文仁親王殿下お誕生日に際し(平成19年)

文仁親王同妃両殿下の記者会見

会見年月日:平成19年11月22日

会見場所:秋篠宮邸

文仁親王同妃両殿下のお写真
記者会見をなさる文仁親王同妃両殿下
(写真:宮内庁)
問1 両殿下にお伺いします。悠仁さまは健やかに成長され,9月のお誕生日には伝い歩きをされているなどといった近況をうかがいました。
(1) 最近の悠仁さまのご様子をお聞かせください。また,悠仁さまを見守る眞子さま,佳子さまのご様子についてもお聞かせください。
殿下

9月の6日に満1歳になったわけですけれども,そのころは,こういう机とか,そういう物に捕まって伝い歩きという感じだったんですけれども,それからしばらくたって今はまあ数歩ぐらいでしょうか,(妃殿下を振り向かれて)数歩ぐらいだね,一人で歩くようになりましたね。いろいろ行動範囲も広くなっているわけですけれども,例えば明かりがつく物とかですね。それから音が出る物とか,そういう物に興味があるみたいです。例えば目覚まし時計の,押すとこう声が出るのがありますね。そういう物とか,あと玄関のチャイムとかですね。そういうのに関心があるようです。またその上の二人の子どもたちにとっては,やはり非常にかわいい存在なんだと思いますね,大分年齢も離れていますのでね。ですからとてもかわいがっています。子どもの部屋に,あれは何て言うんでしょうね,厚紙って言うか,ああいう物を組み立てて作る小さい家があるんですね。それは基本的に無地なんですけれども,そこに上の二人の子どもが家族全員の似顔絵を描いたりとか,それからそのほか何かもろもろ…。

妃殿下

たとえば花とか。

殿下

あ,そうね。そういう絵を描いたりとかして,そこで一緒に遊ぶとか,あとはさっき音が出る物が好きと言いましたけれども,ピアノの鍵盤(けんばん)なんかやはりいじってみたいわけですね。ところが背伸びしてもなかなかまだ届かない。だけど一所懸命たたこうとしているといすに座らせてたたかせたりとか,そんな様子でしょうかね。

妃殿下

最近の様子についてですけれども,悠仁は目を輝かせながら周囲を見まわして小さな探検家のように関心を抱く物に手を伸ばして,そして確かめようとかわいい指でさわったり,また関心の対象に向かって勢いよく進んで行ったりするなど,先ほど宮様がお話しされましたけれども,段々行動半径が広がってますます目が離せなくなっております。幸い娘たちも大きいものですから,随分その点では助けてもらうところがございます。

娘たちも学校から帰ってくるのが夕方になりますので,一緒にすごす時間というのは学校があるときはどうしても夕方以降になりますけれども,そういう時間や休みの日など私たちが一緒になってすごしている時間を悠仁もとてもうれしいようで,私たちが話しておりますとその話の内容がわかっているのでしょうか,うなずいたり,わかったようなしぐさや表情を見せたり,また,私たちと一緒に元気な声を出して笑ったりするなど,以前は私たちが語りかけることが多かった中で,今は悠仁から話しかけてくることも増えまして,話の輪に加わるのが楽しいような感じがいたします。また,私たちが仕事を終えて悠仁のところにかけ寄っていきますと,その姿を見てとても喜んでうれしそうに両手をあげて手をふるなど,自分の気持ちをいろいろな形で表現しているように思います。

殿下

手をたたいたりもしているわね。よくね,拍手する(妃殿下に)。

妃殿下

(うなずかれながら)拍手。何回でもしていますね。部屋では先ほど宮様が話されました厚紙で作られた本当に小さい子ども向けの家の中で遊ぶことやその中で隠れんぼをしたり,あとは「いないいないばあ」など一緒にする遊びや,一人で静かにはめ込み箱でしょうか,こういう異なった大きさの箱が重なっている物を取り出したりまた戻したり,積み木を重ねたり崩したりすることなどもするようになってきました。

外のことについてお話ししますと,ずっと私が抱いておりますとなかなか体力も要りますので,抱いたりするほかに乳母車で散策することもございます。以前は悠仁が乳母車に乗りますと揺られて気持ち良くなるのでしょうか,すぐ眠ってしまっておりましたけれども,今は目を開けていることも多く,通りすぎる風景を楽しんでいるように,大きい木が出てくると見上げたり,また下を向いて自分の影を見たり,また鳥のさえずりに気がついて耳を傾けたりしております。私たちが押しているのでそれも時々気になるようで,笑顔で振り向いてくれて,声を出して話しかけることもございます。

2番目の方の質問ですけれども,長女の眞子が3歳のときに生まれてきた佳子をかわいがって世話をしたように,佳子は食事から遊びまで悠仁の世話をよくしてくれます。眞子も佳子も悠仁にやさしい眼差しで接して,私たちが仕事をしているときや仕事で長く宮邸を留守するときなども悠仁が寂しくないようにそれぞれ時間があるときにそばにいてくれるので大変助かります。

(2) 両殿下にお伺いします。両殿下の育児の方針についても、お聞かせください。
殿下

私としましては,今一番は元気に健やかに育ってくれるということを願っているわけですから,できるだけそのようにできるような環境を整えたいと,そういうふうに思っております。

妃殿下

娘たちのときと同じように,宮様と相談をしながら,悠仁が心を豊かに育み,元気に安心して生活できるように心がけてまいりたいと思います。

問2 両殿下にお伺いします。皇后さまは10月のお誕生日に寄せられた文書の中で,お孫さま同士のほほえましい交流について,つづられました。
(1) 皇太子ご一家と秋篠宮ご一家のお子様方を通じた交流のエピソードについて,お聞かせください。
殿下

例えば,休日とかに散歩をしていたりしますと,皇太子家もちょうど散策中であったり,またテニスをされていることもあると思いますし,そういう所で時々会っていろいろ話をしたりしますけれども,一つ印象に残っているのは,この夏でしょうか,夏でしたね。こちらの家の方に皇太子同妃両殿下と愛子内親王とが遊びに来られて,何て言いましょうか,年齢的にどちらかというと近い二番目の娘が特にそうなんですけれども,愛子内親王と遊んだりそういう触れ合う機会を楽しみにしているんですね。それでそのときは大変暑い日でしたけれども,子どもたちが三人でかなりの長時間,屋外で楽しそうに走り回っていた。それがとても印象に残っております。

妃殿下

幼稚園がお休みのときで,また学校が休みのとき,今,宮様がお話しされましたように,ご都合のよろしいときに皇太子同妃両殿下,そして敬宮様がご一緒に宮邸へいらっしゃいます。敬宮様は年齢の近い佳子,それから眞子と動物のぬいぐるみやおもちゃなどで遊び,そばでは悠仁がうれしそうにすごしております。

また外では,先ほど宮様が夏とおっしゃいましたけれども,何回かお庭にも出てお遊びになり,敬宮様は娘たちと一緒に元気に走り,庭からとても楽しそうな声が響いてきました。暑いときにはやはり水を飲み,また外に出てはという感じですごしておりましたけれども,楽しそうにしていました。

殿下

そこから愛子内親王も自分より小さい悠仁のことをね。すごく,なんていうのかな。あれは,ね(妃殿下に)。

妃殿下

(殿下にうなずかれ)何となくそばにいらしてくださって。

殿下

(妃殿下をごらんになって)そう。そういう感じがありますね。

妃殿下

はい。お心遣いしてくださるようなところがございまして。

また昨年の春からでしょうか,敬宮様が幼稚園に通園されて幼稚園の遠足や運動会など様々な行事に参加されていらっしゃいますが,娘たちも同じ幼稚園に通園しており,同様の経験をしておりましたこともあり,また皇太子同妃両殿下と同じように私たちも親として出席した行事もあるために,幼稚園の生活についてお話が皆ではずむこともございました。

(2) 両殿下にお伺いしますが,両陛下とご一緒されるときのご様子についてもお聞かせください。
殿下

時々御所に家族皆で行くわけですけれども,両陛下と子どもたちの会話を聞いていると,やはりそれぞれの関心事とか,年齢に合った話題というのが多いように思います。それは旅行のことであったり,それから趣味のことであったり,学校のこともあるように思います。それでまた,それに関していろいろな話をしてくださるわけなんですけれども,私など思いますに,子どもたちと私たちというのは一つの単位でいるわけですけれども,もう一つ前の世代と触れるということは,娘たちにとってもそれだけより多くのことを知る機会になっているように思います。親が経験してないけれども,もう一つ前の両陛下の世代が経験したことを話していただけるわけですね。特に長女へは,そういう自分たちが経験したことを知ってもらいたいというお気持ちが強いように私は思います。あれは数年前でしたでしょうか。那須の御用邸に行ったときに,両陛下が満蒙開拓に行った人たちが戻ってきて,那須の原野を切り開いて,そこに千振(ちふり)の開拓地を造っておられた所を視察されたんですけど,そのときに上の娘も一緒に連れて行っていただいたんですね,私も行きましたけれども。そういうこともやはり先ほどお話ししたような,親よりも一つ前の世代の経験というのを知らせておきたいというお気持ちからだったのではないかというふうに私は思います。悠仁については,まだ何っていう年齢でもないわけで,御所に連れて行くとニコニコしたり,でも何かを話したそうな素振りをしている,という感じだと思います。

妃殿下

子どもたちが小さいときのことをふり返ることになりますけれども,眞子と佳子は幼いときから御所へ参内させていただきましたおりに,両陛下は優しい笑顔でいつもお迎えくださいました。幼い娘たちは,うれしそうに両陛下にかけ寄り,ご一緒にお庭を散策したり,またお部屋ではご用意くださいました絵本やおもちゃで楽しく遊ばせていただきました。小さい悠仁も娘たちと同じように,お日さまが照らすようなあたたかさの中で,楽しく過ごさせていただいております。

殿下

安心できる場所という感じはありますね(妃殿下に振り向かれて)。

妃殿下

ほっとするような…(殿下をごらんになって)

殿下

ほっとするような場所だと思います。

妃殿下

娘たちは,今は高校生,中学生になりまして,おもちゃで遊ぶようなことは非常に少なくなってまいりましたが,それに代わって先ほど宮様がお話をされましたことと重なりますが,両陛下より歴史,文化や自然など,また時代時代の人々が経験してきた苦労,困難や喜びなど,おりにふれて貴重なお話を静かに伺わせていただき,また多くのことを学ばせていただく機会に恵まれております。娘たちからは,自分たちが関心を持っていることをお話し申し上げますと,ほほえみながらお聞きくださり,またその関心に関係のある資料,たとえば本などもその後でお見せくださいます。そのほかに学校の生活,たとえば学校の行事ですとにぎやかな運動会や文化祭について子どもたちがいきいきとお伝え申し上げますと,きっと紀宮様が中学,高校のときに過ごされていたことも思い出されることもおありでいらっしゃると思いますが,そのようなことも静かにお聞きくださり,このように子どもたちをお優しくお見守りくださいますことを深く感謝申し上げます。

殿下

あと最近はおもちゃじゃないですけれども,クロスワードパズルとか(妃殿下に)。

妃殿下

結構難しいので,時間をかけて(殿下に)。

殿下

そういうこともありますね。

問3 公務や子育てで多忙な毎日をお過ごしの中で,先月には,妃殿下が翻訳・構成に携わられた絵本が出版されました。
(1) 殿下にお伺いします。公務をはじめとする様々な活動と家庭を両立される妃殿下に対して,殿下はどのようなことを気遣われていらっしゃいますでしょうか。
殿下

そうですね。私は自分では気遣っている,自分ではつもりなんですけれどもね(一同,笑い)。なかなかそれを表現するのが上手でないところがあって,少し悪いなというふうに思うことも・・・。

妃殿下

伝わっております(微笑(ほほえ)みながら殿下の方を振り向かれて。一同,笑い)。

殿下

(妃殿下の方を振り向かれて)伝わってますか?。そうですね。公的な活動をするにせよ,それから家庭のことをするにせよ,無理し過ぎないように気遣いながら,だけれどもできるだけエンカレッジするようにしているつもりです。どうでしょうね(妃殿下に振り向かれて。一同笑い)。

妃殿下

ありがとうございます(殿下をご覧になってお笑いになりながら)。

(2) 妃殿下にお伺いします。妃殿下が絵本の出版に寄せられた思いをお聞かせください。
妃殿下

昨年の夏に,世界の様々な動物の行動や生態を分かりやすく解説したコラムが加わりながら物語が展開していく新しい形の本に出会い,興味深く読ませていただきました。この動物の本のシリーズは8冊ございまして,その翻訳の依頼に,翻訳することになると費やすことのできる時間が限られておりますし,また翻訳をすること,その務めを果たせるかどうか心配で,随分迷いました。そういう気持ちを宮様にもお話し申し上げましたところ,本の仕事にちゅうちょする私の背中をそっと押してくださいました。今の生活のリズムを保ちながら,日本の子どもたちにいろいろな地域の動物をわかりやすく語りかける良い機会になればと思い,お引き受けいたしました。

初めての翻訳には大きな不安もございましたが,動物学や児童文学のご専門の方々から貴重なご助言をいただき,また編集・デザイン・印刷など,本作りにはたくさんの方々が携わっていらっしゃいますけれども,多方面にわたる方々の協力を得ながら始めの2冊の本を出版することができました。出版する過程でご尽力いただきました関係の皆さまに感謝しております。

この絵本を通して,子どもたちがさまざまな動物やその周囲の自然環境に関心を抱き,理解を一層深める機会になれば大変うれしゅうございます。

これからも公的な仕事と家庭の務めを大切にしつつ,続きのシリーズの本作りにかかわっていくことができればと願っております。さらに広く,世界の子どもたち,子ども一人一人のいのち,母子の健康などにも思いを寄せながら,世界の動物の子どもたちを扱ったこのシリーズの日本語版作成に携わってまいりたいと思います。

(3) 妃殿下にお伺いします。公務と家庭を両立するための工夫をお聞かせください。
妃殿下

結婚してから今まで,家族の理解と協力を得ながら公的な仕事と家庭の務めをできる限り果たせるよう,努めてまいりました。公的な仕事も家庭の務めも一つ一つ丁寧にしようと思うと時間が足りなく,また十分に役割を果たしているだろうかと考え,不安になることもあり,気がついてみますと心の余裕がなくなっていることも度々ございました。そのような中で,現在,仕事と家庭とを悩みながらも頑張って両立されている方々と交流をしたり,困難な環境の中で仕事と家庭,あるいは子育てを立派にされてきた女性の方々のお話を伺うことを通して,私自身大きく強く励まされてきました。

身近なところでは,日々,宮様や娘たち,友人や知人など,心のこもった言葉や冷静な助言,協力またほかの周囲の方々にも支えられ,今まで公的な仕事と家庭の務めを続けることができましたことを感謝しております。

これからも,今後女性が家庭を持ちながら,子育てをしながら仕事ができるような,あるいは出産,育児で一時仕事を中断された方が復職できるような,そのような環境をもっと皆さんが理解いただけるように,また必要な支援が広がり,よりよい環境が整っていきますことを願っております。私も,今なすべきことを見極めつつ,公的な仕事と家庭の務めとの良いバランスを保てるように努めてまいりたいと思います。

(4) 両殿下にお伺いします。夫婦円満の秘訣などがございましたらお聞かせください。
殿下

円満に見えるということでしょうかね(一同,笑い)。私と家内は基本的に全く別の人間なわけですね,これは当然ですけれども。ということは,考えることも,同じ場合もあるけれども違うことも結構あると思います。ですから私は,できるだけ両方ともですけれども,思っていることとか,意見を伝えるようにしています。私から家内にもありますし,家内から私にもあります。それによって両方の一致した意見でまとまることもあれば,口論になることもあるわけですね(一同,笑い)。でもそういう思っていることをきちんと伝えるということで,より理解が深まるのではないかなと感じております。

妃殿下

私も夫婦円満の秘訣(ひけつ)について,普段あまり考えたことがございませんので大変困っております。今,宮様が話されましたことで,お互いの意見,気持ちを伝え合うというのは,私も非常に大事だと思っておりまして,生活の中で話し合うことで理解を深めていることについて,少しお話しをさせていただきたいと思います。

今年も都内や地方で行われた行事に出席したり,また視察などございましたが,宮様とご一緒したものもいろいろとございます。また宮様が総裁をしておられる日本動物園水族館協会,また山階鳥類研究所などの団体の行事,また私の場合には結核予防会の行事など,別々の仕事をしているものもいろいろとございます。どのように忙しくても一緒に経験した仕事について話し合ったり,またそれぞれに仕事を終えた後,その仕事のことについて伝え合ったり,また日常生活の小さな出来事を語り合うことを大切にしてまいりました。

ここ数年は,宮様と一緒に,散策を努めてしております。「努めて」というのは,私たちはどうしても運動不足になりますため,歩くことで体力もつきますし,健康にも良いのではないかと思っております。ほかに散策をしながら,子どもたちの様子,宮様が大切に育てておられる植物のことや月次(つきなみ)の和歌でしょうか(殿下を一旦振り向かれて)

毎月,詠んでおりますけれども,そういうことを話したりするなど,心和む一時を過ごしております。今は悠仁を乳母車に乗せて御用地内の砂利道などいろいろなところを歩いておりますが,ここ(赤坂御用地)の中は坂道やでこぼこ道もいろいろとありまして,かなり体力が必要なところもありますために,私よりも力がある宮様が代わりに押してくださったり,悠仁も散策の時間がうれしいようで,先ほど少し話しましたけれども,景色を見たり私たちの方を見て話しかけたり,笑顔を見せたりすることもあり,このような時間もとても充実していてありがたく思っております。

これからも,宮様が先ほどお話をされましたように,お互いの意見,それが同じようなときもあれば異なるときもあって,それをお互いのことを思いながら伝え合っていくこと,また娘たちも学校に行っておりまして,幸いいろいろな宿題を持ち帰ることもあり,それを見ておりますと,私ももう少し勉強という気持ちにもなり,宮様もそれをサポートして支えてくださるので,宮様がいろいろなことをお調べになったり,まとめたり調査をされたりするように,私自身も時間を見つけていろいろなことを学び考え,そういう学び合うことや,最後にはお互いを信頼しあう,そのような関係をこれからも大事にしてまいりたいと思います。

問4 殿下にお伺いします。殿下は今年,東京大学総合研究博物館の特任研究員に就任され,アジアの大学や研究機関との標本の相互貸し出しなどについて助言をされていると伺っています。また,この夏には眞子さまとともに,マダガスカルを訪問され,研究をさらに深められました。最近の研究活動や,マダガスカルの訪問で印象に残ったことをお聞かせください。
殿下

東京大学の総合研究博物館では,今年の初めから特任研究員にしていただいて,月一回くらい行っているわけですけれども,来年の3月には,総合研究博物館と山階鳥類研究所の両方が協力して企画展をする予定になっていますので,そのようなことの話し合いが頻繁に持たれています。私の研究についてですけれでも,テーマとしては私自身は家畜化というものに非常に興味があるわけですね。その内の一つがタイと日本との両方の研究者が共同して行っている鶏(とり)と人の多面的関係の研究ということがあります。それをこれはいろいろな分野の人が集まるわけですけれども,様々な家畜というのは人間が作ったものですから,常にそれ自体を,対象物自体を,単独で見てはいけないわけですね。様々な関係性の上で考えないといけないものですので,いろいろな視点から,どうして人間は鶏を家禽(かきん)にしたのか,家禽にした後どういう周りの文化や環境によっていろいろな種類ができてきたのか,そういうようなことを,今調べているところです。

それが一つありまして,もう一つは,私は葉山にある総合研究大学院大学の葉山高等研究センターという所の特任研究員でもあるわけなんですけれども,そこで行っているのが,これは鶏に限らずそれ以外の動物も含めた家畜化をどういうふうにモデルで表せるか。家畜化モデルの構築なんですけれども,先ほど話した鶏と同じような形で,いろいろな家畜についてどのようなモデルを構築できるかという,その二つのことが主だったものであります。なかなかこういうものは結論が直ぐ出るというものではなくて,時間もかかるでしょうし,それから,例えば鶏を一つとっても,今例えばタイと日本でやって,北タイを中心に見るわけですけれども,やはりその周りの地域も見ていく,つまり伝播(でんぱ)というものがあると思います。

その意味で,マダガスカルというのも,大切な場所だと思います。アジアから鶏(にわとり)が移動しています。ですから,今回マダガスカルに行ったのは,それを少し調べてみたい,資料を集めたいという気持ちもありました。一方,マダガスカルに行く用事が幾つかあったのですけれども,植物,動物ともに非常に固有種がある独特な所で,家畜も非常に面白いんですね。あの地域は主にコブ牛,ゼブーと呼ばれているコブ牛なんですけれども,以前からずっと気に掛かってたのが毛色(もうしょく)とか紋様のバリエーション。普通のいわゆるゼブーでない牛の毛色や紋様がゼブーの方でも見られるんですね。どうしてそのようなものが,できてきたのか,果たしてヨーロッパから入ったものとの交雑がどれくらいあるのか,そういうのが非常に関心がありますし,これからもフォローしてみたいと思っております。

また,植物についても,有名なのがバオバブの木ですけれども,かなり長時間ドライブをしますと,3種類くらいのバオバブが,移動中に自生地が変わっていくわけですね。そのようなものや,様々な植物がある。別に地理的なバリアが表面から見ているとあるわけではないのですけれども,ある所から突如として違うものに,別の種類に変わるとか。そういうのはやはり順を追って見ていくことによって気が付く,教えてもらわないともちろん私などは分かりませんけれども,そういうことが大変私にとって印象に残っています。

問5 殿下にお伺いいたします。
(1) この一年,皇后さまが3月に体調を崩され,6月には皇太子さまがポリ―プの切除手術を受けられるなど,皇族方の体調不良が相次ぎました。皇室の方々の健康管理について,どうあるべきとお考えでしょうか。
殿下

そうですね宮内庁には皇室医務主管というポストがあります。また,侍従職には侍医がいて,それから,東宮職には東宮侍医がいます。ですから,私は例えば侍医がいるところ,つまり,侍従職、東宮職についてはですね,やはり,皇室医務主管の下,その人たちが常に目配りをしていくことが大事だと思います。しかし一方,私たちも含めて内廷外の皇族については,そういう人たちがいるわけではありません。また宮家によっても,それから個人個人,考え方が違うと思うんです。ですから,どういう体制であるべきということを,私が言うのは非常に難しいと思います。

(2) 殿下は,昨年の会見で両陛下のご負担について言及されましたけれども,今後両陛下のおつとめの軽減や,皇室の公務の分担のあり方についてお考えをお聞かせください。
殿下

公務の軽減ということについて言うと,いつもそういう話があったときに私もお話しいたしますけれども,どうしても天皇という立場でないとできないお仕事というのがあるわけで,それを例えばじゃあ誰々が代わってということは難しいわけですね。ただ,分担であり軽減でありというのは考えていかなければいけないことではありますけれども,最近私が感じているのは,じゃあ果たしてですね,私たちが,例を陛下にしますけれども,陛下のお仕事の全体量を把握しているのかどうか。様々な多岐にわたるお仕事があるわけですね。宮殿の中でのいろいろな行事がありますし,それから,都内や地方で行われる式典などの行事もありますし,海外の訪問もあります。そういうものを総量として把握できているかというと,なかなか自分でもできていないという印象です。例えば報道されるものについては,視覚的もしくは新聞などで読んで分かるわけですけれども,そうでないものや,それほど大きく出ないものもありますね。そういうものもあるので,私も少し調べてみようと思っていまして,一つ例を挙げると,秋の文化勲章を始めとする勲章や褒章の関係です。11月の初旬から,大体2週間くらいの間にどれくらい行われているか調べてみたんですけれども,そうすると,その中には,親授式や拝謁とか茶会とかもありますけれども,約2週間の間に28回あるわけです。しかもその2週間の間には,今年の場合ですと,地方へ,滋賀県ですけれども,行幸啓があって,それが4日でしょうかね,4日間。それ以外の日々のご公務であるとか諸々の行事がある以外の28回ですから,やはりかなりの量だと私は思います。しかも,宮殿の中の移動というのも結構距離があるんですね。ですから,一つ一つの点で見る以上に,やはり負担があるのではないかと思います。皇后陛下もやはりそういう陛下のご負担というのを非常に気に掛けておられ,実際にどれ位の量があるのだろうということをいつも気に掛けておられます。やはり,私たちもですね,もちろん年齢が上がるということは,負担を減らす必要が,もっとゆっくりしていただく時間を増やす必要が,あるわけですけれども,そういうお仕事の全体の量というのを,これから私たちも把握していくように努めていきたいと思っております。

関連質問 いろいろと両殿下の公私ともに活動,大変充実しておられるようにお見受けしますけれども,それだけに宮家のスタッフも含めて,なかなか大変だろうなと。私の経験からも子どもが2人というのと3人以上というのは,全く手間が違うだろうと。多分随分日々大変お忙しくしていらっしゃると思うのですが,来年早々インドネシアにいらっしゃることが内定していると伺っておりまして,それなりに重いご訪問になるのかなと。その辺どういうお気持ちでお受けになって,それからどんなお気持ちでこれからご訪問に向かっていこうとお考えであるのか,もしよろしければ教えてください。
殿下

日本とインドネシアの50周年ということで,やはり節目の年ですので,詳細については,これから宮内庁や外務省が詰めていくと思いますけれども,そういう大事なお仕事を頂いたときは,できるだけそれに応えたいというふうに思っています。質問の趣旨は,それと更に家庭のこともありますか。

記者

悠仁様を置いて,いらっしゃるということも含めて。

殿下

そうですね。その辺りになるとおそらく,こちら(妃殿下の方を振り向かれて)。私は去年も,悠仁が生まれてすぐにパラグアイに行ってしまいましたので。どうですか。

妃殿下

今の質問は,海外への仕事と同時に家庭の子育てをどのように考えているかということでしょうか。(質問者に確認されて。)

確かに子どもが増えますとそれだけ更に体力が必要だと思います。1月のその訪問に向けて,ほかの外国訪問でもしておりましたが,宮様と私はその国のことを十分に理解できるように関係者の方からお話を伺いましたり,また自分たちでいろいろと本を読みながら,また良い訪問であるように思いながら,その日を迎えることになりますでしょうか。

今までの海外での仕事で,長期にわたって1週間,2週間出かけたものもございまして,子どもたちが小さいとき,眞子が1歳過ぎたときにも確かそう・・・。(少し考えられて)

殿下

1歳。ちょうど1歳くらいのときですかね。

妃殿下

長期にわたって出かけまして,そのときは,母親としていろいろな思いを持ちながらも,何とか・・・。

殿下

周りの人に,やっぱりそれは,随分サポートしてもらってできるわけですね。(妃殿下がうなずかれる。)

妃殿下

今回は,先ほど悠仁のことについてお話しされていましたが,私が留守をしているときに,また仕事をしているときに助けてくれる人とともに,身近なところで娘たちが,できる限りそばで一緒に遊んだり,過ごしたりすることは,家族が大きいからこそ可能なことだと思いますので,この機会に娘たちにしっかりといろいろなことを頼んで,そちらの仕事に専念できるようにしたいと思っております。

文仁親王殿下のお誕生日に際してのご近影