文仁親王殿下お誕生日に際し(平成22年)

文仁親王同妃両殿下の記者会見

会見年月日:平成22年11月22日

会見場所:秋篠宮邸

文仁親王同妃両殿下のお写真
記者会見をなさる文仁親王同妃両殿下
問1 両殿下にお伺いします。今春,悠仁さまはお茶の水女子大学付属幼稚園に入園され,眞子さまは国際基督教大学に,佳子さまは学習院女子高等科にそれぞれ進学されるなど3人のお子さま方にとって,今年は節目の年になりました。4歳になった悠仁さまのご成長ぶりのほか,ご公務への出席が増えてきた眞子さま,佳子さまに両殿下はどういったアドバイスをされ,どんなことを期待されていらっしゃるのでしょうか。
殿下

今年は長男の悠仁が幼稚園に入り,また長女が大学へ,そして次女が高校進学という年に当たりますけれども,まず,今ご質問のあった長男の成長振りでありますが,昨年は確か虫に興味を持って昆虫採集をしているとお話ししたように記憶しておりますけれども,それが現在も持続しています。ちょうど虫の多くなる季節には,ここの(秋篠宮邸の)庭や赤坂御苑の中で虫取りをしたり,また那須の御用邸,それからほかにどこかありますか。(妃殿下をご覧になりながら,お考えになって)その他,幼稚園の園庭でも虫取りをしているらしいのですが,その興味は本年もそのまま持続しているようです。また,恐らく図鑑などで見るのでしょうけれども,海外にいる珍しい虫などにも興味があったり,例えばそのような標本などを見ると,とても喜んでおります。また,最近では,実というのでしょうか,木になる実など植物になっているもの,また,お芋のようなものに随分興味が出てきたようです。例えばこの(秋篠宮邸の)中にも柿の木がありますが,そういうものを見ると,採ってみたくなったり,また採ってそれをずっと眺めていたり,そういう光景をよく見かけます。柿の実のほかにも,例えば生えているムベにも興味がありますし,また,今年は長くなるヘチマを栽培したのですが,それを日を追って,大体は休みのとき,私と一緒に見に行っては長さを測ったりすることを楽しみにしておりました。一番最近では,たぶんヤムを掘ったのだと思いますけれども,ちょうどヘチマの近くに埋まっていたのですが,それも採ってきては大きさを測ったり,重さを量ったりしておりました。

娘たち二人のことについてですけれども,おっしゃるように少しずつ公的な場所に出る機会が出てまいりました。何かアドバイスをするかについては,私自身は,家内はまた違うところがあるかと思いますが(妃殿下を振り向かれて,お話を続けられる。),それほどそれらしきことをした記憶はありません。ただ,一つ言いましたのは二人(内親王殿下)が出席するものは,比較的同年代の人たちが中心になっているものが多くあります。そういうせっかくの機会になりますので,その行事に参加している人たちとの交流を深めると,恐らく自分の世界も広がるのではないかということを言った記憶があります。あとは二人が私なり,家内がしている様子を見て良いところ,悪いところを判断しているのではないかと思います。

妃殿下

今年の春から長男の悠仁が幼稚園に通い始めました。お友達と先生方と過ごす生活には新しい出来事も多く,初めのころは周りの様子を見ながら遊びに加わっていることもあったようですが,お友達との遊びを通してだんだん幼稚園にも慣れてきました。今では幼稚園に着くと,雨の日以外は園庭に出て,今は寒くなって虫の動きが鈍くなって数も少なくなっていますけれども,そのような中でお友達と虫探しをしたり,砂場遊びをしたり,雨の日には室内で木製の線路をつなげて,電車ごっこをするなど元気に遊んでいるようです。また,大きい組のお兄さんやお姉さんたちが遊んでいる様子,また,大きい組が蒸しパンなどいろいろな食べ物を作っていまして,その様子を見せていただくなど,園での様々な活動にふれ,親しみながら集団生活を送っております。

宮邸では,昨年も少し野菜を育てていましたが,今年は更に積極的に野菜作りをするようになりました。小さな畑ですが,種をまいたり,苗を植えたり,また,水をまき,草取り,そして収穫までしています。今はニンジンやブロッコリーを育てています。その野菜が成長する過程,いつごろ採れるかに関心があるようで,よく私も誘われて参りますが,畑に行って野菜の世話をしています。野菜のほかに何か関心がありますでしょうか。(とお考えになりながら,殿下を振り向かれる。)

殿下

(妃殿下をご覧になって)何でしたでしょうか,コスモスか何かのプランターに・・・

妃殿下

(殿下をご覧になった後)お花の種をまいたプランターに水やりをして,それ(咲いた花)を摘んで花瓶に挿したりしております。

また,家族が集まって食事のときや食後になりますでしょうか,その日あったことなどを話しておりますとき,悠仁も幼稚園の生活を始め,自分がしたこと,うれしかったこと,驚いたことや不思議に思ったことなど,目を輝かせながら話してくれます。

外で経験した感動は家に戻ってからも続いているようで,色紙や粘土で野菜の形を作って畑を再現したり,先ほども宮様がお話しされましたけれども,ヘチマが非常に細長いものですから,それがきっと心に残っているようでございまして,それを大きな紙で細長く切りまして,部屋の中にある小さなジャングルジムに紙を付けて飾ったりするなど,創り出す遊び方にも新しい広がりが感じられております。

このように,自然や生活へのつきない興味を深めていると強く感じられた1年でございました。

もう一つ,娘たちについてのご質問でしょうか。そのことについてお話をさせていただきます。

宮様と少々重なってしまいますが,今年の4月から長女の眞子が大学へ入学し,次女の佳子が高校へ進学いたしました。

二人とも,それぞれ学校の生活に重きを置きつつ,頂いた願い出に応じて務めをさせていただいております。公的な行事に出席する前には,できる限り私たちと一緒に行事の説明を受けるよう勧めてきました。行事の内容や準備の様子を伺い,行事に出席し,それにかかわる活動を見せていただきますことは,娘たちにとりまして広くその分野に対しての理解を深める貴重な機会であると思います。

例えば,毎年夏に開催される「全国高等学校総合文化祭」がございます。その行事は,担当である都道府県の高校生たちが,おおよそ3年の月日にわたって協力して行事を作り上げていきます。今年は宮崎県で行われましたが,口蹄疫によって多くの方々がご苦労をされ不安な生活を送られました。そのような状況の中で,高校生たちは開催に向けて力を合わせて準備を進めたと伺っております。娘と共に現地を訪れ,高校生が中心になって運営したすばらしい開会式に出席し,高校生たちの様々な活動にふれることができました。この行事は,眞子も高校生のとき3回出席し,佳子も高校生になりましたので今年の夏から出席していますけれども,同世代の人たちが励む姿や考えを知ることは,意義深いことだと思っております。

これからも,私たちと共に娘たちが,今まで長い間にわたり,人々が生きてきた,暮らしてきた社会を学びつつ,様々な状況におかれた人々に心を寄せ,社会が変化していく中で新しい時代への要請にもこたえられるよう,大事に務めを果たせるようにと願っております。

問2 殿下にお伺いします。天皇,皇后両陛下のご負担軽減が図られていますが,今年に入り,天皇陛下は葉山御用邸でのご静養中に体調を崩され,皇后さまも咳喘息の可能性が高く,10月には結膜下出血と診断されました。殿下はご静養先の両陛下とご一緒に過ごされるなど,日頃から両陛下と接する機会が多くていらっしゃいますが,両陛下のご体調や負担軽減が図られているご公務のあり方について,どのようにお考えになっているでしょうか。
殿下

両陛下のご体調ということですけれども,今まで長い年月,かなり規則正しい生活をされ,また,お若いころからハードな仕事をしていくことに慣れているという言い方が良いか分かりませんけれども,そういう状況であり,今までの蓄積の下に今でも様々な仕事をこなしておられると思いますけれども,やはり年をとるということは,これは誰でも避け難いことですし,そのことによる不便さとか,それから不自由さというのは,これは誰にでも起こってくることだと思います。そのようなことを考えますと,やはりこれからは少しでもいたわりながら過ごしていただければと,私は思います。

一方,お仕事についての負担軽減ということですけれども,私も含め多くの人が,できるだけ行事の負担を軽減することが必要だと思ったり,それからまた言ったり,私も恐らくこの席で以前にそのことについて触れたと思いますけれども,言葉でそういう負担の軽減ということを言ってはおりますけれども,実際にそれを実行しようとすると,はたから見ているほど簡単ではないのかなと思います。と言いますのは,今までに,例えば皇太子なり私なりへの分担とか譲れるものというのは,もうほとんどが移行しています。それとともにもう一つ常に考えておかなければいけないのは,やはり公平さを保つということになるかと思います。例えば,行事でもって拝謁というのがありますけれども,ある省から願い出が来たものは受けるけれども,別の省から来たのは受けないと,そういうことはできないわけですね。やはりある一定の基準を満たしてさえいれば,それは公平に受けなければいけない。そういうことがありますので,なかなか今までに可能なものは減らすことができましたけれども,これから先を考えるとなかなか難しいように思います。とは言いましても,その行事の内容を変えていく,そういう形での負担軽減というのは可能でしょうし,常に考えていかなければいけないことだと私は考えます。現に,昨年でしたか,昨年の陛下の会見でもあったと思いますけれども,それまでの1年間に行われた負担軽減というのは,やはり効果があったということを話されています。現在の状況であるならば,今の現状どおりで続けていきたいということを話しておられますので,私もその方向でしばらくは進めるのが良いのでないかと思います。

問3 殿下にお伺いします。殿下は皇室の将来のあり方について,昨年の記者会見で,当事者となる皇太子さま,秋篠宮さまの意見を聞く過程や皇太子さまとの話し合いが必要であると言及されました。国費負担の観点からは「皇族の数が少ないというのは,私は決して悪いことではないというふうに思います」とも指摘されています。一方,皇室をめぐっては,週刊誌を中心にセンセーショナルに取りあげられることも多く,宮内庁が抗議する事態が繰り返されています。この1年のご兄弟での話し合いの状況や,将来の皇室像,皇室を取り巻く現状について,お考えをお聞かせ下さい。
殿下

まず,兄弟での話合いということですが,これは幾度か行っておりますし,今後もそういう機会を設けて,続けていきたいと思っております。また,将来の皇室像については,やはり今までの経緯,蓄積,それからまた伝統など,そういうものを踏まえることは大事だと思いますけれども,やはりその時代その時代に即した,どういう在り方がふさわしいかということを,常に考えていかなければいけないのではないかと思っております。常にそのことを頭に入れながら,考えていくという,頭に入れながら行っていくということが私は必要だと感じております。また,皇室を取り巻く現状についてですけれども,このことについては,いろいろ今おっしゃったように週刊誌とかに取り上げられたりはしていますけれども,私の方から何かそれについての意見を述べるとかいうことではないような気がいたします。

問4 両殿下にお伺いいたします。この夏には那須や軽井沢で両陛下とご一緒に過ごされ,悠仁さまは陛下とご一緒に登山もされました。また那須では皇太子ご一家とも交流されたと伺っております。両陛下や皇太子ご一家とのご交流の様子について,また,通学に不安をお持ちになっている愛子さまの現状についてもお考えがあれば,あわせてお聞かせ下さい。
殿下

そうですね。この夏には那須の御用邸で,それからあと軽井沢,どちらも1泊でしたね。(妃殿下を振り向かれる。)

妃殿下

(殿下をご覧になって)ええ。そうでございますね。

殿下

どちらも1泊で,短い時間ではありましたけれども,長男の悠仁を交えて,楽しいひとときを過ごすことができました。那須では,先ほども申しましたけれども,あれは前日に掛けておいたトラップに掛かった虫を一緒に見たんでしたっけ。(妃殿下を振り向かれる。)

妃殿下

(殿下をご覧になって,うなずかれる。)虫の専門家の方と一緒に。

殿下

虫取りを一緒にしたりとか,今おっしゃったように登山ですね。私も登った山は石尊山(せきそんさん)という浅間山のすぐ近くの山で,私が登ったのも,もう30年以上前で,久しぶりだったのですが。(少しお考えになる。)

妃殿下

(殿下を振り向かれて)眞子も一緒に・・・

殿下

そう,眞子も一緒に行ったんですね。長女と私が陛下と一緒に行きまして,家内と悠仁は登れる所まで一緒に行くということだったのですが,結局だっこをしたりとか,何とかしながら山頂まで一緒に行ってという,とても楽しいひとときでありました。

そのほか,例えば,週末などに悠仁を連れて御所に伺ったり,それからまた最近では,これも先ほどと重複しますけれども,柿の実を採りに行ったりとかすることもあります。そういうときには,両陛下のご都合が良いときには,御所でしばらくお話の時間を持って,それからその場所へ出かけていくわけですけれども,その時も両陛下のご都合が良ければ,一緒に行くこともありますし,ご都合が悪ければ,私たちだけでその場所に出かけるということもあります。

一方,娘たちにつきましては,学校の行事があったりとか,それぞれに休日にも用事があったりして,なかなか全員一緒でということはできませんけれども,折を見て御所に伺って,それぞれ大学生活の話ですとか,高校生活の話ですとかをしております。

また,皇太子ご一家との交流は,今年は夏の那須御用邸に滞在されている時に,こちらも同じ時期に滞在していましたので,その時に御用邸内でみんな一緒に散策をしたりとか,飛んでいるトンボを捕ったりとか,川・・・(少しお考えになり,妃殿下を振り向かれる。)

妃殿下

(殿下をご覧になって)わさび田でしょうか。

殿下

あの(那須御用邸の)中にわさび田があるんですけど,そこに行って,一緒にわさび採りをしたりして過ごしました。

妃殿下

今年の夏も,両陛下,そして皇太子同妃両殿下,敬宮さまとご一緒に思い出深いひとときを過ごさせていただきました。

7月の下旬には,先ほど,宮様がお話しされましたが,両陛下とご一緒に那須で過ごさせていただきました。両陛下のおはからいで,虫に関心がある悠仁は,県立博物館の関係者と一緒に虫取りを楽しみました。ミヤマクワガタやカブトムシなど,幾つもの虫を手に取り,虫の名前や特徴を教えていただく機会に恵まれました。

8月の下旬には,軽井沢にご一緒いたしました。宮様と眞子が,天皇陛下のお供をして,石尊山(せきそんさん)を登りました。悠仁と私は,どこまで登るか,登れる所までということでおりましたのですが,やはり山道が続いておりますと,子どもも先はどのようになっているか,何があるのだろうと好奇心を持ち,また,(少しためらわれながら)私も高校時代は山岳部に所属しておりまして,それほど高い山を登ったのではないのかもしれませんが,山を見ておりますと,ご一緒に天皇陛下を始め,宮様と娘と皆で登りたくなりました。ただ山道には,小さい悠仁にはちょっと難しいような道もありましたり,(悠仁親王殿下は)大変元気なところはありますけれども,体力的にも,手助けが必要で,山岳部のときに背負っていたリュックサックよりは少々重かったように思いますが,楽しみながら登ることができました。頂上の付近では,コケモモが見られまして,天皇陛下がそのことを悠仁に教えてくださり,悠仁は絵本でしか見たことのなかった高山植物を間近で見ることができ,非常に喜んでおりました。

今年の秋は,御所へ参内しました折,両陛下よりたくさんの虫が見られる,草が茂っている場所を教えていただきまして,悠仁は大変喜び,虫かごを持って度々そこで虫探しをいたしました。時間がおありのときには,両陛下もご一緒に虫を探してくださいました。

また,先ほど宮様がお話しされましたが,悠仁は柿やムベ,いろいろな果実にも興味があり,そのことをご存じの皇后さまが,御所にあるうす紫に色づいたアケビを見せてくださいました。そのアケビや,また,ムベの果実を使って作った飲み物を頂(だい)いたしました。甘く,おいしいと子どもは話しておりました。(少しお考えになって)娘たちと同じように,悠仁も皇后さまより楽しい絵本を読んでいただきまして,この秋も心弾む時間を過ごしたようでございます。

娘たちは,時折,両陛下を訪ね,大学や高校のお話をしたりします。学校のカリキュラムが違い,また,休みの期間も異なり,さらに学校の諸活動もあるために,昨年に比べますと家族一緒に御所へごあいさつする機会は少なくなりました。しかし一方で,一人でごあいさつに参内することもあり,例えば,今年の夏,眞子が語学研修のためにアイルランドを訪れましたが,出発する前には御所へ参りまして,両陛下よりアイルランドでご滞在されたお話を伺わせていただきましたり,また6週間滞在して帰国しましたときに,眞子はアイルランドでの懐かしい日々を振り返りながらお話しさせていただいたようです。

皇太子同妃両殿下と敬宮さまとは,那須でご一緒に過ごしました。8月の半ば過ぎでしょうか。涼しい風が吹き始め,黄色い花の・・・(殿下を振り向かれる。)

殿下

(妃殿下をご覧になって)マルバダケブキ。

妃殿下

マルバダケブキやオミナエシなどの花が咲く那須の野で,敬宮さま,そして子どもたちが捕虫網を手に取って,大きいオニヤンマを追ったり,また,わさび田に出かけて,ひんやりとした水の流れを楽しみつつ,沢ガニを捕ったりしまして,ゆったりとした時を過ごしました。

殿下

先ほど言い忘れましたけれども,愛子内親王が悠仁を随分誘うような形で,一緒に御用邸の中の庭を連れてというか。(妃殿下を振り向かれる。)

妃殿下

(うなずかれながら,殿下をご覧になって)楽しそうに。

殿下

(妃殿下をご覧になって)ええ。連れて,(御用邸のお庭を)まわっているというのが印象に残っております。

妃殿下

そのような光景は,赤坂の御用地内でも,春から夏にかけての週末(にも見られました)。敬宮さまも悠仁も,トンボや蝶がたくさん見られる池がありまして,午後でしょうか・・・(殿下を振り向かれる。)

殿下

(うなずかれながら,妃殿下をご覧になって)ええ。

妃殿下

散策をしておりますと,何が捕れるだろう,何が見られるだろうと,網を持って,一緒に網を振り回していたり。また,池の中にも生き物が見られますので,小さい魚とか。(殿下を振り向かれる。)

殿下

(妃殿下をご覧になって)カエルがいますね。

妃殿下

カエルはなかなか捕るのが難しいのですけれども,生き物に二人で一緒になって親しんでいる様子が印象に残っております。

このように赤坂の御用地内で,また那須の豊かな自然の中でのびのびと過ごされる敬宮さま,運動会でもダンスや幾つも競技に参加され,更に良い方向にむかわれることをお祈りしております。

問5 殿下にお伺いします。ご結婚から20年の節目を迎えられた今年も,両殿下はご公務やご研究などでお忙しい日々を過ごされてきたと存じます。この1年を振り返り,印象に残っていることや,心を動かされたことについて,ご公務,プライベートの両面でのご感想をお聞かせ下さい。
殿下

いろいろ多くのことがあった1年だと思いますけれども,私が関連した公的な行事を通して,印象に残っていることは,幾つか挙げてみますと,一つは,7月,「海フェスタ」という行事が毎年ありまして,私もその前身のときから第1回から,かなり多く出席しておりますが,それは今年は長崎県でありました。長崎市と五島市とそれから新上五島町を中心に行われたわけですけども,私たちふだん,いろいろな所に行っても,なかなか島に行く機会は少ないんですね。私も本当今まで,幾つかは島に行きましたけれども,そう数は多くありません。その意味で,今回五島の方まで行けたのは,私にとって非常にいい経験になりました。また,あちらで漁業に従事している人からの話を聞いたり,それから有名な教会群の一つの青砂ヶ浦教会を訪ねて,その建築を,教会の建物を見ることができたりとか,私もそうですし家内も恐らく同じだと思いますけれども,そういう非常にいい機会だったと思っております。

またもう一つは,先ほど家内がちょっと話しましたけれども,宮崎県の「全国高等学校総合文化祭」ですが,今年,宮崎県で行われました。宮崎県は,この春以降,口蹄疫で,多くの方たちが被災された場所です。それで,口蹄疫という病気自体がまん延を防ぐことも非常に難しいですし,根絶することも難しいものでありましょうし,ある程度の予備知識なり,それからその状況を,行く前から多少は知ってはいたつもりですけれども,実際にその場に,その県に行って,これは高鍋農業高等学校という農業高校で,そこでもやはり家畜,牛など殺処分しなければいけなかったわけですけれども,そこに被災された方たちが集まってくださり,実際にどういうような状況だったかという話を聞きました。やはり,現地で実際に話を聞くということは,この東京という離れた場所にいて,ニュースその他を通して聞くのと違うというか,実際にその人たちの体験というものをじかに聞くことによって,その大変さが非常に強くこちらも伝わってきましたし,また,その状況を,より深く理解できたように思います。また,「全国高等学校総合文化祭」自体も本当にぎりぎりまで開催ができるかどうか分からなかったわけですね。そういう中で,実行委員をやっている生徒さんが,非常に立派に祭典を運営していかれたことは,すばらしいことだったと感じました。その二つのことが,この1年では私にとって,印象に残っております。

プライベートな面で印象に残っていることと言いますと,まずは冒頭にもちょっとお話をいたしましたけれども,長女が大学に入学して,次女が高校に進学して,それで長男が幼稚園に入園するという意味で,それぞれが新しい生活になり,多少今までと違った雰囲気になったことがあります。それぞれに学校や幼稚園をエンジョイしているようなので,その点では私もうれしく思っております。

また,もう一つ挙げますと,今まで数年間,私自身の企画として,タイ国における鶏の家畜化,家(きん)化についての調査研究をタイの研究者と日本の研究者が一緒になって行ってまいりましたけれども,それの第一段階がとりあえず終了して,この3月にタイ国の第二王女殿下,シリントーン王女殿下と私の共編著でもって,出版することができました。また,今後も続けていくという方針で,王女殿下ともお話をしておりますけれども,とりあえずその一区切りがついたなというのが,この1年での私にとりましては,大きいことだったと思っております。

関連質問1 改めまして,ご結婚20年おめでとうございます。昨年の両陛下の会見の質問と同じようなことをお聞きしますけれども,この20年間振り返って今,お互いに贈る言葉,ございましたら,よろしくお願いします。唐突な質問で恐縮でございますが。
殿下

本当はこの1年で,プライベートで印象に残ったこととして20年というのを挙げなければいけなかったのだと思いますけども,失念していました。日本ではどうなんでしょう,銀婚式って25年,25年の方がより区切りになるんですか。贈る言葉ですか。

記者

はい。

殿下

なかなか思いつかないですけれども,(少しお考えになって,妃殿下をご覧になりながら)これからも楽しく過ごしましょう,ということでしょうか。

妃殿下

(殿下をご覧になって)恐れ入ります。

妃殿下

(少しお考えになって,殿下をご覧になりながら,ゆっくりと話される。)今まで,様々にお導きくださり支えてくださり,深く感謝申し上げます。また,たくさんの思い出をありがとうございました。今までの経験を大切にさせていただきながら,今おっしゃいましたお言葉も心に留めて,大切に過ごしてまいりたいと思います。

殿下

もう一人,手を挙げていましたが。

関連質問2 先ほど殿下から,両陛下のご体調についてお伺いいたしましたけれども,それに関連してです。皇后さまは今年のお誕生日の質問へのご回答でご自身のお体について「私自身は,これまで比較的健康に恵まれて来ましたが,この数年仕事をするのがとてものろくなり,また,探し物がなかなか見つからなかったりなど,加齢によるものらしい現象もよくあり,自分でもおかしがったり,少し心細がったりしています。」とつづられました。お年を召される心境を率直に表しており,私自身は非常に感銘を受けたんですが,殿下はこの皇后さまのお言葉をですね,どのようにお感じになりましたでしょうか。
殿下

やはり,率直な気持ちが表れているのではないのかというように,私は思います。というのは,やはり時折私たち(両殿下)と会話をしている時にも,それと同じような話というのは時々出しておられましたので。ですから非常に素直な気持ちを述べられたものだと私は思います。

お言葉の重複や助詞など,わかりにくい表現の箇所は,若干の修正をしてありますが,ご発言の内容は変更しておりません。

文仁親王殿下のお誕生日に際してのご近影