主な式典におけるおことば(平成23年)

皇太子殿下のおことば

日・プロイセン修好通商条約調印150周年記念式典
平成23年1月24日(月)(国立新美術館)

本日,日独交流150周年日本側名誉総裁として,日・プロイセン修好通商条約調印から150年という節目の日に,多くの関係者の皆さんと共にお祝いできることを大変うれしく思います。

1860年に来日したオイレンブルク伯爵率いるプロイセン使節団は,1861年1月24日,徳川幕府との間で日・プロイセン修好通商条約を締結し,150年の長きにわたる両国の友好と交流の歴史が始まりました。明治維新後の日本にとって,1871年にプロイセンを中心に統一を達成したドイツは,近代化のため模範となった国の一つであり,我が国はドイツから,法学,医学,芸術を始め,様々な分野で多くを学んできました。また,日本の伝統文化も,ドイツの芸術に少なからぬ影響を及ぼしてきました。

その後,日独両国は,戦後,同じような復興と発展の軌跡をたどる中で更に結び付きを強め,今日,基本的価値を共有するグローバルなパートナーとして,日独のみならず広く国際社会の利益のためにも,政治,経済はもちろん,文化,学術分野においても緊密に協力しています。また,両国国民は,相互に親近の情と敬意を有し,国民間の交流も活発に行われています。日独協会,独日協会,ベルリン日独センター,ドイツ東洋文化研究協会といった日独交流を目的とする団体が活発に活動し,また,地方自治体,大学・研究機関,文化機関,企業を始め多くの団体を通じても,活発な日独交流が行われています。

こうした交流のネットワークを背景に,観光やビジネス,留学を始めとした様々な目的を持って,多くの人々が両国を相互に訪問しています。私自身,短い滞在を含め,3回ドイツを訪問しましたが,訪れたそれぞれの都市が,それぞれの異なる歴史や文化を持つ魅力があったこと,また,訪問した先々でドイツ国民の皆様に大変温かく迎えていただいたことが今でも深く心に残っています。

また,私は,音楽などを通じドイツの芸術に深い愛着を感じておりますが,訪問の際に,私たち日本人を魅了してやまないドイツの音楽や絵画に,本場で触れる機会を得たことをうれしく思っています。

日独交流150周年は,これまでの両国の交流の歴史を振り返る機会であると同時に,急速に変貌する世界の中で,未来に向けて日独の協力や交流を深め,新たにしていく機会でもあると思います。日独交流150周年を記念して,日独両国で様々な行事が行われていますが,これらの行事を通じ,日独両国国民それぞれが,これまでの両国間の友好関係に思いをはせるとともに,こういった行事を契機に,今後,政治,経済,文化,学術といった幅広い分野で,交流が更に活発になることを願い,私の挨拶といたします。

Auf ein erfolgreiches Jubilaumsjahr !

Vielen Dank fur Ihre Aufmerksamkeit !

(交流年の成功をお祈りします。ご静聴ありがとうございました。)

第22回全国「みどりの愛護」のつどい
平成23年5月14日(土)(富山県富岩運河環水公園)

挨拶に先立ち,この度の東日本大震災により亡くなられた多くの方々に心から哀悼の意を表します。今回の大震災は,東日本の広範な地域に筆舌に尽くし難い大きな被害をもたらし,今なお多くの被災者が故郷を離れ避難されています。改めて,ご遺族と被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。国内外に広がる助け合いの輪が,被災者一人一人の上に行き届き,苦難を乗り越え再び新しい生活を築き上げるための支えとなることを願うとともに,この災害からの復旧や復興が,一日も早く進むことを期待します。

第22回全国「みどりの愛護」のつどいが,ここ富山県富岩ふがん運河環水公園において開催されるに当たり,日頃から緑の愛護活動に携わっておられる皆さんと共に,出席できることをうれしく思います。

我が国は,緑豊かな環境の中で,四季折々に姿を変える美しい自然の恵みを受け,多様な文化を生み,育んできました。富山県も,三方を北アルプス立山連峰などの急しゅんな山岳地帯に囲まれ,中央には実り豊かな平野が広がり,美しく豊かな自然環境の中で発展してきました。

豊かな緑は,私たちの暮らしにゆとりと潤いをもたらします。この会場である富岩ふがん運河環水公園も県民の皆さんの憩いの場であるとともに,人と自然の共存,緑の保全・育成について考える拠点として活用されていると伺っております。

豊かな緑を創り出し,維持していくためには,長期の視点に立つ計画とその実現に向けて,多くの人たちの粘り強い取組が必要不可欠です。その意味でも,ただ今表彰を受けられた方々の緑の愛護活動への取組は,大変意義深いものであり,皆さんの努力に対し深く敬意を表します。

終わりに,今回のつどいにおいて,全国各地で様々な活動に携わっている皆さんが相互に交流を深め,緑を守り育てる心を新たにされるとともに,緑豊かな環境づくりが一層進んでいくことを願い,私の挨拶といたします。

第47回献血運動推進全国大会
平成23年7月14日(木)(山形国際交流プラザ)

挨拶に先立ち,この度の東日本大震災で亡くなられた多くの方々に,心から哀悼の意を表します。東日本の広範な地域に大きな被害をもたらした震災から4か月余りがたちましたが,今なお,多くの被災者が,全国各地で避難生活を送っています。改めて,ご遺族と被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。

また,被災地で日夜復旧・復興活動に取り組んでいる方々や,被災者の避難生活を支える方々の努力に敬意を表します。そして,この災害からの復旧・復興が一日も早く進むことを願っております。

第47回献血運動推進全国大会が,ここ山形県において開催されるに当たり,全国各地から参加された皆さんと共に出席できることをうれしく思います。

献血は,人と人との助け合い,支え合いの精神に根ざして日本全国に広がり,昨年は,一昨年を超える延べ532万人の方が献血に協力され,輸血を必要としている全国の患者さんに滞りなく血液製剤が届けられたと聞いています。

これも,本日ここに表彰を受けられた方々を始め,献血運動の推進に尽くしてこられた関係者の皆さんの努力と,国民の一人一人の献血への理解と協力により成し得たことであると思います。

近年,急速に少子高齢化が進み,若い世代からの献血が減少している中で,輸血を必要とする患者さんのためには,献血が,全ての世代の国民の協力を得て行われることが必要であり,未来を支える若い世代の方々の理解と協力がますます強く求められています。この度の震災の直後には,若者を始めとする多くの方々が日本全国で献血に協力されたと聞き,心強く思うとともに,震災をきっかけとした献血への取組が,一時的なものにとどまらず,継続的な取組につながることを期待したいと思います。

ここ山形での大会を契機に,国民の健康と命を守る献血への国民の皆さんの協力が,ますます強まり,献血運動の輪が更に広がっていくことを願い,大会に寄せる言葉といたします。

平成23年度全国高等学校総合体育大会総合開会式
平成23年7月28日(木)(新青森県総合運動公園「マエダアリーナ」)

挨拶に先立ち,東日本大震災で亡くなられた多くの方々に,心から哀悼の意を表します。ここ,青森県を始め東日本の広範な地域に大きな被害をもたらした東日本大震災により,今なお,多くの被災者が,各地で避難生活を送っておられます。改めて,ご遺族と被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。

また,被災地で日夜復旧・復興活動に取り組んでいる方々や,被災者の避難生活を支える方々の努力に敬意を表します。そして,この災害からの復旧・復興が一日も早く進むことを願っております。

平成23年度全国高等学校総合体育大会「2011熱戦ねっせん再来さいらい北東北総体」が,全国各地から多数の参加者を迎えて,白神山地や十和田湖など美しく雄大な自然に恵まれ,太古から歴史と文化を育んできた青森県,そして,岩手県,秋田県,宮城県で開催されることを,喜ばしく思います。

選手の皆さんには,日頃鍛えた力と技を十分に発揮し,お互いに友情を育むとともに,地元の方々とも交流を深め,高校生活の良い思い出をつくられるよう願っています。

そして,この大会が,選手の皆さんの活躍と,地元高校生の協力により,東北の被災地の方々への励ましともなるような,すばらしい大会となることを期待します。皆さんのご健闘を心からお祈りします。

第35回「水の週間」水を考えるつどい
平成23年8月1日(月)(科学技術館サイエンスホール)

挨拶に先立ち,3月11日の東日本大震災及びこの度の「平成23年7月新潟・福島豪雨」で亡くなられた方々に,心から哀悼の意を表します。東日本の広範な地域に大きな被害をもたらした震災から5か月がたとうとしていますが,今なお,多くの被災者が,全国各地で避難生活を送っています。改めて,ご遺族と被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。また,この災害からの復旧・復興が一日も早く進むことを願っております。

本日,第35回「水の週間」水を考えるつどいが多くの関係者の出席を得て開催されることを誠に喜ばしく思います。

水はあらゆる生命の根源となる基本的資源であり,我が国は,水資源と水供給施設を守り育てることにより,水がもたらす恵みを受けてきました。

しかしながら,今回の大震災においては,水道施設や工業用水施設,農業水利施設に大きな被害が生じ,水道では少なくとも約230万戸が断水し,被災地の生活に深刻な影響を及ぼしました。水は,私たちの日常生活に欠かすことのできないものである一方で,ときには大きな災害をもたらす恐ろしいものでもあることを,改めて私たちは認識することとなりました。

こうした未有の災害に対し,全国の自治体や関係団体等が協力し,施設の応急復旧や応急給水活動などを迅速に行い,現在も本格的な復旧や復興に取り組んでいます。このような活動に心から敬意を表します。

水は限りある貴重な資源です。水資源を安定的に確保し,その有効活用を図ることは,国民生活を守り発展させるための根幹となるものであり,今後とも,水資源対策が一層充実されることが望まれます。

我が国の発展を支えてきた「水の恵み」を守り続けるためには,多くの人たちの取組が必要です。本日,水資源功績者として表彰される方々の活動は誠に意義深いものであり,そのたゆみない努力に対し敬意を表します。また,作文コンクールとフォトコンテストに入賞された方々に祝意を表したいと思います。

終わりに,「水の週間」の諸行事を通して,水の大切さに対する国民の関心と理解がより一層深まることを願い,私の挨拶といたします。

第44回万国外科学会開会式
平成23年8月28日(日)(パシフィコ横浜会議センター)

Address by His Imperial Highness the Crown Prince
at the Opening of the International Surgical Week 2011
Aug. 28, 2011
Pacifico Yokohama, Kanagawa

First and foremost, I would like to offer my heartfelt condolences to those who died in the great earthquake and tsunami that occurred in East Japan in March of this year. I extend my deepest sympathy to the bereaved families. At the same time, I sincerely pray that there will be a swift recovery and restoration from this disaster. Moreover, I would like to express my sincere appreciation to those people in the medical field both from Japan and abroad, and especially to the surgeons, who participated in the relief activities.

Today I am very pleased to be able to participate in the opening ceremony of the International Surgical Week 2011, together with all of you from around the world.

I am told that the International Society of Surgery is an academic society that involves many fields of surgery on a broad scale. This conference is rooted in traditions that date back to 1905. It brings together surgeons from around the world to discuss numerous issues and there are people from different countries and social backgrounds who are involved in a wide variety of surgical skills. I believe it will serve as an important opportunity for medical advancements in the field of surgery.

Surgery has its origin in the technology to treat injuries. Thereafter, along with progress in anesthesia, surgery not only treats injuries, but deals with the treatment of cancer and endocrine diseases, in addition to inflammations and congenital diseases. Furthermore, through joint research in a great variety of scientific areas such as mechanical engineering, material engineering, optics and biology, safer and more reliable surgical procedures are being progressively undertaken today.

Amid such accomplished developments, and in the face of a rapidly aging society and changing structures in diseases, surgery has greatly contributed to overcoming common problems facing the world. I realize that the ISW has led to much progress in the surgical field.

I have high expectations that the world's wisdom can be mobilized in this conference to help create a new phase of surgery that works in harmony with scientific advances. I hope moreover that the results of this conference will be used further to educate young doctors, and that the findings will be of use in society in general.

Finally, I am confident that this conference will be a fruitful meeting for those concerned with surgical studies, and that the conference will contribute to further developments in the global medical field. I do hope that further advances in surgery will bring about a healthier and happier life for all people around the world.

科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム(STSフォーラム)第8回年次総会閉会式
平成23年10月4日(火)(国立京都国際会館)

Address by His Imperial Highness The Crown Prince of Japan
on the Occasion of the Closing Plenary Session of the Eighth Annual Meeting
of the Science and Technology in Society (STS) forum
Tuesday, October 4, 2011
Kyoto International Conference Center, Japan

Excellencies,
Distinguished participants,
Ladies and gentlemen,

First of all, let me convey my heartfelt condolences to those who perished in the Great East Japan Earthquake and tsunami that occurred in March of this year. Let me also extend my deepest sympathy to the bereaved families and victims. I would also like to take this opportunity to express my sincere gratitude for the support and encouragement we received from all over the world when our country was struck by this enormous disaster.

I am very pleased to participate in the Closing Plenary Session of the Science and Technology in Society forum. This will be my third attendance since this conference started in 2004. I understand that the main objective of this conference is to discuss the "lights and shadows of science and technology." I think it is very important that lively discussions were conducted on this theme here in Kyoto by experts and leaders who represent various parts of the globe. And these discussions are all the more significant because only six months have passed since the Great East Japan Earthquake and the subsequent Fukushima nuclear accident occurred.

I also understand that, during the past three days, while various issues were taken up in discussions, the energy issue was highlighted this year.

The supply of safe and stable energy in the future which is also friendly to the global environment is, and will be, a most crucial challenge for science and technology. It is no exaggeration to say that the sustainable energy supply, in harmony with nature, will be vital to the overall activities of mankind. On the basis of the discussions in this conference, I do hope that all the wisdom of specialists will be mobilized, and that the key to the solutions of these issues might be found for a brighter future for humankind.

Moreover, having listened to this morning's session on "Sustainability for the Future of Humankind," I recognized that the word "sustainability" is a wide-ranging concept, covering not only environmental protection and conservation but also food and population. I welcome the fact that science is at the center of work to conduct research and explore solutions on issues of sustainability in various fields for the benefit of the future of humankind.

Last but not least, let me express my heartfelt wish that this forum will provide a beacon to guide us towards a sound advancement of science and technology that will serve us all.

Thank you.

GEA国際会議2011開会式
平成23年10月14日(金)(東京プリンスホテル)

挨拶に先立ち,3月に発生した東日本大震災で亡くなられた方々に,心から哀悼の意を表しますとともに,ご遺族と被災された方々に心からお見舞いを申し上げ,災害からの復旧,復興が着実に進むことを願っております。また,大災害に直面した我が国に対して,諸外国の皆様から多くの温かい励ましとご支援を頂いたことに対し,深く感謝の意を表します。

国内外から多くの参加者を迎え,GEA(地球環境行動会議)国際会議2011が開催されることを誠に喜ばしく思います。

本会議は,人類生存の基盤である地球環境の更なる悪化を防ぎ,また,持続可能な未来のために,私たちが何をなし,何を推進すればいいのかを改めて問い直すことが開催の目的の一つと聞いております。

また,今年のテーマは「復興を通じた持続可能な社会づくり」であり,先般日本が体験した未曽有の大震災からの復興経験について,世界各国の様々な分野で活躍している方々と共有する貴重な機会であると考えております。

この後,基調講演をされるアドナン・アミンさんを始め,持続可能な社会づくりに不可欠な低炭素技術の開発,効率的な循環システムの構築,自然資源の活用など,それぞれのお立場で先頭に立って持続可能な社会づくりを推し進められている方々が一堂に会し,議論が行われることは誠に意義深いことと思います。

本会議が,世界の人々が繁栄と健康を享受できるすばらしい地球環境を次世代に継承するために,また,私たちと,私たちの子孫,そして全ての生物が,いつまでも地球環境の恵みを享受することができるよう,この会議において活発な議論が行われ,世界に向けて発信されることを期待しています。そして持続可能な社会の構築に向けた具体的な取組が更に進むことを願い,私の挨拶といたします。

第11回全国障害者スポーツ大会開会式
平成23年10月22日(土)(維新百年記念公園陸上競技場)

挨拶に先立ち,東日本大震災並びに本年の度重なる台風及び豪雨により亡くなられた多くの方々に心から哀悼の意を表するとともに,御遺族と被災された方々に心からお見舞い申し上げます。これらの災害からの復旧・復興が一日も早く進むことを願っております。

第11回全国障害者スポーツ大会の開会式に,全国各地から参加された多くの選手,役員,そして開催地である山口県の皆さんと共に出席できることを大変うれしく思います。

この大会が,東日本大震災からの復興を願い,「たちあがれ!東北  がんばろう!日本」の合言葉の下に開催されることは,誠に意義深いことです。

選手の皆さんには,日頃の練習の成果を十分に発揮して,精一杯活躍されるとともに,選手同士はもちろん,多くのボランティアの方々や,地元山口県の皆さんとの交流を深められ,いつまでも心に残る思い出を作ってください。

この大会により,障害者スポーツが発展し,障害者への理解がますます広がり,人々が安心して生活できる社会づくりが更に進むよう希望します。

終わりに,この大会の開催を支えてこられた全ての皆さんの努力に対して,心から敬意を表するとともに,大会のスローガンにふさわしく全ての人の「一生けんめい」に出会える大会となることを願い,私の挨拶といたします。

「ドイツフェスティバル-絆をつなごう  ドイツと日本」
平成23年10月23日(日)(有栖川宮記念公園)

ヴルフ大統領閣下

ドイツフェスティバルに御参加の皆様

ヴルフ大統領閣下,そして多くの皆様と共に,本日のドイツフェスティバルに参加できますことを,心からうれしく思います。

日独交流150周年に当たる本年は,日独両国で大小様々な記念行事が開催されてきました。私も幾つかの行事に参加いたしましたが,本日のドイツフェスティバルは,ドイツの音楽やダンスなどの様々な催し物を通じ,ドイツの文化や歴史を紹介する行事であり,記念事業の中でもハイライトの一つになるものと伺っております。

私は,日独交流150周年の日本側名誉総裁として,本年6月,ドイツを24年ぶりに公式に訪問し,ヴルフ大統領閣下を始め,ドイツ国民の皆様から大変温かい歓迎を受けました。大統領閣下は,大統領御就任以前から日本との関係強化に取り組んでこられた親日家でいらっしゃいますが,今回,日独交流150周年のドイツ側名誉総裁として我が国を公式訪問されましたことを,心から歓迎いたします。閣下は,東京のみならず,地方の多くの都市を訪問されるとのことですが,我が国国民との様々な出会いを通じ,日本への理解と友情が深まるよう心から祈念いたします。

3月の東日本大震災の関連では,私自身,6月のドイツ訪問時に,大変多くの方々から温かいお見舞いの気持ちや連帯の表明を頂きました。本日のイベントでも,ドイツの官民による様々な被災地支援に向けた取組が紹介され,その収益の一部も被災地支援に充てられると伺っています。ドイツからこれまで頂いてきました様々な御支援は,我が国国民を大変勇気付けるものであり,改めて心から感謝の気持ちを表したいと思います。

強いきずなで結ばれた日独の友好関係は,150年にわたる長い交流の歴史の中で,先人たちが続けてきたたゆまぬ交流の努力の結果だと思います。日独交流150周年は,感謝の念を持ってこうした努力を振り返るとともに,両国関係を更に未来につなぐ機会です。本日この場も含め,交流年を契機として行われた様々な行事を通じ,日本とドイツのきずなが更に深まることを希望いたします。

本日は,この後,大統領閣下と共に,ここ有栖川宮記念公園内に菩提ぼだい樹を植樹します。私がドイツを訪れた際,大統領閣下と御一緒に日本の代表的なである桜をドイツの地に植樹いたしましたが,ドイツを代表するの一つである菩提ぼだい樹の苗木を,大統領閣下の訪日の機に,閣下と日本で植樹できることは大変感慨深いものがあります。本日植えます菩提ぼだい樹が,日独友好の象徴として大きく育ち,毎年,豊かな新緑を芽吹くことを心から祈念し,私の挨拶といたします。

Vielen Dank für Ihre Aufmerksamkeit !

(御静聴ありがとうございました。)

第26回国民文化祭・京都2011開会式
平成23年10月29日(土)(国立京都国際会館)

第26回国民文化祭の開会式に,皆さんと共に出席できることをうれしく思います。

京都府は,我が国の政治や文化の中心地として,千年を超える歴史を有し,海を越えて渡来する文化を取り入れながら,日本文化の基本を形成してきた「こころのふるさと」と言える地域です。また,長い歴史を通じて,常に時代の変化に対応し,今なお,伝統文化の中心であるとともに,新しい文化を創造し続けています。

この京都の地において,全国,さらには海外からも,様々な文化活動に取り組まれている方々を迎え,国民文化祭が開催されることは,誠に喜ばしいことであります。関係者の皆さんが開催のために払われた努力に対し,心から敬意を表します。

特に今回は,東日本大震災からの復興に向けて,国民一人一人がこころを一つにして取り組んでいる中で開催されます。文化の持つ力を大いに発揮し,人々に勇気と明るさを与えるものとして,国民文化祭が大きな役割を果たすことを期待しています。

京都では,「こころを整える~文化発心ほっしん」という大変奥深いテーマを掲げて取り組んでこられました。日本文化と日本人の精神性を見直し,次の世代に継承するため,大切にしたい日本の「こころ」のメッセージを募集し発信するなど,多彩な取組が進められていると伺っています。

こうした取組を通じて,国内外の参加者と地元の皆さんの交流の輪が広がり,人と人のきずなが深まるとともに,地域の文化を再認識し,新たな文化を創造していく場として「国民文化祭・京都2011」が大きな成功を収めることを願い,私の挨拶といたします。

第14回全国農業担い手サミットin長野
平成23年11月15日(火)(長野県松本文化会館)

挨拶に先立ち,本年3月11日の東日本大震災,3月12日の長野県北部で発生した地震及び本年の度重なる台風と豪雨により亡くなられた多くの方々に心から哀悼の意を表するとともに,御遺族と被災された方々に心からお見舞い申し上げます。これらの災害からの復旧・復興が一日も早く進むことを願っております。

第14回全国農業担い手サミットin長野に,全国各地から参加された皆さんと共に出席できることを,うれしく思います。

農業は,食料の供給を通じて人々の暮らしと健康を守っています。また,水を育み,国土を保全し,緑豊かな魅力ある景観をつくり出すとともに,様々な地域の文化を生み出してきました。

皆さんが,このように重要な役割を持つ農業を担い,農村のリーダーとして地域の振興に積極的に取り組んでこられていることを,大変心強く感じます。

ここ長野県は,四季の変化に富んだ自然環境の下,農業の担い手である皆さんの努力により,穀物や果樹,野菜,畜産物など多様な品目がバランス良く生産され,全国有数の農業県として発展するとともに,農業・農村の活力を維持するための様々な取組を進めていると伺っております。

本大会において,農業の担い手である皆さんが,県内各地の地域交流会を通じて,互いの知識や技術を交換し合い,自らの経営や日頃の活動を語り合うことで,研さんを深められ,様々な困難や課題を克服して,将来に向けて日本の農業を担っていかれることを願い,私の挨拶といたします。

第35回全国育樹祭
平成23年11月20日(日)(平城宮跡)

挨拶に先立ち,本年3月11日の東日本大震災及び先の台風12号による災害により亡くなられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに,御遺族と被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。また,災害からの復旧・復興が一日も早く進むことを願っています。

第35回全国育樹祭が全国各地から多くの参加者を迎え,ここ平城宮跡において開催されることを喜ばしく思います。

奈良県は,三つの世界遺産に見られるように,古代からの文化財と美しく豊かな自然景観に恵まれた地であります。特に,南部地域には,吉野林業として全国に知られた林業地域があり,この地域特有の自然環境もよく残されており,林業関係者を始め県民のたゆみない努力の賜物(たまもの)であると思います。

私は平成2年に山上(さんじょう)(たけ)から弥山(みせん)へ縦走しましたが,その折,大峯(おおみね)の緑の豊かさに感銘を受けるとともに,この自然と歴史を維持する上で関係者が払われている努力に思いをはせたことを懐かしく思い出します。

先ほど,私は,昭和天皇がお手植えになりましたイチイガシの手入れを行い,30年の歳月の間に,力強く成長している姿に深い感慨を覚えるとともに,樹木は,苗木から長年にわたり,愛情を持って守り育てていくことが必要であることを強く感じました。

森林は,美しく豊かな国づくりの基礎であり,国土の保全,水源の(かん)養等,私たちに限りない恩恵を与えてくれています。また,最近では,地球温暖化防止や生物多様性の保全など,地球環境の保全に果たす役割もますます重要視されております。

こうした森林の大切さを思うとき,緑を守り,育んできた技術や文化を次の世代に確実に引き継いでいくことは,私たちに課せられた大きな役割であろうと考えます。

こうした中,本日表彰を受けられる方々を始め,日頃から各地域において国土の緑化に尽力されている全国の皆さんに敬意を表するとともに,そうした活動が,更に多くの人々により支えられ,発展していくことを期待します。

終わりに,折しも国際森林年の今年,この度の大会テーマ「古都からの あふれる緑 未来へと」にふさわしく,豊かな森林・緑を守り育てる活動の輪が,ここ奈良の地から,世界へ,そして未来へと大きく広がっていくことを切に願い,私の挨拶といたします。

千代田区立番町小学校創立140周年記念式典
平成23年12月4日(日)(千代田区立番町小学校)

番町小学校の創立140周年を,創立120周年記念式典に出席して以来20年ぶりに,皆さんと共にお祝いできることを誠に喜ばしく思います。

この番町小学校が開校式を行ったのは,日本の近代教育の始まりである学制公布の前の年,明治4年の今日でした。そして,どんな地域にも等しく教育を行き渡らせるという学制の精神を,全国に先駆けて実践した学校の一つが,この番町小学校でした。それから140年,日本の小学校教育は大きく発展し,国民の人間形成に欠かせない役割を担うようになりました。

番町小学校が,そうした教育発展の先達の一つとして,この140年間に果たしてきた役割には誠に大きなものがあると思います。この間,幾多の困難を乗り越え,良き伝統を築き上げてこられた多くの方々の多大な努力に対し,心から敬意を表します。

本日は,この式典の後,明治から現在に至るこの地域の歴史を調べたり,この地域の未来を想像したりして作った児童の皆さんの作品を見ることを楽しみにしております。今この学校に学ぶ児童の皆さんは,創立140周年の節目に学んでいることをきっかけとして,是非歴史を学び,多くの人々の熱意と取組がこの学校を支えてきたことを思い,またそうした歴史の下,この地域の未来に一人一人が思いをはせていただきたいと思います。

特に今年は,東日本大震災が発生した年であり,この番町小学校にも,東日本大震災の被災地から避難してきた皆さんも友達として加わったと伺っております。児童の皆さんは,こうした新しい仲間たちと共に,お互いに思いやる心を持って,明るい未来を築くよう,また,共に学び,進んでいかれるよう願っています。

終わりに,社会が著しく変化する今日,人間形成の基盤としての初等教育への期待はますます大きくなっています。これからの小学校教育の発展と充実のために,関係者の皆さんが力を合わせ,努力されていくことを期待し,お祝いの言葉といたします。