主な式典におけるおことば(平成15年)

皇太子殿下のおことば

第58回国民体育大会冬季大会スケート競技会・アイスホッケー競技会開会式
平成15年1月25日 (土)(群馬県総合スポーツセンターぐんまアリーナ)

第58回国民体育大会冬季大会スケート競技会・アイスホッケー競技会の開会式に,全国から参加された多くの選手,役員,そして地元群馬県の皆さんと共に出席できることを,大変うれしく思います。

国民体育大会は,多くの関係者の熱意と努力に支えられ,スポーツの振興と国民の健康増進に大きな役割を果たしてきました。

この大会に参加される選手の皆さんが,日ごろの練習の成果を十分に発揮されるとともに,お互いの友情をはぐくみ,地元の皆さんとの交流を深められることを期待しています。

上毛三山(じょうもうさんざん)を始めとする,美しく豊かな自然に恵まれたこの地で開催される「群馬国体」が,いつまでも皆さんの思い出に残る,実り多い大会となることを願い,私のあいさつといたします。

第5回アジア冬季競技大会青森2003閉会式
平成15年2月8日 (土)(新青森県総合運動公園「青い森アリーナ」)

第5回アジア冬季競技大会青森2003は,大会に参加した選手,役員,関係者の皆さんの熱意と努力に支えられ,輝かしい成果を残して,今日,ここに閉会することとなりました。

アジア各国,各地域から多くの選手,役員の方々を迎えた今回の大会が,アジア冬季競技大会の歴史上,最大規模の大会として,人々に大きな夢と感動を与えるものとなったことを大変うれしく思います。

21世紀のアジアの未来を担う人々が,青森の地に集い,大会を通じて交流を深め,友情をはぐくむことができたことと信じております。

アジア冬季競技大会及びこの大会を主催するアジアオリンピック評議会が,今後とも,アジアの友好と相互理解の増進に寄与するとともに,平和の懸け橋として,その役割を果たしていくことを心から希望し,私のあいさつといたします。

第3回世界水フォーラム開会式
平成15年3月16日(日)(国立京都国際会館)

Address by His Imperial Highness the Crown Prince
on the occasion of the Opening Ceremony of the 3rd World Water Forum
Sunday, March 16, 2003
Kyoto International Conference Hall

Your Royal Highnesses,
Your Excellencies,
Ladies and Gentlemen,

I am greatly pleased that the 3rd World Water Forum is bringing together so many participants from all over the world, to be held here in the Lake Biwa and Yodo River Basin, which connects Kyoto, Shiga and Osaka.

Water is essential for the existence of all living creatures. All four of the great ancient civilizations flourished alongside large rivers, and this bears witness to the fact that water is a blessing for humanity in many ways, including nourishment and transportation.

But this water is now in a stage of crisis.

Crises caused by water-related problems such as water shortages, water pollution and floods have been spreading all over the world, and due to the rapid increase of the world's population, this situation is expected to become even more serious. On the other hand, there is an increasing need to rediscover the merit of water as an efficient medium for transportation. Furthermore, I believe that spreading education on water has increased its importance for various reasons including the safe utilization of water.

For these reasons, the 21st century is rightly called "the century of water".

In order to resolve these diverse water issues, international organizations, governments and experts, as well as many individuals and groups such as NGOs working at the grassroots level, are gathered at this 3rd World Water Forum to mobilize all their wisdom, not only to discuss these issues, but also to search for concrete measures for initiating actions.

At "the World Summit on Sustainable Development" held last September in Johannesburg, a great many people expressed the expectation that the 3rd World Water Forum would provide an opportunity to verify the outcome of the Summit.

In the interest of creating a bright and promising 21st century, I wish to close by expressing sincere hope that your active discussions at the Water Forum, and a network of firm actions will expand around the world, so that we may be able to move step by step towards the resolution of world water issues.

第26回日本医学会総会・日本医学会100周年記念総会祝典
平成15年4月5日 (土)(福岡サンパレス)

日本医学会100周年記念総会祝典が,多くの医学関係者の参加の下に開催されることを,誠に喜ばしく思います。

日本医学会総会は,明治35年に第1回目に当たる日本聯合医学会が開催されて以来,今回で100周年という大きな節目を迎えられております。

日本の医学は,この100年の間に大きな進歩を遂げました。

20世紀初頭には,伝染病の流行や公衆衛生の不備のため,平均寿命はまだ50歳にも達していませんでした。その後の予防接種や抗生物質の普及,公衆衛生の整備,さらに診断技術の進歩などには,目覚ましいものがあります。近年は,高度な医療技術により,かつては難病といわれていた病気でさえも救命できるようになり,国民は大きな医療の恩恵を受けています。そして,今では日本は世界一の長寿国になりました。

ここに,これまで医学の発展に尽くしてこられた関係者の努力に対し,深く敬意を表します。

21世紀には,少子高齢社会に対応した新生児医療や老人医療のますますの充実と,更なる先端医療の発達などが期待されます。ヒトゲノムも,近く,ほぼ完全に解読されると聞いています。他方,急速な先端医療の発達は,例えば遺伝子技術の導入に際しての倫理面の問題など,新しい課題も生み出しています。さらに,患者と医師相互の信頼関係の下に,患者の立場に立った医療が行われることも,とても大切だと思います。

この点からも,信頼に足る,質の高い医療を目指して,人間科学と医学・医療という重要なテーマを議論するこの総会は意義深いものであり,その成果が,アジアの交流拠点である福岡から,世界へ大きく発信されることを期待いたします。

21世紀最初に行われる総会に当たり,日本医学会が人々の健康と福祉の増進のために,より一層貢献していかれることを願い,記念祝典に寄せる言葉といたします。

第14回全国「みどりの愛護」のつどい
平成15年4月26日 (土)(国営明石海峡公園淡路地区)

第14回全国「みどりの愛護」のつどいが,8年前の阪神・淡路大震災からの復興が進む中,美しい緑と多くの花に満たされた国営明石海峡公園で行われることをうれしく思います。

豊かな緑は,私たちの生活に潤いと安らぎをもたらすとともに,地球温暖化の抑制,大気の浄化,さらに,災害の防止などの面でも大切な役割を果たしています。緑を守り育てていくことは,人類共通の課題であり,私たちはこのことに大きな責任を負っていると思います。

ただ今表彰を受けられた方々の「みどりの愛護」への取組は,それぞれ大変意義深いものであり,これらの方々の熱意と努力に対して深く敬意を表します。

今回のつどいにおいて,日ごろから全国各地で様々な活動に携わっている皆さんが,相互に交流を深め,緑を守り育てる心を新たにされるとともに,これを通じて,緑豊かな環境づくりが地球規模で一層進んでいくことを願い,私のあいさつといたします。

第22回世界ガス会議東京大会開会式
平成15年6月1日 (日)(東京国際フォーラム)

国内外から多数の参加者を迎え,「環境調和型未来をめざして」のテーマの下に,日本において初めて第22回世界ガス会議東京大会が開催されることを,大変うれしく思います。

エネルギーは,人々の豊かな生活と経済社会の発展にとって欠くことのできないものですが,一方で,その大量消費に伴い,地球温暖化等環境に大きな影響を及ぼすため,今日,エネルギーと環境にかかわる地球的規模での諸課題と,その解決策に対して,世界の関心が高まっています。

このような中で,環境負荷が小さいエネルギーである天然ガスの普及を通じて,地球環境問題に貢献するため,各国の英知が一堂に会し議論を深めることは大変重要であります。そして,世界のエネルギー産業にとっても,これからの進むべき方向性を,幅広い視点から検討し,有意義な情報を世界に向けて発信するこの大会の意義は,極めて大きいものがあります。

今回の大会は,21世紀に入り初めて開催される世界ガス会議であります。大会を通して,21世紀全体を見据えた議論が活発に行われ,世界の平和と人類の幸福に明るい展望を開く契機となることを期待し,私のあいさつといたします。

第39回献血運動推進全国大会
平成15年7月10日 (木)(茨城県立県民文化センター)

第39回献血運動推進全国大会に全国各地から参加された皆さんと共に出席できることをうれしく思います。

献血は国民の医療の重要な一翼を担うもので,安全な血液の安定的な供給の確保を目指して,これまで多くの努力が続けられてきました。最近では,成分献血及び400ミリリットル献血の推進が図られ,年間578万人の方々の協力を得て,輸血用血液についてはすべて献血による国内自給が達成されていると聞いております。さらに,本年7月30日から,献血による血液製剤の国内自給を目指して,新たに「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」が施行されることとなりました。

献血を通して人と人とが支え合い,助け合うことは,多くの人道的活動につながっていく心をはぐくむものでもあります。本日ここに,表彰を受けられた方々を始め,献血運動推進にかかわってこられた皆さんのたゆみない尽力と,献血をされた一人一人の協力に対して,深く敬意を表したいと思います。

最後に,この茨城大会を契機に,幅広い国民の皆さん,とりわけ若い人たちの献血への理解と協力がより一層深まり,献血運動の輪が広がっていくことを希望して,大会に寄せる言葉といたします。

第44回国際数学オリンピック日本大会閉会式
平成15年7月18日 (金)(渋谷公会堂)

この度,第44回国際数学オリンピック日本大会の閉会式に,世界各国から参加された皆さんと共に出席できることをうれしく思います。

数学は,すべての科学や技術の基礎として極めて重要な学問であり,輝かしい歴史を持っています。そして近年,数学は,経済学など社会科学の分野でもますます重要視されるようになっており,さらに,新しい学問や技術の発展に伴って,今後その重要性は一層大きくなっていくものと思います。

実は,私自身は,小学校時代の算数,中学・高校時代の数学は,必ずしも得意な科目だったとは言えませんが,問題が解けた時のうれしさは格別なものがありましたし,数学の勉強は,論理的な思考を培う上でも重要なものだったと思います。

また,数学の勉強を通じて養われる豊かな想像力,深い洞察力は,皆さんが今後次世代を担うリーダーとして活躍する上で,欠くことのできない資質だと思います。これまで,国際数学オリンピックは,数学者だけでなく,様々な分野で活躍する人材を数多く輩出してきたと聞いています。

国際数学オリンピックが,数学的才能に秀でた若い人たちを見いだし,その成長を助け,その能力を競う場を提供し,多彩な文化を背景とする世界中の同世代の仲間と交流する機会を提供してきたことは,誠に意義深いものと思います。関係者のこれまでの努力に敬意を表するとともに,国際数学オリンピックの活動が今後一層充実していくことを希望します。

最後に,世界各地からこの大会に参加された皆さんが,更にお互いの交流を深め,その恵まれた能力を存分に発揮し,世界の発展に大きく寄与されることを期待して,私のあいさつといたします。

第15回全国農業青年交換大会開会式
平成15年7月23日 (水)(朱鷺メッセ(新潟コンベンションセンター))

あいさつに先立ち,先の九州各地での豪雨により亡くなられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに,御遺族,被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げます。

本日,第15回全国農業青年交換大会に,全国各地から参加された皆さんと共に出席できることを,うれしく思います。

近年,私たちの生活の根幹の一つである食を担う農業や,安全で安心な食べ物に対して,国民の関心が一段と高まってきていると思います。

そのような中で,全国の農業の担い手である皆さんが,農業青年クラブ活動などを通して,時代の要請に応じた農業技術や経営の改善に努め,また若手リーダーとして地域で活躍されていることを,大変うれしく思います。

農業は,生きているものを育てるものであり,それは,大きな苦労も伴うものだと思います。私は,農業に従事される方々以外にも,子供たちを含め,より多くの人々が,農業という生きものを育てる営みに伴って感じる喜びと苦労を体験する機会を持っていただきたいと思います。

新潟大会では,対話の「話」,親和の「和」,友情の「環」の三つの「わ」をテーマにしていると伺っております。今回各地から集まった皆さんには,新潟の豊かな自然や文化に触れるとともに,日ごろ培われた知識,技術や,研究の成果などを交換し合い,また夢を語り合うことにより,未来につながる友情を深められることを期待します。

最後に,皆さんが,各地域の中核となって,若々しい感性とたくましい行動力で,様々な課題に積極的に取り組み,我が国の新しい時代の農業を築いていかれることを願い,私のあいさつといたします。

平成15年度全国高等学校総合体育大会総合開会式
平成15年7月28日 (月)(長崎市総合運動公園かきどまり陸上競技場)

平成15年度全国高等学校総合体育大会が,全国各地から多数の参加者を迎えて,美しい自然と豊かな歴史・文化に恵まれた,ここ長崎の地で開催されることを,喜ばしく思います。

選手の皆さんには,日ごろ鍛えた力と技を十分に発揮し,お互いに友情をはぐくむとともに,地元の方々とも交流を深め,すばらしい思い出をつくられることを願っています。

そして,この「2003年長崎ゆめ総体」が,選手の皆さんの活躍と地元高校生の協力により,実り多い大会となることを期待します。

皆さんのご健闘を心からお祈りします。

第9回日本アグーナリー「石川の夕べ」開会式
平成15年8月3日 (日)(珠洲市りふれっしゅ村鉢ヶ崎)

日本各地から参加された多くのスカウト・指導者の皆さんと共に,能登空港が開港した能登・珠洲の地で開かれる,第9回日本アグーナリー「石川の夕べ」に参加できることを,うれしく思います。

「広がる夢 友情の輪」-あいことばは“We Can”- をテーマとする今回のアグーナリーでは,スカウトの皆さんが,キャンプ生活や多くのプログラムに参加する中で,スカウト同志の心の触れ合いと,共通体験を通し,「自分たちも出来るのだ」という自信を持って,様々な活動に積極的に取り組んでいると聞き,大変頼もしく思っています。

スカウト活動が,すべての青少年にとって開かれた運動であることを,皆さんが実感し,このアグーナリーへの参加を契機に,明るい未来を築かれることを願って,私のあいさつといたします。

第16回アジア知的障害会議開会式
平成15年8月21日 (木)(つくば国際会議場)

第16回アジア知的障害会議が,アジア諸国を始め世界各国から参加者を迎え,このつくばの地で開催されますことを大変うれしく思います。

国際連合の提唱による1981年の国際障害者年のテーマは,完全参加と平等でした。それから20数年たち,障害の有無にかかわらず,誰もが共に学び,共に暮らすことのできる社会を目指して,世界中で様々な努力が積み重ねられてきています。しかし,知的な障害のある人々にとって,社会の中で障害が理解されにくいこと,発言の機会が少ないことなど,いまだに困難な課題が残されているとも伺っています。今回の会議では,我が国で初めて知的障害のある人々自身によるシンポジウムが「主体性の確立と完全参加」をテーマに開かれますが,これも社会参加を進める上で誠に意義深いものであると思います。

私たちも,毎年秋に開かれる障害者スポーツ大会,今月初めに開かれたアグーナリー大会の障害者によるスカウト活動,全国各地の福祉施設の訪問など,いろいろな場で障害のある人々と一緒に得た思い出や感動が,今も数多く心に残っています。

今回のアジア知的障害会議において,知的障害のある人々とその家族を中心にして,医学,教育,心理学,福祉,労働などの専門家が共に集い,知恵を出し合い,その成果を実践につなげていくことを通じて,知的障害のある人々の主体性の確立と社会への完全な参加が一層進んでいくことを願い,私のあいさつといたします。

2003年ローエイシア東京大会開会式
平成15年9月2日 (火)(ホテルニューオータニ)

Address by His Imperial Highness the Crown Prince
on the Occasion of the Opening Ceremony of the 18th Biennial Conference of LAWASIA
Tuesday, September 2, 2003
Hotel New Otani, Tokyo

Honorable Chief Justices,
Minister of Justice,
Ladies and Gentlemen,

I am greatly pleased that the 18th Biennial Conference of LAWASIA 2003 has brought together so many legal professionals and jurists from around the Asian and Pacific region.

Characteristic phenomena within the region today include remarkable economic development as well as the emergence of legal issues such as environmental protection. Under these circumstances, it is desirable to work towards a fair social structure based upon the rule of law. For this purpose, it is becoming more important to establish an effective system of legal training and to improve legal infrastructure, while also promoting the exchange of information and experiences.

From this viewpoint, it is very timely that legal professionals in the region get together and exchange views on the various problems which face the region. It is also very significant that the Chief Justices of each country are here to discuss, from a broad perspective, the necessity of establishing a fair and neutral judiciary.

I wish to close by expressing the sincere hope that your active discussions at this conference will aid the promotion of friendship and mutual understanding in the Asian and Pacific region, and will contribute to the establishment of a legal framework that will open the prospect of a brighter future for all people.

第6回世界周産期学会開会式
平成15年9月13日 (土)(大阪国際会議場)

第6回世界周産期学会が,世界各国から多数の参加者を迎え,ここ大阪で開催されますことを,うれしく思います。

近年周産期学では,幅広い分野での国際交流への機運が高まり,1991年には,第1回の国際周産期学会が東京で開催され,その後世界周産期学会として,充実した活動を続けてこられたと伺っております。

次世代の命を健やかにはぐくむことは,時代や国を超えて,私たちの共通の願いです。この願いをかなえるために,周産期医療の現場で昼夜を問わず活動される方々のたゆみない努力に,心から敬意を表します。

女性の妊娠から子供の誕生・成長過程を通して,母親の健康,妊娠分娩(べん)時における注意深い処置や対応と,新生児の育児,小児の成長に関し,一貫した考えと仕組みが必要です。そのためにも,産婦人科医・小児科医を始めその他様々な専門知識を有する幅広い分野の方々が協力し,それぞれの知恵を結集しなければならないと思います。私自身,一昨年の子供の誕生を通して,妊娠中や出産時の医療の大切さを実感するとともに,その後の子供の成長を目の当たりにし,多くのことを学んできました。

ここ数十年,周産期医療の進歩には目覚ましいものがあり,安全な医療環境を多くの人々が享受できるようになりました。しかしながら,世界の中には,これらの医療の進歩の恩恵にあずかることのできない人々も少なくありません。このような中で,世界的規模で,最新の知識交流が行われ,幅広い分野の仕事に従事する方々の英知を結集して,それぞれの国の実情に適した活動が促進されることを希望します。

本学会が,周産期医療に従事する方々の研鑽(さん)の場,国際交流の場として実りあるものとなり,世界の母子保健に貢献することを期待するとともに,その成果が地球上のあらゆる地域に及ぶことを心から願って,あいさつといたします

第18回国民文化祭・やまがた2003開会式
平成15年10月4日 (土)(山形市総合スポーツセンター)

「紅花(べに)のくに 咲かそう文化 ときめく未来」をメインテーマとする,第18回国民文化祭の開会式に,皆さんと共に出席できることを大変うれしく思います。

山形県は,月山(がっさん),鳥海山(ちょうかいさん)などの秀麗な山々に囲まれ,内に広がる田園地帯を最上川が貫流しております。山形県の多彩な文化は,この最上川の豊かな流れと美しい自然の中ではぐくまれてきました。

この山形の地において,県内44すべての市町村の参加の下,全国,さらには海外から,様々な文化活動に取り組まれている多くの方々を迎え,国民文化祭が開催されることは,誠に喜ばしいことであります。ここに,関係者の皆さんの御努力に対し心からの敬意を表します。

国民の文化へ寄せる関心の高まりとともに,近年,様々な芸術文化活動が全国各地で盛んに行われています。このような中で,それぞれの地域の特色をいかしながら我が国の優れた伝統文化を継承し,新しい文化を創造する活動を発展させる場として,国民文化祭の果たす役割には大きなものがあります。

この度,山形県内各地で開催される多彩な催しを通して,国内外からの参加者と地元の皆さんの交流の輪が広がるとともに,創造性豊かで活力あるふるさとづくりが進んでいくことを願い,私のあいさつといたします。

第18回世界宇宙飛行士会議開会式
平成15年10月13日 (月)(東京国際交流館プラザ平成)

第18回を迎える世界宇宙飛行士会議が,この度初めて日本において開催され,このように世界の国々から参加された皆さんとお会いできますことをうれしく思います。

太古の昔から満天の星空は,人類にとって大きな関心の的でした。そして,宇宙を探検することは,長い間人類の夢でした。その夢がかなって,1961年に初めての有人宇宙飛行,1969年に初めての月面探検と,宇宙探検の歴史が始まりました。宇宙飛行士の皆さんの目を通して地球を外から眺めることにより,地球は生命の源である水をたたえた本当にただ一つの掛け替えの無いものであることが,全世界の人々にはっきりと分かりました。

私自身,世界初の宇宙飛行を行い「地球は青かった」の有名な言葉を残したガガーリン少佐の話や,「私はカモメ」と言った世界初の女性宇宙飛行士テレシコワさんの話を小学生の時に学んだこと,そしてアポロ11号による初めての月面着陸の様子を興奮しながらテレビで見ていたことを懐かしく思い出します。

宇宙探検の歴史は,数多くの宇宙飛行士の方々による輝かしい成功と共に,尊い犠牲の上に発展してきたことを忘れることはできません。今年2月,スペースシャトル・コロンビア号の事故で7人の尊い命が失われたことに深い悲しみを覚えます。このような事故を乗り越えて,宇宙飛行の更なる安全性の確保が図られ,人類の宇宙への歩みをこれから一層進めていくためにも,世界の宇宙飛行士の方々によるこの会議が重要な意味を持つものと思います。

今回は,「宇宙と教育」をテーマとし,行事の一環として,参加された宇宙飛行士の方々が,日本全国を訪問して各地で青少年との交流の機会を持つ計画と伺っていますが,これは日本の青少年が宇宙や科学技術への興味を深める大変良い機会となると思います。また,各国の宇宙飛行士の方々は,これまで宇宙から日本を御覧になっていると思いますが,今回は地上に降りて日本の各地をご覧になり,そこに暮らす私たちの歴史や文化への理解を深めていただきたいと願っております。

終わりに,この会議が人類の発展と地球環境の保全に向けた実り多い議論の場となることを希望して,私のあいさつといたします。

平成15年度GEA地球環境国際会議開会式
平成15年10月24日 (金)(キャピトル東急ホテル)

GEA地球環境国際会議が,国内外から多くの参加者を迎え,開催されることを大変うれしく思います。

かけがえのない地球環境は,私たちが将来の世代に対し,責任を負っているものであり,これを守り,受け継いでいくことは私たちの責務です。

「環境の世紀」とも言われる21世紀の今日,地球環境の悪化を防ぎ,持続可能な未来を築くために私たちが何をすべきか,改めて問い直し,国際協力の下に具体的な行動を起こすことが必要です。

持続可能な未来を実現していくためには,自然が生み出した資産である天然資源を賢明に利用すること,そしてそれを支える知恵と技術を持つ人を育てる環境教育を進めることが大切です。あわせて,このために,今日の優れた情報技術を適切に活用することが望まれます。

この会議において,活発な議論が行われ,持続可能な未来のための方策が示されることは,大変意義深いものと思います。そして,その成果が,世界に向けて発信され,各国において,具体的な取組が更に進むことを願い,私のあいさつといたします。

第27回全国育樹祭
平成15年10月26日 (日)(愛知県)

第27回全国育樹祭が,全国各地から多くの参加者を迎え,ここ愛知県緑化センターにおいて開催されることを喜ばしく思います。

愛知県は,大都市圏の中心に位置しながら,公園や街路樹などの都市の緑,農地や里山などの近郊の緑,山間の森林の緑など,豊富な緑に恵まれた環境にあります。長年にわたり緑を守り育ててこられた県民と林業関係者の皆さんのたゆみない努力の賜物(たまもの)であると思います。

森林は,美しく豊かな国づくりの基礎であり,私たちに限りない恩恵を与えてくれています。今日では特に,地球温暖化の防止など地球環境の保全に果たす役割が重視されており,間伐などにより健全な森林を整備していくことが強く求められています。近年,林業に携わる方々の努力に加え,森林ボランティア活動などによる森林の整備・保全活動が活発になってきていることは,大変喜ばしいことです。

このような中で,本日表彰を受けられる方々を始め,日ごろから各地で国土の緑化に尽力されている皆さんに敬意を表するとともに,そうした活動が更に発展していくことを期待します。

終わりに,この度の大会を機に,この地から全国に向けて育樹の大切さが発信され,国民一人一人の参加により,将来にわたって豊かな森林・緑が守り育てられ,引き継がれていくことを切に願い,私のあいさつといたします。

第30回「日本賞」教育番組国際コンクール授賞式
平成15年11月5日 (水)(NHKホール)

「日本賞(にっぽんしょう)」教育番組国際コンクールが,第30回という記念すべき年を迎え,世界各国から参加された皆さんと共に,授賞式に出席できることをうれしく思います。

国際社会がますます多様化し複雑化する中で,教育は世界共通の課題として,一層大切になってきていますが,「日本賞(にっぽんしょう)」は,1965年の創設以来,放送が教育に果たす使命を追求し,世界の教育放送の向上に大きく貢献するとともに,世界各国間の相互理解を深める役割を果たしてきました。

私は,1989年の第17回「日本賞(にっぽんしょう)」以来,授賞式に出席し,世界の教育番組の発展を見てまいりましたが,最新の技術や豊かな表現を用いて,多様なテーマに取り組む制作者の皆さんの熱意には,毎回深い感銘を受けております。

今年のコンクールでは,「こどもの願い・おとなの約束」のタイトルで記念事業を展開し,また新たに「番組企画部門」が設けられ,3部門合わせて137の機関から244本の作品が参加し,38年の歴史の中でも最大の規模になったと伺っております。教育番組の向上に力を尽くし,「日本賞(にっぽんしょう)」の歴史を支えてこられた世界の放送関係者や教育関係者の方々の努力を,高く評価したいと思います。

今回新しく設けられた「番組企画部門」が,様々な環境の下で教育番組作りに取り組んでいる世界各地の制作者の皆さんを,力付け励ますために新たな貢献を果たすことを大いに期待します。また,世界各国の皆さんが,教育の諸問題への認識を深め,子供たちの未来に,そしてよりよい明日の社会を築くために,たゆみない努力を重ねられることは,誠に意義深いものであると思います。

「日本賞(にっぽんしょう)」教育番組国際コンクールが,今後も一層発展していくことを願い,私のあいさつといたします。

第3回全国障害者スポーツ大会開会式
平成15年11月8日 (土)(エコパスタジアム:静岡県)

全国各地から参加された多くの選手,役員の皆さんと共に,第3回全国障害者スポーツ大会「わかふじ大会」の開会式に出席できることを,大変うれしく思います。

全国障害者スポーツ大会は,国内最大の障害者スポーツの祭典として,今年はここ静岡県で第3回の大会が開かれることとなりました。今年の大会では,すべての人が楽しく参加し観戦できるよう配慮した「ユニバーサルデザイン」の考え方を実践する大会を目指していると伺っています。

参加される選手の皆さんには,日ごろの練習で培った力を十分に発揮されることを期待します。また,選手同士の友情をはぐくむと同時に,多くのボランティアの皆さんや地元静岡県民の皆さんとも交流を深め,たくさんの思い出を作ってください。

終わりに,この大会の開催を支えてこられたすべての皆さんの努力に対して,心から敬意を表するとともに,「静岡で かなえよう夢 つたえよう感動」のスローガンにふさわしく,参加された一人一人の夢がかない,感動が広く伝わる素晴らしい大会となることを願い,私のあいさつといたします。

第7回アジア・オセアニア国際老年学会議開会式
平成15年11月24日(月)(東京国際フォーラム)

Address by His Imperial Highness The Crown Prince
on the Occasion of the Opening Ceremony The 7th Asia/Oceania
Regional Congress of Gerontology
November 24, 2003
at Tokyo International Forum

Ladies and Gentlemen,

It is a great pleasure to see the 7th Asia/Oceania Regional Congress of Gerontology being held here with many participants from around the world.

We are now in the 21st century, when the shift to a rapidly aging society is an issue all over the world including Japan. Japan's elderly people account for over 18% of the total population, which is the highest percentage in the world, and this trend is expected to accelerate as time goes on. It is also predicted that the same trend will affect other nations in the Asia/Oceania region in the near future.

Consequently, it is becoming increasingly necessary to enhance the systems of medical care and social welfare for the elderly to ensure a happy and energetic environment for the aged. To aid the creation of such an environment, the Asia/Oceania Regional Congress of Gerontology, now meeting in Japan for the second time in twelve years, can play a critical role.

In this year's congress, under the main theme of "Promoting Sciences and Humanities for Successful Aging," relevant information will be exchanged through keynote speeches by specialists in various disciplines, through symposiums that will provide a cross-sectional view of gerontology, and through various presentations on research achievements. I believe that this conference will be an excellent opportunity for the participants to re-examine their day-to-day research and activities from an international perspective, and that it will be a significant forum for helping the world to make a successful transition to a mature society in the 21st century.

I close my address by expressing the hope that experts in various fields gathered together here will fully share their expertise, and that the deliberations of the congress will lead to concrete implementations, thus providing further advances in the medical care and social welfare of the world's elderly population.