初めて全国育樹祭が開催されますことに深い感慨を覚えます。
昨日、私たちは、1997年に「第48回全国植樹祭」が行われた国立花山青少年自然の家 南蔵王野営場において、当時の天皇皇后両陛下が植樹をされたブナとオオヤマザクラの手入れを行いました。28年の歳月を重ね、樹々が健やかに成長している姿を見ることができ、大変うれしく思いました。
さて、2011年に発生した東日本大震災の津波により、宮城県沿岸部の海岸防災林が大きな被害を受けました。その再生には長い年月を要しますが、地元や県内外の多くの方々が植林や保育活動を行い、防災機能の復旧だけでなく、地域の交流の場としての活用も目指していると伺っています。
また本県では、林業の担い手の確保や育成が進められているとのことです。戦後に造林された樹木が本格的な利活用期に入っている今日、大変重要なことと考えます。
そして、これらいずれの取り組みも将来に向けた意義深いものと申せましょう。森林は、国土の保全、水源の涵養、レクリエーションの場の提供のほか、木材や特用林産物の供給など、私たちの暮らしに必要なものや豊かさをもたらす多様な機能を持っています。そして、地球温暖化の防止に欠かせない二酸化炭素の吸収源として、また生物多様性の保全など、地球環境を守る上でも重要な役割を担っております。
このように、かけがえのない豊かな森林を維持し、次の世代へと引き継いでいくことは、私たちに課せられた大切な務めでありましょう。
その意味から、本日表彰を受けられる方々をはじめ、日頃からそれぞれの地域において国土緑化に力を尽くされている全国の皆様に敬意を表します。そして、こうした活動が今後も多くの人々に支えられ、一層発展していくことを期待しております。
おわりに、本大会が一つの契機となり、震災の教訓が広く伝承され、森林を守り育てていく人々の想いがここ宮城の地から全国へ広がっていくことを祈念し、本式典に寄せる言葉といたします。
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2025年日本国際博覧会「大阪・関西万博」は184日間に及ぶ会期を終え、本日ここに幕をおろします。
「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとして開催されたこの博覧会が、世界の多くの国や地域、国際機関を始めとする関係者の熱意と協力のもとに開催され、盛況のうちに滞りなくこの日を迎えることができたことを大変嬉しく思います。博覧会の開催に尽力された方々に深く敬意を表します。
このたびの博覧会を契機に、多くの人々が、ここ夢洲に集い、繋がり、相互理解を深め、人類が直面している共通の課題への解決策について共に考える機会を得たことは、非常に意義深いことと思います。これからも世界が手を携え、「いのち輝く未来社会」を創り上げていくことを期待しております。
おわりに、この博覧会における素晴らしい体験が世代を超えて共有され、次世代へと引き継がれていくことを祈念し、閉会の言葉といたします。
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Distinguished guests and Congress participants,
It is a great pleasure for me to join many people from Japan and abroad at this Opening Ceremony of the 15th International Congress on Cleft Lip/Palate and Related Craniofacial Anomalies, for short CLEFT2025, being held here in Kyoto.
This international Congress encompasses all fields related to the treatment of cleft lip/palate and related craniofacial anomalies. I am very pleased that this Congress, with a long history, is being held in Japan for the first time. I express my deep respect to those who have advanced this field for their long-standing dedication.
I have learned that cleft lip/palate affect approximately 1 in every 500 to 1,000 live births, making them among the most common birth defects worldwide. These conditions can cause impairments not only for newborns and infants but throughout a person’s lifetime, and thus require care. Therefore, treatment cannot be accomplished through the efforts of a single professional field alone, but rather requires collaborations among specialists across a wide range of disciplines, including doctors, dentists, speech-language pathologists, and other medical and dental professionals. Meanwhile, I understand that in many developing countries, collaborative efforts across multiple fields are essential. These include the fostering of medical personnel, and improving the quality of comprehensive healthcare services.
In this context, I understand that team-based care and collaborative studies are central to this Congress, which aims to facilitate research presentations and lively discussions through the Japanese concept of ‘wa’ in its theme of “‘Wa Harmony’ – Looking for Harmony and Consensus in comprehensive cleft care and collaborative studies”. I hope that the outcomes of this Congress will greatly contribute to strengthened collaboration and advancements in related fields.
In concluding my address, I hope that active interdisciplinary exchanges among clinicians and researchers from around the world will provide momentum for further advances in research on cleft lip/ palate and craniofacial anomalies. Furthermore, it is my wish that the outcomes will lead to better treatment and brighter futures for patients around the world. I hope this Congress and your stay here in Kyoto will be fruitful, meaningful, and enjoyable.
Thank you for your kind attention.
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第24回全国障害者スポーツ大会「わたSHIGA輝く障スポ」の開会式が、日本最大の湖、琵琶湖を有する湖国滋賀県で開催されます。本日、全国各地から参加された多くの選手、役員、支え手、そして開催地の皆様とともに開会式に出席できましたことを大変うれしく思います。
本大会は、障がいのある人たちが大会に参加し、競技などを通じてスポーツの楽しさを体験するとともに、国民が理解を深め、障がい者の社会参加の推進に寄与することを目的として、2001年より開催されております。爾来(じらい)、本大会は、我が国の障がい者スポーツの普及と振興に大きく寄与してきました。長年にわたって大会を支えてこられた関係者のご尽力に深く敬意を表します。
「わたSHIGA輝く障スポ」では、「みんなが輝く大会に!」のメッセージのもと、全ての競技会場にカームダウンスペースを設置するなど、誰もが大会を楽しむことができる工夫がなされていると伺っております。この大会での様々な取り組みが、我が国の共生社会の実現につながることを期待しております。
そして、参加される皆様には、日頃の練習の成果を存分に発揮され、すばらしいパフォーマンスを披露していただければと思います。それとともに、全国各地から集われた選手同士、また多くのボランティアの皆様や地元の方々との交流を深められ、たくさんの思い出や人とのつながりを作っていただくことを期待いたします。
おわりに、本大会を通じて生まれた感動が、ここ滋賀県から全国へと広がり、未来への希望として将来にわたって引き継がれることを願っております。
そして、この大会を一つの契機として、障がいのある人々に対する理解が更に広がり、障がい者の社会参加が一層促進されますことを祈念し、開会式に寄せる言葉といたします。 -
本日、「第34回ブループラネット賞表彰式典」において、栄えある賞を受賞されました米国のロバート・B・ジャクソン教授(Professor Robert B. Jackson)ならびに英国のジェレミー・レゲット博士(Dr. Jeremy Leggett)に心よりお祝いを申し上げます。
ロバート・B・ジャクソン教授は、森林・草原・湿原などの陸域生態系の炭素循環の専門家として、長年にわたり土壌・植生・土壌細菌群集に関して先駆的な研究を行ってこられました。その中で、化石燃料の使用や自然生態系から発生する二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素などの温室効果ガスの収支を定量化されています。そして、2017年からは、グローバル・カーボン・プロジェクトの議長として温室効果ガス排出量の監視と削減の取り組みを主導されています。
ジェレミー・レゲット博士は、「カーボン・トラッカー・イニシアチブ」の初代会長として「カーボンバブル」の概念を提唱し、化石燃料資産の経済リスクを明らかにし、気候変動が金融市場にもたらすリスクに光をあてられました。こうしたリスクへの認識の高まりは、投資家の判断に影響を及ぼしています。また、経済活動と環境保全の両立を図る実践的な取り組みとして、英国有数の太陽光発電企業を創業されました。近年は、スコットランドで自然再生の一形態であるリワイルディングと地域社会の繁栄を結び付ける取り組みを推進されています。
このように、お二人の受賞者が、長年にわたる卓越した研究と国際的な協力を通じて、私たちが直面する気候変動という極めて深刻な課題の解決に力を尽くしてこられたことは、誠に意義深いことであります。お二人をはじめ環境問題に真摯に取り組む方々のご尽力により、持続可能な社会、健全な地球環境、そして人々の幸せがもたらされることを心から願っております。
おわりに、すばらしい業績を上げられましたジャクソン教授ならびにレゲット博士に改めて敬意を表しますとともに、ブループラネット賞が、これからも世界の人々の環境への意識を高め、それに伴う行動を促す上で重要な役割を果たしていくことを祈念し、「第34回ブループラネット賞表彰式典」に寄せる言葉といたします。
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「第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025」が日本において初めて、ここ東京で開催され、国内外から参加された多くの選手やスタッフ、ボランティアなどの支え手、そして今日ここに集っておられる皆様とともに出席できましたことを大変うれしく思います。
デフリンピックは、デフアスリートの世界最高峰の大会であり、1924年に第1回がフランスのパリで開催されて以来、4年毎に開催されています。そして、100年を超える歴史ある大会です。
このたびのデフリンピックの開催に向け、力を尽くしてこられた方々や、長期間にわたる練習を積み重ねて出場を果たされた選手、そして様々な形で選手を支えてこられた関係者に深く敬意を表します。本大会に参加される皆様には、日頃の練習の成果を存分に発揮され、すばらしいパフォーマンスを披露してくださることを期待しております。
それとともに、世界の約80の国と地域から集われた方々と、多くのボランティアや地元の方々がお互いに交流することによって、世界の人々の友情と親交がさらに深まることを期待いたします。そして、このたびのデフリンピックが、多くの人々の心に残る大会になるとともに、これを契機としてデフスポーツへの関心が今以上に高まることを願っております。
おわりに、本大会が、きこえない・きこえにくい人ときこえる人が互いの違いを認め、尊重しあい、そして誰もが個性を活かし、力を発揮できるインクルーシブ社会の実現に寄与することを祈念し、開会式に寄せる言葉といたします。
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本日、大日本水産会「令和7年度水産功績者表彰式」が開催され、長年にわたる水産業への功績に対して表彰を受けられる皆様に、心からお慶びを申し上げます。
また、幼少の頃より魚をはじめとする水族に親しんできた私にとり、全国各地で水産業に深く携わっておられる皆様とお会いできましたことを大変嬉しく思います。大日本水産会は、1882年、明治15年の創立以来140年余にわたり、水産業振興のため、さまざまな事業を展開してこられました。なかでも、「水産功績者表彰」は、1890年、明治23年以来、今回で109回目となります。総受章者数は3,408名を数え、水産業に携わる方々の励みになってきたことと思います。それとともに、その歴史に深い感慨を覚えます。
我が国では、古より魚介類が身近で貴重なタンパク源として親しまれてきました。このため、漁業や養殖業が盛んであり、関連する加工業や流通業も発展してまいりました。水産業は、とりわけ鮮度と安定的な供給が求められる産業です。本日受章される皆さまには、さまざまなご苦労をされながらも、長年にわたり水産業の各分野の振興に力を尽くしてこられたことに深く敬意を表します。
さて、国内の水産業を取り巻く状況に目を向けますと、海洋環境の変化による水産資源の減少や人手不足、燃料などの価格高騰、環境問題や省人化・省力化への対応など、課題は山積しています。そのことから、政府や業界、そして水産業の現場においては、課題解決のための取り組みが、日々行われていると伺っております。
他方、海外においては、世界規模での人口増加の中、貴重な食料資源として養殖業を中心に水産物の生産量が増えており、近年、ユネスコ無形文化遺産にも登録された和食の普及とも相俟って、我が国では水産物の輸出拡大の機運が高まりを見せております。
このような状況のもと、本日表彰を受けられる方々が、日本の水産業の維持と発展の一翼を担われつつ、これからもお元気で活躍されますことを願っております。
おわりに、大日本水産会が、今後ますます発展し、我が国の水産業の振興に一層の貢献をされることを祈念し、表彰式に寄せる言葉といたします。
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「国際生物学賞」は、昭和天皇の長年にわたる生物学へのご貢献を顕彰するため、1985年のご在位60年の機会に創設されました。そして、本賞の発展に寄与されてきた上皇陛下のご研究を記念した、生物学の奨励を目的とする賞であります。
41回目を迎えた本年は、イタリアのパルマ大学名誉教授であるジャコモ・リッツォラッティ(Giacomo Rizzolatti)教授が受賞されました。心からお慶びを申し上げます。
第41回は、「神経生物学」が贈賞の対象分野であります。リッツォラッティ教授は、脳による行動の制御と認知に関する研究を専門とされ、とくに大脳皮質の運動関連領域に関する研究で多くの業績をあげてこられました。
そのなかでも、高等動物が他者の行動を理解するための神経基盤であるミラーニューロンとその仕組みであるミラーメカニズムの発見は、システム神経科学および認知神経科学において、他者の行動を理解する神経機構を研究する領域を新たに開拓した画期的な業績であると言えましょう。
リッツォラッティ教授と共同研究者たちによるミラーニューロン発見以前の神経科学研究がもっぱら個体自身を研究対象にしていたのに対して、ミラーニューロンの発見を契機として、神経科学は、複数個体の関係性、即ち社会をも研究対象とするようになりました。このことは、「社会神経科学」という新しい分野を創出することにつながり、認知神経科学にとどまらず、生物学全般に対しても多大なインパクトを与えました。
また、リッツォラッティ教授と共同研究者たちは、近年、ミラーニューロンに関連して自閉症スペクトラムの子供などについても研究を行なっておられます。そのような先駆的な研究のおかげで、自閉症とミラーメカニズムの障害との関係性については、多数の研究者が学際的に関わる分野として活発な研究が展開されるに至っています。
このように、近年、社会神経科学は著しい発展を遂げました。このことは、ひとえにリッツォラッティ教授の数々の業績によるものであり、ここに深く敬意を表します。
おわりに、リッツォラッティ教授のご研究が、今後より一層発展することを願うとともに、国際生物学賞がこれからも生物学のさらなる発展に寄与していくことを祈念し、お祝いの言葉といたします。
秋篠宮皇嗣妃殿下のおことば
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本日、筑波大学附属聴覚特別支援学校の創立150周年記念式典にあたり、お集りの皆さま方にお会いできましたことを大変うれしく思います。
筑波大学附属聴覚特別支援学校の歴史は、明治8年に楽善会が結成されたときに遡ります。楽善会のもとに、東京の築地で訓盲院として始まり、名前や場所がたびたび変わる中、開校以来、日本の聴覚障害教育の研究と実践に力を注いでこられました。そして多くの子どもたちがこの学び舎で過ごし、その後、様々な分野で活躍されてきました。これまで学校が歩まれてきた長い道のりと、耳が聞こえない・聞こえにくい子どもたちの教育に力を尽くされてきた方々に思いをはせ、感謝と敬意を抱きながら、皆さまと共に今日のよき日をお祝いしたいと思います。
私はこの学校をたびたび訪れる機会に恵まれました。ある日は、幼稚部で子どもたちと家族が遊ぶ輪の中に入って、一緒に楽しみました。あるときは、小学生が算数や音楽の授業を熱心に受ける姿や、中学生が弁論大会で堂々と自分の意見を述べる姿を見て、子どもたちの成長を頼もしく感じました。また、高校生たちが、フランスの国立パリ聾学校の生徒たちと、日本の手話、フランスの手話、ジェスチャーや筆談と工夫しながらコミュニケーションをとる場面に見入ったこともありました。校舎に隣接する寄宿舎では、故郷や家族から離れて暮らす高校生の生活を支える方々の大切なお話を伺うこともありました。そして本日は、この式典の前に専攻科の生徒たちの美術作品を鑑賞し、心動かされました。
こうして私は、この学校で、子どもたちが学びを深め、考える力、感じる力を伸ばし、一緒に課題に取り組み、気づきや発見、「わかる」という経験を重ね、自分の世界を広げている姿にふれることができました。豊かな学びをしながら成長していく子どもたちを見守り支えてこられた教職員とご家族、多くの方々に深く敬意を表します。
この学校の校庭には、樹齢350年ほどの大きな欅の木があります。私は、この学校で学んだ方々から、この欅のもとですごした時間が思い出深く、懐かしいという話をお聞きしました。ここにおられる幼稚部、小学部、中学部、高等部の皆さんも、欅の木々に抱かれて、学んだり、遊んだり、行事や活動に参加したりと、さまざまな経験をされていることでしょう。これからも、興味を持っていること、好きなことを深め、広げ、自分らしい道を歩んで行かれますよう希望しています。
筑波大学附属聴覚特別支援学校の教育の積み重ねが、これからの聴覚障害教育の一層の発展につながっていきますよう心から願い、式典に寄せる言葉といたします。
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本日、第100回日本結核・非結核性抗酸菌症学会学術講演会が開催され、お集まりの皆さまにお会いできましたことを大変うれしく思います。
学術講演会は、1923年に北里柴三郎博士らにより「日本結核病学会」が設立された年に初めて開催され、今回で第100回を迎えました。本学術講演会で発表された最初のテーマは、「初感染発病論」でした。基礎研究だけでなく、臨床に関連した研究も進展し、胸部レントゲン検診車による集団検診方法の確立や、長期保存可能なBCGワクチンの開発などに活かされてきました。また、近年では最新の研究成果に基づいて、結核の検査・診断・治療における各種の提言やガイドラインの作成がおこなわれていると聞いています。
我が国では、こうした研究を背景に、長年にわたり結核対策が着実に実施され、2021年には、罹患率が十を下回り、低蔓延国となりました。しかし、多剤耐性結核、リスクの高い高齢患者の増加や、免疫が低下する疾病の患者が結核に罹患することへの対処など、新たな課題が生じています。
国連の持続可能な開発目標・SDGsの3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」ためのターゲットの一つとして、「2030年までに結核を終息させる」という課題が掲げられています。世界に目を向けると、1年間に約1,080万人が結核に罹患し、125万人が亡くなっているとWHOが推定しています。コロナ禍が落ち着き、人の往来も再び盛んになる中、海外から来日して発症する患者への対応も増加してきました。国内の感染対策の点においても、国際協力の観点からも、結核の終息を目指すために、患者の発見、診断、治療、さらには患者の心のケアや社会的支援など数々の分野で、日本の結核研究の進展が期待されています。
一方、結核に代わるように感染者が増加している非結核性抗酸菌症は、病態や診断・治療の方法など解明されていない部分が多く、予防・診断・治療ともに多くの課題が残されていることから、今後の研究の発展が求められています。本学術講演会における非結核性抗酸菌症に関する研究発表数も、1970年代から増えてきました。そうしたなか、「日本結核病学会」は2020年に、「日本結核・非結核性抗酸菌症学会」と学会名を改めました。
先月、結核研究所を訪ね、非結核性抗酸菌症の治療や研究の現状と課題についての説明を受けました。非結核性抗酸菌症は、菌に感染していても症状が顕在化しない人から、酸素投与を必要とする重症の人まで病態が幅広く見られ、薬剤の投与には、常に最新の研究動向を参考にしながら、患者の状態を見極めて対応する必要があると聞きました。感染源となる菌が土や水など身近な生活環境に広く存在することをはじめ、この感染症の特徴を患者やその家族に理解してもらうことにも難しい面があるとの話でした。
また、結核研究所と隣接する複十字病院で働く、重症者の肺切除をおこなう外科医、菌に対応した適切な投薬にあたる薬剤師、長引く通院に不安を抱える患者に寄り添う臨床心理士、免疫力をつけるための生活指導をおこなう栄養士など、多様な職種の人たちが協力して、チーム医療の向上に日々努めているということも聞きました。日本の各地で、こうした多職種による連携がおこなわれていることを知り、皆さまの取り組みをありがたく心強く思っております。
今回の学術講演会にも、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、保健行政の関係者など、多職種の皆さまが参加されています。これまで先人たちが積み重ねてきた歩みをさらに進めるために、研究・医療・ケアなどの情報を幅広く交換し、所属機関や職種を超えて連携し、これからの学会を担っていく若い参加者も共に、結核および非結核性抗酸菌症対策に資する研究に取り組んでいかれるよう、期待しております。
大きな節目を迎えられた本学術講演会において、参加されている皆さまが、実り多い時間をすごされ、結核と非結核性抗酸菌症の研究がより一層発展していきますよう心より願い、式典に寄せる言葉といたします。
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本日、「第72回産経児童出版文化賞」の贈賞式が開催され、皆さまにお会いできましたことを大変うれしく思います。これまで児童出版の分野で力を尽くしてこられた皆さまに、深く敬意を表します。
昨年は、4000点以上の児童書が誕生し、その中の9冊がこのたび「産経児童出版文化賞」に選ばれました。受賞された皆さまに心からお祝いを申し上げます。
この行事には、1993年に開催された第40回贈賞式以来、25年以上にわたり出席いたしました。6年前から、娘の佳子が出席するようになりましたが、今年は開催日が娘のブラジル公式訪問と重なったため、私が出席することになりました。
式典に先立ち、主催者より今年度のすべての受賞作品の説明を受ける機会がありました。その後に一冊ずつ、表紙をゆっくりと開き、見返しの質感やデザインを味わい、続けて扉のページをめくり、本の世界へ入っていきました。
大賞を受けられた大西暢夫さんの写真と文による本『ひき石と24丁のとうふ』。山奥に暮らす90歳を超えたミナさんが、わずかに見える色や形と音、手の感覚や匂いを頼りに豆腐を作る姿を追い、大豆が豆腐になるまでの様子をさまざまな視点から撮影しています。読み終えた後もしばらくその場にいるような余韻が残り、そっとカバーをめくると、静寂な雪景色とミナさんの日々の営みとがつながり、心に染み渡っていきました。
美しい色調の作品『パパはたいちょうさん わたしはガイドさん』は、以前にスペイン語の原作を見たことがあり、星野由美さんの和訳による作品が受賞されたと聞いてうれしくなりました。娘と父親が手をつなぎ、通学路をジャングルに見立てて、会話を楽しみながら探検していく様子、そして二人の深い絆に心動かされます。見えないからこそ感じるものがあり、視覚以外の感覚によって広がる豊かな世界もあることを教えてくれる絵本です。
カン!カン!カン!
ゴォーン ゴォーン
これらの音が聞こえてくるのが、今回受賞した2冊の歴史絵本です。最初の音は鎌田歩さんの『巨石運搬! 海をこえて大阪城へ』の本から。これは400年ほど前の瀬戸内海の島で石工が鳴らしていた音です。石工が切り出した巨石を村人が総出で舟に積み込み、大阪に旅する様子が、ページごとに展開します。働く人々、楽師から子どもたちまで村人の姿や表情、そして使う道具まで丹念に描き込まれています。大阪城を作る石一つ一つにこうした人々の力と知恵があると知ることで、建物や歴史の見方が一段と深まるように思いました。
もう一つの音は小林豊さんの『えほん ときの鐘』から。江戸の日本橋に時刻を知らせる鐘の音です。「鐘役」の孫の新吉と、長崎からやって来たオランダ人のヤンとの出会いの物語です。新吉がヤンと舟にのり、江戸の掘割や川を進んで広がる風景に目を輝かせたように、私たちも江戸の町並みや人々の暮らしに一緒に見入ることができます。江戸を出発するヤンに贈られた日本の鐘の音が、今もオランダの運河沿いの町で、いつもの時間に「きこえる」ようです。
絵本は、時間をさかのぼることも、離れた場所へ旅することも可能にしてくれます。長男が小学生のとき、学校の図書ボランティアの一人として、子どもたちに本を通してアフリカの自然や文化を紹介したことがありました。その当時、また機会がありましたら、遠い国や地域を描いた作品を読んでみたいと思っていましたが、今回の受賞作でその願いが叶いました。
『おはなしはどこからきたの?』は、大昔のアフリカの小さな村から始まります。主人公のマンザンダバは、家族と焚火を囲んでいるときの会話をきっかけに「おはなし」を探しに旅に出ます。動物を訪ねてまわっても「おはなし」がみつからず、ウミガメの背に乗って海の底へ。旅から帰ったマンザンダバは、焚火を前に自分の家族や村人、動物たちに、海の底まで出かけた冒険を語ります。保立葉菜さんによる多色刷りの木版画は、この物語を力強く色鮮やかに表現しています。
よしいかずみさんが訳された『まぼろしの巨大クラゲをさがして』では、青く深い北の海や真っ赤な調査船に乗る研究チームと乗組員の旅の様子がこまやかに描かれ、まるで一緒に船で北極に出かけたように、本の世界へ引き込まれていきました。先日訪れた奥能登の図書館では、私が持っていたこの本に子どもたちが近づき、ページをめくりながら、イッカクやシロイルカの群れに心を弾ませ、なかなかクラゲを見つけられない調査員に向かって「いるいる」「ここにいるよ」と声をあげ、最後まで物語を楽しんでいました。
2人の子どもが表紙を飾る小型の本が2冊ありました。それぞれ子どもの表情や装丁の色使いは違っていて、どのような物語が始まるのだろうかと思いながら読み始めました。
1冊は安東みきえさんの『ワルイコいねが』。主人公の美海は、自分の意見を言ったり考えを伝えたりするのが苦手な小学6年生。一方、秋田から転校してきた同級生のアキトは、思ったことを素直に言葉にします。美海はアキトの言葉や行動に戸惑いながらも親しみを感じていきます。二人の心の交流を通して、相手の気持ちを想像すること、自分の思いに正直であることの大切さに気づかされる物語です。また、美海の祖母のあたたかさや語る言葉も、物語に深みを与えているように思いました。
もう1冊は清水晴木さんの『トクベツキューカ、はじめました!』。1年に1日、好きな日に好きな理由で休むことができる「トクベツキューカ」。この日をどのようにすごそうかと小学生の子どもたちが、それぞれ迷いながらも友情を育み、成長していく姿と、四季の変化とを重ねあわせた短編集です。小学生たちの心情がこまやかに描かれるこの本を手に取った子どもたちも共感する場面があるのではないでしょうか。ページをめくりながら出会った子どもたちや担任の先生がこの先歩む道を見守りたくなるような本でした。
シシシシ チチチチ
耳を澄ますと、林から親鳥と幼鳥の鳴く声が聞こえてきます。『いつも仲間といっしょ エナガのくらし』からでしょうか。エナガの姿や成長を江口欣照さんの写真がはっきり捉え、東郷なりささんの平易で親しみやすい文章でエナガの生態が書かれています。小さいエナガが群を作って助け合って暮らし、ねぐらとなる枝に並んで休む理由も知ることができました。エナガを身近に感じ、林に暮らすエナガとその仲間の鳥のことをさらに学びたいと思いました。
このような魅力あふれる9冊の本を読む機会をいただいたことをありがたく思います。
毎年、産経児童出版文化賞では多様なジャンルの良質な本が選ばれてきました。ふりかえると、これらの作品は長年にわたり私と本との豊かなつながりをもたらしてくれました。
子どもたちが小さかった頃、受賞した絵本を家で一緒に楽しみ、その内容に驚いたり、感心したり、不思議がったり、新たなことを学んだりして過ごしました。子どもが学校へ通うようになってからは、わが子が図書室から借りてきた本が受賞作だったり、ボランティアとして小学校の図書室の書架の整理をしているときに受賞作を見つけ、その本を紹介したりすることもありました。
式典に出席し、受賞した方々とお話をしたことは、皆さまの本作りへのこだわりを感じたり、手がけられた他の作品に親しむきっかけになったりしました。また、賞の運営を担当されている方々や選考委員の皆さまとお会いし、本への熱い思いについて語り合う貴重な機会になりました。
本日、受賞された皆さまにお祝いと感謝の気持ちをお伝えいたします。今後も、産経児童出版文化賞において児童出版に携わる方々が顕彰され、その作品が高い関心を得て、より多くの人たち、子どもたちの手に届き、読み継がれていきますことを願い、式典に寄せる言葉といたします。
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本日、「第61回献血運動推進全国大会」が宮城県で開催され、全国各地から参加されている皆さまにお会いできましたことを、大変うれしく思います。
医療活動に欠くことのできない献血は、昨年、全国で延べ501万人にご協力をいただきました。少子高齢化が年々進み、献血をすることができる年代の人口が減少している中で、関係者は様々な努力や工夫をされてきました。
本大会において表彰を受けられる皆さまを始め、長年にわたり献血運動の推進に力を尽くしてこられた関係者に深く敬意を表します。そして各地で献血にご協力くださった多くの方々に心から感謝いたします。
将来にわたって安定的に血液を供給するためには、若い世代の献血への理解と参加が重要になっています。日本赤十字社では、昨年から「THINK 献血」をテーマとするキャンペーンを通して、広く人々に献血について考えるきっかけを持ってもらうことに力を入れています。私も、毎年大学生たちに話をする機会があり、その際には、献血運動や学生が作成したポスター・標語を紹介しています。今年の大学生の感想には、「高校生のころから献血をしてきて、これから先も積極的に参加しようと思った」、「献血車が来ているとしか思っていなかったけれど、今後は献血してみようと思う」などとあり、このようにコミュニケーションを続けていくことが大切であると感じています。
ここ宮城県では、すべての県立高校で献血に関わる取り組みを進めていると伺いました。日本赤十字社の職員による献血セミナー、献血バス見学会の開催など、各々の学校において献血を学び考える時間をつくっていることは心強いことです。そして若い世代がボランティア活動に参加したり、県内の学校に通う生徒・学生が標語、ポスターデザイン募集へ優れた作品を寄せたりするなど、積極的に献血運動を推進していることを頼もしく思います。
本日の午前中には、宮城県赤十字血液センターを訪ね、小学生を対象とした「けんけつキッズスクール」を見学しました。子どもたちが石巻赤十字看護専門学校の学生献血ボランティアと一緒に、血液の働きや献血の大切さ、命の尊さを学び、七夕飾りの短冊に献血の呼びかけや患者へのメッセージを書いていました。本日のプログラムの表紙には、県内の高校生によるポスター「あなたの優しさがだれかの幸せになる」が掲載されています。将来の献血を担う若い世代が献血の重要性をしっかりと理解し、輸血を必要とする人たちをあたたかく思っていることが伝わってきました。
また、今年の「愛の血液助け合い運動月間」のポスターの標語「献血であなたは誰かのヒーローに」も、県内の高校生が作りました。献血によって自分が誰かの命を助けることができ、また自分もいつか誰かに助けられるかもしれないことを、一人でも多くの人に考えていただければと思います。
本大会を契機として、献血への理解と協力がより一層進み、献血運動の輪がさらに広がっていくことを心より願い、大会に寄せる言葉といたします。
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本日、「第52回日本賞教育コンテンツ国際コンクール」の授賞式に出席し、世界各地からお集まりの皆さまにお会いできますことを大変うれしく思います。今年は、日本賞の創設から60年にあたり、58の国と地域から370以上の作品と企画が寄せられました。受賞された作品の企画制作に関わってこられた皆さまに心からお慶びを申し上げます。
今年も審査委員の皆さまが熱心に審査と討議を重ねられて、受賞作品が選ばれました。
今回の受賞作品には、アニメーション、スタジオショー、ドキュメンタリーをはじめ、これらを組み合わせたものなどがありました。作品には、互いに優しくすることや、ともに生きること、人々とつながり交流を深めること、真実を探求する力を育むことの大切さを伝えるものがあります。また、多様な価値観に向き合う若者たちの様子や困難な状況の中でも自分の夢や意志を持ち続ける人々の姿を描いたり、気候変動による影響や厳しい状況にある人々を取り巻く環境などの課題を掲げたりするものもあります。デジタル技術やSNSの利用が進んでいることに対応して、情報への適切な向き合い方を取り上げた作品が複数あったことも印象的でした。
企画部門の受賞作品については、作品の制作実現をめざして、審査委員の助言を受け、ワークショップがおこなわれたと伺いました。
作品の制作や審査にあたり、これまで力を尽くしてこられたすべての関係者に、感謝の意と敬意を表します。「日本賞」は、世界各地から集まった制作者をはじめ、教育コンテンツに関心を寄せる人々が出会い、交流し、発信する場となっています。今週おこなわれた日本賞映像祭では、新たに会場での投稿システムを導入し、来場者が制作者とより意見交換をしやすい環境作りをめざしたと伺いました。上映会やディスカッション、制作者のトークなどのイベントで得られた学びや気づきが、今後の質の高い作品づくりの支えとなるとともに、作品を通して人々が日々の暮らしの出来事に大切に目を向け、広く社会の課題にも関心をもち、自らも主体的に考え、行動していくきっかけとなりますよう願っております。
日本賞に携わるすべての方々のたゆまぬご努力によって生み出された作品が、世界の人々の相互理解をさらに深め、一人一人が希望を持つことのできる社会へとつながっていきますよう心より願い、式典に寄せることばといたします。