主な式典におけるおことば(平成21年)

皇后陛下のおことば

平成21年全国赤十字大会-赤十字思想誕生150周年-
平成21年5月14日(木)(明治神宮会館)

本日,赤十字思想誕生150周年を記念する全国赤十字大会に出席し,日ごろ赤十字活動に携わっておられる大勢の皆様とお会いできますことを,大変うれしく思います。

1859年6月,ソルフェリーノの会戦における,死傷者の悲惨な状況を目の当たりにしたアンリー・デュナンは,戦場において敵味方を問わず救護活動を進めることが,人道上不可欠であり,このためには,国際的な救護組織の設立が必要である,と提唱しました。このデュナンの提言に基づいて誕生した赤十字は,爾来じらい),民族,宗教,国籍の如何いかんを問わず,広く,人道,博愛の立場から,さまざまな活動を展開しております。

今も,世界の各地には紛争が絶えず,また,さまざまな自然災害の発生は,被災した人々の生活に,不安と苦しみをもたらしています。人道的な援助を必要としている数多くの人々からの赤十字への期待と要請は,今後ますます高まっていくものと思われます。

現在,世界には,赤十字の基本原則を受け入れ,この国際的な仕組みに参加する国は,186か国にのぼっています。各国赤十字は,その任務として,紛争や災害時に,傷病者の救護活動を行うこと,平時における災害対策,医療,保健,社会福祉,青少年育成等の業務を行うことと並び,赤十字の基本原則や,国際人道法の普及,促進を行うという,決して忘れてはならない,大切な役割を担っています。

赤十字の思想が世に提示されてより,150年という記念すべきこの年を節目として,私どもは,改めて赤十字活動の根底にある,人道への思いを深めていきたいものと思います。そして,アンリー・デュナンの思いを今日に生かし,皆して,より一層力強い活動を,国の内外において進めていくことができますよう,心より希望しております。

日米婦人クラブ創立60周年記念祝賀午餐会における乾杯のおことば
平成21年6月2日(火)(ホテルオークラ)

Toast by Her Majesty the Empress
on the occasion of the sixtieth anniversary of
the Japan-America Women's Club

Tuesday, June 2, 2009

at Hotel Okura

It gives me so much pleasure to be invited here today to this commemorative luncheon celebrating the sixtieth anniversary of the Japan-America Women's Club.  In Japan, the age of sixty is called kanreki, when a person is considered to have come full cycle.  I can tell that you know everything about it as I see a lot of red in the room today.

On this very special occasion, I would like to offer my warmest wishes to all the members of the Japan-America Women's Club for having completed your first full cycle.  As you now take a new step into the future, I hope you will continue, as you have always done, your good work of fostering friendship between our two countries.

Please join me in a toast.  To the Japan-America Women's Club.

第42回フローレンス・ナイチンゲール記章授与式
平成21年8月12日(水)(東京プリンスホテル)

このたび齋田さいたトキ子さんが,赤十字国際委員会より,看護師として最高の栄誉であるフローレンス・ナイチンゲール記章を贈られました。

齋田さんは,先の大戦中,外地における戦傷病者の看護に従事され,その献身的な働きにより,多くの尊い命を守られました。戦後は,新制度のもと,新たに発足した宮城県石巻の赤十字高等看護学院で看護師の養成に力を尽くされましたが,やがて県の行政担当官に任命され,戦後にととの)えられた新しい地方自治制度のもと,県の看護行政の基礎づくりと,看護の人材育成の業務を担われました。この間,常に患者主体の看護を目指し,真に新しい時代にふさわしい組織や業務の改善のため尽力されたと伺っております。その後も日本看護協会を始め,看護にかかわる様々な要職を歴任され,84才になられた今も,なお大学院の一研究生として,新人看護師の離職防止など,現代社会の重要な課題の研究に取り組まれながら,看護の発展と後進の育成に貢献しておられます。

ここに,齋田さんの長年にわたる看護への献身的な活動とたゆみない努力に対し,深く敬意を表し,このたびの受章をお祝いいたします。

齋田さんがこれからもお身体を大切にされ,看護の世界を見守り続けて下さることを心より願い,お祝いの言葉といたします。