愛子内親王殿下御誕生につき(平成14年)

記者会見

会見目的:愛子内親王殿下御誕生につき

会見年月日:平成14年4月2日

会見場所:東宮御所

皇太子同妃両殿下のお写真
記者会見をなさる皇太子同妃両殿下
(写真:宮内庁)
問1 両殿下にお尋ねします。妃殿下が懐妊されてからご入院,ご出産までの間でうれしかったこと,辛かったこと,驚いたことなどをエピソードを交えながらお聞かせ下さい。また,ご懐妊を知った時,無事に敬宮さまを出産された時の妃殿下の率直なお気持ちをお聞かせください。妃殿下が懐妊されてからご入院,ご出産までの間,様々な期待に対して両殿下はプレッシャーなどを感じられたことはありましたでしょうか。よろしくお願いします。
皇太子殿下

まず始めに,子供の誕生に当たって多くの方々から温かく祝っていただいたことに対して,心からお礼を申し上げたいと思います。また,子供を連れてきてくれたコウノトリにもあわせて感謝をしたいと思います。

懐妊と知ったときには,率直に言ってとてもうれしく思いました。無事に健康な子供が生まれることを心から願いました。あわせて妊娠期間も10か月と長いため,雅子もいろいろと大変だと思いました。懐妊後は検診の度に,始めは点のようだった胎児が徐々に成長する様子を目の当たりにすることができて,生命の不思議さ神秘性というものを感じました。雅子は8か月位までは,おなかもそれほど目立たなかったのですけれども,8か月を過ぎて急に大きくなった感じがしまして,また,そういったこと,そして,また胎児がおなかの中で蹴る動作が外にも伝わってくることに驚きを感じました。

プレッシャーについては,懐妊前の方が大きかったと思います。懐妊後は,無事に子供が生まれてくることと,雅子の体調が良いことを願っておりましたので,プレッシャーはさほど感じませんでした。

最後になりますけれども,地球上に人類が誕生してからこの方,絶えることもなく受け継がれているこの命の営みの流れの中に,今私たちが入ったということ,そういうことに新たな感動を覚えました。私からは以上です。

皇太子妃殿下

私からもまず始めに,大変多くの方々から今回祝福していただいたことに対して,心からお礼を申し上げたいと思います。懐妊の発表以来,出産に至るまで国民の皆さんから温かい祝福の気持ちで見守っていただいたことは,初めての出産を迎えるに当たりまして,私にとって本当に大きな励ましとなりましたし,また,子供の誕生後は,本当にたくさんの方々からお祝いをいただいて,これほど子供が祝福していただいているということを親として,とても心からうれしく,また,有り難く存じました。

懐妊中は子供の誕生を楽しみに思うと同時に,初めてのことでもありましたので,無事に出産できるまではと,いろいろと不安に思うこともありましたけれども,医師の先生方を始め,たくさんの周りの人々に支えられて,順調に10か月を過ごすことができ,そして,無事に子供が誕生したことを心から有り難く思っています。懐妊中は,未知のことの連続でございましたけれども,実際に子供が生まれてみますと,おなかにいたときこの子があの頃こんなふうに動いていたんだなとか,そういった一つ一つの過程がとても大切に,懐かしく,楽しく思い出されます。そして,出産といいますか,子供の誕生というものは,本当に大きな感動に満ちたものだったと言えると思います。

無事に出産できましたときには,ほっといたしますと同時に,初めて私の胸元に連れてこられる生まれたての子供の姿を見て,本当に生まれてきてありがとうという気持ちで一杯になりました。今でも,その光景は,はっきりと目に焼き付いております。生命の誕生,初めておなかの中に小さな生命が宿って,育まれて,そして時が満ちると持てるだけの力を持って誕生してくる,そして,外の世界での営みを始めるということは,なんて神秘的で素晴らしいことなのかということを実感いたしました。

また,生まれたての子供の生きる力というのを目の当たりにいたしまして,子供っていうのは,変な言い方ですけれども,本当に生きるために,そして,親に愛されるべくして生まれてくるんだということを強く感じました。この懐妊の期間,そして出産に至るまで皇太子殿下には,その過程をすべて共有してくださって,近くで私を励まし,支え続けて下さったことに心から感謝を申し上げております。

また,天皇皇后両陛下からも懐妊の期間,そして,誕生後これまでずっと本当にお細やかにお優しいお心遣いをいただいておりまして,このことに言葉では言い尽くせない感謝の気持ちで一杯でございます。

問2 高松宮妃喜久子さまが月刊誌の寄稿で,お子さまについて「雅子さまは私の望みにもきっと再びお応え下さるだろうと思います」,「好もしい出産の順序として,俗に『一姫二太郎』とも申します」と書かれましたが,手記を読まれて両殿下はどのようなご感想をお持ちですか。また,将来はご自分の体験を踏まえ,敬宮さまにもご兄弟,姉妹がいらっしゃった方がよいとお考えでしょうか。よろしくお願いします。
皇太子殿下

高松宮妃殿下のお心遣いに心から感謝いたします。今は子供も生まれて間もないものですから,子育てに専念して今後のことはこれから考えていきたいと思っております。

皇太子妃殿下

高松宮妃殿下には,今回子供の誕生に当たりましてあのようにお心のこもったお祝いの文章をお書きくださり,また,素晴らしいお歌をお詠みくださいましたことを心から有り難く存じております。妃殿下には,これまでも優しくいろいろと心に掛けてくださっていましたので,今回子供の誕生をお喜びいただいていることを大変うれしく有り難く存じています。

問3 両殿下にお尋ねします。敬宮さまを日々の触れ合いの中で何と呼んでいらっしゃいますか。成長振りを示すエピソードや印象に残る出来事,子育てをしている中でうれしく思ったり,反対に苦労されていることがあればお聞かせ下さい。殿下は先月のご会見で「父親としてできるだけ子育てに関わっていきたい」と話されました。これまでの皇室にない新しいスタイルだと思いますが,お考えをもう少し詳しくお話しいただけませんでしょうか。
皇太子殿下

愛子の名前を基に様々なバリエーションがあるということは,この前の2月の誕生日の会見の折に申し上げましたけれども,一例を挙げれば「愛ちゃん」です。

子供はその時々によって表情が変わりますので,なんとなく,その時々によって呼び方も変わってしまいます。愛子も体も大きくなってきまして,また体の動きも出てきましたし,発語の回数も増えて,また物を目で追う追視もよく見られるようになってきました。

最近では,離乳食の準備の為に,麦茶であるとか,それから野菜スープ,それからリンゴやみかんの果汁などを飲むようになって,成長の様子が見られ,とってもうれしく思っています。

親であれば誰でもそうだと思いますけれども,子供と顔を合わせた時にニコッて笑ってくれる時が最もうれしい時ではないかと思います。私たちは今まで様々なことを協力し合ってやってまいりました。子育ても協力していろいろとやっていきたいと思っています。

子育てに関わることによって,子供との一体感を感じますし,また,夫婦の一体感も感じます。子育てには父親の役割もとても大切なのではないかと思います。私も成長の過程で,父の陛下から多くのことを学びました。

皇太子妃殿下

子供が誕生しまして4か月になりますけれども,子供の成長というのは本当に早いものだなというのが実感でございます。体も段々と大きくなってまいりますし,また,いろいろな事も日々少しずつではありますけれども,気がついてみると,新しくこんな事も出来るようになっていたんだということで,本当に日々発見の連続という感じでございます。

最近では,自分の手を使って,自分なりのいろいろな遊びを楽しんでいる姿がよく見られます。また,このごろは,ぬいぐるみやお人形さんなどを見せますと,大変興味を持ってじっと見つめてニコッとそのお人形やぬいぐるみを見て笑ったり,それから手を伸ばして触ってみたり,また小さいものでしたら,それを手でつかんで口に持っていったりというようなこともいたします。また普段,私,よく首にスカーフを巻いているんですけれども,このスカーフに大変興味を持ちまして,そのスカーフをつかんで左右に振ったりいろいろ引っ張ったりして,それをほどいて取ってしまうこともございます。

また,両親である私たちや,それから普段育児を手伝ってくれている職員,そういった人たちのこともよく認識していて,そういう人の顔を見ると,うれしそうに笑ったり,また声をかけると笑ったりということで,一つ一つ成長していっている姿を見られてとてもうれしく思います。本当に殿下がお誕生日の会見でもおっしゃいましたけれども,子供というのは本当に可愛いものだなというふうに思います。子育てについては,幸い職員の手助けもありまして,楽しく育児ができているということは本当に幸せなことと有り難く思っています。

大変だなと思うことは,やはり公務ですとか,それに関連したいろいろな用事で,育児との間で時間のやり繰りをどうしたらいいかというようなことを感じることはあります。この点については,これまでも,皇后さま始め先輩の妃殿下方,皆様がそれぞれご苦労なさりながら工夫をしていらしたことだと思いますので,これからいろいろと教えていただきながら子育てをしていかれたらというふうに思います。また,皇太子さまは大変育児に私を助けてくださってまして,大変子供のことを可愛がっていらっしゃるので,子供の方もお父さま大好きで大変なお父さまっ子でございます。

問4 殿下にお尋ねします。昭和天皇,天皇陛下,皇太子殿下と,時代とともに直系皇室の教育の在り方が変わってきていますが,ご自分の経験を踏まえて敬宮さまにはどのような教育をされるお考えでしょうか。天皇陛下は昨年12月のご会見で「私にとり家族は大切でありましたが,昭和天皇をお助けし,国際儀礼上の答礼訪問を含め,国や社会のために尽くすことは最も重要なことと考えていました」と話されました。敬宮さまを養育されるに当たってどう思われるでしょうか。
皇太子殿下

私の父の陛下がお育ちになったときとは違いまして,私を手元でもって育ててくださいました。私はこのことを本当に有り難いと思い,心から感謝しております。教育に関しまして陛下がかつておっしゃったことですけれども,それはまず二つのことを陛下はおっしゃっております。まず一つは親子兄弟が一緒に住むということ,そして二つ目は教育を学校に任せるという,この二つのことを陛下は私に,そして私の兄弟に対してしてくださいました。

一番目の点につきましては,私は常に両陛下とご一緒に住むことができましたために,常に親を見ながら育つことができたという点が挙げられると思います。つまり,両親の姿を,両親のやり方を見ながら育つことができたということは本当に有り難いことだったというふうに思います。私は子供にも,私たちのやりようをよく見てもらいたいと思います。これは私たちにとっても大変責任のあることではありますけれども,また同時に,両陛下のなさりようもよく拝見して欲しいと思います。私は,家族というものは社会の最小の単位であると思います。家族を理解することによって社会を知るということ,これはとても大切なことではないかと思います。

二番目に陛下がおっしゃった教育を学校に任せたという点についてですけれども,陛下の場合には,したがって,出席される授業と出席されない授業というのがあったわけで,その結果として学校生活に十分浸ることができなかったというふうにおっしゃっておられます。私は全て学校で教育を受けることができましたために,学校生活を楽しむことができて,また学校生活を通していろいろな人と知り合いになり,交流を深めることができました。子供の教育については今後考えていきたいと思いますけれども,学校での生活を通して様々な人と交流して欲しいと思います。また,家庭での教育も私たちの経験を基に考えていきたいというふうに思います。

それから,次に質問があった,陛下がおっしゃったことについてなのですけれども,私は家族を思うことと,それから国や社会に尽くすということ,これは両立することだと思います。子供を育てていく過程でもって,子供には陛下をお助けして,そして国や社会のために尽くす気持ちを養って欲しいというふうに思います。

また,愛子には一人の皇族として立派に育って欲しいですし,名前のように,人を愛して人からも愛され,人を敬い人からも敬われるような人に育って欲しいです。今後,子供からもいろいろなことを学ぶことになると思いますけれども,子供をよく見て,子供の持っている可能性を引き出すような教育ができればと考えています。

問5 敬宮さまのご誕生でご公務は変わられましたでしょうか。殿下は先月のご会見で今後のご公務について「子供を取り巻く様々な問題にも理解を深めていきたい」,「子供に関する公務というものも,今後増えてくるのかなという感じもいたします」と話されました。そのお気持ちをもう少し詳しく,「ご公務」をどのように考えていらっしゃるのかも含めてお話しいただけませんでしょうか。また,妃殿下は今後のご公務の変化などについてどうお考えでしょうか。また,外国ご訪問の要請もあるかと思いますが,両殿下はどうお考えでいらっしゃいますでしょうか。
皇太子殿下

私たちも子供ができたことによって,子供を取り巻く様々な事に関心を持つようになりました。子供たちが安心して暮らせる社会ができるために,私たちの立場で何かお役に立つことがあれば、やっていきたいというふうに考えています。

また,外国訪問についてですけれども,今までもそうでしたけれども,要請があれば喜んで行きたいと考えています。

皇太子妃殿下

私自身については子供が生まれてまだ日も浅いので,これからの公務が具体的にどのようになっていくのかということについては,まだよく分かりません。けれども,ただ子供たちが愛されながら,子供らしく健やかに成長していくことのできる社会を願っていきたいと思っています。

また,具体的な公務として,これまでも毎年秋に開催されている,児童養護施設などに入って暮らしている子供たちの文化祭に,日程の都合がつく限り出席していますけれども,これからもそういった難しい境遇に置かれている子供たちには,心を寄せていきたいというふうに考えております。また,今社会が大変な速度で変化しておりますので,こういった中で今後,子供を取り巻くいろいろな環境といったものは,益々大きな課題になっていくのではないかしらという気がいたしております。

<関連質問>
問6 第一問の関連で妃殿下に伺います。大変不躾(ぶしつけ)でデリカシーを欠いた質問であるのかもしれませんけれども,妃殿下は生まれてきてありがとうという気持ちで胸が一杯になりましたとおっしゃった時に,私,涙ぐまれたように拝見いたしたんですけれども,その胸中にですね,どんな思いがおありだったのかと,難しい質問ですが。
皇太子妃殿下

難しいですね,やはり。言葉のとおり,やっぱりその生まれてきて本当にありがとうっていう気持ちですね。やっぱり非常に,なんて言ったらいいんでしょうね。胸が一杯になるような,そういった体験かしらと思いますけれども。すみません,母親になって涙もろくなって。(一同笑)