主な式典におけるおことば(平成17年)

皇后陛下のおことば

平成17年全国赤十字大会
平成17年5月20日(金)(明治神宮会館)

本日,全国赤十字大会に出席し,日ごろ赤十字活動に深く携わっておられる皆様方と親しくお会いできますことを,大変うれしく思います。

赤十字は,国際的な強い(きずな)で結ばれ,人道的事業を通じ,広く世界の人々の福祉を増進し,平和な国際社会を築くために活動を続けておりますが,我が国においても,日本赤十字社が,多くの人々の尽力により日々その使命を果たしていることを,誠に心強く思います。

今日,世界の各地には,相次ぐ自然災害や紛争により,厳しい環境下におかれ,人道的な支援を必要としている人々が数多くおり,赤十字に寄せられる期待と要請は,今後ますます高まっていくものと思われます。

この様な時にあたり,一人でも多くの人が赤十字の理念を思い,より多くの人々と,その理念を共有し合っていくことが必要に思われます。

これからも,どうか皆様方が,赤十字の尊い使命に想いを致され,より一層力強い活動を,国の内外において進められますよう,切に希望いたします。

第40回フローレンス・ナイチンゲール記章授与式
平成17年7月8日(金)(東京プリンスホテル)

このたび,樋口康子さん,久松シソノさん,徳永瑞子さんの三名の方々が,赤十字国際委員会から,看護師として最高の栄誉であるフローレンス・ナイチンゲール記章を贈られました。お三方はそれぞれ看護教育や看護の実践,保健医療活動に尽くされ,また,多くの看護師や看護指導者を育成されました。樋口さんは,看護学をより高度な学問として位置付けるために,日本赤十字看護大学の設立に力を尽くされたほか,看護大学の設置基準や大学評価の審査の確立をはかり,また日本初の看護の学術団体である日本看護科学学会の設立に,中心的役割を果たす等,我が国の看護が学問として発展する上に,大きな貢献を果たされました。久松さんは,戦時,自身も被爆を経験される中で,長崎の原爆投下による被爆者の救援にあたられ,傷ついた多くの人々の苦痛を和らげ,生命を守られました。戦後は,長崎県内において先駆的な看護活動を行い,教育の体系化をはかり,看護学生のための臨床実習場を設ける等,学生の教育的環境の整備に尽くされました。高齢になられた今も,「国際ヒバクシャ医療センター」の名誉センター長を務め,次世代に平和の大切さを語り継ぐ活動を続けておられます。徳永さんは,早くより発展途上国での活動を希望され,語学と熱帯医学を修得し,助産師としてザイール共和国の医療過疎地で,母子保健指導及び栄養失調児のケアに心血を注がれました。また,ザイールで医療活動を共にした人々が,次々とエイズで倒れる中,エイズ患者支援のNGO組織を作り,医療支援・生活支援と共に人々の自立支援を行い,また,さまざまな教育活動により,エイズに関する啓発を行ってこられました。現在は,将来,国際保健分野及び発展途上国での活動を志す後進の育成に力を尽くしておられます。

ここに,お三方の長年にわたる看護への献身とたゆみない努力に対し,深く敬意を表し,このたびの受章をお祝いいたします。

受章者の皆様が,苦しむ人々の助けとなるべく,身につけてこられた知識と技術が,これからの日本の看護に受け継がれ,美しく生かされていくことを願い,また,皆様方の御健康とお幸せをお祈りし,お祝いの言葉といたします。