会見年月日:平成27年11月19日
会見場所:秋篠宮邸
この1年もいろいろなことがありました。その中で幾つか私自身の印象に残ったことを取り上げてみますと,今年も非常に自然災害が多かったという感じがいたします。例えば9月でしたでしょうか,台風の後,温帯低気圧に変わったところに温かい空気が入り,非常な大雨を降らせたことがあって,広い地域で被害が出ました。特に鬼怒川の堤防が決壊するなどして,大変大きな被害があったわけです。こういう,特に局地的な大雨が以前よりも多くなっているように思います。そのことは大変私も気になっています。そして,これは昨年でしたが,広島市で土砂災害があり,この4月に私もその場所に実際に行ってきました。映像などで見るよりも急
また,つい先日はパリで大変痛ましい事件があり,多くの人が犠牲になりました。そのことも含めて尊い人命が失われていることや,その国が誇る文化的な遺産が破壊されたりしていることも,大変残念に思っております。
一方,今年もノーベル賞の受賞という大変うれしい知らせが先月ありました。もちろん,ノーベル賞の領域に入らない分野ですばらしい業績を挙げている人も多々おられますので,一つだけ取り上げるのはよくないのかもしれませんけれども,それでもやはり,私たちにとって誠にうれしいニュースでありました。しかも,地道な研究が評価されているということを感じました。ただ,その一方で,今学術の世界でだんだん短期的な成果を求められるようになってきています。例えば論文数ですとか,インパクトファクターの高いところに掲載されるかどうかなどですね。それは非常に大事なことではあっても,それのみで学術・学問が判断されることになると,地道に長い年月かけて行われて,良い成果が出るということがだんだんに無くなってくるのではないかなと,気にかかるときもあります。
それ以外に,先日,日本とブラジルの外交関係樹立120周年の年に当たって,私にとっては27年ぶりでしょうか,ブラジルを訪問いたしましたけれども,この2週間弱の訪問も,私にとって大変印象深いものでありました。そのときの印象につきましては,今,宮内庁のホームページに私の印象をつづったものが掲載されていますので,ここでは省くことにいたします。以上がこの1年の印象に残った出来事ということになります。
その次は50歳の(感想と抱負)ですか。年齢というものは非連続的なものではなくて,連続的なものですね。ですから,私自身,50という響きについてはちょっと年を取った感じがありますけれども,それについての何か感想があるということではありません。また,抱負についても抱負自体が突然出てくるということではなく,今までどおり,以前にもお話ししたように,例えば公的な仕事の面ですと頂いたものを一つ一つ大切に務めていきたいと思っております。私的には,以前から50の手習いで何かしてみたいなと思うことがないわけではないのですけれども,それはまだ実行に移す予定もないものですから,ここではお話ししません。
今年は戦後70年ということで,いろいろな展示があったり,それから新聞などでも様々な戦争に関する記事が掲載されたりいたしました。私も,今お話があったように玉音放送の原盤を聞く機会があり,また,御文庫附属庫も見学をいたしました。ただ,私としては,確かに70年というのはそのことをふり返る一つのきっかけになるとは思いますけれども,そうでなくても,常に,戦争があったということを記憶に残しておくことが必要だと思います。私自身は戦後20年たって生まれました。ですから,物心付いた頃に,何かその痕跡みたいなものを感じるということはほとんどなかったわけです。戦争のことをきちんと理解するためには,当時のことを知っている人から話を聞いたり,書籍で読んだりとか,そういうことを自分で意識しながら行っていくことが大事なのではないか,と考えております。
また,子どもたちでしたか。これは娘とも話したことがあるのですが,やはり娘たちの世代というのは,非常に戦争のことを知らない。そのことを彼女たちは意識しているようで,この70年という年を一つの契機として戦争のことについて知る努力をしていかなければいけない,ということを話しておりました。また,息子はまだ小さいですけれども,今年(行きました)幾つかの戦争に関連する展示,それから催し等を通じて,だんだんと理解をしていってくれればよいかと思っております。
まず長女についてですが,長女は昨年から今年の9月までイギリスで大学院の生活を送りました。そして,その課程を修了して戻ってきたわけですけれども,いわゆる専攻は博物館学で,取り上げたテーマが自然史とアートの両方にまたがる分野でした。それを論文にまとめたのですが,そういう自然史とアート両方の要素を含んだテーマというのが私自身にとっても興味深いところがありますので,そのことについて話をしたりすることがあります。どうでしょうか。(と,妃殿下にお答えを促される。)
長女は,昨年の秋から今年の9月の末まで英国の大学院に修学していましたが,1年余りの修士課程の短い期間の中で博物館学の講義を受け,博物館実習に参加するなどし,また,修士論文もまとめ,充実した日々を過ごしたようです。また,私たちが10月下旬から11月上旬にかけてブラジルを訪問した際,私たちの代わりに宮中行事や地方の式典に出席しました。一つ一つを丁寧に深く考えて務めていると感じました。一方で,留守の間,自分の弟の世話をよくしてくれ大変助かりました。
次に次女についてですけれども,次女は今年の春から大学1年生をしているところになります。結構忙しい日々を送っているようで,大学からの課題などもかなりあるみたいで,それに夜遅くまで一所懸命取り組む日々を過ごしております。少なくとも父親が学生だったときよりは,かなりまじめな学生生活を送っているようです。
そうでございますか。(と,殿下のお答えの「少なくとも父親が学生だったときより」の部分に,笑顔で応じられる。)
次女は昨年の12月の誕生日に成年を迎え,幾つかの公的活動に携わる一方で,今年の4月から大学生としての新たな生活が始まりました。学業に励みつつ,公的な活動では,初めて式典で挨拶し,また一人で地方の行事に出席し,手話で挨拶するなど,慣れないことや緊張することもあったと思いますが,頂いた務めを大事に果たそうとするけなげさが伝わってきました。
次に長男のことですけれども,昆虫好きは相変わらず続いています。ただ少し昨年までと違うのかなと思うのは,虫そのものもそうなのですが,それが生息している環境に興味を持つようになってきています。例えば,どういう環境のところで,自分の関心がある種類が生息しているのかとか,そういう環境を,自宅の庭で再現できないかとかですね,これはビオトープ的なことだと思うのですが,そういうことを考えるようになったりしています。長男は自分の水槽を持っていまして,これは虫ではありませんけれども,そこに川とか池で捕った魚を入れているのですが,それが
1年をふり返りますと,長男は以前からの興味が更に広がり,また新たな興味も加わってきました。田んぼの生き物などにも興味を持つようになり,そのほかでは,今まで興味を持っていました昆虫の採集や飼育をするだけではなく,今,宮様が話されましたように,生き物が暮らす環境にも関心を向けています。例えば,トンボやホタルなどが
ほかに興味を持っているものの一つに文字があります。旅行先などで地図を見るのが好きで,書かれている漢字の地名や,調べ学習で使う漢字辞書に載っている旧漢字を覚えることもあります。また,世界の文字の絵本を見ながら,まねて書いたりもします。このように長男は,知らない文字が分かるようになり,書けるようになることが面白いようです。
また,学校のことについてですが,3年生になりましてからも様々な活動に参加しています。今年の春は遠足があり,また,公園探検や学校での宿泊もありました。そこでは子どもたちがグループに分かれて,自分たちで計画を立て,係を決め,協力して行動していますが,その後に,達成できたことや計画どおりいかなかったことなど活動の内容をふり返り,次の活動へつなげていく大切さを,友達と一緒に学んだようです。
なかなかすぐにできるようになるのは難しいことですが,友達と一緒に長男は,早めに行動するよう心がけることに取り組んだようです。これは学校でのお話ですが,家庭でも見られることがありまして,それは朝学校に出かける時間を,余裕を持って守ろうとする様子が見られ,こういう意識を持つことによって,日頃の生活の中でできるようになることの大切さをつくづくと感じました。
明日は小学校の音楽会が開かれる予定で,3年生のミュージカル劇を始め,各学年が練習に励んでいるようで,子どもたちの発表を楽しみにしています。
佳子さまの注目のされ方についてはどのように受け止めていらっしゃいますか。
メディア等で写真や記事等が頻繁に掲載されていることは承知しています。実際にどれくらい注目をされているのかということは,私は知りませんけれども,どのように受け止めているかといえば,メディア等に掲載される機会が多いということをそのまま私としては受け止めております。
私もそのように思っております。次女を含めて子どもたちの公的な活動の報道が,その分野の大事な事柄に対して理解を深めていただく機会になればと思っております。
ストレスについて,普段,例えば御所等で一緒に話をしている時に,話題になったことはほとんどありません。ですから,私として推測できるのは,例えばこの何年かで天皇陛下が2回大きな手術をされています。前立腺がんと心臓の冠動脈のバイパス手術ですね。特に後者については,その後の回復がそれほど早くなかったということもあると思いますが,恐らくそれらの陛下のご病気というのが,ストレスの要因の一つにあるのではないかと思います。もちろん非常に重い立場で日々過ごされていますので,その他のストレスに関わることも幾つもあるとは思いますけれども,それを今私が
ただ,普段非常に制約の多い中で生活をされているわけですけれども,不思議なほど自由,そして,豊かな心というか精神の領域を持っておられるのではないか,と私には見受けられます。これからそういう領域の中でより多くご自身が過ごせる,若しくはその中で自分自身を遊ばせるという言い方がいいのでしょうか,そういう機会が増えていったらいいのではないかと思います。
皇后さまが心臓の検査を受けられることを伺い,私たちも大分心配いたしましたが,検査の結果,様子がお分かりになり皇后さまもかえって安心されたようで,私たちも安
もう一つは。(と,記者に質問を確認される。)
敬老の日にちなんだ施設訪問に行かれたご感想について。
「敬老の日」の施設訪問,これは「こどもの日」の施設訪問と共に,両陛下が非常に大切にされてきた活動だと私は考えております。今年は私たちが「敬老の日」にちなんだ施設の訪問をしました。来年も「敬老の日」にちなんだ施設になるのか,それとも「こどもの日」にちなんだ施設に行くことになるのか,これはまた皇太子殿下とも話合いをしながら決めていきたいと思います。
私たち自身この秋に施設を訪問して感じたのは,例えば地方で何かの行事が行われるときに,その地域の特別養護老人ホームなどに行く機会は今までもかなり多かったです。ところが,私たちが住んでいるこの東京都内でそのような施設を訪れたことは,あまりなかったように思うのですね。そこでふと各地のそういう施設,特別養護老人ホーム等に行ってはいたけれども,すぐ自分の身近な所のことがちょっとおろそかになっていたのかな,と思いました。(と,妃殿下の方を向かれ,お答えを促される。)
両陛下が長く大切に遊ばされてきました施設訪問を,私たちも心をこめて引き継いでまいりたいと考えております。
皇族の発言について言えば,一つは政治的なことの発言をしない。これは,私は基本にあることだと思っています。今質問にありましたイルカの追い込み漁について,私は本年の日本動物園水族館協会の総会の折に言及したわけです。これは,あくまでも日本動物園水族館協会は世界の動物園水族館協会に加盟している一つの組織であり,日本動物園水族館協会に加盟している動物園,水族館が行っていく,若しくは果たしていく使命の一つである種の保存活動を世界動物園水族館協会の一員として果たしていくことが私は大事であると考えたわけです。したがって,イルカの追い込み漁それ自体について,私は何か言ったつもりはなく,あくまでも,文化の問題と組織の問題を分けて考えるべきではないかと,そう思って話をしました。
また,皇族の情報発信といった場合,構成しているそれぞれの人たちによって考え方が異なると私は思います。私自身,ブログもツイッターもしていません。私は,自分のことを自分から発信していくというタイプの人間でもありませんし,恐らく今後も自分から例えばSNSを利用して,何か情報発信をするということは,しないだろうと思います。ただ,情報発信というのは,やはり大事なことでもありますし,それからもう一つは,皇族の情報発信と皇室全体としての情報発信とはまた別のことですので,どういう形が一番好ましいのかということについて,これからよく考えていく必要があると思います。
玉音盤,私も聞かせていただきました。今までよく映像で流れてきた玉音放送とは時間,長さなども少し異なるわけです。今回この機会に貴重な玉音盤の再生ができたというのは,大変価値があると私は考えています。そして,玉音盤と共に御文庫附属庫の方も映像が公開されたということは,やはり,昭和の歴史の一端を知る一つの機会であると思います。私自身,玉音盤と御文庫附属庫の見学を通して感じたのは,感じたという表現は適切かどうか分かりませんけれども,その時の昭和天皇がどのような気持ちでマイクの前に立たれ,若しくは終戦を決める時にどのような気持ちで話をしたのか,そのことに思いをはせていました。
両陛下は,相当以前から戦没者への慰霊を,強く常に念頭に置かれていました。今回戦後70年の機会にパラオの慰霊をされたわけです。ずっと遡ると沖縄,一番最初は多分海洋博のときですから1975年,私はまだ小学生の子どもでしたけれども,沖縄戦のことと共に,戦没者を慰霊することについての話を折々に伺いました。そういう中で私も私の兄
よろしいでしょうか。
彼女にとって初めての海外の公式訪問になるわけですけれども,私の最初の海外公式訪問がブラジルだったのです。当時22歳ぐらいで,もうちょっと若かったですね。海外の公式訪問を通して,私自身も様々なことを学ぶことができました。私自身はエルサルバドルもホンジュラスも行ったことがないので,どういう感じなのかは分かりませんけれども,やはり公式訪問を通して得ることは非常に大きいと思いますので,様々な経験をしてきてくれたらいいな,と思います。
あなたは。(と,妃殿下にお答えを促される。)
はい。12月の外国訪問は宮様がお話しされましたように,長女にとりまして初めての公式訪問となります。今まで国内で,都内そして地方の公的行事に出席する経験をしていますが,今回は初めて日本を離れて遠く海外でのお務めをさせていただきます。私たちはこの前ブラジルから帰国しましたが,その留守中にも関係者から話を聞き,自分でも本を読んでいたようです。そのような準備をしながら,訪問の日を迎えることになると思いますが,体調を整えて,訪問先でも元気に務めることができるようにと願っております。
お言葉の重複や助詞など,わかりにくい表現の箇所は,若干の修正をしてありますが,ご発言の内容は変更しておりません。