皇太子殿下 タイ,カンボジア及びラオスご訪問時のおことば

タイ

平成24年6月26日 (火)
シリントン王女殿下主催晩餐会における皇太子殿下おことば(サパトゥム・パレス)(仮訳)

シリントン王女殿下,ご列席の皆様

今回のタイ国訪問を締めくくる最後の行事として,このようにすばらしい夕食会の機会を設けていただいたシリントン王女殿下の温かいお心遣いに深く御礼申し上げます。貴王室との特別な関係については,天皇皇后両陛下も特別の思いを常々寄せておられ,貴王室との長きにわたる深い関係につき伺っております。こうしたタイ王室と我が国皇室との良好な関係を踏まえ実現した私の初めての公式訪問の機会に,貴王女殿下に心からのおもてなしを頂いたばかりか,国王王妃両陛下にお会いする機会を得,まるで家族の一員のように親しく接していただいたことは,私にとって大変光栄かつ感動的なものでした。国王王妃両陛下に心より感謝申し上げるとともに,両陛下の一層のご健勝をお祈りいたします。

昨年3月,日本は未曾有の震災に襲われ,数多くの尊い命が失われました。本日,私は,東日本大震災に際し支援活動などを行っていただいた方々とお話をする機会がありました。 その際,一人一人の方々にも申し上げましたが,この場をお借りして,日本国民が厳しい試練に直面した際,国王王妃両陛下を始めとするタイ王室,そして,タイ政府や多くのタイ国民の方々から様々な支援や励ましを頂いたことに改めて厚く感謝申し上げます。

ここタイにおいては,昨年広範囲に洪水が発生し,多くの命を奪い,貴国,ひいては世界の経済活動に多大な影響を与えました。本日私は,32年ぶりに古都アユタヤを訪問いたしましたが,アユタヤは,昨年の洪水で大きな被害を受けた街と伺っておりました。今回,実際に訪問してみて,アユタヤの遺跡群を始めとする被災地にその爪痕は残るものの,確実に復興が進んでおり,人々がたくましく,この試練に向き合っていることを確認できました。ここに改めて,被害を受けられた方々に心からのお見舞いを申し上げるとともに,洪水に強い街づくりが進むことを期待します。

また今回,タイ政府のご好意により船でチャオプラヤ川を下る機会を得ました。船からの景色は,30年前とは異なり,ビル等の建物が多くなり時代の変化を感じましたが,悠久の川の流れは変わることなく,この川を日本とタイの間の交易船が往来していた頃に思いを()せることができました。

日本・タイ両国の他に例を見ないほど緊密な友好関係は,両国の多くの方々のこれまでの不断の努力に支えられてきたものです。タイ語で「思いやり」のことは,「ナム・チャイ」すなわち「心の水」と呼ばれると伺っております。水は,時には,大きな水害をもたらすこともありますが,大地を潤し,川に流れ,そして海を介して我々の国を結びつけています。両国で発生した災害に際して示された,両国国民の「ナム・チャイ」は,これからも両国をつないでいくものと確信しております。私自身も,今回の訪問を機会に両国の友好関係の増進に向け,一層取り組んでいきたいと思います。

最後に,シリントン王女殿下の一層のご健康とご活躍を祈るとともに,私の今回の訪問を支援していただいたタイの全ての関係者の皆様に心より御礼申し上げつつ,乾杯したいと思います。プア・ミッタパーブ・タイ・イープン!(日本・タイ両国の友好のために!)

カンボジア

平成24年6月27日 (水)
フン・セン首相主催晩餐会における皇太子殿下おことば(首相府)

フン・セン首相閣下
ご列席の皆様

ただ今首相閣下より,歓迎のお言葉を頂き,またこのような盛大な晩餐会を開催して頂きましたことに深く感謝いたします。2年前にノロドム・シハモニ国王陛下を国賓としてお迎えし,本年は日本国大使館再開20周年,来年は日本カンボジア外交関係樹立60年の節目に当たり,両国民間の友好関係が一層深まりつつあるこの時期に,貴国を初めて訪問できましたことを嬉しく思います。

まず初めに,昨年東日本大震災により日本が厳しい試練に直面した際に,フン・セン首相をはじめ多くのカンボジア国民の方から,様々な支援や励ましを頂いたことに感謝申し上げます。国内外の多くの方々の支援もあり,被災地は今,力強く復興に取り組んでおります。貴国でも,昨年は洪水で多くの方々が被災されたと伺っております。被害を受けられた方々に心からのお見舞を申し上げます。

両国民の交流は遠く16世紀にも遡りますが,1991年のパリ和平協定以来,日本は,貴国の平和と安定,復興と発展に向けた努力を積極的に支援して参りました。本日,首都プノンペンの活気ある町並みを拝見しましたが,日本政府,日本のNGOによる様々な協力が,両国の絆を深めることに貢献したものと確信し,誠に嬉しく思います。フン・セン首相により「平和の宮殿」と名付けられたこの宮殿にお招きいただき,貴国の平和と発展を導いてこられたフン・セン首相と食卓を共に致しますことに,深い感慨を覚えます。

今日,観光やビジネスで貴国を訪れる日本人は,年間約16万人に及び,日本企業による民間投資も増加していると承知しています。また,王立プノンペン大学日本語学科の授業を見学し,両国をつなぐ優秀な若い世代が育っていることを心強く思いました。今後も,様々な分野での人々の交流を通じ,両国民の絆が一層強まってゆくことを希望いたします。

明日私は,シアムリアップを訪問します。その地に栄えたアンコール王朝は,貴国の国旗にも描かれた貴国の伝統文化と国民統合の象徴とされる建造物を築きあげ、現在でも世界に誇る多くの建造物が残されています。それは緻密な治水灌漑設備を備えた水利都市でもあります。私は,長年水に関する研究を行っておりますが,貴国の先人が,洪水など水からの挑戦を受けつつも水を巧みに利用し,人類史に残る文明を築いてこられたことに感銘を受けています。

アンコール遺跡は、その一部に17世紀の日本人の墨跡が残っていることもあって,今も,多くの日本人にとり憧れの地です。日本政府は,シハヌーク前国王陛下のお考えを受け,貴国の専門家と共に遺跡の保存・修復事業に取り組んできました。我が国が世界史的に重要なアンコール遺跡の修復に貢献することができたことは、大変喜ばしいことと考えます。

私は,今回の訪問を通じ,目覚ましく発展を続ける貴国の国民の皆様の力強さ,貴国の偉大な歴史と豊かな自然,そして両国関係の目覚ましい発展に触れることができることを大変嬉しく思います。今回の私の訪問を一つの契機として,両国民の相互理解と友好関係がますます深まることを望んでおります。

ここに杯を上げて,シハヌーク前国王・同王妃両陛下,シハモニ国王陛下はじめカンボジア王室の方々,そして,フン・セン首相閣下御夫妻,カンボジア国民のご多幸またカンボジア王国の繁栄,日本・カンボジア両国の友好関係の益々の発展を祈念致します。

ソーム・トゥバーイ・プレア・ポー ヌン チューン・ポー(「乾杯」)

ラオス

平成24年6月29日 (金)
チュンマリー国家主席主催晩餐会における皇太子殿下おことば(人民革命党迎賓館)

チュンマリー国家主席閣下
ご列席の皆様

ただ今チュンマリー国家主席閣下より,歓迎のお言葉を頂き,またこのような盛大な晩餐会を開催していただきましたことに深く感謝いたします。この度,貴国からのご招待により,貴国を初めて訪問することができたことを心からうれしく思います。

昨年,日本が東日本大震災により厳しい試練に直面した際,閣下よりお見舞いの言葉を賜り,ラオス政府及び国民の方々から様々な支援や励ましを頂いたことに厚く御礼を申し上げます。とりわけ貴国では震災支援のチャリティコンサートが開催され,多くのラオス国民からあたたかい連帯の気持ちが寄せられたことと伺い,感謝の念に耐えません。

また,貴国でも昨年は洪水で多くの人が罹災されたと伺っております。ここに,被害を受けられた方々に心からお見舞いの気持ちを申し上げます。

日本とラオスは,その地形や食生活,織物などの伝統文化など,共通点が多々あり,ラオスの方々は日本への親近感を持っていると伺っています。本日私は,ラオス国民の皆さんによる日本の武道の演武を拝見いたしましたが,そこにラオスの方々の親近感の一端を見ることができたと思います。日本とラオスのつながりということでは,ラオスは,日本で最初の青年海外協力隊員が派遣された国として知られております。以来,約半世紀の長きにわたり,日本の若者が貴国の国づくりに協力することを通じ,両国の絆が深まってきたことを喜ばしく思います。

今回の訪問では,首都ビエンチャンのみならず,貴国の古都ルアンパバーンも訪問し,メコン河を案内していただく予定です。ラオスはこの地域を結ぶメコン河の全長の4割以上がラオスを流れており,メコンの流れは貴国の発展に密接につながっていると承知しております。短い滞在ではありますが,メコン河によって育まれた貴国の歴史や文化の一端に触れることができることを心よりうれしく思います。

ここに杯を挙げて,チュンマリー国家主席閣下,ラオス国民のご多幸とラオスの繁栄,日本・ラオス両国の友好関係の益々の発展を祈念致します。

ニョック・チョーク(「乾杯」)

平成24年6月30日 (土)
カムペン・ルアンパバーン県知事主催午餐会における皇太子殿下おことば(メコン河船上)

カンペン・ルアンパバーン県知事閣下
ご列席の皆様

本日は,日帰りという慌ただしい日程ですが,貴県知事閣下のご案内の下,貴国の古き王都であるルアンパバーンを訪問できましたことを大変うれしく思います。また,貴国で最大の水運の要路であり,貴国民の生活に密接につながっているメコン河を視察しながらすばらしい午餐会を催していただき,深く感謝いたします。

先程,貴国の歴史と文化の象徴でもある,シエントーン寺と王宮博物館を視察させていただきました。そして,ルアンパバーンでの日程の最後には,バーシー式典に参加させていただく予定です。この式典は,ラオスの皆さんが人生の節目節目でお互いの幸せを祈念するために行う大切な儀式と伺っております。おかげさまで今回のラオス滞在日程も,また東南アジア3か国訪問の日程全体も無事終わりに近づいてきましたが,ラオスでの残りの日程も有意義に過ごせると確信しております。

貴国の歴史と伝統が凝縮したルアンパバーンを訪問できましたことは,私にとってこの上もない喜びであり,貴重な思い出として私の心に長くとどまることと思います。

終わりに,今回の私の訪問が,日本・ラオス両国の一層の親善関係増進に役立つことを心から祈念し,私の挨拶とさせていただきます。

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