天皇皇后両陛下 シンガポール・タイご訪問(マレーシアお立ち寄り)時のおことば

シンガポール

平成18年6月9日(金)
シンガポール大統領夫妻主催晩餐会(大統領官邸)における天皇陛下のご答辞

大統領閣下,令夫人

この度,シンガポールと我が国との外交関係樹立40周年の機会に,大統領閣下の御招待により,皇后と共に貴国を訪問できましたことを,誠に喜ばしく思います。今夕は,私どものためにこのような宴を催していただき,また,ただ今は大統領閣下から丁重な歓迎のお言葉を頂き,深く感謝いたします。

私どもが,初めてシンガポールを訪問しましたのは,今から36年前,1970年のことでありました。当時の大統領御夫妻にお目にかかり,リー・クァンユー首相御夫妻には晩餐会に招いていただきました。当時,貴国は独立後日が浅く,新しい国としての歩みが始められたときでありました。建設途上にあったジュロンの工業地帯の造船所で,大勢の人々に温かく迎えられたことなども懐かしく思い起こされます。また,訪れた小学校で世界史の授業を見たことは印象に深く残っています。

その後,1981年に貴国に立ち寄る機会があり,今回は3回目の訪問となりました。今日,貴国の経済,社会が目覚ましく発展し,人々が豊かな生活を享受していることに深い感慨を覚えます。独立以来,様々な困難を乗り越えてきたシンガポールの各時代の指導者及び国民の英知と努力に心から敬意を表します。

シンガポールと日本の間には,40年前の外交関係の樹立以来,絶えることなく友好と協力の関係が続き,今日では,互いに協力し合って他の国々の発展を助け,地域や世界の直面する課題に対処する緊密な関係を築くに至っております。しかしながら,私どもは,それに先立つ先の大戦に際し,貴国においても,尊い命を失い,様々な苦難を受けた人々のあったことを忘れることはできません。

我が国の人々は,この歴史に思いを致し,東南アジア地域の安定と発展,さらには世界の平和と繁栄に貢献すべく力を尽くしてまいりました。この度の私どもの訪問が,そのような日本国民と貴国民との間の相互理解を更に深め,友好と協力の絆(きずな)を更に強めることとなることを切に望んでおります。

ここに杯を挙げて,大統領閣下並びに令夫人の御健勝とシンガポール国民の幸せを祈ります。