皇太子殿下お誕生日に際し(平成6年)

皇太子殿下の記者会見

会見年月日:平成6年2月22日

会見場所:東宮御所

皇太子殿下のお写真
記者会見をなさる皇太子殿下
(写真:宮内庁)
問1 34歳のお誕生日を迎えられた感想と,今後の抱負をお聞かせください。
皇太子殿下

率直に申し上げて,もう34歳になったのかというのが,まず,私の率直な感想です。それとともに,夫婦揃ってこの日を迎えられたということに,大変大きな幸せを感じております。昨年は,私にとりましても,結婚という人生の大きな節目を迎えた訳ですけれども,この一年も二人揃って充実したものとしていきたいというふうに思っております。

問2 妃殿下との生活を通じて,殿下がこれまでの皇室で経験されなかった民間の息吹のようなものを感じられることがございますか。また,全力でお守りしますと言われましたけれども,そのように実行していると感じておられますか。
皇太子殿下

この直接の答えになるかどうか判りませんけれども,雅子との結婚によって,今まで皇室の中で育った私にとって,色々と今まで私が経験したことがないような様々な話を聞くことができております。そういうものを通しまして,私自身の視野も広がっていったように思いますし,また,興味の対象も更に広げられているように思います。それから,全力で守っているかどうかということですけれども,これに関しては,私ができることでは,全力でこれを実行しているように思っておりますが。

問3 紀宮様のご結婚について,お兄さまとして,また,先輩として,アドバイスされるようなことはございますでしょうか。
皇太子殿下

兄としても,先輩としても,特にアドバイスしたことはございません。

問4 今日の,発行されている雑誌とかですね,スポーツ紙などを拝見しますと,雅子様の話題ですとか,色々載っていたりします。殿下にですね,皇室の方々,皇族の方のプライバシーについてですね,いろんな形で報道されることについて,どのようにお考えでいらっしゃるのか,お考えを伺いたいと思うんですが。
皇太子殿下

このことに関しては,どのような立場の人であれ,個人として尊重されるべきものであるというふうに思っております。したがって,皇族であっても,個人としてのプライバシーは尊重すべきものではないかというふうに思っております。

問5 皇室は親しみを持たれる存在というよりも,神秘的な権威のある存在として,国民の求心力の中心になるべきだという意見もありますけれども,どのようにお考えでいらっしゃいますか。
皇太子殿下

この点に関しては,かねてから申し上げておりますように,両陛下をお助けしつつ,国民と共にある皇室を実現していきたいというふうに思っております。

問6 殿下の個人的なご研究のことについて伺いたいと思うんですが,最近のご研究の成果とですね,今後の取り組み,どのように考えていらっしゃるのかお聞かせ下さい。
皇太子殿下

現在も,今までやっておりました日本の中世の海上交通の研究,それから,イギリスの主として18世紀の交通の問題,この2つのテーマは引き続き研究を進めております。日本の中世の海上交通の問題については,今後は,さらに視野を,今まで瀬戸内海をやっておりましたものを,日本海あるいは外の地域にまで拡げて,それで人と人との結び付きに海の果たした役割というものを人の動き,それから,物の動きといったところから見ていきたいというふうに思っておりますし,イギリスの研究に関しましては,今までは,主に運河であるとか,川の交通を研究しておりましたけれども,今後は,そういったものと補完関係にあった,いわゆる陸上交通にも目を向けてみて,それで産業革命期のイギリスの交通の実態というものを研究していきたいというふうに思っております。

問7 今年は,元の赤坂御所の方にお引っ越しされる予定というふうに伺っておりますけれども,かつて過ごされた赤坂御所の,東宮御所というふうに申し上げた方がいいんでしょうか,そちらの方に引っ越す感慨のようなものがございましたらお聞かせください。そして,改修に当たってですね,殿下あるいは妃殿下の方から,何かご希望を出されたことがあるのかどうか,この点についてもお聞かせ下さい。
皇太子殿下

私にとりまして,30年近く住んだ旧赤坂御所の地に移るということは非常に懐かしさを感じる訳です。それとともに,5年近く住んだ,そして,しかも楽しい新婚生活を送ったこの仮御所を離れるということにも,一抹の寂しさは感じております。また,今まで両陛下が30年以上にわたって住んでおられた赤坂御所に私が移るということに,何か少し申し訳ないような気分もいたしております。今回,移って以後のことに関しましては,赤坂御所が30年以上経っているということもあって,必要な手入れをされるというふうに聞いております。そういった改修につきましては,色々聞かれたことに関しましては私なりの意見を申しました。

記者

具体的には,…。

皇太子殿下

具体的には…。いちいちと言うとどうでしょうか。幾つかのことを申しましたけれども…。

<関連質問>
問1 先程,殿下は結婚されてそれぞれにですね,経験したことのない話を聞いたり,視野も広がったというふうなことをおっしゃいましたけれども,例えば,音楽とか,読書とか,あるいは色んな少し掘り下げてみようかななんていう興味の分野とかですね,そういう意味で,もう少し,何か,例えば,音楽で好みがですね,今までそれほど関心がなかったものが関心が出てきたとか,そういった具体的なことは,何かございますか。
皇太子殿下

そうですね,雅子も非常に音楽が好きですし,色々,こう二人で音楽を聴いたりすることもある訳ですけれども,そういった中で,具体的にどの作曲家とかいうのは,なかなかあれですけれども,今まで,自分がもちろん知っていて,ただその作品についてそれほど今まで詳しくは知らなかった,というような作曲家がいる訳ですけれども,知っていても,例えば,その曲を演奏する機会が余りなかったようなそういった作曲家について,例えば,少し色々作品を聴いてみようとか,弾いてみようとか,そういった興味はまた出ておりますね。何人かそういう作曲家がおりますね。読書についてもそうですね,同じようなことが言えます。

問2 先日のまた,コウノトリの件で蒸し返して恐縮なんですけれども,あの時に殿下が,風邪が長引いたのが思わぬ方向に発展したという表現をもって,私共はいつも側近の方から色々伺っているものですから,あれがすんなり否定のニュアンスを漂わせていらっしゃるというふうに受け止めたのですが,国民の多くの人たちというのは,こういう機会もないものですから,いまだにちょっとどっちなのかなという,ですから大変恐縮なんですが,あれは否定のニュアンスであったというふうに受け止めてよろしいのでしょうか。
皇太子殿下

はっきり申し上げて,あれは否定のニュアンスです。

問3 それに関連するのですが,メディアにも色んな種類があろうかと思うのですが,例えば,本日発売の女性週刊誌にですね,妊娠二か月というような記述が書かれているのですが,まだご覧になっていらっしゃらないかと思うのですが,そういう記事内容についてですね,いちいち反論することはなかなか難しいかと思うのですが,どういうふうな印象を感じられますでしょうか。
皇太子殿下

これはなかなか難しい問題だと思うのですけれども,前にもちょっと申し上げましたけれども,私としましては,真実の報道というものは非常に大切なもの,特に前回申しましたように,社会に報道というものは,非常に社会に与える影響というものは大きいものがあると思いますので,やはりこのようなものは,真実の報道を,マスコミの皆さんを始めとして,それに関係するような方々,是非していただきたいと思いますし,今回のように全く真実ではないことがそのようなふうな形でひとり歩きをしてしまうというのは,いかがなものかなというふうに思います。

問4 先程,ご研究の話がありましたが,その補足的な意味合いでちょっと伺いたいのですが,今,何か,「テムズとともに」のような本ですとかですね,あるいは論文とかそういったものは準備されていらっしゃいますか。
皇太子殿下

今は,そうですね,さっき成果のことについてお話できなかったですけれども,今,少し瀬戸内海ですとか,それから日本の河川交通について,ちょっと幾つかまとめてみたいな,というものはございますね。まだまとめるまでには至っていないのですけれども。

問5 先程,殿下が全力でお守りしますという言葉を実行していらっしゃると感じていらっしゃるということだったのですが,例えば具体的にどのような時にそういうふうにお感じになったり,されたのかということと,それと,もし差し支えなければ具体的な何かエピソードがございましたら教えていただきたいのですが。
皇太子殿下

そうですね,エピソードとか具体的にというと,うーん,なかなかお答えするのは難しいですけれども,やはり,一番私が感じておりますことは,やはり,本人が,今,どういうふうな,何をこう感じているか,どういうふうにしたいか,あるいは色々疲れていないかどうかとか,やはりそういった点を毎日様子を見ながら見ている訳なのですけども,そういったところで,少しでも気分を和らげてあげられることができたら,というふうに思いながら毎日を過ごしている訳です。

問6 やはり妃殿下にとって,殿下が一番の相談相手でいらっしゃるのでしょうか。
皇太子殿下

そうだとよろしいですね。いかがでしょうか。

問7 殿下にとって,一番の相談相手は,今,妃殿下でいらっしゃいますか。
皇太子殿下

非常にやはり側にいて,そして色々と相談相手になってくれる,前にも申し上げましたように,非常に良きパートナーであると思います。

問8 先程,紀宮様のご結婚に関して,特にアドバイスはされたことはないとおっしゃいましたけれど,殿下ご自身としては,お兄さまの立場として,どういった結婚を望んでいらっしゃいますか。
皇太子殿下

やはり,私はこれは,やっぱり本人が一番,本人が一番幸せになってもらいたいというふうに,兄として思っております。それが一番大切なことなのではないのでしょうか。本人が納得して,そして本人が一番幸せになれるような,そういった結婚をしてもらいたいな,というふうには思っております。