天皇皇后両陛下 ノルウェーご訪問(アイルランドお立ち寄り)時のおことば

アイルランド

平成17年5月9日(月)
アイルランド大統領主催午餐会(大統領官邸)における天皇陛下のご答辞

大統領閣下

本日は皇后と私のために午餐会を催していただき,また,ただ今は,大統領閣下より丁重なお言葉を頂き深く感謝いたします。

大統領ご夫妻には去る3月我が国へのご訪問の折にお目にかかりましたが,ここに再びお目にかかることをうれしく思います。

私どもがこの前アイルランドの地を踏みましたのは,20年前,ヒラリー元大統領ご夫妻の国賓としての我が国へのご訪問に対し,皇太子であった私が昭和天皇の名代として皇太子妃と共に答訪した時のことであります。私どもは貴国の文化に触れるとともに,貴国のたどった厳しい歴史に思いを致しました。ハイキングの居城であったタラの丘を皇后と共に訪れたことなど懐かしく思い起こされます。

この度婚約いたしました清子内親王も2000年に貴国を訪問し,大統領ご夫妻に丁重なおもてなしを頂き,また各地を訪れ,貴国の人々の厚情に接し,貴国への理解を深めることができました。

貴国は,近年,目覚ましい経済成長を遂げ,世界の平和と発展のために,大きな貢献をしております。貴国国民の努力に対し,深く敬意を表します。

終りに,大統領閣下並びにご夫君のご健勝と,アイルランド国民の幸せを祈り,また,日本とアイルランドとの友好のきずなが更に深まることを心から念願致します。

ノルウェー

平成17年5月10日(火)
ノルウェー摂政皇太子殿下・王妃陛下主催晩餐会(王宮)における天皇陛下のご答辞

摂政皇太子殿下,王妃陛下

この度ハラルド五世国王陛下のご招待の下,貴国を訪問できましたことを,喜ばしく思います。今夕は私どものために晩餐会を催してくださり,また,ただ今は摂政皇太子殿下から丁重な歓迎の言葉を頂き,深く感謝いたします。先月,愛知国際博覧会のノルウェー・ナショナルデーにご出席の機会に皇后と共に親しくお会いしてからほぼ1か月,貴国で再びお会いすることをうれしく思います。

国王陛下には本日お目にかかりましたが,手術後順調にご回復になっていることを誠に喜ばしく思います。

私が初めて貴国を訪れましたのは,今から52年前,私の19歳の時でありました。英国女王の戴(たい)冠式にオラフ皇太子,同妃とご一緒に出席し,その後,欧州諸国を巡った時のことであります。貴国では,オスロの王宮にホーコン七世国王とオラフ皇太子をお訪ねし,また離宮で国王,皇太子に午餐を頂きました。その後スタヴァンゲルまで飛行機で飛び,スタヴァンゲル,ハウゲスンド間を船で渡り,フィヨルドやハルダンゲル高原を眺めつつ,イエイロまで自動車で旅しました。貴国の人々や自然景観に触れる印象深い旅でした。

それから30年を経,オラフ五世国王が我が国を国賓としてご訪問になりました。2年後当時皇太子であった私は昭和天皇の名代として皇太子妃と共に貴国を答訪いたしました。オスロの空港には80歳を過ぎたオラフ五世国王が,ハラルド皇太子,ソニア同妃と共に雨の中を出迎えてくださり,その後のほとんどの行事にご一緒してくださいました。ヴィーゲラン彫刻公園を皆様と共に散策したことも深く心に残っております。本当に心のこもったおもてなしを頂きました。また公式訪問前の週末にはベルゲンでグリークの家や近くのフィヨルドなどを皇太子,同妃両殿下にご案内いただき,ご一緒に船に一泊するなど楽しい一時を過ごしました。当時,日本からオックスフォード大学に留学中であった現皇太子を一緒にこの旅に招いてくださったことにも深く感謝しております。

私の即位から2年後,昭和天皇より2歳年下だったオラフ五世がお亡くなりになり,摂政でいらしたハラルド皇太子殿下が即位なさいました。4年前,国王,王妃両陛下は我が国を国賓としてご訪問になりました。この機会に,陛下が皇太子の時,参加なさったオリンピックのヨット競技の行われた江の島ヨットハーバーにご案内いたしましたが,その後,このヨットハーバーでノルウェーフレンドシップヨットレースが行われることになり,今年で第4回を迎えました。

50年以上にわたる貴王室との交流を振り返る時,3度の貴国訪問に当たり,3代の国王にそれぞれお目にかかっていることに時の流れを感じます。本年は1905年貴国がスウェーデンとの同君連合を解消して独立し,ホーコン七世を国王に迎えて百周年になります。私の最初の貴国訪問の時,在位50年に近いホーコン七世に親しくお目にかかったことは,この百周年を一層感慨深いものとしております。ホーコン七世のご在位中には2度の世界大戦があり,第二次世界大戦では国土を占領され,抵抗運動により多くの犠牲者が生じました。60年前の6月,抵抗運動の象徴として過ごされた国王が亡命生活から戻られた時の国王と国民との感慨はいかばかりであったかと思いを致すのであります。

貴国と我が国は貴国独立後直ちに国交を樹立しました。本年は,1年間にわたり,国交樹立百周年の各種記念行事が行われることになっています。このような記念の年に私どもが貴国を訪問することができたことは非常に喜ばしいことであります。

貴国と我が国の関係は海運,水産,造船といった海洋にかかわる分野での交流に始まりますが,現在では経済,学術,文化,スポーツなど社会の様々な分野に交流の範囲が広がってきております。今日,両国が直面している問題には,共通の問題も多くあり,また相違する面を学ぶことも大切なことであります。様々な分野で両国民の交流が一層進展することを願っております。

貴国はノーベル平和賞授与国として平和に寄与した人々に励ましを与えるとともに,地域紛争の解決や開発援助などに大きく貢献してきました。今日,そのような貴国と我が国とが,世界の平和と人類の福祉のために協力を進めていることを,誠に喜ばしく思います。

今後とも,両国の交流が更に進み,相互理解と友好協力関係が一層促進されることを,切に願っております。

ここに杯を挙げて,国王王妃両陛下,摂政皇太子殿下並びに皇太子妃殿下のご健勝と,ノルウェー国民の幸せを祈ります。

ノルウェー

平成17年5月11日(水)
ノルウェー首相夫妻主催午餐会(アーケシュフース城)における天皇陛下のご答辞

摂政皇太子殿下,王妃陛下のご臨席の下,首相閣下並びに令夫人により催された午餐会とただ今の丁重な首相閣下の歓迎の言葉に対し,深く感謝いたします。

本年は貴国がスウェーデンとの同君連合を解消し,我が国との国交を樹立して百周年という年に当たります。この年に貴国を皇后と共に再び訪問することができたことを誠に喜ばしく思います。ここにこの訪問に携わった政府関係者の厚情に感謝の気持ちを伝えたく思います。

貴国と我が国との交流は古くは海洋がかかわる分野のものが中心でありましたが,近年は交流が様々な分野に広がってきております。両国の間には環境や社会福祉など共通の課題が多々あることと思われます。国交樹立百周年が,これらの課題を共に考え,様々な形で協力し合っていく契機になればうれしいことです。

両国民が百年にわたる交流の歴史を踏まえ,今後とも相互理解と友好協力関係を一層深めていくことを切に希望しております。

ここに国王陛下の速やかなご回復を祈り,貴国の発展と貴国民の幸せを願って杯を挙げたいと思います。

ノルウェー

平成17年5月12日(木)
トロンハイム市長主催午餐会(大司教館)における天皇陛下のご答辞

摂政皇太子殿下,王妃陛下のご臨席の下,市長主催の午餐会において,トロンハイム市の皆さんにお会いすることを喜ばしく思います。ただ今の市長の心のこもった歓迎の言葉に深く感謝いたします。

トロンハイム市はノルウェーの古い都であり,歴代国王の戴(たい)冠式が行われてきたところであります。百年前に,独立を達成したノルウェーに,国王として迎えられたホーコン七世の戴(たい)冠式も行われました。私は,52年前,ご在世中のホーコン七世にお目にかかったことが今も心に残っており,この度同国王にゆかりのあるこの地を訪れる機会を得ましたことに深い感慨を覚えます。

このようにノルウェーの歴史と共に歩んできたトロンハイム市は,芸術文化の発展に寄与してきたばかりでなく,近年は科学技術大学が設立されたことにより,未来に向かっての研究者を育てる重要な役割を担うようになりました。科学技術大学と日本の大学との交流も盛んになってきていることは非常に喜ばしいことであります。今後,様々な分野でますますトロンハイム市の人々と日本の人々の間の交流が盛んになっていくことを期待しております。

ここに,トロンハイム市の更なる発展を願うとともに,トロンハイム市民の幸せを祈って,杯を挙げたいと思います。