皇太子殿下 スペインご訪問を終えて

皇太子殿下のご感想

(平成20年7月23日)
スペインご訪問を終えて

この度,2008年サラゴサ国際博覧会の開催に当たって,フアン・カルロス国王陛下及びスペイン国政府からのご招待を頂き,私としては5度目となるスペイン国への訪問をいたしました。

まずは,ご招待くださり,現地でも温かいおもてなしをしていただいたフアン・カルロス国王陛下を始め王室の方々,そしてサパテロ首相を始めとする政府関係者の方々に,深く感謝の意を表します。

また,訪れましたマドリード市,カスティーリャ・ラ・マンチャ州及びサラゴサ市などいずれの地におきましても,州知事や市長を始め多くのスペイン国民の皆様に大変温かく迎えていただいたことを心からうれしく思っております。

今回の訪問におきましても,国王王妃両陛下,フェリペ皇太子同妃両殿下よりとてもお心のこもった夕食会にお招きを頂いただけでなく,両殿下にはティッセン・ボルネミッサ美術館の「ミロ展」をご案内いただくなど,大変楽しいご一緒の時間を過ごさせていただきました。

天皇皇后両陛下が長年にわたりお築きになられたスペイン王室との親密な交流の恩恵にあずかるだけでなく,これからも世代を越えて王室との友情を深めていくことができれば幸いと思います。

また,サパテロ首相との会談及び昼食会におきましても,スペイン経済の目覚ましい発展や再生可能エネルギーなど環境問題への取組を始め,日本とスペイン両国間の緊密な経済及び技術の交流や観光,スペインにおける移民問題,さらにはスポーツ界におけるスペイン選手の活躍などにも話が及び,とても有意義でありました。

カスティーリャ・ラ・マンチャ州においては,仕掛け水車跡地,コンスエグラやカンポ・デ・クリプターナでの風車,そして再生エネルギー・オペレーション・センターなど風力や水管理に関係する施設の視察をいたしました。先人たちが自らの暮らしに役立てるため知恵を絞り,工夫を重ねて,風や水などの自然エネルギーを利用してきた歴史の一端を垣間(かいま)見ると同時に,その歴史を現代に生かしている新しいスペインの姿にも触れることができたように思います。同州では,酷暑の中多くの市民の皆さんが街道沿いで,歓迎の手を振ってくれたことも有り難く思いました。

今回の訪問の主目的でありましたサラゴサ国際博覧会の「ジャパンデー」の公式式典に出席できるとともに,国際シンポジウム「水の論壇」において,私の長年にわたる研究テーマでもある人と水のかかわりについて講演をしたことも,私にとりましては極めて貴重な経験になりました。水の問題については,国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁の立場としてはもちろんのことですが,これからも機会をとらえて何かお役に立てればと思っています。また,万博ではスペイン政府を代表して接遇していただいた,ソルベス第二副首相に感謝しております。

万博会場では,日本館やスペイン館のパビリオンはもちろんですが,中国館,フランス館,カスティーリャ・ラ・マンチャ館,アラゴン館も訪れることができ,人類や地球の未来にかかわるあらゆる問題の根底に横たわる水問題について,各館がいろいろな工夫を凝らしてメッセージを発信していることがよく理解できました。

ちょうど3年前の2005年に「自然の叡智(えいち)」をテーマとして我が国の愛知県で開催された「愛・地球博」によって示された新しい国際博覧会の理念を継承して,「水と持続可能な開発」をテーマにしたサラゴサ国際博覧会が,このように成功裡(り)に開催されていることを知り,とてもうれしく思っています。

また,王立植物園での貴重な盆栽のコレクションにも驚きました。フェリペ皇太子殿下にご案内いただいたプラド美術館の改修・拡張工事後の展示館でも,ゴヤを始め多くの作品を鑑賞し,改めてその規模の大きさに感動いたしました。さらに,マドリードの日本人学校とニーニョ・ヘスス小児専門病院での温かい歓迎や,万博会場での「モリゾー・キッコロ・ミュージカル」の楽しい観賞など,いずれの場でも子どもたちと親しい触れ合いの機会を持つことができ,とても良かったと思います。

訪問しましたマドリードとサラゴサの両市において,市長より「いつでも来訪を歓迎します」との意味を持つ市の鍵(かぎ)を授与されたこと,コンスエグラ市では風車の鍵(かぎ)を頂いたことにも,厚く御礼を申し上げたいと思います。それぞれの地では,魅力にあふれた地域色豊かな歴史や文化に触れることができ,とても感銘を受けました。

今回の私のスペイン滞在を通じて,スペインの方々が日本に対して,非常に温かい親近感と高い関心を持っておられることと,スペイン政府と国民の間に日本との良い関係を一層強化したいとの強い熱意を特に感じました。その意味でも,今回の私のスペイン訪問が,16世紀のフランシスコ・ザビエルや天正遣欧使節の往来以来となる長い交流の歴史を持ち,そしてこれからまた幅広い分野において新しいパートナーシップを築こうとしている日本とスペインの友好関係の更なる発展に少しでもお役に立つことを願っております。重ねてになりますが,万博会場を始め訪問先各地において,暑い中多くの皆さんに温かく迎えていただいたことに改めて感謝いたします。

なお,今回の訪問に雅子が同行することができなかったことは残念でしたが,本人もフアン・カルロス国王陛下及びスペイン国政府からのご招待をとても有り難く思っております。また,現地にてお目にかかった多くのスペイン国民の方々から雅子に対し,温かいお見舞いとお励ましの言葉を頂いたことにも厚く御礼を申し上げます。