文仁親王殿下お誕生日に際し(平成17年)

文仁親王同妃両殿下の記者会見

会見年月日:平成17年11月22日

会見場所:秋篠宮邸

文仁親王同妃両殿下のお写真
記者会見をなさる文仁親王同妃両殿下
(写真:宮内庁)
問1 両殿下にお尋ねします。清子さんが殿下の長年のご友人である黒田慶樹さんと結婚されました。交際から結婚に至るまで,殿下が「橋渡し役」としてお二人を見守り,支えてこられたと思いますが,心に残っている出来事や,お二人それぞれへ贈る言葉をお聞かせください。お二人が心を通わせるきっかけとなった出来事や結婚に至るまでのエピソードも合わせてご紹介ください。
殿下

ちょうど1週間前になりますが,11月15日に二人が多くの人々の祝福を受けて結婚したことを心から喜びたいと思っております。

二人それぞれに贈る言葉ということですけれども,私が結婚式の当日,結婚式が終わった後に,二人に言った言葉は,二人それぞれというよりも両方にですけれども,「おめでとう」という一言と,「またよろしくお願いいたします」ということです。

エピソードについては,最初二人が会うきっかけを作ったのは私でありますし,それから,二人が会ったうちの何回か,場所を提供したのも事実でありますけれども,基本的に私も家内もそれ以外のことについて何か取り立ててするということはありませんでしたので,その意味では,エピソードというのはどうなんですかね(妃殿下を振り向かれて)。

妃殿下

(少しお考えになられた後で)最初のころ。

殿下

最初,そうね。(妃殿下にうなずかれてお考えになる)一番最初に,きっかけを作ったと言いましたけれども,その話を黒田の方にした時,私も,ストレートにそういう話を切り出すことは得意な方ではないものですから,何か大いに照れながらそのことを話したことを思い出します。

妃殿下

お二人が2年近い歳月にわたり,友情を深め,結婚への道をお進みになりましたことを心から喜んでおります。そして,これからご健康でお幸せなご家庭を築かれますよう願っております。

今,宮様がお話をされましたようにお二人が宮邸でお会いになる機会がございました。宮様がお二人の考えや気持ちを大切にしたいと思っていらしたので,その思いを私も大事にし,途中でお二人から具体的なお話を伺うことはございませんでした。

このような中で,ご結婚までの日々を振り返ります時,感謝の気持ちを抱かずにはおられません。

私が結婚をしましてから,長い間,慣れない宮中の行事の様々な場面において,お近くにいらしてくださいましたことは,緊張しておりました私にとりまして,非常に心強いことでした。また,その他に私の負担にならないよう,そっとお助けくださったり,私が仕事で長く留守した時など,娘たちが寂しい思いをしないよう,楽しいことや心和む時間をお作りくださいました。娘たちは幼い時に紀宮様を「ねぇね」とお呼びしてお慕い申し上げ,親しみの気持ちを抱きながら成長しました。娘たちもこの度のご結婚を大変喜んでおりました。

今まで様々なお心遣いを頂きましたことに改めて深い感謝の気持ちを抱いております。

問2 両殿下にお尋ねします。眞子様と佳子様の最近のご様子,ご成長ぶりについて,具体的なエピソードを交えてお聞かせください。現在,皇室典範の改正をめぐる議論が進んでおり,眞子様,佳子様も将来皇族のお立場が続く可能性もあります。そうしたことも踏まえ,お二人のお子様の教育方針についてもお聞かせください。
殿下

上の娘は中学校2年生になって,下の娘が小学校5年生になりました。ふだん身近に接していると,連続的なものですので,どういうふうにこの一年で成長したかは気が付かないことが多いわけですけれども,例えばこの夏に,あれは7月でしたかね「こども環境サミット」に出席したのは(妃殿下に尋ねられて)。

妃殿下

(少しお考えになって)はい,7月です。

殿下

7月に「こども環境サミット」が愛知県で開催されまして,娘たち二人もお招きを受けて参加しました。出席する人たちの年齢が10歳から14歳で,娘たちとぴったり合うんですね。その会議に出席した人たちが非常に活発に話合いをしているのを見ると自分の娘もそういう年代になったんだなということを感じました。そして,その行事の幾つかに一緒に参加して交流をする機会を持ったというのは二人にとって大変いい経験だったのではないかと思っております。

また,上の娘につきましては,今年開催されていた「愛・地球博」の,かなり多くの外国のパビリオンを回りました。下の娘はちょっと遅れて来たんでしたね。

妃殿下

そうですね,一緒に幾つか回りました。

殿下

その時に行った館は,多くのものは私たちが公式訪問した場所だったのですけれども,展示されているもの一つ一つにとても興味を示して,特定のということではなくて,そういった国々に自分もいずれ訪れてみたいということを何度か言っていました。そういうことは今までは余り無かったような気がいたします。

一方,下の娘についてですけれども,今,環境関係のことは恐らく学校でも授業などで話題になるんでしょう。夏にどうやって冷房を少なくして涼しく過ごせるかということを考えていたようで,宿根(しゅっこん)朝顔を窓の外にカーテンのようにはわせたいと言い始めて,それで一緒にしました。また,私は機械が余り得意でないんです。パソコンは,使ってはいるんですが余りよく知らない機能がほとんどなんですけれども,時々部屋に来て,私の知らない機能を教えてくれたりすることがあります。

妃殿下

娘たちの様子についてお話をさせていただきます。

長女の眞子は,中学校の様々な学校行事に携わりながら,充実した生活を送っているようです。休みの日には,今までもそうでしたけれども,今年も一緒に美術館や博物館を訪れる機会に恵まれました。そのような外出の後,印象深かったことや感動したことを私たちによく話してくれます。また,最近は映画音楽やミュージカルの話も多くするようになり,好きな旋律をピアノでよく弾くこともございます。娘と一緒に芸術に触れ,心豊かな時間をこれからも大切にして参りたいと思います。

次女の佳子は小学校の生活を大切にしつつ,スケートの練習に励んでおります。運動も好きですが,一方で静かに部屋で過ごす時間も増え,上の姉より薦められた本を楽しそうに読んでいる姿をよく見かけることがあります。また,短い時間の中でも布や毛糸などの身近な素材を使って人形や飾りを作ったり,お菓子を焼いたりしています。私も誘われることが度々ありますが,このように創(つく)りだす喜びの心を持ち続けていることにうれしさを覚えます。

殿下

教育方針についてですけれども,今,皇室典範の論議がなされておりますが,娘たちには,もちろん今の自分たちの立場を自覚してもらうことは大事なことだと思っておりますけれども,基本的には今までお話してきたようにそれぞれの個性や関心事を伸ばしていってくれたらいいと思います。

妃殿下

教育方針については,今まで記者会見で話したことと重なりますが,これからも,娘たちが自分たちの関心や興味を豊かに深め,必要な生活習慣を学び,心身ともに健やかに育つよう心がけて参りたいと思っております。そして,二人ともそれぞれ成長に伴って増えてくる経験を通して,調和のとれた考えを持ち,難しいことや複雑なことにも対応できる力をつけてほしいと願っております。

問3 殿下にお尋ねします。昨年のお誕生日の会見で,ご一家のコミュニケーションの大切さについて言及されました。あれから1年がたち,現在どのようにコミュニケーションを取られていますか,具体例をお聞かせください。
殿下

昨年の会見の時に,私は陛下とのコミュニケーションの大切さというのを皆さんにお話したと思います。それから1年を経て今どのような状況かということですけれども,基本的に今までと変わっておりません。機会を見つけて,御所に伺っていますし,御用邸などに行かれている時も,こちらの時間がうまく合えば,可能な限り合流するようにしております。また,子供たちも御所へ行くことをとても楽しみにしていますので,折々に連れていくようにしております。

また,皇太子殿下とのコミュニケーションについてですけれども,現在,妃殿下が,発表されているように,体調が良い時とそれからそうでない時がありますので,こちらから積極的に東宮御所へ行ってということはしておりません。しかし,もし,声が掛かれば,いつでも行くつもりにしております。また,週末,両殿下がテニスなどをしている時に,私たちも,週末は,散歩をしたりしていますので,同じような時間帯に,近くにいれば顔を出して,短時間ではありますけれども話をするようにしております。

問4 殿下にお尋ねします。昨年のお誕生日での記者会見で,殿下は公務の在り方について触れられました。その後,皇太子様が今年2月に「世代間」の考えの違いについて述べられています。改めて殿下の考える皇族としてのあるべき姿についてお聞かせください。
殿下

昨年の会見の時に,公務の在り方について,私は「受け身」という表現を使いました。「受け身」という表現が良かったかどうかは別として,皇族の公的な活動というのは社会からの要請にこたえて行われるべきものであると思います。その考えは,今も変わりません。そのことを「受け身」という言葉で表現を致しました。社会からの要請で務めをするとなりますと,私にとって得手なものもあればそうでないものもいろいろあるわけですね。しかし,そういうものにできるだけ広くかかわっていくということは,自分にとっては非常に良い機会でありますし,それらをすることは良い経験にもなっていると思います。

皇族のあるべき姿というのはなかなか難しいと思いますけれども,私としては,以前にもお話したと思いますけども,そのようにして要請を受けた仕事,それが良いものであるならば,一つ一つを大切にしていきたいということ,そしてまた,もう一つでは,時代というものは変わりますので,できる限りその時代に即した姿というのは大事であると思います。そしてこれも何度かお話しましたけれども,やはり皇族の役割の大事な一つは,天皇をサポートすることではないかと思っております。

なお,今質問の中に「世代間」の差というのがありました。皇太子殿下が「世代間」の差という発言をされたわけですけれども,あれは私の去年の会見の後ですね,私自身もどういうことなのか今一つ分からなかったので直接聞いてみました。そうしましたら,「世代間」の差というのは,特に,例えば,陛下と皇太子殿下の「世代間」の差とか,陛下と私の世代の違い,又は,これは世代の違いというほどの差はないと思うんですけども,皇太子殿下と私の世代の差,そういう意味で話をしたわけではなくて,あくまでも一般論としてのことだという話でした。

公的な活動についてはいろいろな考え方が私はあると思いますけれども,基本的には私は,要請を受けたものにこたえていくという姿勢を今後も続けたいと思います。そのような中から,ある特定の分野で更に広がっていくものはあると思いますし,そこに何らか自分が興味を持ちながら携わっていく,そういう形は大いにあるのではないかと考えております。

問5 最後に殿下にお尋ねいたします。殿下は「不惑」の年を迎えられました。これまでの年月を振り返り,ご自身にとって思い出深い出来事,また,出会いについてお聞かせください。
殿下

早いですね。今,平均寿命が80歳くらいですので,まだ半分ぐらいで,「不惑」というよりも,まだ「惑」なのではないかなと思っております。

この40年を振り返りますと,お話していったら切りがないくらいいろいろなことがあると思うんですけれども,自分としては,結婚して子供が生まれて家族を持ったというのは,もちろん大変思い出深いことでありますし,また国の内外のいろいろな所を訪れて,その地域の自然や文化を知ることができたというのも思い出深いことだと思います。また,昭和から平成へ移って,「即位の礼」が行われましたけれども,その時に私も家内も立ち会ったことも大変強く印象に残っております。先ほど,国の内外を訪れてということを話しましたが,いろいろな国の王族の方とお会いする機会があり,それぞれのお国において皆様が王族としてどういう仕事をされているか実際にお話を聞いたり,拝見したりすることもあったわけですけれども,そういう機会を比較的多く持てたというのは,とても私にとって意義深かったと思います。

「出会い」というお話もありましたけれども,「思い出深い出来事」とその「出会い」というのが重なることが多いと思います。もう一つ「出会い」ということで言うならば,今まで見たことのないような風景に出会ったことがとても印象に残ることでした。例えばモンゴルに行きますと,とにかくずっと地平線がつながっているわけです。日本にいるとそういう風景を見ることがないですよね。今まで自分の頭の中にある概念にある風景と全然違うもの,そういうものに出会ったということは,とても強く印象に残っています。

以上です。

関連質問1 2問目のところの皇室典範の関係で,教育方針に関連してのところですけれども,眞子様,佳子様について,「今の自分たちの立場を自覚してもらうのが大事だと思います」というお話をされておりましたが,実際のところですね,どのような形で,自覚にもいろいろな形で自覚の仕方があると思うんですが,どのような形で自覚させていこうと思っていらっしゃいますか。
殿下

今の自分たちの立場の自覚というのは,皇室典範とは全く関係なくお話したことです。まだ年少で,一人の子供ではありますけれども,その周りで多くの人たちがその生活にかかわっているわけです。私はそういう人たちへの,簡単な言葉で言うと感謝の気持ちを持ってほしいと思うし,いろいろな意味で負担を掛けないような配慮をする,そういうことが私はとても大事なことだと思います。そういう意味でやはり自分の立場をきちんと認識してほしいと,そういうことでお話をしました。

関連質問2 1問目のお答えのことなんですけれども,黒田ご夫妻を,殿下の方でお会いするアレンジをされたということで,それは始めからお二人がうまくいって結婚するということになれば良いなというふうに思ってなさったのか,それで実際結婚されて成功したというか,そういうふうに思われたのか,その辺のところをお聞かせいただけますか。
殿下

それは,最初からは,分からないですよね。私にとって非常に大切な友人でしたし,信頼できる人で,人柄も良いし,そういうことから紹介をしたということで,じゃあそれがその後今回のようになるかどうかというのは,その時点では全く私としては分からずに。(妃殿下に向かわれて)そうだよね。

妃殿下

(殿下の方を向いてうなずかれて)お二人の・・・。

殿下

それは二人の間のことですからね,それは何とも分かりませんでした。

関連質問3 同じ関連のことなんですけれども,先ほど殿下の胸の内を吐露されたと思うのですが,大いに照れながらそのことをお話された時に,もしよろしければ,具体的にどういったお言葉で,黒田さんはどのような感じでお答えになっていたかをお聞かせください。
殿下

もう2年以上前のことですからね。具体的にはちょっと覚えていないんですけれども。ただ,なかなかね,こういうことを話するというのは,話の持っていき方は難しいですね。

照れながら,どうだったんでしょうね,私も今になっては・・・。それで会うきっかけができましたからね,良かったんじゃないでしょうか。2年以上前のことで,具体的には,私も思い出すことは難しいと思います。

文仁親王殿下のお誕生日に際してのご近影