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会見年月日:平成23年2月21日
会見場所:東宮御所
この1年を振り返りますと,日本では,昨年の夏,各地で猛暑が続き,逆に冬には厳しい寒さと雪害に見舞われ,それに加えて,年明けからは,九州,霧島連山の
さらに,宮崎県で発生した口蹄疫や,各地で発生した鳥インフルエンザによって大切に育ててきた家畜を処分せざるを得なかった方々の悲しみや,そのための作業に従事された方々の労苦にも思いを致しております。
国際社会においては,北東アジアにおける情勢や年末から今年に入ってからの中東地域での一連の動きなど,不安定で先行きが不透明な状況にあります。経済面でも,依然として厳しい状況が続いており,日本においても,特に若い人たちが就職難に直面していることには心が痛みます。こうしたことも影響してか,日本から海外へ留学する若者の数が減少するなど,若い世代に「内向き志向」が強まっていることも心配です。現在は,インターネットの発達で,世界の様々なことが,その場所に行かなくても分かるようになってきましたが,世界の様々な場所に実際に自分たちで行って,自分たちの目で見て,そして肌で感じ,様々な経験を積むことは何物にも代え難いものと思います。また,若い人たちが一度,外から日本を眺めることも大切なことなのではないでしょうか。そうすることによって,今まで気が付かなかった日本の姿が分かってくるように思います。私自身,英国に留学した際に経験した様々な事柄が,今日の私の貴重な財産となっており,若い世代の皆さんには,世界の様々なことに関心を向け,広く世界に羽ばたいていただきたいと思います。
高齢者については,ご質問にもありましたとおり,昨年,所在不明問題が大きく取り上げられたこと,また,猛暑の中で熱中症で多くの方々が亡くなられたことなどが強く印象に残っております。ご高齢の方々が健やかに,安心して暮らせる社会づくりが望まれます。
このような,心配事が多い中で,昨年末から今年に入って, 「タイガーマスク」の主人公を名のる人からの善意のプレゼントが全国各地で相次いだことは,一つの善意の現れでありますし,昨年のチリ鉱山での落盤事故における統率の取れた救出への動きなどと共に,心温まるニュースでありました。これらの出来事を通じて,人と人とのつながりが大事であり,お互いを思いやる心が大切であることを改めて感じました。今後とも,困難な状況にある国民の皆様に思いを寄せてまいりたいと思います。
私自身のこの1年間の公の活動の中では,昨年3月のガーナ国及びケニア国への訪問が印象に残っています。私にとって,サハラ砂漠以南の初めての「サブサハラ」のアフリカへの訪問となりましたが,アフリカには現在様々な課題があることを感じた一方で,アフリカには,今後大きな可能性があるようにも思えてなりませんでした。と同時に,アフリカの人々の日本に対する熱い眼差しもとても印象的でした。野口英世博士が取り組まれた黄熱病の研究を含む仕事は,現在でも,現地で医療活動に当たっておられる方々や青年海外協力隊を始めとする皆さんが引き継いでおられることを知って,大変意を強くしました。また,アフリカのような乾燥地帯にあって,少ない水で栽培できる「ネリカ」と呼ばれる品種の米の普及や
会見の冒頭,私は,自然災害のことをお話ししましたが,この1年,自然災害の脅威や,災害後の復興において抱える様々な問題について耳にするにつけ,水の問題への世界的な取組が大切であることを改めて感じることが多くありました。昨年12月まで続いた国連の「水と衛生に関する諮問委員会」名誉総裁の任期も,国連事務総長からの要請により,来年末まで延長となりました。私としては,これからもこの問題に関して知見を深め,世界の水をめぐる様々な問題が良い方向に向かっていくように,私の立場でできる限り,お役に立ちたいと思っております。
50代最初の年となった昨年のこの場において,私は,天皇陛下のお言葉を引用しつつ,過去の天皇が歩んでこられた道と,そしてまた,天皇は日本国,そして国民統合の象徴であるとの日本国憲法の規定に思いを致して,国民と苦楽を共にしながら,国民の幸せを願い,象徴とはどうあるべきか,その望ましい在り方を求め続けたいとお話しを致しました。いまだ道半ばであり,両陛下のなさりようを拝見しつつ,引き続き研
最後に,英国ウィリアム王子のご結婚式への招待については,いまだ英国王室からの招待状が届いておりませんので,今の段階で私の方からお話しすることは控えたいと思います。招待状を頂きました際には,まず政府内部で検討がなされるものと思います。
愛子の学校のことも,もうすぐ1年がたとうとしています。この問題では,これまで,天皇皇后両陛下を始め,多くの国民の皆様にお気遣いを頂いておりますが,温かくお見守りいただいてきたことに,この場をお借りして感謝申し上げたいと思います。
この1年近く,親として愛子のために何をしてあげられるのかという思いで,雅子と共に考え,歩んできました。愛子は,学校で怖い思いや
ご質問にあった,今後何が必要か,との点については,本人の気持ちを大切にしながら,学校の理解と協力をお願いしつつ,周りの助けも借りながら,元の状況に戻れるよう,環境づくりを引き続き行っていくということが必要であると考えております。愛子が,静かな環境での通学が可能なように,引き続き静かに見守っていただければ幸いです。
雅子の病気治療は長期にわたっておりますが,東宮職医師団見解にありますように,その間,長い目で見ますと着実に快復に向かっており,公務についても,昨年の阪神・淡路大震災15周年追悼式典出席のための兵庫県への訪問や,それ以前も神奈川県,長野県,徳島県への訪問,また,都内での公務出席など,限られた形であってもできるだけの努力をしてきているのが事実であり,このことは皆さんもよくご承知のことと思います。皆さんからのご質問に関してですが,昨年2月の東宮職医師団見解において,「患者さんが治療に取り組み,それが実を結びつつあるときには,できていないことではなく,小さなことでもできたこと,あるいは努力していることが認めてもらえるような,安心できる温かい環境が不可欠です。妃殿下の治療に関しても,ぜひ,その点を皆様にご理解いただければと考えます。」と指摘されております。報道関係の皆様には,この点につき,より一層のご理解とご配慮を頂けますよう,改めてお願いしたいと思います。
そのことを申し上げた上で,ここ1年ほどは,愛子の通学への付添いを含めて,愛子が元どおりの通学に戻るために母親として可能な限りの努力を払ってきているのが現状であり,私自身
両陛下がご高齢になられたことについての両陛下ご自身のご発言や,この度の東大病院でのご検査の結果で,天皇陛下の心臓冠動脈の問題が発見され,治療に当たられることとなりましたことを心からご案じ申し上げております。
かつてお話ししましたとおり,皇太子として両陛下をお助けしなければならないと考えておりますが,両陛下のご公務の在り方については,宮内庁内部でも検討がなされているように,ご公務の内容を考慮することによって,両陛下に過度の負担がかからないようにとの配慮が重要であると思います。しかし,同時に,このことは,天皇陛下としてなさるべきことを心から大切にお考えになっていらっしゃる陛下のお気持ちに沿って進めるべきであると考えます。
何よりも,両陛下が今後ともご自愛の上でご健勝でいらっしゃることを心からお祈りしております。
私はかつて,時代の流れに沿って公務のニーズについてもおのずと新しい考えが生まれてくるので,そういった時代の変化に応じ,社会の新しい要請に応える形で公務を考えていくことが大切であると申しました。今でもその思いは変わりません。昨年私は,関心ある分野として水の問題や環境問題,子どもと高齢者に関する事柄などを指摘しましたが,これらの分野に限らず,新たな公務に対する社会の要請は出てくると思いますので,これらの公務に真摯に取り組んでまいりたいと思っています。
秋篠宮とは様々な事柄について話し合う機会がありますし,今後ともそのような機会を持っていきたいと思います。
私自身も,大相撲を雅子,愛子と一緒に観戦したこともありますし,今までも今の両陛下とご一緒に小さい頃観戦したことも幾度もあります。それだけにやはり大相撲の今の状況は私自身も心配しております。いろいろな問題は多いと思いますけれども,こういった難しい中で大相撲がまた国技として,そして今後とも人々に親しまれるような形で,この問題が解決されるということを私自身心から願っております。
この点については今までも学校側ともいろいろご相談しながらいろいろと考えて対応してきたところでありますので,その具体的な内容については学校との関係もありますのでこの場ではちょっと発言は控えたいと思います。