文仁親王殿下お誕生日に際し(平成16年)

文仁親王同妃両殿下の記者会見

会見年月日:平成16年11月25日

会見場所:秋篠宮邸

文仁親王同妃両殿下のお写真
記者会見をなさる文仁親王同妃両殿下
(写真:宮内庁)
問1 両殿下にお尋ねいたします。来年はご結婚から15年を迎えられます。この15年を振り返ってのご感想と,殿下から妃殿下に,妃殿下から殿下にかけたい言葉をお聞かせください。
殿下

来年で15年で,今14年半ぐらいたったわけです。この14年半の間に私ないし私たちにとって折々に大切な事柄があったわけですけれども,スパンとして,時間的な長さとして考えますと,気が付いたら14年たっていたなと,そういうふうな感じがいたします。どうですか。(妃殿下を振り向かれて)

妃殿下

結婚後,務めをしながら家庭を築く過程で,多くの人々の助けや支えを頂き,今日まで過ごすことができましたことを感謝しております。14年余りの歳月は,感慨深く振り返るという長さではないかもしれませんが,懐かしいこととして(平成2年)6月に行われた私たちの結婚の行事,また,その年の11月に参列させていただきました天皇陛下のご大礼を始め,宮様と同伴した国の内外の訪問などがございます。また,二人の娘に恵まれましたことも,大きな喜びでございます。

殿下

かけたい言葉ですが。(記者に確認をされて)

「これからも良い仕事ができるように努めるとともに,自分の関心を持っている分野についても深めていってください。」ということですかね。

妃殿下

私からは,「これからもどうぞお体を大切になさって良いお務めをされますように。また,ご研究の成果を期待しております。」と申し上げたく存じます。

問2 殿下にお尋ねいたします。皇太子妃殿下が長期の静養を続けており,5月の皇太子殿下の発言をきっかけに,皇室をめぐる様々な報道や論議がなされました。皇位継承順序第二位にあるお立場として,弟として,一連のことをどのように受け止められましたか。皇太子妃殿下について,皇太子殿下は「東宮御所での生活の成り立ちに伴う様々な苦労があったと思います」と述べられましたが,両殿下はご結婚後,そうした経験がおありだったでしょうか。
殿下

皇太子妃殿下については,今,長期療養中ということですけれども,早い回復を私たち二人とも祈っております。

また,確か私は昨年の会見で皆さんから陛下をどのように支えていくかということを聞かれました。それに対して私は,コミュニケーションの大切さということを申しました。円滑な意思疎通が重要であるということですね。それを受けて,皇太子殿下の2月の記者会見の時の,皆さんから皇太子殿下への質問の中に,秋篠宮が陛下との円滑な意思疎通が大切だということを話していたけれども,という内容の質問があったと記憶しております。それに対しては,コミュニケーションをよく図るということは当然のことであるという答えであったと思います。そのことから考えますと先ほど質問がありました5月の発言について,私も少なからず驚いたわけですけれども,陛下も非常に驚かれたと聞いております。私の感想としましては,先ほどお話しましたようなことがあるのでしたら,少なくとも記者会見という場所において発言する前に,せめて陛下とその内容について話をして,その上での話であるべきではなかったかと思っております。そこのところは私としては残念に思います。

もう一つありましたね。東宮御所での生活の成り立ちに伴う苦労ですね,これは私はどういう意味なのか理解できないところがありまして,前に皇太子殿下本人に尋ねたことがありました。東宮御所の成り立ちに伴う様々な苦労とは,皇太子妃になって,つまり皇室に嫁ぐとふだんの生活においていろいろな人がその周りで働いている,近くで生活している空間においてもいろいろな人が周りにいる,そういう人たちに対する気配りというか,配慮ということであったり,なかなか容易に外出することが難しい,そういうことだそうであります。そういうことを前提として私たちにそのような苦労があったかというと,主に私というよりも家内に関係するのかなと思います。確かに東宮御所という大きい組織に比べれば,私の所はかなり周りにいる人たちの数も少ないので比べるというのは非常に無理があると思いますけれど,それを踏まえた上でどうでしょうね。(妃殿下に尋ねられて)

妃殿下

結婚してからの生活は,新しく出会う務めや初めて経験する慣習などが多くございました。どのように務めを果たしたらよいか,至らない点をどのように改めたらよいかなど,不安や戸惑いなどもございましたが,その都度人々に支えられ,試行錯誤をしながら経験を積み,一つ一つを務めてまいりました。

両陛下は私たちの考えていることや感じていることを静かにお聞きくださり,私たちの務めや娘たちの成長を温かく見守ってくださいましたことに大変ありがたく思っております。また,宮様が私の考えや気持ち,おかれている状況を的確にとらえて導いてくださったことは生活する上で大きな支えとなりました。

問3 殿下にお尋ねいたします。昨年の殿下お誕生日会見の後,湯浅宮内庁長官は,秋篠宮さまの3人目のお子さまについて「天皇皇后両陛下のお孫さんはお三方ということですから,これからの皇室の繁栄を考えた場合には,私は3人目のご出産を強く希望したい」と言及しました。その後,発言は議論も呼びましたが,殿下ご自身は,発言をどのように受け止め,その内容についてどのようなお考えをお持ちでしょうか。
殿下

昨年,湯浅長官が3人目の子供を強く希望したいということを発言いたしました。その会見後しばらくして長官が私の所に来ました。それについての説明をしに来たわけなんですけれども,その話を聞き,またその時の記録を見ますと,私が昨年の記者会見で3人目の子供について聞かれ,一昨年の会見でそれについてはよく相談しながらと答え,昨年はその前の年の状況と変わらないと答えたということがあって,それを受けての記者から長官へその気持ち,つまり秋篠宮の気持ちに変わりはないかという質問だったと私は解釈しております。

そのことに対して,長官が皇室の繁栄とそれから,これは意外と報道されているところでは抜けているというか,知られていないように思うのですけれども,秋篠宮一家の繁栄を考えた上で3人目を強く希望したい,ということを話しております。宮内庁長官の自分の立場としてということですね。そのような質問があれば宮内庁長官という立場として,それについて話をするのであればそのように言わざるを得ないのではないかと,私はそのように感じております。

問4 両殿下にお尋ねいたします。眞子さまは中学校に進学され,佳子さまはフィギュアスケート競技会に参加されるなど,お健やかな姿をご披露されています。お二方のご成長ぶりについて,日常のエピソードを交えてお聞かせください。
殿下

私からにしますか。(妃殿下に振り向かれて)

上の娘はこの春から中学校に行って,学校生活を楽しんでいるのではないかと思います。また,本人が以前から興味,関心を持っていた美術とか絵画などの展覧会にも行ったりして,少しずつ興味を深めているのではないかと思います。また,それに関連してこの夏だったですかね。(古文書の)修補を見学に行ったのは。(妃殿下に確認されて)

妃殿下

(殿下にうなずかれながら)夏休みでした。

殿下

そうですね。夏休みだったと思うのですけれども。宮内庁の中に書陵部という部署があり,そこで古い文書とかを修復している部署がありまして。そういうものにも関心があるのではないかと思って,連れて行きましてね。どうやって古いものを修復しているのかということを見せたら,非常に興味を持っているようでした。

一方,佳子の方はスケートを楽しんだり,工作とか折り紙とか,作ることが割と好きなんですね。ですから学校の宿題がない時には,よく折り紙をしたりして楽しんでいるようです。

今年の夏は家族で北海道に行ってまいりました。北海道には東京大学の演習林があって,大変広い場所なのですけれども。その中で3泊,2泊でしたかね。(妃殿下に尋ねられて)

妃殿下

3泊でございますか。

殿下

3泊かな。少し記憶があやふやなのですが。山に登ったり,その時に見かける高山植物やいろいろな樹木を覚える良い機会になったと思っております。とても楽しんでいたみたいね。(妃殿下に確認されて)

妃殿下

とても良い思い出になりました。

殿下

私からは以上です。

妃殿下

ただいま宮様が話されましたことと重なるところもあると思いますけれども,今年の4月,眞子は中学1年生になり,佳子は小学4年生になりました。眞子は小学校の時と比べて一学年の生徒数,クラス数が増え,また,土曜日も学校の授業があるという新しい生活の中で,級友と学び,遊び,図書館で本を借り,学校行事に参加したりすることを通して,段々慣れてきたように感じられます。佳子は,学校で友達と元気に学び,遊び,学校以外の時間は,先ほど宮様もお話をされましたけれども,いろいろなものを作り出したりすることを非常に楽しそうにしております。また,フィギュアスケートの練習にも励んだり,一輪車に乗って遊ぶこともございまして,身体を動かすことをよくしております。

殿下

一輪車は姉妹でしていますよね。(妃殿下に確認されて)

妃殿下

はい。二人で手をつないだり。自分たちで何か一輪車の遊びを作っていることもあって,私たちが見ていても大変楽しゅうございます。二人が学校から戻りますと,互いに自分たちの学校のことについて話したり,私たちに身近な生活から社会の出来事まで,様々なことを話すようになりました。わからないことは私たちに尋ねて,宮様が丁寧に説明をされたり,私が十分に答えられない場合には,一緒に調べたりすることもございまして,このような時間も大切にうれしく思います。

宮様が話されましたように眞子も佳子もそれぞれ関心を深めたり,自ら立てた目標に向かって,段々進めるようになってまいりました。そのような過程では,楽しいこともあれば,難しいことも伴うと思いますが,それらの経験を私たちは大切に見守っていきたいと考えております。以上でございます。

問5 両殿下にお尋ねいたします。この一年を振り返って,世の中の出来事やご家族,ご公務,研究に関して,印象に残ったこと,今後取り組みたいことをお聞かせください。
殿下

そうですね。この一年を振り返りますと,特に今年ですけれども,やはり自然災害が非常に多かったということが強く印象に残っております。度重なる台風,そしてそれに続いて新潟県中越地震があり,それによって多くの人が亡くなり,また,被災されました。亡くなった方のご冥福をお祈りし,また,被災された方々へのお見舞いを申し上げたく思います。今回の地震であれだけ大きい余震が続けてきて,まだ余震に対する不安が残っているというのは,そこの地域にいる方にとって大変不安なことだと思いますし,また,村自体にダム湖が出来てしまうとか,自然災害の怖さというものを非常に感じております。

また,ツキノワグマが頻繁にみられる,里の方に下りてきている。今までこれだけ熊の被害があったということはないわけですよね。人間を恐れない,新世代熊と言うらしいのですけれども,こういうことがありますと,やはりこれから野生動物と人間がどのように共存していくか,周りの環境も含めてそういうことも今後考えていかなければいけないことの一つだろうと感じました。

一方,明るい話題としては,この夏にアテネでオリンピックがあり,また,パラリンピックがあり,オリンピック,パラリンピックで日本の代表で出られた方たちが非常に良い成績を残した。そのことはこの一年で大変良かったことだと思います。

また,私自身の研究について言いますと,昨年もこの場でお話したタイ国との共同研究ですね,これが立ち上がりまして,人と鶏(トリ)の多面的関係の研究が少しずつ進みつつあり,何年かして一つの成果として出せれば良いなと思っております。

妃殿下

この一年を振り返りますと,宮様のお話と重なるところがあると思いますが,幾つかのことについてお話をさせていただきます。

始めに,今年の夏から秋にかけて相次いで上陸した台風,そして新潟県中越地震とその後に今なお続く揺れはその地域の方々に大きな被害を与え,被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

厳しい冬に向かい,寒さや心身の疲れが重なる中,被災地の方々が互いに支え合う姿,レスキュー隊の懸命の努力によって4日ぶりに救出された幼い男の子,優太ちゃん,また各地からの配慮された支援活動に深く心を動かされます。長い避難生活を送っている方々,家屋の修繕に追われている方々など,間もなく降る雪の影響などによって,先を見通すことが難しい不安な日々を過ごされていることを伺い,とても案じております。被災された方々が,健康を十分に回復され,平穏な生活が早く訪れますことを心より願っております。

今年の夏,ギリシャのアテネで開かれました夏季オリンピック,パラリンピックでは日本の選手たちが非常に活躍をされ,私たちに大きな喜びをもたらしてくれました。

来年の一月には,オーストラリアのメルボルンで,オーストラリアは今,夏になっておりますので,夏季デフリンピックが開かれる予定でございます。長い歴史を持つこの大会は,聴覚に障害を持つ日本の選手たちが10の競技に参加する予定で練習に励んでおられると聞いております。聴覚障害者の大切な言葉の一つである手話のスピーチコンテストの行事にかかわる一人として,来月,大会の関係者にお会いする機会を楽しみにしております。

また,来年の2月から3月にかけて,長野でスペシャルオリンピックス冬季世界大会が開催されますが,それに向けて多くの方々が準備を進めていらっしゃると伺っています。今月の上旬,二人の娘と一緒にその大会のためのチャリティー映画鑑賞会に出席いたしました。その映画は,2003年スペシャルオリンピックス夏季世界大会が開催されたアイルランドのダブリンを舞台に,障害を持つ姉妹と彼女たちの家族の生活と心の触れ合いを描き,大会にかかわる人々の活動がよく伝わる,印象深い話でございました。

このように,スポーツに親しむ機会が続いておりますが,競技大会と出場する選手の活躍を支える関係者の並々ならぬご努力を心に留めつつ,これからの大会の様子もたどり,関心を寄せてまいりたいと思います。

このほかに,昨年に引き続き今年も文化庁が主催している国際文化フォーラムに出席いたしました。共通のテーマが今年は「文化の多様性」であり,その下で様々な行事が行われました。その一つの座談会は,「音楽における二つの維新」という題で,日本音楽の歴史を深く広くとらえた興味深い内容でございました。私はこの座談会で話を伺いながら,以前から関心を抱いておりますことの一つ,音楽の受容と伝播(でんぱ)について改めて理解を深めたいと思いました。

関連質問1 冒頭の質問でですね,ご結婚後の生活を振り返っていただきましたけれども,その間身近で接してこられて紀宮様のご結婚内定という報道がございましてですね,改めてになりますけども紀宮様のお人柄とそれからエピソードなんか,一番思い出のエピソードがあればお伺いしたいというのと,それと先ほど殿下がおっしゃられましたけども地震,台風,豪雨とですね暗いニュースが多い中で,一際明るい話題ではないかというふうに思っておりますので,正式発表前ですけども是非紀宮様に対する思いをですね両殿下にお伺いしたいというのと,あとご婚約に至る過程でですね,お二人がかかわられるような場面がございましたら,そちらの方も是非教えていただきたいと思いますのでお願いいたします。
殿下

先日報道されて以降ですね,幾人かの方からおめでとうということを言われまして,今もそのように言ってくださった方々に深く感謝しております。ただ,まだ正式に発表されていることではありませんので,大変申し訳ないんですがこの場での私の発言は控えたいと思います。ご了承ください。

関連質問2 2番目の質問で,皇太子様のご発言に関連してですね,そのご発言のプロセスについて残念だというふうなおっしゃり方を殿下はされたわけなんですが,実際,皇太子様にとって人生の最も大事なパートナーが現に長い療養生活をされているというようなことに対して,殿下はどのような思いを致されているかということが一つと,それから,皇太子様ご自身がですね,今後宮内庁と共に公務の在り方,つまり時代とともに公務が変わってくるということを考えながら今後の公務の在り方っていうことを考えていきたいというようなことをおっしゃっていらっしゃる,そうすると東宮妃殿下のご病状の回復のために皇室全体としてどういうような方向性が望ましいのか,また,東宮妃殿下が回復するために必要な要件と申しますかね,そういったものをもしお考えございましたらお聞かせいただければと思っているのですが。
殿下

もう一度ちょっと最初のところを。

記者

今,東宮妃殿下が療養されている。そうすると皇太子様としてもですね,非常に人生の伴侶(はんりょ)である最も大事な方がそういう状況に置かれているということについて,殿下はどういうふうな思いを致されているかなという。

殿下

それはやはり,例えば私がですね,同じようなことであれば,私がということじゃなくて,だれでもそうだと思うんですけどもね,大変心配な状況だと私は思います。それからその次の公務のところをもう一度お願いします。

記者

非常に抽象的な質問で申し訳ございません。皇太子様がですね,今後宮内庁と共にその時代とともに変わる公務の在り方について考えていきたいというようなことをおっしゃって,その,皇室全体,やはり時代とともにこう変わってきているんだろうと思うんですね,そういったものについて,より皇太子妃殿下がですね,早く回復されるために必要なその皇室全体の何と言いますか方向性。

殿下

直接的な答えにならないかもしれません。また,その公務とはどういうものかということも,なかなか難しいことだと思います。私たち皇族は,公的ないろいろな仕事をしていくのは当然なことであると思うのですけれども,あくまでも私個人としては,自分のための公務は作らない。つまり自分がしたいことはいろいろあるわけですけれども,それが公務かどうかはまた別ですね。私は公務というものはかなり受け身的なものではないかなと。こういう行事があるから出席してほしいという依頼を受けて,それでこちらもそれが非常に意義のあることであればそれを受けてその務めをする。私自身はそういうふうに考えて今までずっと来ています。それでよろしいですか。

関連質問3 両殿下にお尋ねしたいのですが,先ごろ私どもの間では両殿下のご友人の黒田慶樹さんという方が大変人気者になっておりまして,黒田さんという方がどのような方で,どのようなお付き合いをされているかということを,もし伺えればと思いましてお尋ね申し上げる次第です。
殿下

正式な発表前ですので,控えたく思いますのでご了承ください。

文仁親王殿下のお誕生日に際してのご近影