主な式典におけるおことば(平成12年)

皇太子殿下のおことば

阪神・淡路大震災5周年犠牲者追悼式
平成12年1月17日 (月)(兵庫県公館)

本日,阪神・淡路大震災から5周年を迎えるに当たり,改めて亡くなられた方々に,心から哀悼の意を表します。

5年前のこの日,住み慣れた街が,大地の鳴動とともに一瞬にして破壊され,かけがえのない多くの命が奪われました。 愛する家族や大切な友人,更には家を失い,今なお心に痛みを抱いて生活されておられる方々に思いを寄せるとき,深い悲しみを新たにします。

私も5年前に合同慰霊祭への出席のため,ここ神戸市を始めとした被災地を訪れましたが,その時の状況は今でも深く脳裏に刻み込まれております。

この5年間,御遺族や被災者の方々を始め,兵庫県の皆さんは,心を一つにして,互いに励まし,助け合いながら,幾多の困難を乗り越え,復興に向けて着実に歩みを続けてこられました。

今日,皆さんの懸命の努力が実を結び,未来への希望とともに街がよみがえり,穏やかな生活が戻りつつあることに大きな感銘を覚えます。

また,皆さんが今回の震災の経験と教訓をいかし,先ごろ国外で発生した地震災害への支援活動にも貢献されたことを伺い,大変心強く思います。

5年という歳月が経(た)ちましたが,被災されたすべての方々が,悲しみを乗り越え,震災から学んだ自然の持つ力の大きさや命の大切さ,人々が助け合い,共に生きることの喜び,そして安全で安心して暮らせる社会づくりの必要性を広く国内外に伝え,更には次の世代に継承されるよう期待いたします。

最後に,亡くなられた方々の御冥(めい)福を心からお祈りするとともに,御遺族並びに被災者の皆さんの御健康と今後の御多幸を祈念して,私の追悼の言葉といたします。

第55回国民体育大会冬季大会スケート競技会・アイスホッケー競技会開会式
平成12年1月29日 (土)(青森県八戸市長根公園野球場)

第55回国民体育大会冬季大会スケート競技会・アイスホッケー競技会の開催に当たり,全国各地から参加された多くの選手,役員,そして地元青森県の皆さんとお会いできることを,大変うれしく思います。

国民体育大会は,多くの関係者の努力と熱意に支えられ,半世紀を超える歴史を重ね,スポーツの振興と普及に大きな貢献を果たしてきました。

この大会に参加される皆さんが,日ごろの練習の成果を十分に発揮されるとともに,お互いの友情をはぐくみ,地元県民の皆さんとの交流を深められるよう期待しています。

豊かな自然に恵まれたここ八戸市を中心として開催される「北のまほろば冬季国体」が,皆さんの心に深く残る実り多い大会となることを願い,あいさつといたします。

第45回青少年読書感想文全国コンクール表彰式
平成12年2月4日 (金)(東京会館)

第45回青少年読書感想文全国コンクールで本日表彰を受けられた皆さん,おめでとうございます。

今回は,2000年「子ども読書年」にふさわしく,これまでで最も多い427万編もの応募があったと聞いております。これほど多くの若い人々が本に親しみ,素晴らしい感動を体験し,それを文章にまとめていることを大変うれしく思います。

本は,私たちに,ふだん体験できない様々なことや,未知の世界についての多くのことを教え,私たちの知識や想像力を豊かにし,いろいろなことをよく考え,見通す力をはぐくんでくれます。私自身,その時々に読んだ数多くの本の思い出がありますが,現在も興味を持ち,研究を続けている「道」と交通の歴史の問題に取り組む上でも幼いころの本との出会いは大切なものでした。

本を通して学んだこと,感じたことを一つの文章にまとめることは,とても大変な作業であったと思いますが,読書によって得られた体験をより深く心に刻むものであり,長く皆さんの心の財産となることでしょう。私はこのコンクールの表彰式に出席するのは今回で6回目となりますが,いつも,受賞者の皆さんが,読んだ本について語るときの生き生きとした目の輝きがとても印象に残っています。

皆さん,どうか今持っている素直に感じ,深く考える心をいつまでも大切にしてください。そして,これからも,皆さんがたくさんの本を読んで,新しい世界と出会い,大きく成長されることを願い,お祝いの言葉といたします。

日本外科学会第100回総会記念式典
平成12年4月11日 (火)(東京会館)

日本外科学会が,第100回の総会を開催されることを誠に喜ばしく思います。

日本外科学会が明治32年に創設された当時は,我が国の近代化の黎(れい)明期であり,日本の医学においても,西洋医学を取り入れて近代医療体制の確立に向け大きな一歩を踏み出した,重要な時期ではなかったかと思われます。

設立総会開会の辞に「外科学有志が団結しなければ外科の進歩は遂げられない。」とありますが,学会の創設以来1世紀の間に培われた,外科学関係者のたゆみない基礎的・臨床的研究によって,今日の日本国民は世界においても高い水準の医療を受けられるようになりました。特に,胃や肝・胆道外科の分野での業績では国際的にも高い評価を得ていると聞いております。ここに長年にわたる外科学関係者の努力に対し,心からの敬意を表します。

現在,我が国では,かつて経験したことのない速さで高齢化が進んでおり,国民の健康を預かる医師並びに研究者の皆さんの果たす役割はますます重要になってきております。また,臓器移植や内視鏡下手術法などの新しい治療法の確立,あるいは治療現場へのロボット工学や最先端の通信技術の導入など,日本の外科学が今後果たすべき役割に対する期待は極めて大きいものがあると思います。

20世紀を締めくくる年に行われる日本外科学会第100回総会が,これまでの外科学の進歩と業績の上に立って,21世紀へ新たな展望を開く力強い船出の機会となることを願い,記念式典に寄せる言葉といたします。

日蘭交流400周年記念式典
平成12年4月19日 (水)大分県臼杵市「臼杵港埠頭 特設会場」

本日,日蘭交流400周年記念式典に,オランダ王国ウィレム・アレキサンダー皇太子殿下をお迎えし,御一緒に出席できますことを,うれしく思います。

オランダと日本との交流の歴史は,オランダ船デ・リーフデ号が,慶長5年,すなわち西暦1600年の4月19日に,ここ豊後の国・臼杵に漂着したという事実から始まったと聞いております。

鎖国時代,我が国はヨーロッパの国の中で唯一入国を認められていたオランダとの交流を通して西洋文明を取り入れてまいりました。江戸時代後半,多くの若者達はオランダ語を学び,オランダから入ってくる新しい知識や当時の最も進んだ技術を習得しようと努力しました。これがいわゆる「蘭学」であり,この知識の集積が我が国の近代化に大きく貢献したことは疑いのないことです。ピンセットやランドセルなど,数多くのオランダ語が日本語になっていることからも,当時の我が国とオランダとの結びつきの深さがうかがわれます。

また,今日では両国間の経済関係も年々拡大され,1981年には日蘭文化協定が締結されるなど文化交流や青少年を始めとする人的交流,農業技術交流,学術交流など幅広い交流が活発に行われ,両国間の相互理解の向上に大いに貢献をしております。

本日,400年前のヤコブ・クワケルナック船長らの漂着と同じ日に,ここ大分の臼杵市で日蘭交流400周年の記念式典が開かれることは誠に意義深いことであります。

この式典に始まり,1年間にわたり日本各地で開かれる日蘭交流400周年を記念する多くの催しが,両国国民にとり日蘭の友好の歴史に思いを馳(は)せる貴重な機会となり,さらには両国の友好関係を一層増進する未来への懸け橋となることを期待し,私のあいさつといたします。

日蘭交流400周年記念式典
平成12年4月20日 (木)にちらん広場(長崎市出島町地先埋立地)

本日,オランダ王国ウィレム・アレキサンダー皇太子殿下と御一緒にここ長崎の地で,日蘭交流400周年記念式典に出席できますことをうれしく思います。

我が国は,過去に,200有余年にわたる鎖国の時代を経験しましたが,この時期に,唯一,日本への入国が認められ,西洋の文化を日本にもたらした国が,オランダでありました。我が国は,オランダとの交流を通して,様々なことを学び,近代化の礎を築いてまいりました。

そして,そのための門戸となったのが,この長崎にある出島であり,出島のオランダ商館を通じ,当時の進んだ西欧文明が日本に伝えられました。また,出島を通じて有田焼や漆器などの日本の文物が西欧に紹介されたこともよく知られております。私もかつて高校生の折に,この出島を初めて訪れましたが,この小さな島が,日本と西洋との交流の窓口となっていたことに深い感銘を覚えたものでした。

幕末の開国と共に我が国は数多くの課題に直面することとなりましたが,明治維新後の我が国の近代化が驚くほどの短期間で進展したのも,出島を通じての知識の集積が大きく貢献したことは疑いを入れません。

本日,日蘭交流400周年を祝う人々が,両国交流のゆかりの地である長崎に集い,400年前に始まった両国の結びつきの歴史に思いを馳(は)せ,将来に向けての友好関係の一層の増進を誓い合うことは誠に意義深いことであります。

このような歴史的背景を持つ,長崎県の皆さんが,今後もオランダ・日本両国の友好関係の増進のために大きな役割を果たしていかれることを期待し,私のあいさつといたします。

第11回全国「みどりの愛護」のつどい
平成12年4月29日 (土)香川県国営讃岐まんのう公園

本日,ここ国営讃岐まんのう公園において開催される,第11回全国「みどりの愛護」のつどいに,日ごろから緑の愛護活動に携わっている皆さんと共に,出席できることを,うれしく思います。

豊かな緑は,大気の浄化や大地における水の循環,災害の防止など,多くの重要な役割を果たしております。また,野生生物の生息,生育地としての,貴重な場であると同時に,私たちの暮らしに潤いと安らぎをもたらしてくれます。このような自然の恩恵を享受し続けることができるよう,地球規模での緑の保全と育成を進めることは,私たちの責務であると考えます。

1200年もの昔,空海が修築したと伝えられる満濃池(まんのういけ)に隣接するこの丘陵地に集われた皆さんが,相互に交流を深めるとともに,四国の豊かな自然や文化に接することにより,緑を守り,育てていく心を新たにされることを期待いたします。

終わりに,ただ今表彰を受けられた方々のこれまでのたゆみない努力に対し,深く敬意を表するとともに,このつどいを契機として,皆さんの熱意が,国内はもとより,全世界へと広がり,緑豊かな環境づくりが更に進展することを願い,私のあいさつといたします

世界自然遺産会議開会式
平成12年5月18日 (木)屋久島体育館(鹿児島県熊毛郡)

世界自然遺産を有するアジア太平洋地域の自治体を始め,多数の関係者の参加を得て,我が国で初めて世界自然遺産に登録されたここ屋久島において,「世界自然遺産会議」が開催されることを,大変喜ばしく思います。

世界自然遺産は,人類共有の財産として,その自然を未来に引き継いでいくべきかけがえのない地域であります。現在,世界で150の地域が登録されており,これらの各地域において保全のための積極的な取組がなされていると聞いています。

我が国では,樹齢数千年に及ぶヤクスギを始めとして特異な森林生態系を有する,ここ鹿児島県の「屋久島」と,ブナの原生林で知られ,青森・秋田両県にまたがる「白神山地」が,世界自然遺産に登録されており,いずれの地域においても,地域住民や自治体を始めとする多くの人々により,その保全のための努力が払われています。

私も昨日,屋久島のすばらしい自然に触れる機会を持つことができましたが,このたぐい稀な自然環境が貴重な財産として,今後とも大切に保存されていくことを願わずにはいられませんでした。

世界自然遺産を21世紀においても確実に保全していくためには,ユネスコなどの国際機関や関係各国政府の努力に加えて,地域社会における理解と協力が不可欠であり,その役割は今後ますます重要になると思います。その意味で,アジア太平洋地域の関係自治体が,この度「世界自然遺産会議」を開催されたことは,誠に意義深いことと思います。

また,この会議では,子供たちが世界自然遺産の保全について考える会議も企画されていると伺います。このように,将来を担う子供たちが,自然の保全について話し合い,理解を深めていく取組は,未来に向けて明るい展望を開いてくれるものと思います。

一度損なわれた自然を取り戻すことは容易なことではありません。これから,4日間の会議において,世界自然遺産の保全と世界自然遺産を生かした地域づくりについての活発な討論が行われ,国境を越えた協力関係が一層進展することを期待し,私のあいさつといたします。

第19回日本歯科医学会総会・第22回アジア太平洋歯科大会開会式
平成12年5月27日 (土)東京国際フォーラム

第19回日本歯科医学会総会及び第22回アジア太平洋歯科大会の開会式に,海外からも多数の参加者を迎え,皆さんと共に出席できることをうれしく思います。

医学の進歩と保健医療の充実により我が国の平均寿命は世界最高の水準に達していますが,高いレベルにある我が国の歯科医療は国民の健康の向上に大きく貢献しているものと思います。日本歯科医学会の皆さん方のこれまでの基礎的研究,臨床的研究におけるたゆみない努力と大きな成果に敬意を表します。

医療の世界においても国際化が進んできていますが,今般日本歯科医学会総会とアジア太平洋歯科大会が合同で開催され,「歯科医学と健康の創造」のメインテーマの下,国際的視野に立って基礎・臨床の両面から国境を越えた情報交換と討論が行われることは,21世紀の歯科医学の展開を見据えた意義深い催しであると思います。

この度の会議において,皆さん方の知識と経験が結集した熱心な討論が行われ,我が国の歯科医学の一層の発展のみならず,実りある国際交流を通じ,広くアジア・太平洋地域,ひいては世界の歯科医学と治療の向上に寄与することを願い,私のあいさつといたします。

平成12年度全国高等学校総合体育大会総合開会式
平成12年8月1日 (火)岐阜県:長良川競技場

平成12年度全国高等学校総合体育大会「2000年岐阜総体」が,全国各地から多数の参加者を迎えて,豊かな自然と多彩な文化に恵まれた,ここ岐阜の地で開催されることを,喜ばしく思います。

選手の皆さんには,日ごろ鍛えた力と技を十分に発揮し,お互いに友情をはぐくむとともに,地元の方々とも交流を深め,高校生活のすばらしい思い出をつくられるよう願っております。

そして,この大会が,選手の皆さんの活躍と数多くの地元高校生の協力によって,「切り開け 岐阜から 未来の1ページ」のスローガンにふさわしい,今世紀の最後を飾る意義深い高校総体となるよう期待いたします。

皆さんの御健闘を心からお祈りいたします。

第12回全国農業青年交換大会開会式
平成12年8月23日 (水)佐賀市文化会館

第12回全国農業青年交換大会に,全国各地から参加された皆さんと共に出席できることをうれしく思います。

我が国の農業・農村は,現在様々な面において大きな変革期を迎えていますが,皆さんが,日本農業の次代の担い手として,農業青年クラブ活動などを通じて,農業技術や経営の改良発展に努め,また,農村の地域づくりなどに積極的に取り組まれていることを,大変心強く思います。

菜畑遺跡などを始めとして,稲作の古い歴史や伝統文化を有し,また,海陸に豊かな自然を有する,ここ,佐賀県で,今日から3日間,皆さんが日ごろ培われた知識や技術を交換し合い,友情を深められることは,誠に有意義なことと思います。

新しいものを作り上げていく意欲と旺盛な行動力に恵まれた若い皆さんが,この大会を通じて,農業者としての自信と誇りをより一層高められるとともに,新時代の日本農業のあるべき姿を探求していかれることを期待いたします。それとともに,この大会が,活力あふれる農業・農村を築いていく契機の一つとなることを願い,あいさつといたします。

第27回オリンピック競技大会日本代表選手団結団式
平成12年8月27日 (日)新高輪プリンスホテル(国際館パミール)

シドニーにおいて開催される第27回オリンピック競技大会に参加される選手及び役員の皆さんをお送りすることを誠にうれしく思います。

オーストラリアでのオリンピック開催は,1956年のメルボルンに次いで二度目となりますが,20世紀の最後を飾る今大会は,約200に及ぶ国と地域が参加して,新競技のテコンドーとトライアスロンを含む史上最多の28競技300種目が実施されると聞いております。

この記念すべき大会に参加される皆さんが,高い志を持って世界の人々との友好親善を深め,21世紀への歩みを共に刻まれることを希望いたします。

大会期間中,現地では朝晩まだ肌寒いと聞いております。選手の皆さんには体調に十分留意され,競技の場において日ごろの練習の成果を十分に発揮されるよう願っております。

選手の皆さんの御活躍を祈り,結団式に寄せる言葉といたします。

第24回全国育樹際
平成12年9月17日 (日)福島県

雄大な自然に囲まれた,ここ磐梯山麓(ろく)において開催される第24回全国育樹祭に,全国各地から参加された多数の皆さんと共に出席できることをうれしく思います。

本年は,昭和45年にこの地で行われた第21回全国植樹祭から数えて,30年目に当たりますが,当時,多くの人々の手で植えられた苗木が,立派に育ち,「福島県昭和の森」となって,四季を通じ,人々の憩いの場として親しまれていると伺い,誠に喜ばしく思います。

先ほど,私たちは,昭和天皇と香淳皇后がお手植えになりましたアカマツの手入れを行い,少年団の皆さんの育樹作業を見る機会がありましたが,アカマツが,30年の歳月の間に,力強く成長して立派な森を作っている姿に深い感慨を覚えました。

ここ福島県は,面積の7割が森林と伺っており,美しく,豊かな自然に恵まれております。私自身,かつて裏磐梯を訪れた折,磐梯山を背景に多数の湖沼群が点在する,水と緑に恵まれた美しい景観が深く印象に残りました。

21世紀へ向けて,地球環境の保全は,人類共通の大切な課題であり,太古からはぐくまれてきた豊かな恵みをもたらす森林を,将来へ引き継いでいくことは,私たちに課せられた大きな責務であると考えます。

その意味からも,本日,表彰を受けられる方々を始め,美しい福島の森林や環境の保全に励んでおられる県民の方々,国土の緑化に尽力されている日本全国各地の関係の皆さんに対し,心から敬意を表したいと思います。

終わりに,この度の大会テーマ「ふるさとの 大地に広がれ 緑の輪」にふさわしく,国民一人一人の,森林を守り,育てる活動が大きな輪となって,世界へと広がり,次の世紀へと引き継がれていくことを切に希望して,あいさつといたします。

緊急消防援助隊の全国合同訓練開会式
平成12年10月24日 (火)東京都港湾局用地

本日,緊急消防援助隊の全国合同訓練が開催されるに当たり,皆さんと共に出席できることをうれしく思います。

さきの阪神・淡路大震災においては,6,000人を超える貴い人命が失われました。改めて亡くなられた方々に,皆さんと共に心から哀悼の意を表したいと思います。

この大災害を契機として,全国の消防機関を広域で支援し,大災害に素早く対処することを目的として緊急消防援助隊が結成され,その年の11月には,第1回の全国合同訓練が実施されました。その後,各地域ブロックごとに日々訓練を積み重ねていると聞いております。今回,緊急消防援助隊の発足5年目を迎え,第2回の全国合同訓練が,国際消防救助隊も加わってこのような大規模な形で実施される運びとなったことを意義深く思います。

その間,緊急消防援助隊は,長野・新潟県境付近で発生した土石流災害,有珠山の噴火災害及び鳥取県西部地震の際に出動し,住民の避難誘導,逃げ遅れた人々の救出等に大きく貢献されたと聞いております。ここに,出動された隊員の御苦労を深く多といたします。

日本は,地震も多く,また,火山や台風,豪雨などの自然災害の多い国であることは,最近でも三宅島の火山噴火,東海地方の豪雨被害などが示しています。このような状況の中で,国民の生命・財産の安全確保のために日々精進を重ねている消防職員の努力に対して,心から敬意を表したいと思います。今日,国民の防災への関心はますます高まってきておりますが,本日の合同訓練が実りあるものとなり,国民がより安全な生活を送られるよう切に希望し,私のあいさつといたします。

第36回全国身体障害者スポーツ大会開会式
平成12年10月28日 (土)富山県:富山県陸上競技場

全国各地から参加された多くの選手,役員の皆さんと共に,第36回全国身体障害者スポーツ大会「きらりんぴっく富山」の開会式に出席できることを,大変うれしく思います。

第1回大会以来,身体に障害を有する人々へのスポーツ普及と共に,多くの人々に勇気と自信をもたらす上で大きな役割を果たしてきた身体障害者スポーツ大会は,ここ富山県で第36回大会を迎えることとなりました。ここに,長年にわたりこの大会の発展に尽くしてこられた数多くの関係者のたゆみない努力に心からの敬意を表します。

スポーツが人々の生活を豊かにすることは言うまでもありませんが,シドニーで先月開かれたオリンピック,そして,現在開催中のパラリンピックは,世界中の人々に多くの勇気と感動を与えてくれています。特に,パラリンピックでの日本選手団の活躍ぶりは,努力と精進に裏打ちされた人間の限りない可能性を日本国民に対して,雄弁に,そして明るく,力強く示していると感じます。

「きらりんぴっく富山」は,20世紀を締めくくる歴史的な祭典となります。選手の皆さんは,「自分にチャレンジ! あしたにチャレンジ !! 」のスローガンにふさわしく,日ごろの練習で培った力を十分に発揮していただきたいと思います。また,選手同士の友情をはぐくまれると同時に,数多くのボランティアの皆さんを含む地元富山県民の皆さんとも交流を深められ,この大会が来るべき21世紀への懸け橋となるすばらしい大会となることを願い,私のあいさつといたします。

第15回国民文化祭・ひろしま2000開会式
平成12年11月3日 (金)広島県:広島県立総合体育館

「広がる生命(いのち) 輝く未来」をメインテーマとする第15回国民文化祭の開会式に,皆さんと共に出席できることを,大変うれしく思います。

広島県は,北に中国山地の山々,南には瀬戸内の海や島々など,豊かな自然に恵まれ,古くから交通・交易の要衝の地として栄え,多彩な文化をはぐくんできました。平安期の文化を今日に伝える厳島神社や平和を希求する象徴となった原爆ドームは,既に世界遺産として登録されております。

私も幾度か広島県を訪れておりますが,特に学生時代,中世の瀬戸内海の海上交通の実状を卒業論文のテーマにし,その現地調査のためにこの地を訪れた時のことを懐かしく思い出します。

この広島県において,第15回の国民文化祭が,日ごろから様々な芸術文化活動に取り組まれている方々を,国内はもとより海外からも多数迎えて開催されることは誠に喜ばしいことであります。ここに,開催のために払われた関係者の皆さんの努力に対し,敬意を表したいと思います。

近年,文化に対する国民の関心はますます高まっています。このような中で我が国各地の伝統文化を継承しつつ,新しい文化を創造する場として,国民文化祭が果たす役割は大きなものがあると思います。

この度,県内各地で開催される多くの催しにおいて,国内外の参加者と地元の皆さんの交流の輪が広がり,各地域の文化が再認識されるとともに,21世紀に向けて人間性豊かな文化が花開いていくことを願い,私のあいさつといたします。

商工会法施行40周年記念式典
平成12年11月16日 (木)NHKホール

商工会法が施行40周年を迎え,本日,全国各地から多くの出席者の参加の下,記念式典が開催されることを,喜ばしく思います。

昭和35年の商工会法施行以来,全国に設立された商工会の数は2,800を超え,約110万の会員を擁する大きな組織に成長しました。その間,商工会は,経営改善普及事業を始め,社会一般の福祉増進に資する諸事業を展開し,地域社会と地域商工業の発展に大きく貢献してきたと聞いております。商工会のこのような地域に根ざした幅広い活動は,これからの日本社会にとり,ますます重要なものになってくると思います。

今回も数多くの商工会や関係者の皆さんがその功績により表彰を受けられますが,これまで商工会の発展に尽くしてこられた方々の努力に対し,深く敬意を表します。

皆さん方が今後とも,我が国の中小企業の活性化と地域の振興に一層積極的に取り組まれるよう希望するとともに,まもなく訪れる21世紀における商工会の一層の発展を願い,式典に寄せる言葉といたします。

第27回「日本賞」教育番組国際コンクール授賞式
平成12年11月24日 (金)NHKホール

世界各国から多くの優れた作品の参加を得て,第27回「日本賞(にっぽんしょう)」教育番組国際コンクールが開催され,本日その授賞式に皆さんと共に出席できることをうれしく思います。

創設以来,「日本賞(にっぽんしょう)」コンクールは世界の教育放送番組の向上・発展と,国際的な理解と協力の増進の上で大きな貢献をしてきました。今日,世界の放送界はデジタル技術の発達により,大きな変革の時代を迎えつつあると思いますが,映像メディアの持つ教育上の責任がますます重くなっていることは疑いありません。特に子供たちへ与えるメディアの影響には,非常に大きなものがあります。そのような観点からも,35年の長い歴史のある「日本賞(にっぽんしょう)」コンクールの役割は,極めて重要であると思います。ここに,長年にわたりこの事業の発展に尽力してこられた数多くの関係者の努力に対し,心から敬意を表します。

20世紀最後のコンクールとなった本年の参加作品の中には,世紀の変わり目を意識した番組や人権・環境などの問題を歴史や文化的背景を織り交ぜて取り上げたものが多く見受けられると伺っています。また,これらの作品の視聴・意見交換の場にオブザーバーとして参加したいという方々が,今年は例年になく多いとのことです。このように,世界の放送機関が「日本賞(にっぽんしょう)」への参加を通してそれぞれの成果と経験を分かち合うことは貴重なことであり,今後とも教育番組の可能性を更に追求していかれるよう期待いたします。

今後の「日本賞(にっぽんしょう)」コンクールの一層の発展を願い,私のあいさつといたします。